霊夢
「ほらほら!もっと酒を持ってきなさい!」
椛
「は、はい!」
博麗神社の一室に霊夢の怒号が響き渡る。
異変解決の宴会は、鶴ならぬ鬼の一声により予定よりも早まって開始された。
酒や料理は全て天狗や河童など、この異変に加担した者が用意したものだ。
部屋の中だけではなく、もちろん外にも大勢の人が集まっている。
そんな中、1人不機嫌そうに酒を飲む女性が1人。
はたて
「どうして私まで酒を用意しなければいけないの?私は無関係よ?そうでしょ、文。」
姫海棠はたてだ。
今回の異変に加担していないにもかかわらず、酒やら料理やらの準備を手伝わされたことに不満を感じている。
文ははたてを一瞥すると、再び視線を地面に落とす。
はたて
「ねえ、文ってば!」
早苗
「まあ、今はそっとしておきましょう?」
小傘
「それに、あなたも鴉天狗でしょ?」
そんな2人のもとに、早苗と小傘がやってきた。
小傘は首からカメラを提げ、この宴会の様子を写真に収めていた。
早苗
「だって、最愛の人がここにいないのですから。」
文と欧我がお互いを好きなことは、霊夢が酒の勢いで大声で暴露してしまい、今会場に集まっている人全員が知っている。
そのせいで、霊夢と小傘は質問攻めにあってしまった。
はたて
「意外よね、文が人間を好きになるなんて。だからそんなに落ち込んでいるの?」
文
「はい…。」
文が発する声には元気がなかった。
文
「私のせいで欧我が大怪我を。今無事かとても心配で。」
はたて
「でも欧我は今永遠亭にいるんでしょ?永琳のところなら無事よ。」
文
「そうですが、今ここに欧我が現れたら、どんな顔をしていいか分からなくて…。」
「だったら、笑顔でいてください。」
小傘
「あ、欧我ー!!」
小傘の声に反応し、顔を上げる文。
その目線の先には、欧我の姿があった。
腕に包帯を巻き、ピンクのズボンをはいてはいるが、まぎれもなく欧我だった。
~欧我視点~
欧我
「だったら、笑顔でいてください。」
俺の声に反応し、文さんが顔を上げた。
涙を流し、落ち込んでいる様子だったが、俺の顔を見たら笑顔になってくれた。
良かった、無事だったんだね。
文
「欧我!!」
欧我
「うわっ、ちょっと…」
突然文さんに抱き着かれた。
いきなりの事で動揺したが、俺も文さんを抱きしめる。
心臓がどきどきして鼓動が早くなる。
文
「無事でよかった。ごめんなさい、私のせいで。」
欧我
「いえ、俺こそごめんなさい。文さんの気持ちに気づくことができず。」
欧我は、永遠亭でてゐちゃんからされたアドバイスを思い出す。
~~~~~
てゐ
「だったら行動に起こしなよ。キスしちゃえ、キス!」
欧我
「ええ!?そんな…。」
てゐ
「もう、男らしくしなさいよ。」
欧我
「じゃあ、てゐちゃんの『人間を幸運にする程度の能力』で力を貸して。」
てゐ
「いいけど、幸福は自分でつかみ取るものだよ。」
欧我
「むぅ~。」
~~~~~
よし、やるしかないか。
欧我
「あの…文さん。」
抱き合ったまま、見つめあう二人。
あまりにも顔が近かったので、欧我は赤面して思わず顔をそらす。
文
「なんですか?」
文さんは笑顔のままだ。
欧我
「あ、あの…俺、文さんのこと…す…」
ドキドキが激しくて、なかなか「好きだ」という言葉を発することができない。
幸福をつかみ取るんだろ!キスをするんだろ!
そう自分を奮い立たせる。
よし!
文
「欧我。」
欧我
「文さ…!?」
名前を呼ばれ、文さんの顔を見上げた次の瞬間、俺の言葉は文さんの唇によってさえぎられた。
唇に感じる、文さんの温もり。
思わず目を見開く欧我。
欧我
(え?え?今、キスされている!?文さんから!?)
唇が離される。
今、欧我の顔はこれ以上ないくらい赤くなっている。
文さんも、赤面しているようだった。
文
「私も、好きですよ。」
欧我
「文さん…!」
(まあ、いいか。)
文さんの首に手を回し、今度は俺から唇を重ねた。
こうして、後に『永嵐異変』と呼ばれる異変は幕を閉じた。
その後、欧我の予想通り文々。新聞の号外が出された。
一面に文さんとのキスを写した写真がでかでかと掲載されており、見出しには大きく『彼氏ができました』と書かれていた。
どうやら、2人のキスシーンを小傘ちゃんにとられていたらしい。
っていうか、こんな記事を作ってしまうとは。
これが、新聞記者の性というかなんというか…。
まあ、いっか。
これからも、文さんと共にこの幻想郷を生き抜いて行こう。
文
「欧我ー、取材に行くわよ!」
欧我
「はーい!」