欧我
「嘘だろ、こんな事って…。」
滝の上にたどり着いた欧我は、あまりの惨状に言葉を失った。
妖怪の山の上空を除く幻想郷の全土を非常に分厚い雲が覆っている。
そしてそこから降り注ぐ雨によって川の水は茶色く濁り、氾濫を起こしているところもある。人間の里からは火の手が上がり、ところどころから煙が立ち上っている。森の木々は強風によって倒れ、火事を起こしているところもあった。
カメラを取り落し、がっくりと膝をつく欧我。
目の前で起こる惨劇にショックを受け、はらはらと涙を流す。
一体、なぜこんなことが…。
「ここにいましたか。」
そんな欧我のもとに何者かが現れる。
声がした方を見ると、そこには文さんが立っていた。
文さんの顔からは、笑顔が消えていた。
欧我
「文さん!?これはいったいどういうことですか!!」
文さんに詰め寄る欧我。
すると、大きなため息の後、文さんはこの原因を語りだした。
それを聞き、欧我は耳を疑った。
3週間前、妖怪の山の頂上付近から、巨大な岩が発掘された。
不思議なことに、この岩は完全な球体をしており、表面はつるつるとしていてなめらかだ。
この岩を調べてみると、岩の内部にとてつもないエネルギー体が閉じ込められていることが分かった。
エネルギー体を取り出して活用すれば、天狗の地位向上や山の工業化が可能になる。
このエネルギーの封印を解くには、太陽の強力な光線が必要だということが分かり、河童たちに命じて太陽を山の上空にとどめることができる機械を作らせた。
1週間後、機械は完成したが、太陽を一点に留めることは不可能だった。
しかし、太陽の強力な光線を山に集中させることはできたらしい。
だが、天候を左右してしまうほどの力を秘めたその機械には、大きな副作用があった。
太陽の光を一転に集中させた結果、妖怪の山以外の場所に分厚い雲が発生し、嵐を引き起こしたというのだ。
欧我
「そんなことがあったなんて…。なぜ、そのようなことをする必要がある!」
文
「詳しいことは言えません。ただ、上からの命令なんです。」
欧我
「上?」
本に書いてあった。
天狗と言う種族は個々の力や団結力が強い。
そのため、組織的で縦社会だ。
つまり、上の命令には逆らえない。
欧我
「でも、幻想郷中がこんな状況で、みんなを助けたいと思わないのですか!?」
文
「もちろん思います。」
欧我
「だったら何故!」
文さんは欧我の言葉を遮ると、首を横に振ってから言った。
文
「組織に属するってのは、自分の意思だけでは動けなくなるって事よ。」
そんな…。
がっくりと肩を落とす。
天狗について、あまり理解できていなかった。
文
「欧我。貴方にお願いがあるのですが…。」
しばらくの沈黙の後、ためらいながらも文さんは切り出した。
顔を上げると、非常に悲しそうな文さんの顔がそこにあった。
文さんのこんな顔は見たことが無い。
その後、文さんの頼みを聞かされる欧我。
その内容に驚いたが、それと同時に決意もできた。
文さんのため、この命を懸けてでも成功してみせる。