幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

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第21話 笑顔にこだわる理由

 

「はぁ~、疲れた。」

 

 

神社の縁側に座り、大きく伸びをする。

 

 

「おいおい、もう疲れちゃったのか?宴はまだ始まったばかりだぜ?」

 

 

隣に座っている魔理沙さんが言った。

 

 

そうは言っても、この短時間のうちにいろいろあったんだから。

 

妖精にいたずらをされ、両手に剣を構えた人形に追いかけられ、閻魔から延々とギリギリに来たことについて説教をされ、鬼に酒を飲まされ、宝塔を一緒に探してほしいと頼まれ…。

一人一人に挨拶しに行くだけでこんなに疲れたなんて。

 

本当に妖怪のタフさはすごいよ。

 

 

でも、その代わりみんなの明るい笑顔の写真を撮ることができた。

 

 

「そういえば、なんで欧我はそんなに笑顔にこだわるの?」

 

 

皆さんの笑顔を捉えた写真を眺めていると、文さんが話しかけてきた。

 

 

「それは、パワーを分けてもらえるからです。明るい笑顔を見ていると、なんか自分も笑顔になることができて、幸せな気持ちになれるんです。記憶を失っているからこそ、自分は独りじゃないんだっていう確かなものがほしいんです。」

 

 

そう言って写真から顔を上げ、笑顔で文さんの方を向く。

 

 

「だからね、文さん。もっと、文さんの笑顔も見せてほしいです。ずっと、そばで。」

 

 

「おぉ、まさかこれは?」

 

 

魔理沙さんのニヤニヤしている顔を見て、はっとして赤面する。

 

 

「ま、魔理沙さん!?ちがっ、これは」

 

 

「欧我。」

 

 

そんな俺の肩にそっと手を乗せる。

 

慌てて振り返ると、笑顔の文さんがそこにいた。

 

 

「わかりました。だから、欧我も私にそのまぶしい笑顔を見せてください。ずっと一緒に、ね?」

 

 

「文さん…。」

 

 

文さんのその言葉は、俺の心の中に積み重なっていた、記憶を失ったことに対する不安、恐怖を消し去ってくれた。

心に圧し掛かっていた重いものが取り払われ、自然と溢れ出す涙。

 

涙を流しながら笑うって、今俺の顔えげつないことになってないか?

 

でも、その涙はしばらく止まらなかった。

 

 

「あやややや?泣いていてはせっかくの笑顔も台無しですよ?」

 

 

「わかってるよ…。」

 

 

涙を拭きとり、気持ちを静める。

 

今日のことで、気持ちを切り替えることができた。

いったん記憶を失ったことは忘れよう。

今はこの幻想郷で、仲間たちに囲まれて生きている。

 

この仲間たちを大切に、ともに笑い合っていこう。

 

 

 

「さて、と。それじゃあ明日からも笑顔で行けるように…」

 

 

文さんはそう言って立ち上がると、会場を見渡す。

 

そしてモフモフの白い尻尾を見つけると、

 

 

「椛~!尻尾~!!」

 

 

と叫んだ。

椛さんはその声にびくっと反応し、ものすごいスピードで空に飛びあがった。

 

相変わらず、二人は仲がいいんだな。

  

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