笑わない妹と夢見る頂点へ   作:イチゴ侍

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怖がる幼馴染と俺

 

「次の方どうぞ〜」

「は、はい……」

「秋也さん……」

「な、なんだ?」

「もし、嫌なら辞めてもいいよ 元々アタシのわがままなんだし」

 

 ここで辞めれば俺は助かる……。

 でもその後リサはどうなる? 女の子1人を危険な目に合わせる……、

 

「冗談じゃない」

「秋也さん」

 

 そうだ、俺は男だ。男が女を守らないでどうする。そんなの男失格だ。ち○こ切り落としちまえ。世の中には"逃げるは恥だが役に立つこともあるなんて言葉があるけど、今この状況で逃げは恥しか生まないじゃないか。逃げだけはゴメンだ。

 

 

「リサを1人になんてしねぇよ。今も、これからもだ。一生一緒にいてやる。逃げろと言われても付いて行く、どんなに危険なとこでも付いて行く、そして守るッ! 絶対にだ」

「えっ……! 今のって……こくは……く」

「行くぞッ!」

 

 俺はリサの体をまるで、割れ物を扱うかのように抱きとめ、スライダーの入口に滑る姿勢で座る。前が見えないのも怖いと思い、リサを股の間に座らせしっかりと両手で後ろから抱きしめる。

 

 

「あ、秋也さん……あったかい……」

「しっかり抱きしめられてろよ!」

「行ってらっしゃいませ〜」

 

 係員さんの合図で俺は滑り出す。もちろん前例があるので勢いは付けず、ほんの少し前に進む感じで水圧に乗る。

 

 

「大丈夫かリサ?」

「だいじょぶ。すっごい安心するよ。それに楽しい 」

「そりゃ良かった」

 

 ゆっくり進み始めたため、まだ話せる余裕がある。ここはまだチャラ男が楽勝と調子に乗っていたところだ。 そ次第に速度が上がっていく……、そして一つ目の段差に差し掛かった瞬間────、

 

 

「きゃっ!」

「うわっ!」

「────っ!?」

 

 段差で急降下し、俺達はまるで空中に放り出されたかのような感覚に見舞われた。その後すぐにやって来る水飛沫、そして 俺の手のひらに来る柔らかい感触 かんしょ……く────ふぁっ!? 

 

 

「ひゃっ! あきやさんっ……そこ、だめぇ……んっ」

「────!?!?」

 

 ああああああああああああっ! やばいやばいどうしよどうしよこれっ! どうしろというんだ! 別に触ったままでもいいのだろ? じゃねええええええアウトだわ! 犯罪! 犯罪! ふふふみんな「どーせさっきので胸に手が行ったんだろ 」 とか思ってんだろ! ところがどっこい、俺が触ってしまってるのはお尻でした〜ざんね〜ん〜じゃねええええええ! 変態! 変態行為だよこれ! 

 

 説明しよう (謎のナレーション風)今、俺はリサのお尻を鷲掴みにしている。これは何故か、そう、段差を降りる瞬間、 あまりの急降下で浮いてる時にリサの姿勢が、俺に抱きつく体位になってしまったのじゃな これは俺が抱きつく腕を離してしまったからであ〜る。以上! 

 

 

 なんとか姿勢を立て直そう……と思ったところで、この速度の上がった状態では下手に動くわけにはいかない。慎重に打開策を考えようものなら、スライダーはくねくねと曲がり、俺の手のひらもくねくね……いや、もみもみと動き、リサに刺激を与えてしまう。

 

「あ……きやさぁん……」

「すまんっ……! 手離せなくて……」

「怖い……」

「────リ、サ……」

 

 滅多に弱音を吐かないリサが"怖い"とこぼした。確かに今、リサは後ろを向いていて、前が見えない状態。そんな中急に段差で体が宙を浮いたりでもすれば怖いに決まってる。

 

 そう言えばここのスライダーの注意事項に『後ろ向きでの滑りは危険なのでやめてください』と書いてた気がする。こういう事か。

 

 彼女のこんな姿を見たのは小さい頃以来だったかな……そんな事を考えていると、リサの両腕が俺の首の後ろに巻かれ、胸と胸がピッタリとくっつく姿勢になってしまった。これにより俺も安心してお尻から動かせなかった手を動かし、リサの背 中に当てる。 早く終わってほしい……という思いと、もう少し今のリサを見ていたいという矛盾した気持ちを持ちながら、俺は滑り続ける。

 

 

 ◇

 

 

 ────心臓の音がうるさい。

 

 リサを抱きしめてるからか? もしかしたら、やっぱり俺も……。

 

 腕の中に収まり、怖がる幼馴染。その温もりがとても心地よくてずっと感じていたい。そう思わせる。

 

 あ、そういえば……こういう危険な時に恋に発展したりするのってなんて言うんだっけ……吊り橋効果……だったっけ? もしかしたら効果あるかなぁ〜なんて思うあたり意外と余裕あるのかな、俺。

 さっきよりも水圧が強まった気がする。それにたくさんの人の声もそれなりに聞こえてきたかも……もうすぐ出口か……。

 

「リサ……あのな! 俺、お前の事す────」

 

 

 ────好きなのかもしれない。

 

 

 言葉に出来たかどうか、それすら分からぬまま俺は、出口にある水面に勢いよく飛び込んだ。リサを抱きしめたまま。

 

『おい、少年大丈夫か!』

『兄さんっ! リサっ!』

『兄ちゃんの方は……意識が飛んじまってるな。そっちのお嬢ちゃんは浅いようだが……一旦運ぶか』

 

 誰か男の人の声が聞こえたと思えば、すぐにムッキムキな腕に担がれ体は宙に浮いていた。あれ……俺まだ滑ってんのか? リサ……心配するなよ、守ってやるからなぁ……。

 

 そこで俺は完全に意識を手放した。

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