笑わない妹と夢見る頂点へ   作:イチゴ侍

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あらすじにちょこっと追加しました!
本作品はバンドストーリー1章をベースに書いていきます!今の人にとっては昔懐かしのギスギス(?)することが多かった時代です!


気高い姉と俺

『自分が一流の演奏をするためなら、何を犠牲にしても後悔しない』

 

 ある時、一人の少女は音楽に全てを賭けた。 少女には妹がいた。自分とは違い、何をやっても上手い。そんな相反する存在。"天才"と呼ぶにふさわしい妹、そんな妹の憧れは自分。

 そんな事はありえない、自分よりも才能がある妹の憧れが自分だなんて……。憧れとは時に何よりも重い圧力になる。それが次第に自分にのしかかっていく。姉である自分が妹より劣っているそんな事実に苛立ちを感じコンプレックスと化していた。

 そんな自分は、音楽に出会った。これならきっと自分が勝るはず、唯一自分が妹に勝ることのできるものだと。

 そしてひたすら練習した。音楽を奏でるためのギターの腕を必死に磨いた。もっと上を目指せるように、天才()に誇れる様に……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「ふぅ、やっと着いた〜」

「全く、リサが急に寄り道するからでしょ」

「そう言いながらも付いていくうちの妹……可愛いな」

 

 学校が終わり集まった俺たちは、揃ってライブハウスまで向かっていた。そしてスタジオ内に着いた俺たちの耳に届いたのは、ある人物のギター音だった。

 

 

「張り切ってるみたいだな」

「やっほ〜紗夜」

「ごめんなさい、少し遅れてしまったわね」

「大丈夫です。私が少し早く来すぎただけなので、時間には間に合ってます」

 

 彼女がRoseliaのギター担当、氷川(ひかわ)紗夜(さよ)だ。クールで正真面目、無駄なものに時間は裂きたくないというかなりきっちりした性格。

 

 

「秋也さん、新しい曲の案は出来ましたか?」

「いや、それがまだ全然でな……紗夜姉さん(・・・)は何かないか?」

「はぁ……そうでした。曲よりもまず、そのお義姉さん(・・・・・)っていうのをやめてもらいたいのですが……」

「え、だって俺にとっては姉さん(・・・)みたいなもんだし……」

「あなたにお義姉さん(・・・・・)と呼ばれる筋合いはありません 」

「ええー、じゃあしょうがないか」

 

 実のところ、俺が紗夜を姉さん付で呼ぶには理由があって、紗夜には妹がいる。紗夜はあまり妹の話は好んで話さないのだが、Roseliaでも彼女は姉の様な姿でそれがとてもカッコよくて、簡単に言うと憧れだ。

 兄と姉、性別は違えど家族内では同じ位置にいる存在。俺もカッコイイ兄でありたいとそう思う。憧れの意味も持って姉さんと呼んでいるのだが、何故か本人から拒否されてしまう。

 

 

「うーん、あの二人ちょっと話が噛み合ってないんだよなぁ……」

「紗夜が私の義姉……」

「ゆ、友希那? おーい多分それは違うと思うよ?」

「……はっ、私は何を……」

「二人共、今のうちに練習の準備しといてくれよ」

 

 何やら二人が話していたようだが、俺の声で友希那はそそくさと発声練習へ。リサは、ベースをケースから取り出しチューニングを始めた。

 俺はというと……、

 

 

「…………」

「……っ、何か用ですか」

 

 やっとこちらに気付いてくれたのか、はたまた気づかぬふりをしてたかは分からないが、何か用と言うわけじゃないので答えに困ってしまった。

 

 

「いや、ギター握った時の紗夜はやっぱカッコイイな〜と思ってな」

「そうですか 」

「ああ、なんというか風格が出てて、完璧って感じがする」

「私は完璧じゃありません。まだまだ上を目指せるはずです」

 

 そう答える彼女の見据える場所は、もっと先、どんなに他人が完璧と訴えても彼女は満足しない。こういう性格がどうもうちの妹と似てる。そのせいか、必要以上に気になってしまうのだ。

 でも俺には紗夜が何故そこまでこだわるのか、それが分からない。今のままでも紗夜のギターは最高だと思う。そう言っても紗夜は決まって「まだまだ」と返してくる。だから俺は紗夜の口から「最高だった」と聞くその時を密かに楽しみにしてたりする。

 

「やはりここが上手くできませんね……」

「お、どこだ?」

 

 見ていると紗夜が、眉間にしわを寄せてまで試行錯誤していた。

「可愛い顔が台無しだよ☆」とか臭いセリフ言おうとしたけど、どこからか殺気を感じたからやめた。 紗夜から上手くできないとされる場所を見ると、Roseliaの代表曲と行っても過言じゃない『BLACK SHOUT』の間奏で紗夜がパフォーマンスとしてギターソロをする場所だった。ちなみに俺が提案してたりする。

 

「ここは紗夜姉の好きに弾いてくれていいんだぜ 大して深く考えなくていいと思うんだが……」

「いえ、好きにと言われても……今まで決まった (メロディー) しか弾いてこなかったので、どんな事をすればいいのか……」

「あぁーそういう事」

 

 真面目であるがゆえの悩みってやつか。今までこれやって、あれやってと決められた事しかやって来なかった人が、突然自由にやってと言われて何をすればいいか分からなくなる。そんな一種の症状に(おちい)ってるわけか。

 

 

「ちょっと失礼……」

「あ、秋也さん な、何をしているんですか」

「ん 肩の力を抜いてやろうとしているんだろうに、ほらリラックスリラックス〜」

「ちょ、ちょっと!」

 真剣になりすぎて肩がガッチガチに固まってた。俺は、紗夜の肩を上げて落とす動きをさせる。もちろん腕、肩以外は触ってないからな。

 決してすらっとした腰周りに目が行ってるわけじゃ……。

 

「ほれほれ〜もっと楽になりな」

「言葉から何だが下心が見えますよ。後、視線を感じるのですが……」

「ん 俺が腰を見る視線しか無いはずだが」

「どこ見てるんです!」

「さぁさぁ もっと体を柔らかく……そうすれば見えてくるはずだ自由な演奏が!」

 

「確かに演奏には自由も必要よね」

 

「そうそう、分かってるな〜流石俺のいもう……と…………妹ッ!?」

 

 その時、紗夜の後ろに回る俺がチラッと見えた光景、冷ややかな目をこちらに向け腕を組む我が妹の友希那と「どんまい」と言わんばかりに苦笑いのリサだった。

 

「いや、あの……これはだな。ただ紗夜に自由な演奏をできるようにと、体のストレッチを……」

「随分と楽しそうだったわね」

「んぐっ……」

「後さっきから目線が紗夜の腰ばかり、鼻の下は伸ばしてるしはっきり言って下品」

「ぐはぁっ!」

 

 

 そして俺は、妹の最後の一撃によってくたばった。最後に見えた景色は、妹が隠れてぷくっと膨れている姿と「破廉恥です……」とブツブツ呟く紗夜の姿だった。

 

 

 ◇

 

 

「すいません……遅れました」

「ごめんなさい……って、秋也さんどうしたんですか?」

「あ、燐子(りんこ)にあこ! これは……その〜、あはは……なんて説明しよう?」

 

 Roseliaメンバー最後の二人がやって来て見たのは、血(どこから出したのか不明のケチャップ)を吐き、地に伏せる秋也と、それが見えないかのように振る舞う友希那と紗夜だった。

 

 

「二人とも遅いわよ。すぐに練習始めるから位置について」

「は、はい……」

「あの〜秋也さんは「無視してちょうだい」わ、分かりました 」

「……おーい秋也さ〜ん。だめだ、返事がない。ただのしかばねのようだ。ってね」

 

 こうして一つの死体(秋也)が転がるライブハウスにて、Roseliaの練習が始まった。




孤高の歌姫なんて二つ名が付いてた頃の友希那に兄がいたら?なんて想像から始めた作品でしたねー(しみじみ)

この作品では氷川姉妹の仲はまだ初期状態です!
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