欧我
「わぁ!」
妖怪の山にも、こんなにきれいな場所があったんだ…。
俺は妖怪の山に住んでいるが、この山の事をまだ全然知らなかったんだな。
川に近づいて水の中に手を入れる。
欧我
「冷たっ!」
川の水はひんやりとしていて気持ちがいい。
だんだんと暑くなってくるこの季節にこの冷たさは最高だ。
帽子を脱ぎ、何度も水を顔にかける。
汗をかいていたし、体が火照って来ていたからさっぱりとすることができた。
小傘
「あ、師匠!滝があるよ!」
川の下流の方から小傘ちゃんの声が聞こえる。
滝?
とにかく行ってみよう。
欧我は帽子をかぶると小傘ちゃんの方に向かって駆け出した。
欧我
「すげぇ!」
こんな落差の滝があったなんて。
川の水は豪快な音を立てて真下に流れ落ち、水しぶきが舞っている。
そしてここからは幻想郷のほぼ全域を見渡す事ができる。
霧の湖やその畔に建つ紅魔館。
向日葵が咲き乱れる花畑に家が立ち並ぶ人間の里。
思わずカメラのシャッターを切る。
こんな光景初めて見た。
よし、ここでお昼にするか。
ちょうどお腹も減ってきたし、
欧我
「小傘ちゃん、少し休憩しますか。」
小傘
「休憩?うん、わかった。」
欧我は手ごろな大きさの石を見つけるとそれに腰を掛け、鞄からおにぎりが3つ入った包みを取り出す。
包みを広げてラップを取り外し、かぶりついた。
やっぱり、こう雄大な自然の中で食べるといつも以上においしく感じる。
小傘
「人間ってお腹が空くんだね。」
欧我
「そうだよ。小傘ちゃんは空かないの?」
小傘
「私は空くよ。でも、妖怪のほとんどは何も食べなくても生きていけるし、食事をとることもあまりしないんだよ。」
欧我
「そうなの?知らなかった…。」
でも、そう考えれば納得できるな。
なぜ文さんの家の冷蔵庫には食材がほとんどなかったのか…。
おにぎりを作るために必要な材料はかき集めて何とかできたけど、おかずはさすがに無理だったな…。
欧我
「でも、小傘ちゃんも妖怪だよね?お腹が空くって?」
小傘
「私は心を食べる妖怪だからね。でも、幻想郷の人間はだれも驚いてくれなかったからずっとお腹が減っていたの。」
欧我
「そうなんだ。小傘ちゃんにとって驚かすことは食事みたいなものか。」
小傘
「うん。でも、今は師匠が驚いてくれるからお腹も心もいっぱいよ。」
欧我
「そ、そっか…」
なんか照れる。
欧我はおにぎりの一つを持って小傘ちゃんの方に差し出した。
欧我
「食べる?口に合うか分からないけど。」
小傘
「ありがとう!」
小傘ちゃんはおにぎりを受け取ると、ラップをはがしてかぶりついた。
小傘
「ん!おいしい!」
よかった。
偶然賞味期限が切れていない卵があったからそれで煎り玉子を作ってごはんで包んだけど、味付けとか不安だったからな。
ってか、文さん鴉天狗だったよな?
この卵ってまさか…
いや、そんなはずはない。あるわけがない。
忘れよう、気にしないでおこう!
「ねぇ、私にも分けてくれる?」
そんな2人のもとに、1人の少女が現れた。