文
「今日は、いろいろとありがとうございました。」
さとりさんたちに向かって頭を下げる文さん。
俺達も、それに続いてお礼を言った。
今回の地霊温泉の取材に関する大まかな記事が出来上がるのに1時間半も費やした。
それだけ、今回の取材で得た情報はかなりのものだということだ。
さとり
「ええ。いい記事が書けるといいわね。」
お礼に対して、さとりさんは笑顔で応えた。
その隣にはこいしちゃんとお燐さん、空さんもいた。
お燐
「あたいもよく地上に行くから、その時はよろしくね。」
にとり
「もちろんさ。こちらこそ頼むよ。」
空
「うにゅ~、また来てね。」
小傘
「うん!また来る!」
それぞれが別れの言葉を口にする中、こいしちゃんは黙って俺の顔を見つめていた。
俺も、笑顔でこいしちゃんを見つめ返す。
時が止まったかのように、2人はしばらく見つめあっていた。
こいし
「ありがとう、楽しかった。」
こいしちゃんの発言に驚いたのは、姉であるさとりさんだった。
俺はさとりさんの部屋で二人きりで話し合っていた時に、不意にさとりさんが妹に対する不安をつぶやいていたことを思い出した。
こいしちゃんは心を固く閉ざしているので、姉であるさとりさんでも心を読むことができない。だから、今こいしちゃんが何を考えているのかを知ることができないのだそうだ。
こいしちゃんが言うには、感情なんて元より存在しないらしい。
さとり
「そう、よかったわね、こいし。」
さとりさんは驚いた様子を見せたが、笑顔になってこいしちゃんの頭をなでる。
そして欧我の方を向いて言った。
さとり
「こいしちゃんが貴方に興味を持つなんて。貴方には不思議な魅力があるのかもね。」
欧我
「魅力…ですか?」
さとり
「そう。その魅力があるから、妖怪たちに好かれるのかもしれないわね。だからあなたに対してみんなきれいな笑顔を見せてくれる。妖怪の恋人ができたのも頷けるわね。」
さとりさんの言葉を聞き、恥ずかしいような嬉しいような気持ちになる。
俺に、そのような力が秘められているなんて今まで気が付かなかった。
そんな俺の肩に、文さんがそっと優しく手を置いてくれた。
ふと文さんの顔を見ると、文さんは笑顔で笑い返してくれた。
さとり
「こいしはその魅力に惹かれたのね。そしてもちろん、私たちも。だから、またいつでも来なさい。歓迎するわ。」
欧我
「さとりさん…。はい、ぜひ!」
真っ暗な穴の中を地上を目指しながら登っていく間、俺はさとりさんから言われたことを思い返していた。
まさか、俺にそのような魅力があったなんて…。
欧我
「魅力…ねえ。」
文
「そうですよ。私たちは、その魅力に惹かれたのかもしれませんね。」
にとり
「うん。それはどんな機械を用いても解明することはできないよ。」
小傘
「私も師匠が大好きです!」
3人からそう言われ、思わず顔をそらす。
面と向かってこのようなことを言われると、ものすごく照れてしまう。
ほんとうに、幸せに感じる。
俺も、みんなのことが大好きだよ。