あれからどれくらい落ちて行ったのだろうか。
こう真っ暗な闇の中にいると、時間という概念がなくなってくるように感じる。
にとりさんが用意してくれたランタンが無ければ、お互いの顔を見ることはできなかっただろう。
この感じ、以前ルーミアちゃんの能力を真似て闇を展開させたときに似ている。
欧我
「ところで、ここにはどんな妖怪がいるのですか?」
文
「ここは別名旧地獄と言いまして、ここに住む妖怪には様々なものがいます。地底で生まれた者や、地上から移住してきた妖怪、忌み嫌われて封印された妖怪と、地霊と、この地に蔓延る亡者の怨霊などです。」
小傘
「あれ?師匠、いつものメモは?」
欧我
「なぜか地下世界に関する記述が少なくて、詳しくはわからないんだ。だから、覚えられなくて。こんな暗闇でメモを見るのは億劫だし。」
にとり
「だったら、新製品があるよ?これで手元を照らせばいい。」
そう言って手渡されたのは、懐中電灯だった。
ああ、外の世界では一般的…あれ?
これ、キュウリに電極が刺さっているよ?
まさか、食べられる電池!?
河童の科学ってスゲー。
でも、これならメモの小さい字も見ることができる。
「おや?楽しそうな御一行だね!」
小傘
「なんか来た!?」
そんな4人の前に、第一地底人が現れた。
金髪のポニーテールに茶色の大きなリボン。
黒い上着にこげ茶色のジャンパースカートといった感じの格好だ。
よく見ると、スカートの中から糸が飛び出し、逆さ吊りになっている。
・・・どこから糸が出ているのかは、気にしないでおこう。
「おかしいわね、あんた人間でしょ?」
その少女は欧我の方に手をかざしたまま、不思議そうな顔をしている。
欧我
「ええ、確かに人間ですが、どうしたのですか?」
「さっきからウィルスを送っているのにまったく効果が現れないの。」
なに初対面でいきなりえげつない事をやっているの!?
…でも、それなのに一向に効果が現れないのはさっき飲んだ薬のおかげかな?
飲んどいて本当に良かった。
欧我
「文さん、この人は?」
文
「この子は黒谷(くろだに)ヤマメ、土蜘蛛の妖怪よ。『病気を操る程度の能力』を持っているわ。それで出会った人間にさっきのようにウィルスを感染させているの。それに、地底のアイドルだって評判よ。」
ヤマメ
「アイドル!?」
欧我
「ああ、確かにそう言われてみれば、かわいい顔をしているね。」
ヤマメ
「か、かわいい!?」
見る見るうちに顔が赤くなっていくヤマメちゃん。
よし、ここは少し勢いに任せてみるか。
欧我
「そんなアイドルのあなたにお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
ヤマメ
「や、やめてください。アイドルなんてそんな…。」
その後、文さんも加わって褒めながら取材と写真撮影の交渉を進めていく2人。
その様子を離れたところから眺める小傘ちゃんとにとりさん。
小傘
「師匠、すごい…。」
にとり
「あれは褒め倒しと言って、文の得意とする取材術の一つだが、まさか欧我までそれをやってのけるとは。さすがだねぇ。」
20分後…。
欧我
「ありがとう、いい写真が取れた。」
ヤマメ
「いいのいいの。私も楽しかったからさ。」
あれから勢いに任せて褒めまくってみたけど、まさかこんなにも写真を撮らせてくれるなんて。
勢いってすげぇなぁ。
文さんの方も収穫があったようだ。
手帳を見てうんうんと頷いている。
ヤマメ
「あ、そうだ!一緒に写真を撮ってほしい人がいるの!」
欧我
「一緒に撮ってほしい人…ですか?」
ヤマメ
「うん、こっち!」
ヤマメちゃんはそう言うと穴の下へとスピードを上げた。
欧我
「うわっ!!」
文
「きゃ!?」
それと同時に引っ張られる俺と文さんの体。
よく見ると体中に蜘蛛のような細い糸が巻き付いている。
その糸はヤマメちゃんの指から出ているようだ。
小傘
「師匠!!」
欧我
「ごめん、全速力でついて来て!!」
にとり
「ああ、もう!行くよ!」
小傘
「うん!!」