あらすじ
結合世界にて、少年フリスクは魂の炎が尽きかけていた少女まどかを救い、運命的な出会いを果たした。そして、その後の悪魔との戦いでユニークスキル、そして現在の世界の状況を知ることができた。
そして、フリスクは一つの決意を抱く。
この世界を、元に戻してみせる...と。
「...今でも信じられないよ、ホントに。」
「僕もだよ。トリエル母さんやサンズたちが心配だよ。」
「私は...」
世界が結合したことについて、二人は話していた。
その会話の中で、あの記憶が脳裏によぎったまどかは、思わずうつむいてしまう。
成す術無く無惨に死んでいく友達。結局守れなかった皆の日常。
あの日、いや永劫の時を自分のために捧げ最後まで戦った、最高の友達。
それら全てが、彼女の脳裏を巡る。
「...まどか?」
フリスクが名前を呼ぶ。
「...ううん、大丈夫だよ。」
「だったらいいけどね。辛いときは、いつでも相談してくれよ。だってさ、僕たちはもう...」
フリスクは、その後、こう言った...
「友達なんだからさ。」
思わず目を見開いた。
会ってからまだそんなに経っていないのに、友達だと言ってくれた。
「...いやゴメン。結構クサイ台詞吐いちゃった。」
そんな事は無い、むしろ嬉しい。だけど、止めて欲しい。そんな事を言ったら、すぐに誰の手の届かないところへ行ってしまう...
そう思ったまどかは、再びうつむく。
そして、誰にも聞こえないように、
「ほむらちゃん...」
そう、呟いた。
僕は、まどかと話をして分かった事があるんだ。
彼女は...「友達」というものに相当な思い入れがあること。
そして、その「友達」に、何かが起きたこと。
あの姿も、何か関係しているのかも知れないね。
今は考えてもわからないけど、目の前のことを精一杯やれば、見えてくる筈。
僕はユニークスキル「絶対決意」(ユルガヌケツイ)の練習をしながら、歩き続けた。
...うん?
「まどか!危ない!」
「...えっ?」
遅かった。
既に、まどかは地面に落ちていた物に足を引っかけて、派手に転んでしまった。
「痛っ...た...」
「大丈夫!?」
まどかは足をケガしていた。
そこで僕は「絶対決意」(ユルガヌケツイ)の「決意操作」を応用させ、出血を止めた。
実はこの「決意操作」、かなり万能なんだ。
決意は、魔力にも、筋力にもなったりするんだ。
魔法を覚えれば、決意を魔力がわりにできるかも知れない。...まぁ覚えてないから、僕の場合は決意を直接相手の肉体に与えてその人の自己治癒力を底上げするぐらいしか出来ないんだけども。
まどかもどうやら、回復魔法は持っていないようなので、こうしたんだ。
...最も回復魔法を使いそうなイメージを持っていた、というのは本人に話すと気まずくなりそうだから、止めておくのがいいよね!
「ありがとうフリスク...あれ?」
「どうした...ってうわっ!?なんだこれ?」
まどかが見たもの、それは落ちていた剣だ。
これに引っかけて転んだみたいだけど...
「凄く豪華な剣だね...」
「アンダインにあげたら喜びそうだ...」
それだけではない。この剣は異常だ。
ただならぬ決意が宿っているんだ。
「...これ、凄い魔力だよ。何でこんな所にこんな剣があるの?」
決意だけではなく、魔力もこもっていたみたい。
そうやって暫く観察して見ると。
「光った!?」
僕がそう叫んだ後、その剣は浮いた。そして...
その剣は、まどかの手元まできて、静止したんだ。
思わずその剣を取るまどか。
取った瞬間、その剣は一層光輝き、やがて収まった。
まどかが取ったその剣は、少し重く感じた。
「何なの...今の。」
「分からない...だけど、僕にはまるでこの剣が、まどかを選んだように見えたんだ。」
「えっ?」
「持っていこうよ。もしそうだったのなら、この剣は、この先まどかの助けになると思うんだ。」
「でも私、剣なんてどうやって振るえばいいか、分からないんだけど...。」
「町に行って考えようよ。色々とできることはある。仲間を探したり、ユニークスキルの練習だったり、長旅の準備だったりとかね。色々あるよ。」
「...そうだね。分かったよ。」
剣の鞘部分もあったので、それにその剣をまどかは直した。
そして、僕たちはまた歩き始めた。
「...フン!気に入らない。気に入らないな。何であんなヤツがあんな剣に?」
あれこそ俺が手にするべき物だろ、と青年と少年の境目ぐらいの年頃の男は口を尖らせる。
「仕方ない。...奪うか。あれがあればもしかすると義母上も...」
そして、その男は動き出す。
無駄の無い、俊敏な動きで。
「!危ないっ!!」
真横からの、突然の剣撃。僕とまどかは慌てて回避する。振り下ろされた剣は空振りとなったが、ソイツは慌てる素振りを見せなかった。
「俺の名はアバンス。頂くぞ...その剣を!」
現れたのは、紅と灰が混ざった髪色の男。子供にも見えなくもないけど、殆んど大人だろう。その手には、片手剣が握られていた。
きっと一部始終を見てたんだろうけど...そうはいかない。その剣はきっと、誰かに奪われてはいけない大切な物だ。
だから諦めて貰う為に、そしてまだ体が十分回復してないまどかの代わりに僕が相手をするしかない。
「その剣はまどかを選んだんだ。奪われてたまるか!」
「ああ、見てたよ。だが納得がいかないしこっちだってその剣を欲するそれなりの理由はある。」
「...その目を見れば分かるよ。だけど、だからといって今のまどかを傷つけさせたく無い!だから僕が代わりに相手になってやる!」
「いや、そいつと戦わせろ。俺の方がふさわしいんだとその剣に教えてやれば良い。」
「...ダメだ!まどかに、手は出させない!」
「用があるのは、その剣だけだ!...安心しろ。まどか、って言ったか?そいつにはできる限り傷はつけないし、他には何も望まない。これならいいだろう?」
ダメだ。
何も言い返せない。
「一対一の真剣勝負だ!...行くぞ!」
「逃げるんだまどか!今のキミじゃ、アイツに勝てない!」
フリスクが逃げるんだ、と叫んでいたが、
まどかは動けなかった。
足が震える。どうしよう。
このままだと、間違いなくやられる。
そして...
「覚悟は出来たか?...シッ!!」
その言葉と共に、アバンスが動いた。
まどかは襲いかかるであろう激痛に耐えるため思わず目を瞑ろうとした、その時。
謎の赤髪の精悍な男が、その剣を振るう
それを見たとき、自分でも不思議ことにまどかの行動は変わっていた。
剣にソウルジェムの魔力をほんの少し流し込む。すると、その剣に灼熱の炎が宿る。
そして、その男がどのように振るっていたのかを思いだし。
(...こうだっ!)
一気に、振り下ろした。
勝負は一瞬でついた。
まどかが、勝ったんだ。
灼熱に染まった剣がアバンスの剣に触れた瞬間、なんとそのアバンスの剣が一瞬にして焼滅した。
そしてそのまま、アバンスの肩を切り裂いたあと、その傷口から発火した。
更にあまりの威力のせいか、衝撃波まで発生させアバンスを吹き飛ばしたのだ。
しかし、それでもアバンスは生きていた。しかも、虫の息ですらないのだ。どうやらかなりの強者みたい。
「...チッ!仕方ない、ここは引いてやる。...いいか、こっちだって背負う物背負ってるんだ。その剣を諦めることは出来ない。それを心の片隅に刻んで置くことだ。いいな!」
と言って去っていった。
「私...勝ったの?」
「あ...ああ、そうだよ。まどかが勝ったんだよ。予想外だった。」
「私、あの時...あの人の姿が見えなかったら間違いなく負けてた。」
「あの人?」
「うん。赤髪で、たくましい男の子。その人が、この剣を振るっているのが見えたの。」
「この剣の...前の使い手かな...。」
その人がいなかったら、まどかは負けていた。
その事を思い、僕はその人に想いを馳せる。
「よし、決めた!」
「どうしたのフリスク?
「いや、この剣の名前だよ。何か無い?...そうだ!」
「...決めるの随分速いんだね。即決だよ。」
「僕には、大したネーミングセンスはないから、大したものは付けてやることができない。でもこの剣は最初、誰かに知られる事無くそこにあった。少し大袈裟だけど、大昔に封印されていたかのようにね。だから、僕はこの剣を...」
「この剣を?」
「...『封印の剣』とでも呼ぶことにするよ。」
こうして、人知れずその剣はまどかの手に渡った。
何の因果かは分からないけど、この『封印の剣』はこれからの僕たちにとって大きな力になってくれるはず。
そして、僕達は歩く足を速めた。このとんでもなく壮大な旅はまだ、始まったばかりだ。
あとがき
お久しぶりです、星の塵です。
今回もCross Worldを見て下さり、ありがとうございます。
しばらくPixiv側での編集に時間をとっていたので、本当に申し訳ありませんでした。
それはそうとして、第五章はいかがだったでしょうか?
今回は大分短かいと感じた方も多いでしょうが、その分Pixiv版との違いを作ることに集中しました。
例えば、Pixiv版での襲撃者は『ファイナルファンタジーⅤ』のギルガメッシュだったのですが、このハーメルン版では『遊戯王デュエルターミナル』のリチュア・アバンスにしました。
アバンスはこれからも何度か再登場させる予定です。
また、フリスクの会話量や内容も変更したり増やしたりしました。当時手探り状態だったPixiv版に比べて大分良くなったと思います。
今回のテーマは割愛!よってそのままあとがきを締めます!
まず、Cross Worldを最後まで見て下さった皆様、本当にありがとうございました!
この物語が面白いと感じたなら、是非とも評価をよろしくお願いいたします。そして、Pixiv版のほうも見てやって下さい。
最後に、イレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の心に留まり続け、皆様の決意を満たし続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆を置かせて頂きます。
皆様ありがとうございました!次回もお楽しみに!