幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

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終わったと思った?
ねぇねぇ、終わったと思った?

あと2話、続きます。
最後まで、よろしくお願いします。


エピローグ 永遠に
閻魔様の裁き


 

「ん~…」

 

 

ゆっくりと目を開ける。

ここは、いったいどこなのだろうか…。

俺は、今まで何をしていたのだろうか…。

頭に白いもやがかかった様に、ぼんやりとして考えを巡らせることができない。

 

俺は、いったい誰だ…?

 

 

「お、目を覚ましたかい。」

 

 

不意に女性の声が聞こえた。

声のした方に目を向けると、赤髪をツインテールにして鎌を担いだ女性が俺を見下ろしていた。

 

 

「あなたは…?」

 

 

「ありゃ、忘れたのかい?まあ、そりゃあ会うのは久しぶりだから忘れるのも無理はないか。あたいの名前は小野塚小町(おのづか こまち)。会いたかったよ…」

 

 

その女性は、自己紹介するとにっと笑顔になる。

 

 

「葉月欧我君。」

 

 

「葉月…欧我…?…っ!?」

 

 

その名前を聞き、頭にかかったもやが一気に吹き飛んだ。

慌てて上体を起こし、両手をじっと見つめる。

全てを、思い出した。

 

そうだ、俺は葉月欧我だ!

写真屋で、幻想郷を護るために影鬼と戦った。

 

そして…。

 

 

「そっか…俺、死んじゃったんだね。」

 

 

文を槍から守り、命を落とした…。

よく見ると、俺の着ている服は死人が羽織るような白い着物だ。

カメラも、帽子も、ゴーグルも…そして、もちろんネックレスも指輪も無い。

 

頭に文の笑顔が浮かんでくる。

文は今、どのように暮らしているのだろうか…。

 

 

「そう。欧我君は文を守って死んだ。だからこうして幽霊となってこの場所にいるのさ。」

 

 

「幽霊…?」

 

 

そっか。俺は死んだんだ。だから幽霊となってもおかしくない。

今、俺は小町さんと一緒に舟に揺られている。

 

 

「じゃあ、ここはまさか…三途の川?」

 

 

「そうだよ。」

 

 

「あ…六文銭持ってない。」

 

 

これじゃあタダ乗りじゃないか。

 

 

「いいよ、渡し賃なんて。それよりも、あたいは欧我君が現れるのを待っていたんだからね。」

 

 

「俺を…?」

 

 

「そう。欧我君が死んでから、この三途の川に現れるのをずっと待っていたの。そうだねぇ、もう3ヶ月が経過しているかなぁ。」

 

 

「3ヶ月!?」

 

 

小町さんから聞かされた衝撃の事実。

じゃあ、俺はいったい3ヶ月もの間どこを彷徨っていたのだろうか…。

 

 

「それに、貴方が現れるのを待っていたのは私だけじゃないさ。」

 

 

俺を待っていた人…。

それって…。

 

 

「そう、文と小傘だよ。欧我君が死んでから、毎日のように私に会いに来てね、「欧我は来ていませんか!?」って聞くんだよ。」

 

 

文と小傘が…俺をずっと待っていてくれたんだ。

もしかしたら三途の川に現れるのかもしれないと、希望を抱いて…。

 

手の平に、一粒のしずくが流れ落ちた。

その一粒に続いて、まるで滝のように大粒の涙が流れ落ちた。

 

 

「会いたい!文に…小傘に…会いたいよ…っ…!」

 

 

文、そして小傘と一緒に過ごした日々の思い出が、次々と浮かんでくる。

幸せな日々が、どんどん思い起こされていく。そこには、いつも笑顔の文と小傘がいた。

 

その2人に会いたい。

その気持ちが抑えられず、声を上げて泣き続けた。

 

 

「会えるさ。」

 

 

「…え?」

 

 

「まあ、その辺はあのお方が決めるんだけどね。」

 

 

小町さんの目線の先に、向こう岸が見えてきた。

舟はその岸に近づき、止まった。

 

 

「さあ、着いたよ。ここが…彼岸だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町さんの後について、長い廊下を進んでいく。

ここは、閻魔様がいる大きな建物の中。

 

この廊下の先に、幻想郷の者を裁く閻魔である四季映姫(しき えいき)・ヤマザナドゥがいる。

…長いから、映姫さんでいいか。

 

 

それよりも、不思議な気分だ。

幽霊になったからなのか、もう自分の足で大地を歩く事ができない。

重力に縛られず、空中をふわふわと浮いている。

もう二度と大地を踏めないのは少し寂しいな。

 

そう考えていると、いつの間にか目の前に大きな扉があった。

 

 

「さあ、着いたよ。」

 

 

小町さんはそう言うとドアをノックした。

 

 

「四季様、葉月欧我が参りました。」

 

 

「入りなさい。」

 

 

大きく深呼吸すると、扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、閻魔様が死んだものを裁く部屋。

目の前の大きな机に付き、こちらを見下ろしているのが、幻想郷の者を裁く閻魔の映姫さんだ。

 

…なんだか少し幼いような。

…まあ気にしないでおこう。

 

 

「葉月欧我。私は貴方が来るのを待っていました。」

 

 

「はい。」

 

 

映姫さんは落ち着いた声で話し出した。

 

 

「この幻想郷に未曾有の異変を引き起こし、多くの人の命を奪った。しかし最後は愛する者を、愛する場所を護るために戦って命を落とした…。本当に…。」

 

 

そう言うと、映姫さんは小さくため息をついた。

 

 

「貴方は少し自分勝手すぎます。貴方がこの身を犠牲にして大好きな人を護ったのは評価できますが、残された人の悲しみを考えたことはありますか?」

 

 

「残された、人の…。」

 

 

死ぬ間際に見た、文の泣き顔が思い浮かんだ。

あの後、文はどうしたのだろうか…。

小傘は?

 

…本当に、俺の行動は正しかったのか?

 

 

その後、俺は映姫さんから延々と説教を受けた。

映姫さんの言葉は俺の心にずっしりと響き、気付いたら俺ははらはらと涙を流していた。

文と小傘の気持ち…それを、また考えてやることができなかったからだ。

 

 

「いいですか?もう二度とこのようなことをしてはいけませんよ。」

 

 

「うっ…は、はい…っ。」

 

 

着物の袖で流れる涙をぬぐった。

 

 

「さあ、本題に入りましょう。」

 

 

「本題…ですか?」

 

 

「はい、私は閻魔です。貴方を裁く義務があります。」

 

 

ごくり、とつばを飲み込む。

 

 

「貴方は幻想郷に未曾有の異変を巻き起こした。この点を考えれば、貴方は黒です。」

 

 

やっぱり…。

ここに来る前から、そのような覚悟をしていた。

 

でも…もう文と会えないのかなぁ。

 

 

「しかし…。閻魔という職を捨て、1人の女として考えた場合、貴方を文と再会させたいという気持ちが溢れてきました。」

 

 

「…え?」

 

 

「私は閻魔です。そのようなことを考えるのはいけませんが、本心では文と一緒に過ごさせてあげたい。その方が、貴方だけではなく文と小傘…それに幻想郷の住民にとっても幸せなのだろうと…。」

 

 

そう言うと目をつむった。

 

 

「私は悩みました。これほどまで悩むのは初めてです。…ですが、ある方の助言を受け、私の気持ちは固まりました。」

 

 

深呼吸をすると、そっと目を開いた。

映姫さんの声は、閻魔という威厳に満ち溢れていた。

 

 

「葉月欧我。貴方に判決を言い渡します。貴方は、黒です。」

 

 

「黒…。ということは、地獄に?」

 

 

「いいえ。貴方を、100年の労働の刑に処します。」

 

 

え?

100年の…労働?

 

 

「100年の間、ある場所で働いてもらいます。その間、冥界から出てはなりません。」

 

 

「冥界…?それってもしかして!?」

 

 

「はい。その場所とは…白玉楼です。」

 

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