パシャッ!
縁側に座り、カメラのシャッターを切る。
雲がまばらに浮かぶ青空。
俺は、空を飛んだんだ…。
今撮った写真を見て、空を飛んでいる時の感覚を思い返す。
俺の予想通り、俺の持つ能力が真似る力だとしたら、ここに住むすべての妖怪の能力を手に入れることだってできるのかもしれない。
それができれば、俺は幻想郷で最強の存在となり得るのだろうか…。
「いや、それは違う。」
どんな能力だろうと、しょせん本人の劣化コピー。
勝手に真似するのは本人に失礼だし、何より、人前で写真を食べたくない。
「おや?」
「ん?」
不意に聞こえた声。
文さんよりも、明るくて可愛らしい声。
その声のした方に顔を向けると、その少女と目があった。
「え?あなたは誰?」
「は?犬耳!?これは1枚撮らないと!」
カメラを構え、その犬耳少女に照準を合わせる。
「動くな!はいっチーズ!」
「は、はいっ」
パシャッ!
その少女は俺におびえながらも、可愛らしいポーズをとってくれた。
そして、写真を見て気づく。
この子、目に涙を浮かべている。
怖がらせちゃったのかな?
その後、二人で縁側に座り、自己紹介やおしゃべりをしながら文さんの帰りを待った。
この犬耳少女の名前は犬走椛(いぬばしり もみじ)。
文さんと同じ天狗の仲間で、白狼天狗と言うらしい。
主にこの山、妖怪の山と言うらしいが、ここに侵入者が来ないか見張っているそうだ。
そして、お勤めが終わって文さんとお茶を飲むためにここに来たというわけだ。
「それで、文さんとはどんな関係なんですか?」
「天狗の仲間で私の上司です。よくちょっかいをかけられて喧嘩に発展することがありますが、私は優しい文さんが好きです。」
「へぇ。それは、椛さん個人として?」
「え?いや!それは…。」
「おやぁ?顔が赤くなっているよ?」
「ちょっ、からかわないでください!」
可愛いなぁ、この子。ペットにしたいくらい。
でも、この子もれっきとした妖怪の一人。実力やその他諸々ではこの子には敵わないだろう。
その後、二人で冗談を言い合ったり、写真を撮りまくったりして、気が付けば太陽が傾いてきた。空が鮮やかなオレンジ色に包まれている。
「あ、帰ってきた!」
椛さんはそう言うと空の1点を見つめた。
俺も立ち上がって目線の先を見てみたが、そこにはただオレンジ色の空が広がるだけだった。
文さんの姿は全く見えない。
「俺には見えないな。椛さんは目がいいんですね。」
「ええ。私の能力は『千里先まで見通す程度の能力』。目が良いのは当たり前ですよ。」
「へぇー、素晴らしい能力ですね。羨ましいです。」
「えへへ。」
縁側に腰を下ろし、文さんの到着を待った。
その1分後、文さんは二人の目の前の地面に降り立った。