キノ「…ここ、ですか?」
ユーリ「…あぁ、そうだ」
やっとこさ目的の国についたキノ達。その2人が入り口で目にしたものは、やたらとガラの悪い門番であった
門番「よぉ、入国を希望か?」
ユーリ「そうだ」
門番はそれを聞くとニヤニヤしながら数人がかりでキノ達をジロジロと見る
門番「…ふーん、まぁいい。ほら、これが番号だ。奥が控室になってるからそこで順番が来るまで待ってろ」
キノ「…いきなり控室、ですか」
エルメス「この番号はなに?何かに使うの?」
その言葉を聞いた門番は、驚いたのち、呆れたような表情をしながら答える
門番「さてはお前達、何も知らずにここに来たんだな?」
ユーリ「そうだな、あまり詳しいことは知らん」
門番「なら教えてやる、それは選手番号だ。今日は栄えあるコロシアムの日なんだよ!いいか?ここはな、殺し合いの国だ。互いに命をかけて、民衆の目の前で戦うんだ。いわば闘技場なんだよここは」
門番の言葉にユーリは顔をしかめながら問う
ユーリ「…俺達は闘技場に参加したいわけじゃない。観光目的として来てるんだ」
門番「どこの馬の骨ともしれねぇ奴を国にいれる訳ねぇだろ。アンタがこの国に入るには、戦士として入らざるを得ないのさ」
門番の言葉に、奥で酒でも飲んでいる数人の男達がほくそ笑みながらこっちを見ていた。キノは不快感を覚えながら講義する
キノ「…ここはとても良い国だと聞いたんですが」
門番「そうとも、ここは凄くいい国さ。娯楽に満ち溢れてるからな。命を賭けた娯楽に満ち溢れている。前の時代は退屈だった…平和を重んじるあまり毎日がつまらなかった。だがそれがどうだ。今じゃこの国は、今までで一番盛り上がっている」
そんな言葉には耳を貸さず、ユーリはどうにかして入らないものかと交渉するが…
ユーリ「…どうしても無理なのか?」
門番「駄目だな、諦めな。まぁ安心しろよ、何も助かる道が無いわけじゃない…降参すればいい。仮にもし相手が心優しい戦士だったら、降参を認めて命だけは助けてくれる…が、助かったとしても、この国で一生奴隷として働く羽目になるがな」
エルメス「うわー」
門番がそこまで話すと、奥にいる門番の同僚とも思える男が近づいて来た
同僚「そういやよ、前にきた夫婦の旅人は笑えたよな」
門番「んぉ?あぁ!あの2人か。確かにあれは見物だったな!2人で闘技場に参加したのはいいものの、順調に2人は勝ち進めていったのに、肝心の夫は頭をかち割られて死んだんだからな!」
キノ「…」
2人の男の言葉に、キノは自分達が先日野宿した森の手前ですれ違ったこの国に対する情報をくれた旅人を思い出していた。その旅人は女性だけの旅人であった。もし彼女がここに来ていたのなら…
ユーリ「…仕方ない…出直すとす「やります」…は?」
キノ「僕が出ます」
エルメス「え、本気?」
ユーリの言葉を遮ったのはキノであった。キノは渡されていた番号札を握ると、奥の控室に行こうとする
門番「おいおい坊主、本気か?お前に何ができんだよ。子供だからって情けをかけるほど他の戦士達は甘くないぞ。それともなにか?その可愛らしい見た目で相手を魅了しようってか?」
門番の言葉に、奥の男達もゲラゲラと下品に笑いながらキノを見る。キノは一旦止まると、門番の目の前に立ち…
キノ「…」
門番「?なんだよ、怒らせちまったか?悪かったよ、ガキには怖かっただろうな!ハハ「カチャッ!」…は?」
キノは目にも止まらぬ速さ相手の心臓にカノンを突きつけた。
ゴリッ…
キノ「…これで、いいですか?」
キノは身長が小さいため、見上げる様な感じに門番に問う
門番「…わ、分かった、通っていい。アンタの参加を認めよう…」
キノ「…」
スッ…
その言葉をきいたキノは、カノンを納め、控室へと歩いていく。
ユーリ「…やれやれ」
エルメス「こりゃユーリも出ないとね」
ユーリ「冗談言うな。出るわけないだろ」
エルメス「え?いいの?キノ死んじゃうかもよ?」
エルメスは意外そうにユーリに言うが、ユーリは淡々と告げる
ユーリ「もし万が一そんな状況になったら、キノが殺られる前に俺が場外から撃ち殺せばいい話だ。それに」
エルメス「それに?」
ユーリ「キノに勝てる奴なんざそうそういない」
エルメス「言えてる」
ユーリはヤタガラスとエルメスを押し、キノの控室へと向かう。
エルメス「…それにしても、キノが出るなんて意外だな」
ユーリ「そうだな。こういうことには極力関わるなと言ったはずなんだが…」
ユーリとエルメスはキノの待つ控室に着く間、何故キノが出場することを決めたのか、その理由を考えていた
エルメス「…あの旅人のことかな?」
ユーリ「あん?」
エルメス「ほら、森の手前であった女の旅人だよ。あの門番が話してた夫婦って、あの女性のことでしょ?…キノ、怒ったのかな」
ユーリ「…さぁな、あいつのことは、あいつにしかわからないからな。今言えるのは、なんらかの理由でキノは出ることを決めた。それさえ分かれば俺はいい」
そう言ってユーリはキノのいる控室に着いた
ガチャ…
キノ「…」
扉を開けたその先には、目の前でカノンを握り、瞑想しているキノがいた
キノ「…ごめんなさい」
ユーリ「ん?」
キノ「勝手な行動しちゃって…」
キノは目を開けると、申し訳なさそうにそう言った。だが、ユーリは特にどうこうするわけでもなく、エルメスとヤタガラスをスタンドをだして立たせた
ユーリ「別にいい。俺は、お前を束縛するつもりはないからな。好きに動くといいさ…」
キノ「…ユーリさんは出るんですか?」
キノはカノンの弾の残弾数を確認しながらそう言う
ユーリ「出るわけないだろ、弾薬の無駄だ」
キノ「そうですか、良かったです」
キノは微笑みながらそう言った。その言葉に、エルメスが不思議そうに聞く。
エルメス「なんで?ユーリがいた方がいいんじゃないの?」
キノ「ユーリさんと対戦なんてしたくないからね。僕の銃は、家族を撃つために持ってるわけじゃないから」
カノンに弾を込め、元のホルスターに戻すと、キノはユーリに一つの頼み事をした
キノ「ユーリさん」
ユーリ「なんだ」
キノ「…不躾なんですけど、ユーリさんのバンシィ、貸してくれませんか?」
キノはそう言って、ユーリの腰に付いているパースエイダーを指差した
ユーリ「…別に構わないが、何故だ?」
ユーリはキノにバンシィを渡しながらそう聞いた。キノはその問いに少し恥ずかしそうに答えた
キノ「…ユーリさんから、直に力をもらえる様な気がするんです。片方はお師匠様の、もう片方はユーリさんの力がある。なら、僕が負ける事は絶対にありません」
キノはそういいながらカノンとバンシィをそれぞれのホルスターに納める
ユーリ「…そうか、だが気を付けろよ?俺の銃は威力は高いが反動もでかい。連射が効かない事は頭に入れておけ」
キノ「はい、わかりました」
エルメス「そういやさ、その試合っていつあるの?」
エルメスがキノに聞く。入り口にいた門番には試合の開催時間などは聞かされていなかったから知らないのも当然である
キノ「…これだね」
カサッ…
キノは控室の机から一つのプリントを取ると、エルメスに見せる
エルメス「…ふーん、今日の昼からなんだ。ていうかもうすぐじゃない?」
ユーリ「そうだな、今が丁度11時少し前ぐらいだが、開始時間にはまだ1時間近くはある。そこのベッドで今のうちに体を休めておけ」
キノ「わかりました」
ユーリが控室のベッドを指差しながらキノにそう言った。キノも頷き、ベッドに座り、横になった
ゴソゴソ…
キノ「…ユーリさん」
ユーリ「今度はなんだ?」
キノ「一緒に寝ませんか?」
キノは体を横にしたまま腕をユーリに向けて伸ばすが、ユーリはその手を握っただけであった
ユーリ「結構だ」
キノ「そう言わずに、お願いします」
ユーリ「…キノ、何を考えてる?」
キノの意味不明な行動に、ユーリは少し困惑しながらキノに問うが、当の本人は軽く微笑みながらユーリに頼む
キノ「緊張しちゃってるんです。少しだけでいいので、寝ませんか?」
エルメス「いいじゃん、寝てあげたら?時間になったら、僕が起こしてあげるよ」
ユーリ「…そういう問題じゃないし、キノにいたっては緊張する様なガラじゃないだろ…全く…」
ユーリはキノに近づき、隣に座ると、キノの頭を自分の膝に乗せた
ユーリ「生憎俺は眠くない。寝ないが枕程度にならなってやる」
キノ「…フフッ…ありがとうございます、ユーリさん」
ユーリ「いいから、休んでろ」
ナデナデ…
ユーリはキノの頭を撫でながら次にいく国の情報などをどう集めようか考えていると、自分の膝の上で目を瞑ったキノから、一言だけ告げられた
キノ「…ユーリさん、好きです。愛してます」
キノはそういうと、返事を待たずにユーリの腹部に顔をグリグリとうずめながら眠った
ユーリ「…」
エルメス「…嬉しい?」
ユーリ「別に…キノからは何回も言われた言葉だし、本気にするつもりもない」
エルメス「えぇ〜、なんでぇ?」
ユーリ「長い付き合いなんだ、今更そんな目で見れるか」
エルメス「それを見てあげなきゃ。キノ、可愛そうだよ?」
エルメスの言葉に、ユーリは苦虫を噛み潰したような表情をしながらエルメスに愚痴を言う
ユーリ「…キノは大切だが、家族としてだ。小さい頃から好きだのなんだの言われちゃいるが、キノ自身は今でも子供なんだ。成長すれば、いい男なんざごまんといるだろ」
エルメス「キノかわいそー」
ユーリ「黙れ。…俺は、今を大切にしたいんだよ。今の関係が、俺にとってもキノにとっても丁度いい」
ユーリはそういいながらキノの頭を撫で続けていた…
キノ「…むにゅ…」
ーー約1時間後ーー
キノ「…ふわぁ〜…くぁ…」
キノは大きなあくびをしながら目を開けると、目の前には自分が敬愛しているユーリの顔が下から見えた
ユーリ「…起きたか、丁度良かった。もうすぐ始まるぞ」
エルメス「具体的にはあと13分ぐらいだね」
エルメスは控室についてある時計を見ながらそう答える。それを聞いたキノはユーリの膝枕からは起きずに、懐のカノンとバンシィを抜き、両手でしっかりと握りしめる
ギュ…
キノ「…ふぅ」
ユーリ「…本当に緊張しているのか?」
キノ「…まぁ、それなりには…ですが」
キノ「ユーリさんとお師匠様の訓練に比べたら楽なものです」
キノはユーリの膝の上から微笑みながら答える。ユーリも、それを見ると、軽く笑いながら告げた
ユーリ「ならさっさとどけ。いい加減足が痺れた」
キノ「…もうちょっとだけ「早くしろ」…はい…」
キノがもう少しユーリにねだろうとしたが、容赦の無い一言により、あっさりと撃沈した
『ザァー…ザザッ…』
キノ「…?」
そうこうしていると、控室の上方向から、放送が聞こえてくる
『…あー、聞こえてるか?もうそろそろ出場だ。さっさと準備して来な』
エルメス「…だそうだよ?キノ」
キノ「はいはい、今いきますよ」
キノはそういいながらしぶしぶとユーリの膝から起き、カノンとバンシィをホルスターに戻しながら言う
キノ「…じゃあ、行ってきます」
ユーリ「あぁ、行ってこい」
エルメス「無いとは思うけど、最後になるかもしれないから一応言っとくね。さよなら、キノ。楽しかったよ」
キノ「はいはいさよならエルメス。そこそこ楽しかったよ」
エルメス「うわー、もうこれ泣いていいよね?ユーリ」
キノの言葉に、エルメスが棒読みでユーリに話す。それを見たキノは笑いながらさっきの言葉を取り消した
キノ「冗談だよ、楽しかった。そして、これからも楽しくなると思うよ」
キノはそういいながら、控室を出て、闘技場へと足を進めた…
…はい!如何でしたか?なのだ!自分、キノの旅はある程度知っているのだが、本自体は持っていないからストーリー自体がどう進んでいたか忘れがちなのだ。だからオリ話が多くなるかもしれないのだ。生暖かい目で見守ってほしいのだ!それでは次回も読んでくださいなのだ!