~文視点~
文
「はぁ…。」
身体の痺れは回復し、指も動くようになってきた。
まさか、入浴中に妖怪に襲われるなんてね。
それよりも、欧我は大丈夫かな?
目の前の布団に包まれ、気を失った状態で横たわっている。
あれからもう20分は経つだろうか。
さとりさんに怒りの弾幕を撃ち込まれ、このような状態になってしまった。
手当ては済んだけど、私がこんな攻略法を考え、実行させたばっかりに欧我に大怪我を負わせてしまった。
でも、欧我のあの言葉はうれしかった。
私たちのために妖怪に攻撃し、守ってくれた欧我。
欧我の放ったあの言葉は、当分忘れることはできないだろう。
欧我
「俺の文に、手ぇ出そうとしてんじゃねぇよ!!」
この言葉を聞いた時、非常に頼もしく感じた。
欧我と出会ってまだ3か月ぐらいしか経っていないのに、外来人の人間がここまで成長するなんて。
そして、そんな人間に恋心を抱いた自分がいる。
それに、ここを去る時にさとりさんが言った言葉も忘れられない。
さとり
「最後にいいことを教えてあげる。欧我さんの心の中には、あなたへの愛がたくさん詰まっているわ。私の時とは大違いよ。」
欧我。
本当に、
文
「ありがとう。」
欧我の顔に自分の顔を近づけ、そっとほっぺにキスをする。
気のせいかな?欧我が少し笑ったような気がする。
さあ、欧我が目覚めたら取材再開よ。
そのために準備をしなくちゃ。
優しく欧我の頭をなでると、立ち上がって小傘さんたちがいる部屋へと向かった。
~欧我視点~
わぁ、キスされちゃったよ。
思わずにやけちゃったけど、すでに起きていることに気づかれたかな?
さらに頭をなでてもらえたなんて。
幸せだなぁ…。
目が覚めると和室の中、布団に包まれている。
もう、こんなシチュエーションが何回あったのかなんて覚えていない。
まあいっか。
少し痛むし、もう少ししたら文さんたちのところへ行こう。
~20分後~
ここが、灼熱地獄跡…。
地霊殿の中庭にぽっかりと空いた大きな穴。
中は真っ赤に輝いていて、非常に暑そうだ。
本当に、ここに飛び込むというの?
布団から出て文さんたちのいる部屋に向かうと、さっそく取材に行くと言われた。
まだ腕に包帯を巻いてはいるが、痛みは和らいだからもう大丈夫だ。
文さんからはものすごく謝られたけど、それはもう気にしていない。
だって、文さんが無事だったのなら、それだけで十分なのだから。
温泉を後にした俺たちは、二手に分かれることにした。
灼熱地獄跡にいる、核融合を操る鴉の取材に俺と文さんチーム。
核融合によって発生した熱を利用してエネルギーを生み出す施設の見学ににとりさんと小傘ちゃんチーム。
お互い、ベストを尽くそう。
文
「さあ、行きましょう!」
欧我
「ええ、焼き鳥にならないように注意しないとね。」
文
「欧我…。縁起でもないことを言わないの。」
そう言うと文さんは穴に飛び込んだ。
深く深呼吸をすると、文さんを追って穴に身を投じた。