幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

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第3話 自分の名前と秘められた能力

 

一通り幻想郷についての説明を受けた後、文さんは何かを思い出したような表情を浮かべる。

 

 

「そういえば、あなたの名前を聞いていませんでしたね。」

 

 

俺の、名前?

名前は…。

 

 

「あ、記憶を失っているから名前なんか…」

 

 

「俺、おうが。」

 

 

「あやや?」

 

 

「俺の名前は、はづきおうが。」

 

 

そう言って、俺は文さんにアルバムを差し出す。

そのアルバムの裏には、マジックで『葉月欧我』と書かれていた。

 

自分の持ち物に書かれていたのだから、これが自分の名前だろうな。

 

 

「欧我さん、ですか。かっこいい名前ですね。」

 

 

「ええ、ありがとうございます。」

 

 

文さんの笑顔に散られて、俺も笑顔になる。

可愛い笑顔だなぁ、全く…。

 

 

「そうだっ!」

 

 

「ふぇっ!?」

 

 

「あなたのことを、記事にさせてください!」

 

 

そう言って、目をキラキラと輝かせる。

 

 

「記事?あなた、新聞記者なんですか?」

 

 

「はい!新聞で記事にすれば、何かしらの情報が手に入るかもしれません。」

(ちょうどネタが無くて困っていたところ。かなりの大ニュースいただきっ!)

 

 

その後、なぜか嬉しそうな文さんに質問攻めにされたり、写真を撮られまくったりされ、気が付けばもう12時を過ぎていた。

 

その話し合いの中で、自分のことを写真屋として記事に載せることに決まった。

写真を撮って、その人に買ってもらう。また、写真撮影の依頼も受け付けることにした。

値段は、写真1枚200円。依頼に関しては1回2000円。

 

キャッチコピーは『今という素敵な瞬間、200円でいかがですか?』に決定した。

 

こうして、自分の記事が載った新聞が完成した。

この新聞を号外として幻想郷のみんなに配るらしい。

 

 

「それでは行ってきます!留守番をお願いしますね。」

 

 

文さんはそう言うと赤い下駄を履いて空へと飛び出した。

 

パシャッ!

 

飛び立つ瞬間を狙って思わずカメラのシャッターを切る。

しかし、現像された写真を見てみると文さんの姿は小さく映っていた。

文さん、速すぎるでしょ。

 

でも、これが幻想郷で撮った初めての写真。

なんか、嬉しいな。

 

…俺も文さんみたいに飛べるのかな?

 

試しにその場で飛び上がってみた。

しかし、文さんのようにはできなかった。空も飛べない。

ダメか…。

 

俺は再び写真に目を落とす。

これが、鴉天狗の能力なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごほっ!?かはっ!!

 

はっと我に返る。

いったい何が起こったんだ!?

 

口の中に違和感を覚える。

口元に手を持っていくと、指が紙のようなものに触れた。

 

それを取り出してみると、なんとついさっき撮った文さんの写真の一部だった。

まさか、無意識のうちに食べてしまったというのか!?

 

慌てて台所に向かい、コップに水を注いで口に含み、吐き出した。

しかし、写真の残骸はほとんど出てこなかった。

もう飲み込んでしまったのだろうか。

 

部屋に戻り、縁側に腰掛ける。

 

 

「はぁ、何やっているんだよ。」

 

 

なぜ、写真を食べてしまったのだろう。

しかも無意識のうちに…。

 

この行為は、俺の知らない記憶から導き出された行為なのか?

記憶を失う前の俺は、いつも写真を食べていたのか?

記憶を失った今では、全く理解できなかった。

 

 

まあいいや。

文さんが帰ってくるまで、留守を預からないと。

 

でも、もう一度だけ。

 

 

靴を履いて、外に出る。

俺もあんな風に飛びたい。

文さんの素早さを頭に浮かべ、イメージし、自分と重ね合わせる。

 

 

「いくぞっ!」

 

 

両足に力を込め、大地を蹴る。

 

次の瞬間、俺は青空のど真ん中にいた。

 

 

欧我

「えっ!?俺、空を飛んでいる!?」

 

 

まぎれもなく、欧我は空に浮かんでいた。

 

足に力を込め、大気を蹴る。

ものすごいスピードで空を飛び、空中を漂い、上昇も下降も思いのまま…。

 

 

俺に、こんな能力が秘められていたとは…。

 

でも、写真を食べ…いや、取り込んだだけで文さんのような高速飛行が可能になるなんて。

今の俺にはまったく理解できない。

まあ、これが俺の能力だということにしよう。

 

まだ断定できたわけではないが、名づけるなら

『相手の能力を撮った写真を取り込むことで、それを真似ることができる程度の能力』!!

…長いか?まあいい。

 

 

 

欧我

「あっ!留守番!!」

 

 

文さんから留守を預かっていたことをすっかり忘れていた!

急いで戻らないと!!

 

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