にとり
「遅いねー。」
そう言うとスプーンで器に残った氷をすくう。
やっぱり暑いときにはかき氷だよね。
文
「大丈夫でしょうか…。」
ふと隣の文を見ると、さっきから氷にスプーンを突き刺してばかりでちっとも食べようとしていなかった。
かき氷がほとんど溶けてきたというのに。
欧我達がいなくなってからというもの、ずっとこんな調子だ。
すると、不意に文が顔を上げた。
私も反応を起こす。
なぜなら、欧我の声が聞こえたからだ。
欧我
「あの、下ろしてくださいよ。恥ずかしいです。」
小傘
「あははっ、師匠だらしないわね。あんなに意気込んでいたのに。」
勇儀さんの肩に担がれ、意気消沈の俺を見て、小傘ちゃんは可笑しそうに笑い声をあげる。
まあでも、小傘ちゃんが無事でよかった。
萃香さんがやけに落ち込んでいるのが、少し気になるけど。
勇儀
「まあ、あいつらのところまで戻ったら下ろしてあげるよ。それまでは我慢しな。」
欧我
「これ、結構スタミナを使うんですよね…。」
ああ、だんだん疲れてきた。
一定の温度を維持するのにも神経を使うんだよね。
はぁ…。
そんな状態のまま、大通りに続く路地を抜けた。
文さんは、そばのベンチに座ってこちらを見つめていた。
そして、俺の姿を確認するなり…。
文
「欧我ー!」
ベンチから飛び上がって、こっちに向かって走ってきた。
ようやく勇儀さんから解放され、文さんを抱きしめる。
欧我
「ただいま帰りました。」
文
「よかった…心配していたんだから。」
抱き合う2人を見て、勇儀さんが言った。
勇儀
「抱き合っているところ悪いが、欧我との勝負は私の勝ちだ。」
にとり
「そっか…。」
文
「でもいいです。こうして無事に帰って来てくれて。」
勇儀
「まあ待て。私は勝ったが、萃香の方は小傘が勝ったそうじゃないか。鬼は約束を破らない。だから、ここを通ってもいいぞ。」
勇儀さんの発言を聞き、途端に笑顔になる文さんとにとりさん。
小傘ちゃんは、俺たちに向けてピースサインを繰り出す。かわいらしいウィンク付きで。
勇儀
「私たちは無事に取材が成功することを祈るよ。そういえば、地霊温泉の取材だったよな?私たちも後でそこに行くから、またみんなで宴会をやろう!」
そう言うと俺たちに手を振り、一言も発しなかった萃香さんを連れて路地の奥に消えていった。
勇儀さん、ちょっと豪快だったけど、優しいお姉さんみたいな感じでよかったな。
…あ、写真を撮ってない!!
しまった…。
ふと文さんの顔を見ると、少しひきつっているようだ。
にとりさんも、なんか絶望と言うかそんな雰囲気を醸し出している。
欧我
「どうしたのですか?宴会ぐらい楽しくいきましょう。」
文
「欧我…。鬼の宴会をなめたらとんでもないことになるわよ。」
欧我
「はぁ…。」
小傘
「ま、私は楽しみだけどな。さっそく行きましょう!温泉でのんびりするよー!」
そんな2人をよそに、小傘ちゃんは楽しそうにスキップをしながら歩き出した。
俺たちもその後に続いて歩き出した。
10分後、4人の目の前に巨大な洋館が現れた。
ついに、地霊殿に到着した。