「春ですよ~!は~るで~すよ~~!!」
幻想郷に、春が訪れた。
冬の季節が終わり、あちこちの桜が満開に咲き誇る。
冬に巻き起こった激しい戦いによって、幻想郷は壊滅的な被害を受けた。
しかし、みんなはそれに負けることなく復興を開始した。
今、人間の里は以前のような活気を取り戻している。
荒れ果てた大地にも、青々と輝く新芽が顔をのぞかせた。
そう、幻想郷は負けてはいないのだ。
戦いに負けることなく、再び息を吹き返した。
花を手向け、そっと両手を合わせる。
このお墓には、私が世界で一番愛し、そして私を世界で一番愛してくれた人の名前が刻まれている。
「欧我…。」
そっと、その人の名前を呼んだ。
欧我…。貴方がこの世からいなくなってから、もう3ヶ月が過ぎました。
貴方と一緒に過ごした日はとても短かったけど、私は一生分の幸せをもらったような気がします。
貴方と一緒に過ごしているときは狭いと思っていた私の家も、今はやけに広く、そして静かに感じます。
貴方の部屋に入ると、欧我の匂いがするのに欧我がいなくって、とても切ない気持ちになります。
耳を澄ませば、愉快な笑い声や「文!」と私の名前を呼ぶ声が聞こえるような気がして。
でも、そこに欧我はいなくって…。
この3ヶ月、私は家を出ることなく貴方の帰りをずっと待っていました。
いつもの笑顔をうかべ、「ただいま!」って帰ってくると信じて…。
ふふっ…私ってバカよね。もう帰って来ないのは分かりきっているくせに。
私も、貴方の後を追って命を絶とうと考えたことがあります。
その度に小傘さんや、椛さん。そして多くの仲間たちから励まされ、少しずつ落ち着いていけました。
それに、貴方からもお願いをされましたからね。
「俺の分まで…生きて…。最後まで…幸せに…。」って。
「嘘つき。」
私との約束はどうしたの?
「大丈夫だ、俺は死なない!大好きな人を残して死ぬことなんてできない。」という言葉は嘘だったの?
人差し指で右の目をこする。
もう、涙は枯れました。
貴方が死んでから、私は毎日のように泣き続けました。
貴方がプレゼントしてくれたぬいぐるみを握りしめて、そのせいでそのぬいぐるみには涙のシミが付いちゃいました。
私も、いい加減立ち直らないといけませんね。
いつまでもくよくよとしていては、貴方が悲しみますよね。
貴方が安心してくれるように、精一杯最期まで生き抜いて見せます。
だから貴方も、ずっと空から見守っていてください。
立ち上がり、空を見上げた。
雲一つない、澄んだ青空が広がっていた。
「ここにいましたか、文さん。」
ふと、私を呼ぶ声が聞こえた。
声のした方を向くと、背中に2本の刀を背負った銀髪の女の子が立っていた。
「あれ、妖夢さん?」
妖夢さんは、笑顔でこう言った。
「捜しましたよ。」
冥界の桜は、今年も満開に咲き誇っている。
桜並木の間を、ただ当てもなくふわふわと浮かんでいる。
映姫さんから判決を言い渡され、気付いたらここに横たわっていた。
着ていた服も、生前の俺が身につけていた服と同じものだ。帽子にゴーグル…だが、ネックレスと指輪、そしてカメラはどこにも見当たらなかった。
もう一度この冥界にやって来れたのは本当に嬉しかった。
100年もの間、白玉楼で幽々子さんの専属料理人として働く。あの時映姫さんに助言をした「ある方」って、おそらく絶対に幽々子さんだろう。
俺は死んだことによって永遠の命を手に入れたことと引き換えに、成長と能力、そしてブン屋の助手兼写真屋という職業を失った。
でも、こうしてここに来れたんだ。
ここで新たな人生を送ろう。
「欧我…?」
後ろから声が聞こえた。
3か月ぶりに聞く、俺の大好きな人の声。
後ろを振り返ると、そこには…
「文。」
文の姿があった。
文に駆け寄り、優しく、そしてしっかりと抱きしめた。
文も涙を流し、俺をしっかりと抱きしめてくれた。
「欧我、会いたかった。今まで…ずっと…。」
「俺も会いたかったよ。」
もう2度と会えないと思っていた。
もう笑顔を見ることも、声を聴くこともできないと思っていた。
でも、こうして文を抱きしめることができた。
俺の体の中で湧いてくる、幸せや喜び、そして温もりと愛…。
それらが、涙となって溢れだした。
これで、俺はようやく約束を果たすことができた。
「たとえ死んだとしても、幽霊になってでも必ず会いに行く。」という約束が。
そして、今、やっと再会することができた。
「文、ただいま。」
「うん…お帰り。」
満開に咲き誇る桜の下…
2人は、いつまでも、ずっと抱きしめあっていた。
幻想郷文写帳 ‐完‐
~作者の後書き~
こんにちは、作者の戌眞呂☆です。
この度、遂に東方projectの処女作品である「幻想郷文写帳」を完結することができました。
この年で東方にはまり、自己満足のために書き始めた小説が、まさか157ページも続くとは、そして完結するなんて思ってもみませんでした。
ここまで続けられたのは俺を励まし、読み、そして支えてくれた皆様のおかげだと思っています。
本当に、今までありがとうございました。
この物語が終わっても、ハーメルンでの活動が終わったわけではありません。
俺の執筆しているほかの作品も、よろしくお願いいたします。
最期に、もう一度皆様へのお礼の言葉を送ります。
今まで、本当にありがとうございました。
執筆開始:2月22日
完結日 :5月26日
執筆期間:94日
小説のページ数:157頁
描いたワードのページ数:880頁