幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

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戦いの結末

 

破壊光線は無事に成功し、ついに影鬼を倒すことができた。

これで、この幻想郷を影鬼の間の手から守ることができた…。

 

文と両手を離したことで破壊光線は弱まり、消滅した。

本当に、影鬼を倒すことができ…

 

 

「お…おのれぇ!」

 

 

「なに!?」

 

 

そんな…。

破壊光線に飲み込まれた。

断末魔も響いた。

 

それなのに…なんで生きている!?

 

もう、俺にも文にも戦う力は残されていない。

 

 

「オーガめ、よくも…。」

 

 

「っ!?」

 

 

影鬼の体が、消滅しかけている。

くそ、あと一押しだったか…。

 

 

「こうなれば、お前の心の支えを奪ってやる。」

 

 

右手を空高く掲げると、鋭く尖った黒い槍が形成されていく。

 

まさか!?

慌てて文の方を見る。

先ほどの攻撃で体力を使い果たしたのか、浮いているのがやっとという状態だった。

これじゃあ、あの攻撃を避けることができない!

 

 

「射命丸文!わらわとともに…地獄へ落ちろ!!」

 

 

そう言った直後、影鬼の体は霧となって消滅した。

消滅する直前、不気味な笑い声とともに槍は放たれた。

 

 

「危ない!!」

 

 

慌てて叫んだが、文は動くことができなかった。

目をつむり、両腕で顔を覆った。

 

そんな文目がけ、槍は真っ直ぐ突き進む。

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ!!

 

 

 

 

 

槍は無情にも、身体を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐る恐る目を開けると、槍の先端は文のすぐ目の前で止まっていた。

槍を真っ赤なものが伝い、尖端から地面に流れ落ちていく。

 

槍が貫いたもの、それは文の大好きな人の…欧我の身体だった。

 

 

 

槍が消滅し、欧我の身体から真っ赤な血液がどくどくと溢れ出す。

欧我は目を閉じ、力なく大地へと落ちていった。

 

 

「欧我ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

文は名前を叫びながら急降下し、空中で欧我の体を受け止めた。

 

 

 

 

 

身体を貫かれ、身体に開いた風穴からは途切れることなく血が噴き出している。

…それなのに、不思議なことに痛みは感じなかった。

 

どうしてこんな行動をとってしまったのだろう…。

 

気付いたら体が動いていた。

文の目の前に移動し、文字通り命懸けで文を槍の攻撃から守った。

おそらく、「命を懸けて愛するものを護る」という覚悟、そして「自分の身を犠牲にしてでも大好きなものを護る」という決意が身体を突き動かした。

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると、涙を流して俺の顔を覗き込む文の顔があった。

いや、文だけじゃない。霊夢さんやレミリアさんなど、一生懸命共に戦ってくれた仲間たちが俺の顔を見つめていた。

 

 

「文…。」

 

 

「っ!欧我!しっかりして!!」

 

 

文は俺の体を揺する。

それに応えるように、残された力を振り絞って笑顔になった。

 

 

「文…ごめんな…。」

 

 

頬を流れる涙。

せきを切ったように、俺の目から涙が溢れだした。

 

 

「えっ?」

 

 

「今まで…本当に幸せだっ…た…。文と…一緒に過ごせて…。俺は…。」

 

 

脳裏に次々と浮かんでくる、文と過ごした幸せな時間。

この幻想郷で暮らした時間は短かったけど、俺は文から一生分の幸せをもらった。

 

いや、文だけじゃない。この地で一緒に過ごした仲間たちのおかげで、俺は自分を信じ、素直になれたんだと思う。

 

 

「な…何を言っているの!?欧我、死なないでよ!!私は欧我と離れたくない!欧我とずっと一緒にいたいのよ!!」

 

 

嗚咽を漏らし、文はそう叫んだ。

 

俺だって、この戦いが終わった後も文とずっと一緒に笑い合っていたいと思っていた。

文のもとを離れたくない。

…でも、俺は自分の最期くらい分かる。

 

視界がかすむ。

これが涙によってなのかは分からない。

 

 

「ごめんな…。今まで、本当に…幸せだった。文から…一生分の幸せ…を…もらえた。」

 

 

「嫌よ!私はまだ欧我と一緒に暮らしたいの!だから死なないでよ!!ねぇ!!」

 

 

文は激しく俺の身体を揺さぶる。

しかし、その感覚さえ、感じなくなっていた。

 

 

「文…最後に、お願いがある。」

 

 

「何?」

 

 

「小傘…のこと…よろしく頼む…。」

 

 

助手である小傘の笑顔が浮かんでくる。

この場に、小傘がいなくてよかったのかもな…。

小傘は、きっとこんなのは耐えられない。

 

小傘は立派な写真屋に成長した。

俺は師匠として、何かできたのだろうか。それが、唯一の心残りだ…。

 

 

「そして…文…。」

 

 

呼吸を整え、力を振り絞る。

 

 

「俺の分まで…生きて…。最後まで…幸せに…。」

 

 

「何よ、なに変なこと言っているの!?欧我、貴方も一緒に生きるのよ!一緒に、最後まで!」

 

 

涙を流し、そう必死に訴える。

俺の頬に、文の涙が落ちてきた。

 

 

「文…。」

 

 

震える手を伸ばし、文の頬に手の平を添わせる。

そして、親指で流れ続ける涙をぬぐった。

 

 

「最期ぐらい…俺の大好きな笑顔を見せてよ。」

 

 

「欧我…。」

 

 

文は泣きながら、大好きな笑顔を見せてくれた。

かすむ視界の中、その笑顔は今までで一番輝いていた。

 

 

「文…そしてみんな…。今まで…あり…が…と……」

 

 

欧我の腕が力なく地面に落ちた。

 

 

「っ!?欧我…?」

 

 

文の声は、もう欧我には届いていなかった。

目を閉じ、文の腕の中で、欧我は笑顔で息を引き取った。

 




 
最終章 影鬼異変

これにて完結。
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