「ねぇ、おままごとしよっか!」
「おーう、いいよ。なにすればいい?」
これって……昔のアタシ達だよね? 懐かしいなぁ、よくアタシと友希那と秋也さんの3人で遊んでたっけ。
「うーん、じゃあじゃあ! アタシがおかあさん、秋也さんがおとうさん 友希那がアタシ達の子ども 」
「友希那が……おれの子ども…………ただいまあああ友希那ぁ〜おとうさんでちゅよおおおお!」
「秋也さんはやいよぉ! あと、友希那をあまやかすのはおかあさんのしごとですっ! ゆきなぁ〜」
「……こんなおや、いや……」
結局、その後おままごとが成立する事は無くて、2人で友希那を愛でただけになっちゃったんだっけ……。アタシも秋也さんも友希那大好きだからな〜。
「あ、あき……やさん」
「だいじょうぶだ。かみなりはおそってきたりしないから」
「にいさん……」
「ほら、友希那もこっちおいで」
これは……そうだ。アタシが友希那の家に泊まった時の事だ。あの日の夜は天候が酷く荒れてて、雷の落ちる音でアタシ達、目を覚ましちゃったんだ。怖がってたアタシを秋也さんが自分の布団に入れて安心させてくれたんだっけ……それでピカっと空が光って遅れてゴロゴロと雷の音が聞こえてきて、
「きゃっ!」
「だいじょうぶか!? リサ」
「こ、こわいよぉ……」
「だいじょぶだいじょぶ、おれがついてるからな! ゆきなも……ゆ、ゆきな?」
「あ────(バタッ)」
「ゆきなああああああ!!」
────思えばアタシ……無意識に意識してもらおうとしてたのかな。ずっと秋也さんに甘える可愛い友希那を見てるのが楽しい……って思って秋也さんに協力してもらってたけど、無意識って怖いな〜……って、昔のアタシすっごい恥ずかし い。
◇
「う、うん……あれ、ここは」
「あ、起きた! 秋也さん」
「リサ? えっと……確か俺たちスライダー滑ってて……」
まだ起きたばっかで状況が飲み込めてみたいだね。実際アタシもさっきまで何が何だかサッパリだったし。
「おう、やっと起きたか兄ちゃん! いや〜お前さんなかなか度胸あるじゃねぇか」
「あ、あの時のマッチョメーン!」
マ、マッチョメーン……って、確かに凄い筋肉あるけど、胸に七つの傷付けても違和感なさそうだし、世紀末伝説の始まりっぽい。
……なに考えてんだろアタシ。
「兄さん大丈夫なの?」
「友希那にも心配かけたみたいだな。俺はへいき、へっちゃらだ」
「べ、別に……そんなに心配してないわよ」
友希那ったら秋也さんに頭撫でられて照れてる、可愛いな〜。え、嫉妬しないのかって? うーん流石のアタシでも兄妹のいちゃいちゃに嫉妬はしないよ〜ただ、そのちょっといいな〜とか、アタシにもやってくれるのかなぁ〜とか思ったりするか な。あはは……。
「兄さん、それよりもちゃんとお礼言ったの?」
「お礼?」
「あぁ、意識失った秋也さんを運んでくれた人がマッチョさんなんだよ」
「そうだったのか……それはそれは、ありがとうございました」
ベンチの上に横たわっていた体を起こし、秋也さんはマッチョさん(本名が分からない)に一礼する。
「ふっ、礼なんか要らねぇよ。世の中にはまだ、兄ちゃんみたいな度胸ある奴がいるって分かったからなぁ。それだけでもう礼になってるよ」
「マッチョメーン……」
「そんじゃオレは行くぜ。達者でな」
それだけ言い残し、マッチョさんはどこかへ行ってしまった。全くもって不思議な人だったな。
「……さて、一悶着あったがそろそろお腹も空いてきたよな……どこかで食べようか?」
────チャンス!
「あ、秋也さん! 実は……その、お弁当作ってきてるから……もちろん3人分」
「おお! マジか! ありがとうなリサ」
「ありがとう、リサ」
「う、うんっ! さ、まずはレジャーシート持って場所取りしよっか」
知○袋で教えてもらったとおりにやれば……大丈夫だよね? まずは胃袋から……胃袋から。
◇
さて、意識を取り戻し数十分後……俺たち3人はリサが作ってきてくれた弁当を食べるため、プール内に用意された広場に向かった。ここには芝生が敷かれていて、俺たちと同じくレジャーシートを敷いてくつろいでいる人もいる。 そこでリサの弁当を堪能し、今は……。
「さて、次はどこ行こうかね」
「……あれ何やってるんだろ?」
リサが指さした方を見ると、男が何やら高台に立って何かを叫んでいた。
「行ってみるか」
「おー」
高台のあるステージに向かうと、男の声がよく聞こえるようになった。近くの看板にイベントの詳細が書いてあり、どうやら"大人の主張"という内容らしい。普段、言いたい事が言えない大人のために用意されたとか、何故プールでやるのかは触れないでおこう。
「俺にはー! 好きな人がいる──!」
『だーれぇー!』
「そこにいる君だああああああ! 僕と付き合ってくださ──い!」
「ごめんなさーい!!」
「Oh nooo!!」
────なんじゃこりゃ……。しかも振られたし、主張する事は何でもいいんだな。それにしては凄い空気が重い……。あの人なんて事してくれたんだ。
「さ、さぁ 気を取り直して次行きましょうか! 誰か我こそはという人!」
スタッフさんが何とか気を利かせてくれるが、流石にさっきの見てやってやろう! なんて気持ちになるやつはいないだろう。さっさと違う所に行くか……、
「おっ そこの君!」
「さてリサ、友希那どこ行こっかな〜」
「秋也さん……」
「兄さん……あれ」
知らない知らない。俺はなんにも見てない。何やらこっちを指さしている女性スタッフなんて見えない。
「そこの君だよ! きみに決めた!」
「ぴっぴかち────ってやらねぇよ!」
「やっぱり聞こえてるんじゃん!」
「しまった……」
くっ……ツッコミを誘ったのか、このスタッフ……できるッ! しかしまずいぞ、さっきの空気を見た後にあんなのやるとか拷問だ。
「ねっ? お願い! ちょっと叫ぶだけだからさ」
「なんすかその風俗店の呼び込みでよくある決まり文句みたいなのは……てかさっきのあれが"ちょっと"ですか」
「あ、あれは稀にある事故だよ!」
「ふーん」
「ホントだってば」
一歩も引かない体制がお互い続いていた。その間、ステージに登っているスタッフさんは、次々と挑戦者を高台に立たせている。
「お願いだってば〜」
「絶対にしない」
「ほら……おねがぁい」
このお姉さん、遂に色気使ってきやがった。腕が思いっきし柔らかいのに挟まれてんだよ……。うーん、デカすぎる。ふはは! 残念だったな、俺はデカすぎるのには興味ないんだよ
「……むぅ」
「……なんか可愛い殺気が……と、とにかく! 俺はやらないです」
「これでも?」
そう言いスタッフさんが見せてきたのは、先程見た看板のイベントの詳細だった。それがどうした……と思ったが、スタッ フさんが指を指すところに目がいった。
「"受けが良かった主張をした人は、賞金与えます"だと……これマジ?」
「マジマジ、あそこに立っていった人はみんな、主張前にこれを見てるよ。それじゃ改めて、参加……」
「します」
「よしっ! じゃあ今の人の次だね〜」
────欲には勝てませんでした。だって参加無料だしね! 某クレヨンな5歳児のお母さんだって無料に弱いって言ってたし、無料って言葉は魔力を秘めてると思う。
「という訳で、参加することになった」
「馬鹿ね」
「────グサッ」
「…………」
「リ、リサ……さん 」
友希那だけでなくリサにも何か言われるのか、そう思っていたのだが、何やら不機嫌なリサ姉さんが出来上がっていた。
「大きい方が好きなのかな……」
「リ、リサさん? どうしたんだ?」
「あっ、ううん! なんでもない。それより秋也さんも誰かに告白するの?」
「こ、告白……」
告白ですぐに頭に浮かんだのは、リサに告白する自分の姿だった。しかし、果たしてこんな場所でしていいのだろうか……。
デリカシーの無い人だと嫌われてしまわないか、そう考えてしまう。
「リ、リサは……その、こういう所で告白されたら……嬉しく思うか?」
「ア、アタシ!? う、うーん……どうかな。実際に体験してみないと分かんないや。あはは……」
あまり言い意見は貰えなかった。今だけはチキンと言われても構わない。真剣に考えた末の俺の主張は……、
「俺にはー!! ずっと大好きな奴がいるー!!」
『だぁーれぇー?』
「────だ、誰だろ……」
「俺はー!! 妹が! 大好きだああああああああああああ!! 愛してるぅぅぅぅん!!」
友希那にそっぽ向かれました。