「はぁ~、疲れた。」
神社の縁側に座り、大きく伸びをする。
「おいおい、もう疲れちゃったのか?宴はまだ始まったばかりだぜ?」
隣に座っている魔理沙さんが言った。
そうは言っても、この短時間のうちにいろいろあったんだから。
妖精にいたずらをされ、両手に剣を構えた人形に追いかけられ、閻魔から延々とギリギリに来たことについて説教をされ、鬼に酒を飲まされ、宝塔を一緒に探してほしいと頼まれ…。
一人一人に挨拶しに行くだけでこんなに疲れたなんて。
本当に妖怪のタフさはすごいよ。
でも、その代わりみんなの明るい笑顔の写真を撮ることができた。
「そういえば、なんで欧我はそんなに笑顔にこだわるの?」
皆さんの笑顔を捉えた写真を眺めていると、文さんが話しかけてきた。
「それは、パワーを分けてもらえるからです。明るい笑顔を見ていると、なんか自分も笑顔になることができて、幸せな気持ちになれるんです。記憶を失っているからこそ、自分は独りじゃないんだっていう確かなものがほしいんです。」
そう言って写真から顔を上げ、笑顔で文さんの方を向く。
「だからね、文さん。もっと、文さんの笑顔も見せてほしいです。ずっと、そばで。」
「おぉ、まさかこれは?」
魔理沙さんのニヤニヤしている顔を見て、はっとして赤面する。
「ま、魔理沙さん!?ちがっ、これは」
「欧我。」
そんな俺の肩にそっと手を乗せる。
慌てて振り返ると、笑顔の文さんがそこにいた。
「わかりました。だから、欧我も私にそのまぶしい笑顔を見せてください。ずっと一緒に、ね?」
「文さん…。」
文さんのその言葉は、俺の心の中に積み重なっていた、記憶を失ったことに対する不安、恐怖を消し去ってくれた。
心に圧し掛かっていた重いものが取り払われ、自然と溢れ出す涙。
涙を流しながら笑うって、今俺の顔えげつないことになってないか?
でも、その涙はしばらく止まらなかった。
「あやややや?泣いていてはせっかくの笑顔も台無しですよ?」
「わかってるよ…。」
涙を拭きとり、気持ちを静める。
今日のことで、気持ちを切り替えることができた。
いったん記憶を失ったことは忘れよう。
今はこの幻想郷で、仲間たちに囲まれて生きている。
この仲間たちを大切に、ともに笑い合っていこう。
「さて、と。それじゃあ明日からも笑顔で行けるように…」
文さんはそう言って立ち上がると、会場を見渡す。
そしてモフモフの白い尻尾を見つけると、
「椛~!尻尾~!!」
と叫んだ。
椛さんはその声にびくっと反応し、ものすごいスピードで空に飛びあがった。
相変わらず、二人は仲がいいんだな。