布団から出て会場に戻ってくると、驚いたことに宴会はまだ終わってはいなかった。
1日前と変わらずに酒を飲み、談笑しあい、追いかけっこを繰り広げている。
ほんとに、妖怪のスタミナはものすごい…。
神奈子
「お、起きたか。昨日の弾幕ごっこはすごかったわね。」
欧我の姿を確認すると、神奈子さんが話しかけてきた。
1日前と変わらない位置に座り、杯を片手に持っている。
しかも酔っている様子は見られない。
酒に神憑り的に強いな…。
神様だけに。
欧我
「神奈子さん、見ていたのですか?」
神奈子
「そうよ。最後の方はほぼ全員が観戦していたわ。」
欧我
「そうですか。なんか、全く敵いませんでしたが。」
神奈子
「そう気を落とさないで。十分戦ったわ。」
魔理沙
「そうだぜ。文相手にあそこまで追い詰めるなんてすごいぜ。」
欧我
「魔理沙さん。」
神奈子
「さあ、もう仕事のことは忘れて宴会を楽しんでちょうだい。」
欧我
「わかりました。」
欧我は加奈子さんにお礼を言うと、自分の席に腰を下ろす。
正直言うと、今空腹で死にそうだ。
丸1日なにも食っていないから当たり前だけど。
とにかくいっぱい食べてスタミナをつけないと。
昨日みたいに途中で気を失うわけにはいかないからね。
欧我は料理をさらに取り分けると、料理を口に入れる。
ん~、美味いっ!!
小傘
「美味しそうに食べるわね。」
欧我
「うん。だって美味しいんだもん。」
小傘
「じゃあ、私も食事してくるわ。」
食事?誰かを驚かすのかな?
ま、俺以外ならだれでもいいか。
欧我
「人を選んでやってね。人選を間違えるとえらいことになるから。」
小傘
「はーい。」
小傘ちゃんはそう言うと席を立ってあたりをきょろきょろ見回す。
そして手ごろな相手を見つけると、その方へと掛けていった。
そして湧き上がる悲鳴。
お、大ちゃんか。なかなかの人選だ。
でも、間違っても神奈子さんを驚かせないでくれよ。
夢中で料理を食べ続けている欧我の隣に、九尾を生やした女性が座った。
この人は八雲藍(やくも らん)さん。
八雲紫(やくも ゆかり)さんの式神だ。
欧我
「あ、藍さん。何か用ですか?」
そう聞くと、藍さんは顔を近づけ、欧我の耳もとで話し出した。
藍
「紫様からの伝言をお伝えします。」
その言葉を聞き、欧我の箸が止まる。
紫さんから?
確か、紫さんはこの幻想郷を取り囲む結界を立案・実行した妖怪だ。
そんな妖怪が俺に、伝言?
一体なんだろう…。
藍
「貴方の記憶をすべて取り戻せば、この幻想郷中を巻き込む異変が起こる。その時貴方は重大な決断を下すことになる。それを覚悟しておいてください。」
記憶をすべて取り戻すと、幻想郷に異変が訪れる…
その時に下す決断…
藍
「伝言を伝えたわ。それじゃあ…」
欧我
「藍さん。」
藍
「何かしら?」
欧我
「紫さんに伝言をお願いします。最初から覚悟はできている。この命を失うことになったとしても、俺は幻想郷を護ると。」
藍
「ふふふ。わかったわ。」
藍さんは立ち上がると、奥の方で眠っている橙(ちぇん)ちゃんの方に向かって歩いて行った。
ルーミア
「欧我―!噛ませて!」
うわっ!?
ルーミアちゃん、いつの間に?
欧我
「仕方ない。甘噛み以上は許さないからね。」
欧我の返事を聞くとルーミアちゃんは笑顔になり、俺の左前腕部に噛みついた。
もう、ここはルーミアちゃん専用みたいになっちゃった。
欧我は宴会の会場を見渡す。
そこには、たくさんの笑顔があった。
もし、本当に記憶が戻ったことによって異変が起こったとしても、俺は絶対にこの笑顔を護る。