「こちらです。」
そう言って一つのドアの前に案内される。
このドアの向こうに、この館の主でカリスマ吸血鬼であるレミリア・スカーレットがいる。
吸血鬼に会うのは怖いけど、向こうが会いたいって言ってくれたから、ここで逃げるわけにはいかないよね。
コンコン…
咲夜さんが2回ドアをノックする。
「欧我君をお連れしました。」
「どうぞ」
部屋の中から幼くも、威厳に満ち溢れた声が聞こえた。
「失礼します。」
ドアノブに手をかけ、ひねる。
気持ちを落ち着かせるために深く深呼吸をすると、ドアを開けた。
部屋の中は、赤と黒のチェッカー模様のカーペットに、ほのかに赤い色をした壁紙。そして天井には小さいながらも豪華なシャンデリアがつるされている。
部屋の真ん中には大きな長方形のテーブルが置かれ、きれいな花が飾られている。
そして、テーブルの向こう、豪華な椅子に座った少女がじっとこちらを見つめている。
水色の混じった青髪に真紅の瞳。衣服は白の強いピンクで、太い赤い線が入り、レースがついた襟。両袖は短くふっくらと膨らんでおり、袖口には赤いリボンを蝶々で結んである。左腕には赤線が通ったレースを巻いている。
そして背中には悪魔を思わせる大きな翼がある。
あの子が、レミリアさん?
「葉月欧我です。お招きいただき、感謝いたします。」
「ふふ、そんなに改まった態度をしなくていいわ。どうぞ座って。」
そう言って自分の向かい側にある椅子を指さす。
「はい、失礼します。」
椅子に座ると、すぐ咲夜さんが紅茶を用意してくれた。
カップを持ち上げ、縁に唇をつける。
しばし香りを楽しんだ後、ゆっくりとカップを傾ける。
口の中に流れ込んできた味に、思わず目を見開いた。
これは、美味すぎる…。
こんなに美味い紅茶は生まれて初めてだ。
「すごい…。美味しい。」
「でしょ?だって咲夜が淹れたのですから。」
「はい!こんなにも美味しい紅茶を淹れられて、しかも何もかも完璧な仕事ができる。正直そのようなメイドがいるって羨ましいです!」
「そうでしょ?」
その後、3人でこの幻想郷についての話で盛り上がった。
幻想郷に来たばかりの俺にとって、二人の話す物語はすべてが新鮮で、何より魅力的だった。
そして次は俺の写真についての話になった。
「それで、この世界で写真は撮れました?」
「はい、つい何枚も撮っちゃいました。」
そう言ってテーブルの上に今まで撮った写真を並べた。
椛さんと初めて出会った時に撮った写真や、文さんと椛さんがじゃれあっている写真、紅魔館を撮った写真などがある。
そして…
(こ、これは…っ!!)
フランちゃんのかわいい笑顔が写っている写真があった。
「あら、かわいく撮れているわね。さすが私の妹ね。」
「はい。あまりの可愛さに夢中でシャッターを切ってしまいましたよ。実はこれ以外に様々なポーズをとってくれまして。」
(うおぉぉぉぉっ!!)
ん?
咲夜さん、鼻血?
それに顔も赤くなっている。
どうしたんだろう。
試しにフランちゃんの写真を持ってひらひらと動かしてみる。
案の定咲夜さんはそれにつられてピクピクと反応を起こしている。
「やっぱり。咲夜さん、この写真がほしいのですか?」
「えっ!?いえ、私は…。」
「かまいませんよ。咲夜さんにはいろいろとお世話になりましたので、お礼と言ってはなんですがフランちゃんの写真を差し上げます。」
テーブルの上にあるフランちゃんの写真をまとめて咲夜さんに差し出す。
咲夜さんはそれを受け取って写真をまじまじと見つめる。
顔がさらに赤くなり、鼻血の勢いも増す。
「そうだわ。」
その様子を見ていたレミリアさんが言った。
「せっかくだし、みんなを集めて欧我に写真を撮ってもらいましょう!」
おっ、まさかこれは…?
「わかりました、お任せください。ですがそれは、依頼と受け取ってもよろしいでしょうか?」
「確か依頼1回につき2000円よね?もちろん支払うわ、咲夜が。ね?咲夜。」
「ふぇ?あ、はい!」
フランちゃんの写真に気をとられていた咲夜さんは、レミリアさんの声にハッとして返事を返した。
大丈夫かな?
「集合写真を撮るからみんなを集めてきなさい。場所は、ロビーがいいわ。」
「かしこまりました。」
咲夜さんは俺たちに一礼すると、あっという間に姿を消した。
やっぱ咲夜さんはすごい…。
そして、部屋には俺とレミリアさんだけになった。
何を話そうか迷う…。
「ねぇ。」
「はい?」
なんだろう。
「ここでずっと待つのもつまらないし、ちょっと私と遊ばない?」
そう言ってレミリアさんは笑みを浮かべる。
その笑みを見て、一瞬不吉な予感が頭をよぎった。
そして、その直後その予感は的中してしまう。