海行きたい……(切実)
嫉妬する妹と俺
「海に行こう!」
少々クーラーの効いたスタジオ内で一人呟く俺、湊秋也……って誰に自己紹介してんだろ俺……。ここ最近は猛暑続きで、 既に脳が溶ける寸前まで来ている俺は、急な思いつきを提案したものの……、
「却下ね」
「時間の無駄です」
「あー、アタシはちょっと……」
「わ、私も……」
順に友希那、紗夜、リサ、燐子と反対された。なんだなんだ皆して……そんなに寄ってたかって拒否しなくてもいいじゃないか!
それに、いつもならノリノリで賛成してくれそうなリサにすら反対されるなんて……。
「リサ、お前裏切ったな〜!」
「ええっ!? アタシ秋也さんと手を組んだ覚えないんだけどな……」
「ううっ……仲間だと思ってたのに」
「そうやって罪悪感を持たせて誘ってきても無駄だよ」
「何故そこまで行きたくないんだ」
「だって……最近太り気味だし、水着とか……」
「ん? だって……なんだって 」
それにしても、上手くいくと思ったのに……どうすんだ、これじゃ俺一人vsRoseliaの全面戦争じゃないか。
「ええー! あこは海行きたいっ!」
流石、Roseliaの最年少。やはりこういう行事への興味と行動力が違うな。
「おお! あこぉ〜お前だけが俺の味方だ……夏といえば海だろ! そんな夏の楽しみの一つを奪うってのか 」
「海なんて、行ったところでなんになるって言うんですか。ただ濡れるだけの何がいいのやら」
「兄さんだって、分かっているでしょ? そんな事をしてる暇なんて無いって」
「でもさ、少し息抜きだって必要だとは思わないか ずっと気張ってたら疲れるだろ」
人間誰しもずっと頑張ってたら疲れるだろう。だから、だいたいの学生や大人には休みがある。それに娯楽も何も無い人生なんてつまらないだろ 特にRoseliaには相当娯楽が必要だと思うが……。
「だからと言って海に行かなくとも……」
やはり容易には行かないか。紗夜姉を納得させるにはもっとこう……「それなら仕方ない」っていう理由がないとなんだけど、そんなのが上手く思いつくなんて……、
テレレレッテレー♪ (某RPGレベルup音)
「あれ、メールだ」
「ド、ドラ○エ……」
「兄さん……いつまでその着信音にしているのよ」
「いいだろ別に、とりあえず誰からだ……」
俺はすぐさまメールを確認する。
「おっ……ふふふ」
「兄さん?」
「フヒヒ……紗夜、海行きは確定のようだぜ〜 」
「な、何ですか、まずその不気味な笑いをやめて下さい。で、メールの内容と海に行く事の何が関係あるんですか」
「聞いて驚くなよ〜」
そして俺は、メールに書いてあった通りにメンバーに話した。
「海の家でフェス?」
見事にハモった。
「どうやら先日のライブに、そのフェスの実行委員が来ていたらしく、ぜひ出て欲しいとの事だ」
ちなみに何故、俺の携帯の元にメールが届いたのかというと、俺のアドレスは、スタジオのオーナーに教えていて、そこから伝わったらしい。
「しかし、時期はいつなんですか? 参加するにしても練習する時間が必要だわ」
「一週間後だな。練習は向こうで場所を取っておいてくれてるそうだ」
「それなら練習については問題なさそうね」
「へー、アタシたちの他にも出演するバンドグループがいるみたいだね。これは、他との差を見せつけるいいチャンスじゃん」
「どんなバンドが出るんですか?」
「ちょっと待ってろ……」
俺は早速フェスについてのサイトを調べる。するとこれまでのフェス詳細や出演した人の情報まで書いていた。
「へぇ〜、いろんなガールズバンドが出てるんだな。今回は……おお、おお!」
「どうしたの? 兄さん」
「実はだな 俺が今一番注目しているバンドが出るみたいなんだ!」
「……そんなにすごいの」
すると、若干不機嫌そうに訪ねてくる友希那。
「ま、まぁな。最近活動を始めた所なんだけど」
そのあと俺は、ひたすらそのバンドについて語った。話している最中ずっと、友希那の機嫌が悪かったのだが……はっ!? これはもしや"嫉妬"と言うやつか……嫉妬しちゃってもう〜可愛い奴め!
「(もうちょっとからかってやろうかな)」
「それでな〜そのバンドの"ボーカル"がめちゃくちゃ可愛くてさ」
「……(秋也さんわざとやってるな〜。しっかし嫉妬してる友希那可愛いなぁ〜、自分以外のしかもボーカルに鼻の下伸ばしてるからね)」
「それでな〜……って友希那 どこ行くんだ、おーい」
「…………」
やりすぎた……。完全に愛想尽かしてステージ登って行っちゃったよ。これは後で謝罪と品を用意しなければ。品って何渡せばいいだろう……あ、水着とか? 海で妹とキャッキャウフフするの夢だったんだよな。あぁー海楽しみだな!
────この時はまだ、まさか俺たちがあんな事になろうとは……誰も想像出来なかっただろう。