カポーン…
欧我
「はぁ~…」
気持ちいい。
ここは旧地獄なのに、まさに天国のような場所があったんだなぁ。
新しくできた温泉は、露天風呂になっている。
周りから竹垣で遮断された風呂は広く、周りを大きな石で囲まれていた。
お湯の温度は43℃。
少し熱めになっている。
お湯は白く濁っていて、見た目の割にさらさらとした肌触りだ。
効能は切り傷に慢性皮膚炎、火傷に動脈硬化、そして弾幕による傷など。
今、男湯には俺一人。ほかには誰もいない。
大体の作りは女湯と同じだが、男湯には打たせ湯があり、女湯には洞窟が作られその中にも温泉があった。男湯と女湯は一日ごとに交代するというシステムになっている。
…え?女湯の場所?
竹垣を挟んだ向こう側。
さっきから勇儀さんの豪快な笑い声や、小傘ちゃんと萃香さんの話し声、そして文さんとにとりさんの声も聞こえる。かなりにぎやかだな。
そうそう、勇儀さんの声が聞こえて分かったんだが、この温泉は酒の持ち込みがOKなのだそうだ。
勇儀
「どうだい欧我!」
欧我
「最高です!気持ちいですよ!」
お湯に肩までつかり、四肢を大の字のように大きく広げる。
誰もいないから、大きなポーズが取れる。
お湯の中から出て、打たせ湯の方に歩いて行く。
ま、誰もいないからタオルで隠さなくてもいいか。
頭上から落ちてくる湯に当たりながら、今日の攻略法によって感じた罪悪感を水に流す。
あぐらをかき、へその前で両手を組む。
首筋に湯を受けながら、何も考えず、ただ、無意識に…。
カツン…
カツン…
ん?
何かの音が聞こえる。
女湯から聞こえる文さんたちの話し声とも、俺の体を打ち付けるお湯の音とも違う。
まるで、石の上を靴で歩くような…。
でも、ここは温泉。
普通は靴を脱ぐだろうし、今この男湯には俺一人だけしかいない。
それなのに…いったい誰が?
薄目を開けて、音のした方を見る。
黒い靴が見えた。
両足の靴には紫色のハートがあり、そこから1本ずつ管が出て上に向かっている。
上の方に視線を移していく。
濃い緑色のスカートに水色のひし形をした3つのボタンがついた黄色の上着。
さとりさんのような第三の目が左胸辺りに浮かび、管がつながっている。その目は青色で、閉じていた。
そして、薄く緑がかった灰色のセミロングに黒い帽子をかぶった少女が、緑色の瞳でこちらをじっと見つめていた。
…ん?少女?
欧我
「うえぇぇぇ!?い、いつの間に!?」
慌ててタオルで腰の前を覆った。
「あれ?私が見えているの?」
ブンブンと何度もうなずく。
「そっかぁ。私は古明地こいし。いつの間にって、さっきからいるわ。ずっとそばで見ていたのに、気付かなかったから面白くて。」
その少女、こいしという名前だそうだ。
ってことは、さとりさんの妹だ。
以前はさとりさんと同じく心が読めたが、そのことによって嫌われたからサトリの目を閉ざした。
その結果『無意識を操る程度の能力』を手に入れた…と文さんが教えてくれた。
今まで気が付かなかったのも、その能力を使って俺の無意識に働きかけてきたからだろう。
欧我
「ずっと見ていたって…まさか。」
こいし
「そう、あなたが勇儀たちと別れてからずっとついてきたわ。それよりも、あなたのような人間を見るのは珍しいわ。もっと見せて頂戴。」
欧我
「…え?」
そしてこいしちゃんの目線は下に移動し、腰を覆っているタオルに移った。
こいし
「男って、面白いものがついているのね。お姉ちゃんにはなかったわ。もっと見せて。」
欧我
「ダメです!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突然、女湯の方から小傘ちゃんの悲鳴が聞こえた!!