一歩、また一歩…
慎重に、そして平静を保って足を進め、その傘との距離を縮めていく。
一体どれくらい近づけば飛び出してくるのだろうか。
心臓の鼓動が早くなる。
落ち着けよ俺~!
大丈夫、近いといってもまだ距離はある。
もう少し近づかないと驚かしては…
「うらめしやぁ~!!」おどろけー!
欧我
「うわぁっ!?」
ドンッ!
欧我
「いてて…」
完全に意表をつかれた。
普通下からにゅっと出てくるだろ?
俺もそう思ったよ。
でも、いきなり突撃してくるなんて!
こんな物理的な驚かし方は初めてだよ。
思いっきり押し倒された…。
「どう?びっくりした?」
驚かした少女は俺のお腹の上にまたがって顔を覗き込んでいる。
なんかやけに楽しそう。
欧我
「ええ、完全に予想外で。」
予想の斜め上を行く驚かし方。
でも、なんで突撃してきたのだろう?
「やったぁ!やっと成功した!!」
欧我
「へ?」
「だって、ぶつかれば怖いって教えてくれた人がいて、それを実践しては失敗し続けてきたんだもん。8回目にしてようやく成功したんだ!」
そう嬉しそうに教えてくれた少女。
かなり、努力家なんだなぁ…。
まあいいや、その笑顔を写真に収めよう。
肩にナス色のぼろい傘を担いだその少女は…って今気づいたが、その傘から舌が飛び出している!?
こら、そこを舐めるな!!くすぐったい!!
もういいや。撮っちゃえ。
パシャッ!
「ふぇっ!?あ、なんだカメラか。びっくりした~。」
欧我
「俺は葉月欧我、写真屋です。あなたは?」
「私は多々良小傘(たたら こがさ)。よろしくね!」
その後、俺のカメラに興味を持ったのか、今まで撮った写真を見せてくれとせがまれた。
あ、ちゃんとどいてくれたからね?今は2人で向き合う格好で石畳に座っている。
そして俺の写真を見て感動したのか、とんでもないことを言い出した。
小傘
「ねぇ、私も写真屋になりたい!」
小傘ちゃんは目をキラキラと輝かせて言った。
欧我
「え?なんで?」
小傘
「だって、こんなにもまぶしい笑顔の写真を撮るあなたが羨ましくて!私もこんな写真を撮りたいんだもん!だからお願い!」
そう言う小傘ちゃんの手にはこれまでに撮った笑顔の写真がある。
でも、写真屋になるにしてもひとつ大きな問題がある。
必須の条件が。
欧我
「小傘ちゃん、カメラは持っている?」
カメラがないと写真が取れない。
小傘
「カメラ?これでしょ?」
そう言って取り出したのは、まぎれもなくカメラだった。
予想外のカメラの登場に驚く欧我の顔を撮る小傘ちゃん。
すると、今撮った写真が現像されてカメラから出てきた。
こんなカメラがあるなんて…。
小傘
「私もまぶしい笑顔の写真が撮りたいの!だからお願い、私も連れて行って!」
欧我
「うん…。」
腕を組み、思案を巡らせる。
俺は写真屋としてやってはいるが、教えることは初めてだから上手く教えることはできるのだろうか…。
連れて行ってと言われたということは、俺に付いて一緒に各地を巡ることになる。
でも、そうなればこの子はまだ俺の知らない場所、行き方についても知っているということになるはずだ。
そうすれば俺の活動範囲も広まり、多くの写真が取れる…。
この子の力を活用すれば…。
うん。よし!
欧我
「わかりました。特別に助手として同行を許可します。」
小傘
「本当に!?ありがとう!!」
欧我
「うわ!」
欧我の返事を聞いた途端、小傘は欧我に抱き着いた。
そして何度も耳元で「ありがとう」の言葉を言う。
欧我
「しっ、しかしっ、写真を撮りに行くときに呼びに行きますのでそれまではここで待っていてくださいね。」
小傘
「うん、わかった!」
こうして、俺に頼もしい(?)助手ができた。
上手くやっていけるのか不安があったが、それよりもこの幻想郷を知っている子が仲間になったのは非常に心強い。
あ、俺も文さんの助手だった。
このことは文さんにしっかりと説明をしなければいけないな。
はあ…許してくれるのだろうか。