『おねーちゃんみたいなカッコイイドラマーになりたい』
ある娘は自分の姉に憧れる。 彼女は姉を"世界一カッコイイドラマー"だと尊敬してやまない。例えどんなにかっこよくドラムを叩く人が他に現れたとしても、姉が一番だという気持ちは変わらないだろう。 そんな彼女にも、もう一人カッコイイと評する人がいる。その人は、孤高の歌姫と呼ばれるボーカリストだった。
────彼女とバンドを組めたらきっと自分も姉と同じカッコイイドラマーを目指せるだろうか……。
そんな思いだっただろう彼女は、歌姫が作り上げるバンドに入る意思を固める。
◇ ◇ ◇
学生にとって地獄の平日を終え、つかの間の
「いや〜今日もいい天気だな」
「そうね、で? なんで今日は出掛けることにしたの」
「気分だ」
そこ! ただ計画を立てるのが苦手なだけだろ……とか言わない。たまには行き当たりばったりもいいだろ!毎日がきっちり計画通りな日々とか、考えただけで疲れる。
「はぁ……兄さんの事だからそんなことだろうとは思ったけど……」
妹よ、そんな哀れんだ目でお兄さんを見ないでくれ……。
「しかしなんで付いてきてくれたんだ 」
「兄さんを監視するためよ……」
「えっ?」
若干今のヤンデレっぽかったぞ……。いつの間に我が妹にヤンデレ属性が付いてたなんて、しかしそれでも可愛いから良い(※シスコンです)
「ちょっと目を離したらすぐ女性に鼻の下伸ばすじゃない」
「それじゃまるで俺が節操なしみたいじゃないか 」
「本当の事」
「ぐっ……」
返す言葉もない。元に先日、燐子を送っていく際におんぶしていたが、そこでドキドキしていたのだから。
「さ、さぁ〜どこに行こうかなぁ 」
「話逸らした……」
この調子だと俺、一生妹に勝てないんじゃないかと思えてきた。これじゃ兄としての威厳が無くなる。
なんて、思いながら噴水がある広場をキョロキョロと見渡していると、人混みの中で何やらぴょこぴょこと動く紫色のツインテールが見えた。
「なぁ友希那。あそこにいるのって……」
「え? 私には見えないのだけれど」
俺と身長差があるため、友希那の背では人混みで見えないらしい。
「あぁそっか……それじゃ────」
「ちょ、ちょっと兄さん な、何を……」
俺は横に立つ友希那の後ろに周り、ひょいと持ち上げる。そしてそこから肩車の姿勢に変える。
「どうだ、見えるか 」
「に、兄さん……や、やめて……」
「ん? よく聞こえん」
「あ、あこがいたから……」
「お!やっぱりそうか。あこー!」
友希那を肩車したまま、先ほど見えた場所に向けて名前を呼んでみる。すると、
「……? この声、秋也さん……って、あれ友希那さんだ〜! おーい!」
「お、気付いたみたいだ……「兄さん……早く降ろして」あ、忘れてたすまんすまん」
ゆっくりと友希那を肩から降ろす。その時、とびっきり顔を真っ赤にさせた妹にめちゃくちゃ睨まれた。
◇
あの後、友希那に睨まれながらも無事合流し、俺たちは近くのカフェに立ち寄った。
「いや〜奇遇ですね! こんな所で会うなんて。二人はお買い物ですか?」
「うーん。まぁそんな所だな。あこの方こそ何してたんだ?」
「あこは〜……じゃなかった。────わらわは、買い物に行くところじゃぞ 」
わざわざ喋り方を変えんでも……とは思うがこれがこいつ、あこの性格というか、なんというか。
とにかく"カッコイイ"という言葉に弱いあこは、日々カッコイイ自分になるために色々と頑張っているのだとか。
「なんか買いに来たのか?」
「それは秘密ですよ〜」
あ、そこは喋り方変えないんだね。こいつの中でのルールがよく分からんな……。ちなみに一方、うちの妹はと言うと……、
「すいません。この猫パフェ一つお願いします」
「かしこまりました! こちら注文していただいたお客様にお配りしております。どうぞ 」
「ありがとうございます。……猫」
絶賛、勝手に取ってつけたような名前のパフェを注文し、猫がだらしなくお腹を見せてるふわふわのストラップを頂いて感極まっていた。
あ、陰に隠れてスリスリしてる……可愛いから無音でパシャリ。
「しっかし、あこって私服おしゃれだよな。めっちゃ似合っててなんというか、かっこいい」
「かっ、かっこいい……!」
するとあこは少々照れくさそうに頭の後ろに手を当てて、にゃはは〜と頬をほんのり紅くさせて笑っていた。
「あ、ありがとうございますっ。こうやって真正面から言われると……照れちゃいますね……!」
「そっか、てかそれってどこで売ってるんだ?かなり高いブランド物の様な感じがするが」
「実はこれ、りんりんが作ってくれたんですよ! すっごいかっこよくてあこのお気に入りです!」
「これを燐子が!?」
驚いた……あの子、どれだけスペック高いんだ 実を言うと、Roseliaがライブで身に纏う衣装、あれも燐子作成なのだ。しかし、まさかここまで凝った服を作れるとは……。俺も作ってもらおうかな。
「でも、すっごい嬉しいですね! 似合ってる、おしゃれだって言ってもらえてあこだけじゃなくて、りんりんも褒めてもらえてるようで。本当に嬉しいです 」
何気なく言った言葉でここまで喜ばれるとは思っていなく、何故かこっちまで嬉しくなってくる。
あこと話しているとほんと退屈しないな〜なんて意外な発見ができた。計画無しにぶらぶらするのも悪くないだろなんて、二人してパフェを頬張る姿を見て思う。
「秋也さん!これすごい美味しいです」
「それは良かったな。……ったく、ほら口にクリーム付いてるぞ」
「え、えっ! ど、どこですか 」
「はいはい、取ってやるからじっとしてな」
こうしてると、なんだが妹が増えたみたいだな。あこみたいなのは、妹分って言うんだっけな。ティッシュで口についたクリームを拭き取る。
今のなんか卑猥な表現だな……。
「よし、取れたぞ〜」
「えへへ〜ありがとうございます♪」
「…………」
何でしょう、やけに隣から視線を感じるのですが……恐る恐る横を見ると、わざとらしく口にクリーム付けた我が妹がいるではないか。しかもとんでもない量のな。
「ゆ、友希那」
「兄さん。私も口にクリーム付いちゃったみたい」
「なぁ、友希那」
「早くとって欲しいのだけれど……なに?」
ふぅ……と一息付き、
「甘えるの下手か!!」
もちろんその後、ちゃんと拭き取ってあげた。