笑わない妹と夢見る頂点へ   作:イチゴ侍

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浴衣の幼馴染と妹と俺

 

 

 友希那たちを囲っていた男ファンを秋也が引き連れて行ってから数分後、祭りが始まる時刻となりたくさんの子供達やカップルで賑わい始めていた。

 Roseliaのメンバーはというと、友希那とリサを含め燐子とあこの4人が集まっていた。 しかし未だに紗夜だけは来ていない。

 

「紗夜さん遅いなー」

「うーん、来るとは言ってたんだけどな〜……もしかしてアタシ達みたいに囲まれてたりして」

「氷川さん……1人で大丈夫でしょうか」

「それは無いわね。紗夜なら私たちのように戸惑うこと無くしっかりと対応するはずよ」

「"お気持ちは嬉しいですが、今は急いでいるので失礼します"みたいな!」

 

 喋り方は何処と無く特徴を掴んでいるあこによる紗夜のモノマネは、リサのツボに入ったようで肩を震わせて笑っていた。

 

 

「────ちょ、あこ……も、もいっかいやって……」

「リサ」

「は、はい……すいません」

 

 止めが効かなくなりかけたリサを友希那は一声で静める。 その時のリサの姿は、まるで悪戯がバレて母に叱られる子供のようだった。

 

 

「はぁーしっかし、あこのモノマネは面白いな〜」

「むぅ……あこは本気なのに」

「前にもアタシのマネした時も面白かったな〜……って、あぁごめんってば、そんなに膨れないでよ〜」

「……そんな事もあったわね」

 

 それは以前、リサと秋也が練習に来られなかった時の話だ。いつもリサがいることによって成り立っていたRoseliaは、いざリサがいなくなってみると、雰囲気が悪く、そんな空気を変えようとあこがリサの代わりに盛り上げようと────リサになりきろうとした結果、友希那には伝わらず空振りで終わってしまったという事があった。

 その後、その時あこがリサのマネをしていたと友希那が聞いたところ「似てない」や「リサはそんなんじゃないわ」とボロボロに言われていた。

 

 

「あ、あの……氷川さんから連絡が、ありました」

 

 3人がやり取りしてる間に燐子は、紗夜にLI◯Eでメッセージを送っていた。返信には『妹と行くことになりましたので、皆さんは先にお祭りを回っていてください。もちろん直前の顔合わせには行きますので』と書かれていた。

 

 

「そっかー、ならアタシ達も祭りに乗り込まなくっちゃ 」

「あこ、チョコバナナ食べたい! りんりん行こっ!」

「あ……待って、あこちゃん……!」

 

 これと決めたら止まらないあこは、燐子の手を掴んで颯爽と人混みの中へ入っていった。

 

「ちょっと、まだ兄さんが……って、もういない……」

 

 走り去ってから未だに戻ってこない秋也を皆で待とうと考えていたが、2人とも行ってしまったため待とうかどうかを残った二人は考える。

 

「……兄さんならちゃんと戻ってくるわよね」

「うん、多分……? うぅ……秋也さんとのお祭りデートがぁ……!」

 

 リサは携帯を取り出し、"秋也に先に行ってます"とメッセージを送り、2人の後を追うように神社に続く階段を登っていった。

 

 

 ◇

 

 

「あの男どこに行きやがった……」

「まだ遠くには行ってないはずだ! 探し出してシバくぞ!」

 

『おおー!』

 

 ────くそっ、なんでこうなった。

 

 本当なら今頃、友希那と一緒に食べ歩いたり、リサとデートできたのに……。どうして俺は会場とは反対のこんな茂みに隠れているのだろうか。

 いや、元はと言えばリサがあんな爆弾投げなければ……いやこれはもういい。困ってた2人を助けるきっかけになったんだ。

 

 しかしまさか、ここまでRoseliaの人気が上がってたなんて、夏フェスの効果を侮ってた。これからは俺も身の振り方を考えるべきか……でもリサや友希那と離れろなんて言われても無理な相談だぞ、兄妹なんだし彼女だし。

 

 茂みの中で"うーん"と唸っていると、向こうの歩道から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「うーん楽しみだな〜お祭り!」

「ええ、そうね」

「あれ……今おねーちゃん笑った!」

「……私をなんだと思ってるのよ」

「鉄人?」

「ひーなっ!」

 

 ────この声は氷川姉妹か。 いつもとは紗夜の声のトーンが少し違ったので一瞬気づかなかったが、日菜ちゃんが"おねーちゃん"と呼ぶのは紗夜だけのためそこで分かった。

 

 2人に助けを求めようか……? いやでも逆に火に油を注いでしまうことになる。紗夜はともかく、日菜ちゃんだって今や名の知れたアイドルだ。下手をすれば先程よりもひどくなる可能性だってある。

 

 悩みに悩む俺は、何かないかとポケットを漁ってみる。すると、右ポケットからいつ買ったかも覚えていない100均のサングラスが出てきた。

 そして取り出すと同時に紙切れも出てきた。そこには、

 

 "困った時は使いたまえ"

 

 とだけ書かれていた。字から察するに男? だ。まさか逃げる時の人混みで誰かが!? 

 

 まぁ、いつ入れられたのかは定かではないが、目元を隠せるのはありがたい。

 2人に声をかけようか迷ったが、巻き込む可能性もあったので静かに当初の目的通り祭りの会場に戻ることにした。

 

 

「ねぇ、おねーちゃん。あれってあき君じゃない?」

「あのサングラスの……?」

「おーい! あき君〜!」

「ちょっと日菜! 人違いだったらどうするのよ……」

 

 おーい、と無邪気にサングラス装着の俺を呼ぶ日菜ちゃん。やめてくれ……そんなに注目を浴びさせられるとあいつらに感づかれる。

 てか、なんで俺だってバレてんだ? まだ会って数回ほどだったろ。

 

「こら日菜、反応がないってことはやっぱり違うのよ。それに秋也さんがこんな所にいるわけないでしょ」

 

 ────それがいるんですよ、紗夜ぉ! 

 

「うーん、それもそっか。ゆきちゃんと兄妹なんだから一緒にいるか」

 

 ────それが一緒じゃないんですよ! 日菜ちゃぁん! しかし俺じゃないと分かったのか、それ以上日菜ちゃんが呼ぶ事は無く、俺は駆け足ながら逃げてきた道を戻るように歩いた。

 

 

「……あき君も大変なんだな〜」

「日菜、何か言った?」

「ううん! なんでもない。それより、早くおねーちゃんにもネオアームストロングサイクロンジェットアームストロングポテト見せてあげたいな〜」

「あなたよくそんないい加減に付けたような名前覚えてるわね」

「でもでも、すっごい大きいんだよ! それ1本だけでLサイズの普通のポテト10個分くらいあるかも 」

「そ、そんなものが……」

 

 少し離れた所から聞こえる姉妹の話。紗夜がまた1段と、ポンコツの道を歩んでいるのだと確信した俺だった。

 

 

 ◇

 

 

「やっーと来た!!」

 

 無事サングラス効果で戻ったこれた俺だったが、早々にリサ達と合流することが出来た。

 

「悪い悪い、なかなか振り切るのに時間がかかってな……」

「アタシの方こそごめん! 秋也さん囮に使っちゃって……」

「いやいや、二人のためになったなら良かった」

「ほんっとにごめんなさい!」

「────あら、兄さんやっと来たの」

「おおー友希那!」

 

 さっきはドッタンバッタン大騒ぎだったため、浴衣姿をよく見れず感想を言うこともままならかった。だが、ようやくきちんと見ることが出来た。 多分友希那はどんな格好でも可愛く着こなしそうだが、今着ている黒の布地に青い薔薇の模様が描かれてる浴衣は、友希那 をより綺麗にしている。

 まるでRoseliaという名前を具現化したかのような浴衣だ。 しかし人の目もあるため熱弁するのは少々恥ずかしさがあるため、ここではありきたりな感想で我慢してもらおう。

 

 

「────ってことでよく似合ってるぞ!」

「何が"ということ"かは分からないけれど、浴衣のことだってことは分かるわ。ありがと……」

 

 白い素肌をほんのり真っ赤に染め俯く友希那だが、絞り出すような声で伝えようと続ける。

 

「……そ、それよりもっと先に伝える人がいるでしょ……」

「あ……」

「……え、アタシ?」

 

 まるで予想外って顔してるリサ。

 オレンジ色ベースで、赤や白に黄色といったカラフルな蝶のシルエットが描かれていて、それはまるで暖かい夕日の中でたくさんの色をしている人を包んでいるようだった。

 

 まさに今井リサだ。

 

 

「えと……よく似合ってる。ぶっちゃけ惚れ直した」

「うっ、うんうん……ありがと、ありがとう」

 

 どうやら満足してくれたみたいだ。

 

「それにしても他のみんなはどこいったんだ?」

「みんなそれぞれ先に行っちゃったわ」

「そっか〜でも待っててくれてありがとな二人とも」

 

 "先に行ってる"と書いていたのにも関わらず、入口付近からそこまで動かず佇んでいた。二人の姿を見つけた時は、思わず頬が緩んでしまった。

 

 

 

「よし……しょうがない、3人で回ろっか」

「ええ」

「あっ、ちょっと待って……」

 

 そう言うとリサは俺と友希那の間に割って入ると俺と友希那の手を繋がせて、元の位置に戻ると今度は俺の手を取り恋人繋ぎをしてきた。

 

 

「これで3人一緒!!」

「────だな!」

「そうね」

 

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