幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

69 / 157
終焉 ~キス~

 

霊夢

「ほらほら!もっと酒を持ってきなさい!」

 

 

「は、はい!」

 

 

博麗神社の一室に霊夢の怒号が響き渡る。

 

異変解決の宴会は、鶴ならぬ鬼の一声により予定よりも早まって開始された。

酒や料理は全て天狗や河童など、この異変に加担した者が用意したものだ。

 

部屋の中だけではなく、もちろん外にも大勢の人が集まっている。

 

 

そんな中、1人不機嫌そうに酒を飲む女性が1人。

 

 

はたて

「どうして私まで酒を用意しなければいけないの?私は無関係よ?そうでしょ、文。」

 

 

姫海棠はたてだ。

今回の異変に加担していないにもかかわらず、酒やら料理やらの準備を手伝わされたことに不満を感じている。

 

文ははたてを一瞥すると、再び視線を地面に落とす。

 

 

はたて

「ねえ、文ってば!」

 

 

早苗

「まあ、今はそっとしておきましょう?」

 

 

小傘

「それに、あなたも鴉天狗でしょ?」

 

 

そんな2人のもとに、早苗と小傘がやってきた。

 

小傘は首からカメラを提げ、この宴会の様子を写真に収めていた。

 

 

早苗

「だって、最愛の人がここにいないのですから。」

 

 

文と欧我がお互いを好きなことは、霊夢が酒の勢いで大声で暴露してしまい、今会場に集まっている人全員が知っている。

 

そのせいで、霊夢と小傘は質問攻めにあってしまった。

 

 

はたて

「意外よね、文が人間を好きになるなんて。だからそんなに落ち込んでいるの?」

 

 

「はい…。」

 

 

文が発する声には元気がなかった。

 

 

「私のせいで欧我が大怪我を。今無事かとても心配で。」

 

 

はたて

「でも欧我は今永遠亭にいるんでしょ?永琳のところなら無事よ。」

 

 

「そうですが、今ここに欧我が現れたら、どんな顔をしていいか分からなくて…。」

 

 

 

 

 

「だったら、笑顔でいてください。」

 

 

小傘

「あ、欧我ー!!」

 

 

小傘の声に反応し、顔を上げる文。

 

その目線の先には、欧我の姿があった。

腕に包帯を巻き、ピンクのズボンをはいてはいるが、まぎれもなく欧我だった。

 

 

 

 

 

~欧我視点~

 

 

欧我

「だったら、笑顔でいてください。」

 

 

俺の声に反応し、文さんが顔を上げた。

涙を流し、落ち込んでいる様子だったが、俺の顔を見たら笑顔になってくれた。

 

良かった、無事だったんだね。

 

 

「欧我!!」

 

 

欧我

「うわっ、ちょっと…」

 

 

突然文さんに抱き着かれた。

いきなりの事で動揺したが、俺も文さんを抱きしめる。

 

心臓がどきどきして鼓動が早くなる。

 

 

「無事でよかった。ごめんなさい、私のせいで。」

 

 

欧我

「いえ、俺こそごめんなさい。文さんの気持ちに気づくことができず。」

 

 

欧我は、永遠亭でてゐちゃんからされたアドバイスを思い出す。

 

 

~~~~~

 

てゐ

「だったら行動に起こしなよ。キスしちゃえ、キス!」

 

 

欧我

「ええ!?そんな…。」

 

 

てゐ

「もう、男らしくしなさいよ。」

 

 

欧我

「じゃあ、てゐちゃんの『人間を幸運にする程度の能力』で力を貸して。」

 

 

てゐ

「いいけど、幸福は自分でつかみ取るものだよ。」

 

 

欧我

「むぅ~。」

 

~~~~~

 

よし、やるしかないか。

 

 

欧我

「あの…文さん。」

 

 

抱き合ったまま、見つめあう二人。

あまりにも顔が近かったので、欧我は赤面して思わず顔をそらす。

 

 

「なんですか?」

 

 

文さんは笑顔のままだ。

 

 

欧我

「あ、あの…俺、文さんのこと…す…」

 

 

ドキドキが激しくて、なかなか「好きだ」という言葉を発することができない。

幸福をつかみ取るんだろ!キスをするんだろ!

そう自分を奮い立たせる。

 

よし!

 

 

「欧我。」

 

 

欧我

「文さ…!?」

 

 

名前を呼ばれ、文さんの顔を見上げた次の瞬間、俺の言葉は文さんの唇によってさえぎられた。

唇に感じる、文さんの温もり。

 

思わず目を見開く欧我。

 

 

欧我

(え?え?今、キスされている!?文さんから!?)

 

 

唇が離される。

今、欧我の顔はこれ以上ないくらい赤くなっている。

 

文さんも、赤面しているようだった。

 

 

「私も、好きですよ。」

 

 

欧我

「文さん…!」

(まあ、いいか。)

 

 

文さんの首に手を回し、今度は俺から唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

こうして、後に『永嵐異変』と呼ばれる異変は幕を閉じた。

 

 

その後、欧我の予想通り文々。新聞の号外が出された。

一面に文さんとのキスを写した写真がでかでかと掲載されており、見出しには大きく『彼氏ができました』と書かれていた。

 

どうやら、2人のキスシーンを小傘ちゃんにとられていたらしい。

っていうか、こんな記事を作ってしまうとは。

これが、新聞記者の性というかなんというか…。

 

 

まあ、いっか。

これからも、文さんと共にこの幻想郷を生き抜いて行こう。

 

 

「欧我ー、取材に行くわよ!」

 

 

欧我

「はーい!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。