幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

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後半にグロテスク(?)なシーンがあります。

苦手な方はご注意ください。


強敵現る

 

「ん…。」

 

 

ゆっくりと目を開ける。

星が輝く空が見えた。

オリオン座や双子座など、様々な星座が夜空のキャンバスにきれいに描き出されている。

 

…え!?夜!?

 

 

「あ、気が付いた!」

 

 

頭上からメディちゃんの顔が現れる。

後頭部に感じるやわらかい感触、額に置かれた両手、顔の向き…。

 

あっ、俺、メディちゃんに膝枕されている。

何かとても幸せな感じ…。

 

いやいや、それどころじゃなくて!!

 

ゆっくりと上体を起こす。

解毒薬が効いたのか、身体の痺れや痛みを全く感じなかった。力も普通に入る。さらに、眠ったおかげなのか体力も完全に回復していた。

 

 

「ありがとう、メディちゃん。」

 

 

「えへへへ。」

 

 

お礼を言われて恥ずかしかったのか、顔を真っ赤に染めたまま笑顔になる。

その笑顔にカメラを向け、写真を撮った。

 

うん、かわいい。

撫でまくりたい。

 

 

 

 

「っ!そうだ!」

 

 

それどころじゃない!

分身の方はどうなった!?

 

俺がずっと眠っている間、分身たちは戦えただろうか。

フランちゃんの能力は眠っている間も解除していない。

他の分身と意識をつなげる。

 

 

「なっ!?そんな…。」

 

 

分身が…3体ともやられている!?

周りの雑魚は倒せたが、恐ろしく強い奴が1体いてそいつに3体ともやられたみたいだ。

頭に角がある…ってことは鬼か!

 

やられた時間は…ついさっきか!

今いけば間に合うはずだ。

場所は…湖の近くだな。

 

 

「ごめんねメディちゃん、俺、もう行かないと。」

 

 

「うん、また来てね。」

 

 

紫さんの能力を投影させ、スキマに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

「行っちゃった…。」

 

 

無名の丘に1人残されたメディ。

胸に手を当てると、ボソッとつぶやいた。

 

 

「不思議ね。人間相手にこんな感情を抱いちゃうなんて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと!!」

 

 

スキマから飛び出し、華麗に着地を決める。

鬼はどこだ?

 

辺りを見回していると、低く野太い声が響いてきた。

 

 

「とうとう本体が登場か。」

 

 

「お前は?」

 

 

その鬼は身長が2メートル近くもあり、体格もがっしりとしていて節々の筋肉が盛り上がっている。口からは牙が生え、頭には角が2本生えていた。

肌の色以外は俺達が鬼と聞いてイメージするような姿そのものだ。

 

でも、こいつからは影鬼の魔力を感じない。

どうなっているんだ?

 

 

「俺様は地上の妖怪に虐げられてきた鬼だ。昔の地位を取り戻すためにこうして暴れまわっているのさ。幻想郷を壊そうとするこいつらの登場はチャンスだと思ったのだ。」

 

 

そっか。

利用しているだけで、協力関係とかは無さそうだ。

 

 

「鬼と言えば、萃香さんと勇儀さんがいるじゃないか。その2人のように共存とかは考えないのか?」

 

 

「あいつらの存在が許せねぇんだよ!四天王ともてはやされたというのに、人間や妖怪と仲良くやりやがってよぉ!」

 

 

そう怒りをぶちまける。

右手に持つ棍棒を何度も地面にたたきつけた。

 

 

「何見てるんだよ。まずはお前から倒してやるよ!!」

 

 

棍棒を構えると、俺に向かってきた。

 

文さんの能力を投影させ、鬼の周りを高速で動き回る。

鬼は俺の姿を探してきょろきょろと見回す。

しかし、鬼の様子を見ると俺を見つけられないようだ。

 

 

「このスピード…お前、天狗か?天狗風情が調子に乗るな!」

 

 

鬼は唸ると棍棒を地面にたたきつける。

その直後、すさまじい衝撃波に襲われた。

 

 

「うわぁ!?」

 

 

「そこかぁ!!」

 

 

衝撃波を食らってひるんだすきを突き、鬼は野球のバットのように棍棒を振るう。

白蓮さんの能力で防御力を高めてガードをすることができたが、その威力は予想以上のもので後ろに吹き飛ばされた。

 

 

「がぁっ!?」

 

 

ものすごい勢いで吹っ飛ばされ、近くにあった大木に背中から激突した。

背中を走る激痛。白蓮さんの能力を真似ていなければ、今頃背骨が折れていたな。

 

それにしても、なんという馬鹿力だ。

…ああ、鬼だからか。

 

 

なら、今度はこっちからだ。

天子さんの大地を操る程度の能力を自分に重ね合わせる。

大地の動きをイメージし、両手を叩きつけた。

 

鬼の周りの大地を腰の位置まで隆起させ、腰から下を覆う。

その状態で今度は大地を沈ませ、鬼の下半身を地面の下に埋めた。

 

「くそっ!動けねぇ!」

 

 

地面から上半身だけを出した鬼は抜け出そうと必死に力を入れる。

しかし、この地面には能力で高い圧力をかけている。

例え怪力を持つ鬼だとしても、この地面から抜け出すのは不可能だ。

 

 

「天狗め…鬼に逆らうな!」

 

 

「天狗?いいや、俺は人間だ。天狗なら恋人にいるけどね。」

 

 

「なんだと!?貴様…ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

突然鬼が大音量で雄叫びをあげる。

その直後、空気の振動が衝撃波となって襲ってきた。

 

両足に力を込め、体制を低くして吹き飛ばされないように耐える。

 

 

「わぁぁぁ!!」

 

 

しかし、2波目には耐えることができず後ろに吹き飛ばされた。

 

 

「くっそ…なんて威力だ。」

 

 

俺の周りの木々は先ほどの衝撃波によってなぎ倒され、遥か後方まで飛ばされていた。

 

 

「どうだ、俺様の『声を衝撃波として飛ばす程度の能力』。大声にかけちゃ、負けねぇよ。」

 

 

声を衝撃波に…か。

つまり、声を出せないようにしなければこちらに勝ち目はない。

俺の持つ能力でそれが可能なのは…。

 

 

「水!」

 

 

自分でもこの方法が思いついたことに恐怖を覚えたが、この状況で簡単に、かつ的確に声を封じるにはこの方法しかなかった。

 

声を防ぐには、呼吸を奪えばいい!

 

 

ヤマメちゃんの能力を真似て両手から糸を飛ばし、近くの木と腕を結んで両腕の動きを封じた。

 

次ににとりさんの能力を投影させ、右の手の平で水の弾を作り出す。

十分な大きさになったところで、鬼の顔面目がけて投げ飛ばした。

 

 

投げ飛ばした水弾はまっすぐに飛んで行き、鬼の顔面に命中した。

命中した途端水はグニャグニャと形を変え、鼻と口を覆って呼吸を封じ込める。

 

鬼の顔が苦痛にゆがむ。

その表情を見て、俺はニッとほくそ笑んだ。

 

 

「苦しいだろう。でも、安心して。すぐに楽にしてあげるよ。」

 

 

空高く飛びあがり、紫さんの能力を投影させて鬼との間にいくつものスキマを作り出した。

そして、目の前のスキマに向けてキックを繰り出した。

 

そのスキマを潜り抜けながら、キックのスピードと威力を高めていく。

 

 

「おらぁ!仮壊『ディメンションキック』!!」

 

 

いくつものスキマを潜り抜け、鬼の頭部目がけて強烈なキックを叩きこんだ。

ゴキッという何かが折れたような音が響き、鬼はぐったりとして動かなくなった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…。」

 

 

大きく息を吐き、呼吸を整える。

鬼の姿を確認したとき、俺はその無残な姿にショックを受けた。

 

腰から下が地面に埋まり、糸で自由を奪われ、首がおかしな方向に折れ曲がり、顔を覆い続ける水には真っ赤なものが混じっていた。

 

 

「俺は…一体…。」

 

 

全身の力が抜け、へなへなと地面に座り込む。

先ほど自分がやったことに戦慄を覚えた。

呼吸を奪ったり、首をへし折ったり…どうしてこうも無残なことができたのか…。

 

 

「まさか…。」

 

 

これが、記憶を失う前の俺の性格なのか?

記憶が戻りかかっているということか?

 

「今の自分の性格さえも作られたもの」というオーガの放った言葉が現実味を帯びてきた。

 

 

頭を左右に何度も振ってこの恐怖を追い払う。

しかし、目の前にある鬼の亡骸を見ると再びその恐怖に襲われた。

 

頬を涙が伝う。

 

 

天子さんの能力を真似て大地を動かし、鬼を地面の下に埋める。

近くに転がっていた大きな石を持ってきて、鬼が埋まっているところに立てた。

 

簡素だが墓が出来上がった。

どうか、ここで安らかに眠ってくれ。

そう願い、両手を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中、スキマから顔を出して戦いの様子を確認する紫。

 

 

「一瞬だけど、欧我の本性が見えた。記憶が戻りかけているわね。きっと、もうすぐ異変が起こる。」

 

 

そう呟くと、スキマの中に姿を消した。

 




~~~~~~~~~~

わぁお、まさかの3000文字越えw
こんなに長く書くのは初めてだw

…あ、どうも作者の戌眞呂☆です。


今回の欧我君、いかがでした?
一瞬見せた残酷な欧我と、いつもの優しい欧我。
皆さんは、どちらが本当の欧我君だと思いますか?


…まあ、これからの展開をお楽しみください。

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