~欧我視点~
文さんの家を目指しながら、ついさっき聞かされたことを思い返す欧我。
あんな顔を見たのは、これが初めてだった。
普段の笑顔は消え、悲しみと苦しみに覆われた表情を見て、胸が張り裂けそうだ。
でも、文さんの悲しみを無くしたい、苦しみから救ってやりたいという気持ちが同時に溢れてきた。
おそらく、これが文さんのために自分ができることだと思う。
文さんに救っていただいたこの命。
この命を懸けてでも必ず成功させてみせる。
そのためには…。
非常に言いにくいけど、仕方ないよね。
~文視点~
引き受けてくれたはいいものの、正直不安が残る。
本当にこれでよかったのでしょうか…。
今朝、大天狗様から命じられた内容を思い返す。
この命令を聞いた時、胸がつぶれる思いがした。
文
「そんな!?そんなことできません!」
「すまない。この計画を成功させるためにはあの人間にも戦ってもらわなければならない。」
文
「ですが、あの子は人間です!天狗ではありません!」
「だから、強制ではないと言うておる。嫌だと言えば安全な場所へ移動してもらうが。とにかく、あの人間にこのことを伝えてくれ。」
文
「…はい。」
部屋から出ると、自然と涙があふれてきた。
どうしてこのようになってしまったのだろうか…。
このことをわざと欧我に伝えないという手もある。
しかし、上の命令には逆らえない。
山を飛び回っていると、滝の上にいる欧我の姿を見つけた。
幻想郷で起こっている惨状を見て衝撃を受けているようですね。
文
「ここにいましたか。」
声に気づき、欧我は私の方を向いた。
涙を流し、とてもつらそうな表情を浮かべていた。
欧我のそんな顔を見たら、こちらも悲しくなってくる。
本当は、笑顔で話しかけようとしていたのに…。
欧我には知ってもらう必要がある。
全てを知ったうえで、決断を下してほしいから。
私は欧我に計画の内容を話した。
やはり、欧我は受け入れることができないようだ。
私は幻想郷が大好きだ。
だから、大好きな場所がこのように悲惨な状況に陥っているのは耐えられない。
欧我の言うとおり、今すぐにでも救助に向かいたい。
しかし、今の私にはできなかった。
文
「組織に属するってのは、自分の意思だけでは動けなくなるって事よ。」
この言葉は以前も使ったことがある。
天狗と言う種族は結束がいい半面、自由に行動することができない。
私の言葉にショックを受けたのか、がっくりと肩を落とす欧我。
今の状況で、あの事を言い出すことができず、しばらく沈黙が続いた。
文
「欧我。貴方にお願いがあるのですが…。」
欧我は何も言わず顔を上げた。
文
「この場所で、戦ってください。計画を成功させるために、誰も通さないように。」
欧我
「へ…?」
文
「もし嫌なら嫌で結構です。ですが…。」
欧我
「わかりました、戦います。」
文
「え…?」
欧我の口から、全く予想外の返事が飛び出した。
欧我
「文さんの頼みなら、喜んで引き受けます。」
欧我は、こんなお願いを快く引き受けてくれた。
そんな欧我に私は、ただお礼を言うことしかできなかった。
私は欧我に逃げてほしかった。
ただ、それだけだったのに…。