笑わない妹と夢見る頂点へ   作:イチゴ侍

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新章入ります!タグにリサの名前があるのは……そういうことです。


陽だまりロードナイト編
恋、自覚する幼馴染と俺


 

 長いようで短かった夏フェスも終わり、実行委員の優さんによると、大成功だったようだ。 そして今、帰り際にパスパレや俺の話を聞いてもらった武内さんにお別れをしている所だった。

 

「武内さん。いろいろとお世話になりました」

「いえ、秋也君……もしよろしければ、うちのプロダクションに興味はありませんか?」

「えっ……」

 

 武内さんの話によると、将来俺が芸能の道に進むのなら、武内さんの所属する……み、みし……なんたらプロへの推薦を頂けるとかなんとか……。しかし、恥ずかしながら俺は将来の事とかあんまり考えてないもんで、大学出た後なんてこれっぽっちも考えなかった。

 

 

「もちろんすぐにとは言いません。もし秋也君にその気があるならですが……」

「一応、今後の人生の選択肢って事で、頭の片隅にでも入れておきます」

 

 要検討、ということで終わった。ただ、友希那との『頂点目指す』って約束もあるからな〜。

 

 

「あ、あー君……」

 

 すると、何やらもじもじとした姿勢で寄ってきた彩ちゃんが、何か言いたげに顔を近づけてきた。いやいや……近い近い、 後なんか当たりそうなんですが、

 

「な、なんだ?」

「あのね、その……」

「────ああああああ! 秋也さん! 早く行かなきゃ優さん心配しちゃうよ〜っ!?」

「え、いや……優さんならまだ会場に……」

「もしかしたらもう行っちゃってるかもじゃんそ、それじゃね! ヒナ! パスパレのみんな!」

「バイバ〜イ、リサちー♪」

「お疲れ様です」

 

 まばらに聞こえる挨拶の中、俺はリサに手首を捕まれ、引きずられながら会場を後にした。

 

 

 ◇

 

 

「彩ちゃん、言わなくて良かったの?」

「うん。私のこの気持ちは多分……なんて言うんだろう、憧れ……みたいなものだから」

「憧れ?」

「誰かの助けになりたい。私の歌でパスパレを応援してくれる人もそうでない人でも勇気づけてあげたい。私がそう思えたのはあー君のおかげなの。だから、憧れ!」

「────ふふっ、そうなの」

「うんっ! よし、私たちもRoseliaのみんなに負けてられないね!」

 

 ひと夏に起きた運命の再会により、また一つ大きくなった彩は、自らの足で次への一歩を進み出した。

 

 

 ◇

 

 

 会場から帰ってきたアタシたちと秋也さん一行は、祝勝会と題して優さんとアタシで料理を作ることとなった。みんなが舌鼓を打ってくれたようで良かったし何より秋也さん達が、アタシの料理を絶賛してくれてとっても嬉しかったな。

 

 みんなと夕食を食べ終え、今回の合宿で大変お世話になった銭湯に足を運んだ。また前のようにみんなをいじろうかな〜 なんて思ってたら、紗夜にめちゃくちゃ睨まれた……。

 まぁ、当然だろうね。

 

 

「はぁ〜いい湯だな」

「そうね」

 

 湯に浸かるアタシに横にいる友希那が答える。長い銀髪は、団子状にまとめて湯に浸からないようにしている。実に可愛い、これきっと秋也さんに教えたら「いくらだ……?」とか写真求めてきそうだな〜。

 

 

「リサ……」

「んーどうしたの友希那」

「今日は、ゆっくり休んで」

 

 驚いた。友希那がこんなにもストレートに心配してくれるなんて、いつものツンデレ友希那はどこいったのだろうか……、

 

 もしかしてこの湯の効能に"ツンデレ解消"みたいな力が……って、あるわけないか。

 

「ど、どうしたのさ急に……珍しいね友希那がそんなに心配してくれるなんて」

「まるで私が他人を全く心配しないみたいじゃない……」

「違う違うって、いや、いつもの友希那ならさ「音楽に響くから」とか付け足すのにって思ってさ」

 

 すると友希那の頬がほんのり紅くなったのが見えた。それが熱さでなのかどうなのかは分からなかった。

 

 

「今日、リサがいない演奏をして思ったのよ。やっぱり私の演奏にはリサが必要だって、リサが隣にいればもっと上を目指せるのだと……だから、またリサには倒れてほしくないの」

「……」

 

 ど、どうしよどうしよ……アタシ今、めっちゃ顔熱いって……あ、それは湯あたりで誤魔化せるかな……ってそれはどうでもいいって! やばいよ……ああもう、なんでこう湊家は、アタシをドキドキさせる人ばっかかな、アタシをキュン死させる気なの!? 

 

 嬉しすぎてのぼせそう。

 でもなんて返せばいいんだろ。素直に受け取る? それとも茶化していつもみたいな雰囲気に戻す? うーん、分からん。

 アタシが言葉を出せずに黙り込み、友希那も同じく黙り込んでいた。

 しかし、すぐさまその空気を友希那が破った。

 

 

「ね、ねぇ……リサ」

「こ、今度はなに?」

「あなた、兄さんの事が好きなの……?」

「ブフッ────」

 

 な、な、な……何言い出すのさこの子はああああああっ! 

 

「……違うの?」

「え いや……その、違うも何も秋也さんにそういう……持ったことないよ」

「そうなの?」

「た、確かに時々カッコいいな〜とかその……思う事はあるけど、恋愛的な好きは……」

「でもリサ、あなた兄さんに丸山さんが何か話そうとした時に変に焦ってなかったかしら?」

 

 ……ゆ、友希那ってこんなに察しが良かったっけ……? アタシが知る友希那ってもっと、純粋で音楽と猫以外にはほとんど鈍感なはず……。

 

 

「あ、あれは……」

 

 あの時は自分でも何を考えてたのか全然覚えてない。なんとなく体と口が勝手に動いてて気がついたら秋也さんの腕を掴んで彩から離そうとしてた。

 

 

「……まぁ、いいわ」

 

 友希那はアタシの回答を聞く前にお風呂から上がっていった。一人取り残されたアタシは、お湯に映る自分の顔を眺める。

 

 

「好き……か」

 

 口にするだけで顔が熱くなって、胸の奥がギュッてなる。考えたこともなかった。秋也さんは友希那のお兄さんで、昔から優しく……

 

『おとうさんおとうさん! リサ、ベースすっごいうまいんだよ!』

 

『お、リサ! クッキー作ってくれたのか? リサのクッキーが美味しすぎて市販のじゃ満足できなくなっちまったよー』

 

『────リサの頑張りを無駄にして欲しくないんです。これからに活かせばいい……と言われれば何も言えません。ですが、こいつはこの日のためにずっと頑張っていたのを俺は知ってる。こいつ、ずっと「自分はメンバーの中で1番下手」だって自分を卑下しまくって、誰よりも頑張ってたんです。だから今日、ステージに立って演奏して、自分に自信を持ってほしいんです お前は凄いんだって……だからお願いします。こいつをステージに上げるためにRoseliaに2度目の演奏をさせてくださいっ』

 

 

 自分の事のように喜ぶ声を聞いた。

 

 

 大きな手で頭を撫でながら照れくさそうに褒めてくれる声を聞いた。

 

 

 自分の事じゃないのに必死に、頭を下げてまでアタシを想って声をあげるその声を聞いた。

 

 

「────今井さん? 顔が赤いですが大丈夫ですか? のぼせそうならすぐに出た方が……」

「……う、うん。ありがと紗夜。先、出るね」

「? は、はい」

 

 

 紗夜に言われるがままに浴場から出ると、籠の前まで歩き、そして立ち止まる。

 

 

 ────自覚しちゃった。

 

 

「……あ、あたし……すきだ……すきに……好きになっちゃったぁ……」

 

 

 ◇

 

 

「……うぅ、頭痛い……」

 

 つい先程、銭湯から出た俺は、外のベンチに頭を抱えるように座っていた。

 それもこれも、さっきの会話のせいだよ。

 

 "あなた、兄さんの事が好きなの……?"

 

 その話し相手はリサだったはず。そのあと俺はテンパって出たから話の続きは聞いてこなかったけど、リサが俺の事が好き……? いやいや、ないない! 意識されててもきっと"友希那の兄貴"くらいだろ。

 

 

「で、でもさ……」

 

 ほんとに好意を持たれてるのだとしたら……。

 

「どうすりゃいいんだよ……」

 

 決して、リサに何か不満があるわけじゃない。むしろ可愛くて、気配りが良くて、料理上手くて……あんだけの女性を嫌いになるはずが無い。いずれは……とか考えたこともあった……って、気持ち悪いな俺。

 

 てか、妹も妹だ。友希那ってあんな事聞くような子だったっけ……。まさか兄の花嫁を探すためにメンバー全員に聞いてるんじゃないだろうな。ううっ……背筋が震えた。

 

 

「……ま、まぁきっと誰かのイタズラだろ! 俺が聞き耳立ててるの察したやつが友希那とリサを使って俺にドッキリを仕掛けるに違いない!」

 

 そう思うだけで幾分か気持ちが軽くなった。決して嫌だからという訳じゃなく、本当に好意をぶつけられた時にそれに立ち向かう勇気が俺に無い。だからそんなことは無いと馬鹿みたいに言い聞かせるしか無かった。

 

 

 ────だというのに、神様っていうのはとんでもなく退屈が嫌いなようだ。

 

 

「────あ、秋也……さん」

「リ、リサ……」

 

 

 ────今一番会いたくない人に会ってしまった……。

 

 

「と、とりあえず隣……座るか?」

「う、うん」

「(き、気まずい……)」

 

 お互いに俯く。何を言えばいいのか、どうすればこの空気を抜け出すことが出来るのか、そればかり俺は考えていた。

 

「────あ、あのっ!」

「────その、な!」

 

『……』

 

 意を決して話をしようものなら、こうやってタイミングが被って話しずらくなる。そしてまた沈黙する。このループである。

 

 

「リ、リサからいいぞ」

「そ、そう? じゃ、じゃあ言うね……」

 

 リサは、そっと深呼吸をすると隣に座る俺の目を強く見つめて離さない。

 

 

「今度の日曜……お出かけしたい……です。えっと……秋也さんとアタシ……2人っきりで……」

 

 

 ────ドッキリ……じゃないのか。

 

 強く覚悟を持ったリサの視線に当てられてもはや逃げの想像なんて当てはまりっこない。

 

 その日、俺は男らしく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





妹は最後まで妹として、ヒロインはヒロインとして分ける。それが自分のプライドです笑
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