ゆっくりと目を開ける…。
俺は、生きている?
ここは…?
和室の中、畳に敷かれた布団の中で眠っている。
このシチュエーションはもう3回目だよな。
そして鼻を突く薬品のにおいが漂っている。
耳を澄ましても、屋根を打つ豪雨の音も、唸る雷の音も聞こえない。
おそらく、もう異変は解決されただろう。
文さんは無事だろうか…。
それよりも、ここはまさか。
「あら、おはようございます。気分はどうですか?」
欧我のいる部屋の襖を開けて入ってきた女性。
足元に届きそうなほど長い髪に、ウサギの耳、女子高生の制服ような格好。
その女性が現れたことによって欧我の予想が的中したことが分かった。
ここは、永遠亭だ。
それによく見たら、体中に包帯を巻かれている。
痛みはもう全く感じない。
欧我
「ああ、鈴仙(れいせん)さん。ええ、気分はよくなりました。ありがとうございます。」
永遠亭に来るのはこれで2回目だ。
2週間前の迷いの竹林のウサギの生態調査に来た時にお世話になっている。
確かこの時永琳(えいりん)さんから変な薬を飲まされそうになったっけ。
鈴仙
「でも無理をしてはいけませんよ。はい、薬です。一気に飲んでください。」
そう言って手渡された湯呑には、黒く濁った液体がなみなみと注がれている。
特に鼻を突くにおいは感じられない。
無臭っていうのが、逆に不気味だ…。
これ、変な副作用とかないよな?
鈴仙
「どうしました?元気が出ますよ?」
ためらっている欧我を見て、鈴仙さんは笑顔で笑いかける。
いや、得体のしれない物を飲めと言われても…。
欧我
「仕方ない、月の頭脳を信じよう。」
欧我は湯呑の縁に口をつけ、一気に飲み干した。
…あれ?意外と苦くない。
色の割に、シロップのような甘い味がするんだな。
欧我
「これ、何が入っているのですか?」
鈴仙
「これはですね、シロップをベースに…。」
そして鈴仙さんの口から飛び出す想像を絶する材料の名前。
一見食べられそうもない物がほとんどを占めていた。
それを聞いて気分が悪くなった。
聞かなきゃよかった…。
しかし、さすがは月の頭脳と呼ばれる永琳さんが作った薬。
飲んだ瞬間から力が湧いてきて、手足の感覚もよくなってきた。
欧我
「ありがとうございます。」
欧我は鈴仙さんに空っぽの湯呑を返す。
鈴仙さんはそれを受け取ってお盆の上に乗せた。
鈴仙
「では、こちらに来てください。朝食をご用意しております。」
欧我
「朝食…ですか?」
ぐぅー。
朝食と聞いた途端、お腹の虫がうなり声を上げた。
思わず両手で顔を覆う欧我。
鈴仙
「さすが師匠の作った薬です。まさかそちらまで元気になるなんて。それでは、ついて来てください。」
布団から立ち上がり、鈴仙さんの後について長い廊下を歩いて行く。
外から差し込む光がまぶしく、腕で顔を覆う。
晴れている…。
あれからどれくらいの時間がたったのだろうか。
欧我
「今、何時ですか?」
鈴仙
「今は朝の7時20分です。」
わぁ、なんという健康的(?)な時間。
昼まで寝ているよりはましだよね。
1人でそのようなことを考えながら歩いていると、鈴仙さんが障子の前で立ち止まる。
この部屋が、食堂なのだろうか。
障子を開けて部屋の中に入ると、すでに3人が席に座っていた。