妖怪の山で椛がオーガと戦っているのと同じころ…。
~紅魔館~
廊下を走り続ける。
右手で最新刊の文々。新聞を握りしめ、一直線にお嬢様のいる部屋を目指す。
ついにこの日がやってきた。
妖怪の山の白狼天狗が、欧我君が敵に洗脳されたことを教えてくれた。
お嬢様はまだ眠っている、早く起こさないと!
「お嬢様、失礼します!」
ノックをして、ドアを開けた。
「あら、咲夜。おはよう。」
お嬢様は起きていた。
この時間はまだ眠っているはず。それなのにどうして?
「あ、お、おはようございます。…それよりも。」
「ええ、知っているわ。とうとう異変が始まってしまったのね。」
窓のそばに立ち、外の景色を眺めている。
目線の先には、美鈴と戦いを繰り広げる欧我君の姿があった。
欧我君がここを襲ってきたのは予想外だった。
文が新聞でこの幻想郷に訪れる危機を知らせてくれたときは、そんなわけがないだろうと思っていた。
…でも、可能性が0ではない以上、何もしないわけにはいかなかった。
美鈴も眠ることなく門番の仕事をこなしてくれたし、私も時間が開いた時は隣に並んで一緒に見張りを行った。
そして、とうとうこの日がやってきた。
「咲夜、美鈴とともに欧我を止めなさい。」
お嬢様の顔には、一緒に戦うことができないことに対する悔しさが浮かんでいた。
冬と言えど、空には雲が無く太陽が激しく照りつけている。
日光が弱点の吸血鬼にとって、そのような環境では思うように動くことができないのだ。
「かしこまりました。」
時を止め、美鈴のもとに駆けつける。
親しくなった友人を倒したくはないが、ここに攻めてきた以上お嬢様を、そしてみんなを護る!
~人間の里~
人間の里は、地獄絵図と化していた。
立ち並ぶ家からは火の手が上がり、洪水と落雷と地割れが一斉に里を襲った。
人々は逃げまどい、死傷者が里に溢れた。
しかも、この惨劇は一人の人間によって引き起こされたものだ。
影鬼に洗脳され、自我を失ったオーガが、人間の里に無差別攻撃を開始したのだ。
両手に炎を集め、火球を作り出す。
「転覆『道連れアンカー』!!」
次の瞬間、オーガの頭上から巨大なアンカーが落ちてきた。
素早く反応し、欧我は体をひるがえす。
目線の先には、オーガを睨む村紗水蜜の姿があった。
「さすがに、これは避けられてしまいましたか。」
そしてオーガの前に聖白蓮と寅丸星が姿を現した。
その傍らには、命蓮寺へ欧我が洗脳されたことを伝えた白狼天狗の姿もあった。
「この様子だと、鈴蘭さんがおっしゃったことは本当ですね。」
まさかとは思いましたが、本当にこのような事態に陥ってしまったのですね。
「はい。」
私たちに危機を知らせてくれた白狼天狗、鈴蘭さんは悔しそうにうなずいた。
私だって、欧我さんと戦うことになるのは耐えられません。しかし、この里に、この幻想郷に牙をむいた以上、私はあなたを止めます。
「とにかく、里の人々の救護はほかのみんなに任せて、私たちは欧我さんを止めましょう。親友だからって容赦はしませんよ。」
星も欧我さんと戦う決意ができたようだ。
欧我さんを睨むその目には、迷いが無かった。
「そうですね、星。ムラサも、準備はいいですか?」
「はい!」
3人でオーガと向き合った。
オーガは不敵な笑みを浮かべると、一瞬にして姿を消した。
…いや、高速で飛び回っている。
この高速移動は幻想郷最速である文のスピードを真似たもの。
目で捉えることはできなかった。
「くっそー、湊符『ファントムシップハーバー』!!」
高速移動にしびれを切らした村紗はアンカー弾を全方位にいっぺんに投げつける。
しかし、オーガは弾幕の隙間を縫うようにかわし続ける。
「ムラサ、闇雲に攻撃しても効果はありませんよ!」
「わかってる!でも…くぁっ!?」
村沙の背中に強烈な蹴りが叩き込まれる。
「ムラサー!!」
スピードで威力が増した鋭い蹴りは村沙だけではなく星と私も襲う。
能力で防御力を高めて何とかガードするものの、スピードによって威力が増した蹴りの攻撃力はすさまじく、身体を鋭い痛みが襲う。
しかも、今どこにいてどこから攻撃を仕掛けてくるのか、それが全く分からないので反撃のしようが無い。
村沙も星も、攻撃を耐えるだけで精一杯だった。
攻撃を終え、オーガは上空からこちらを見下ろす。
短時間のうちに連続で蹴りを食らい、かなりのダメージを負っていた。
鈴蘭さんは攻撃に耐えきれず地面に落ちて行ったけど、大丈夫でしょうか…。
肩で息をする3人に両手を向け、そこに魔力を集中させた。
このままでは、強力な攻撃を食らってしまう。
そう思った次の瞬間、
「雷矢『ガゴウジサイクロン』!!」
上空から黄色の矢が雷のように降り注ぎ、オーガの体を襲う。
その直後、大量の皿がオーガの背中に命中した。
この攻撃…。まさか!
「神子さん!」
「加勢しに来ましたよ。」
神子さんが駆けつけてくれた。布都さんと屠自古さんの姿もある。
そうですね、皆さんと力を合わせてこの危機を乗り越えましょう。
「戯れは終わりじゃ。布都、屠自古。行きますよ!」
「やってやんよ!」
「我にお任せを!」
「わぁぁぁぁぁ!!!」
強烈な雷撃を受け、俺は地面に崩れ落ちた。
もう、立ち上がる体力すら残されていない。
視界が、かすんできた…。
文さん…ごめんなさい。