笑わない妹と夢見る頂点へ   作:イチゴ侍

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ここからガルパ初のバンド単体イベだった「思い繋ぐ、未完成な歌」のストーリー沿いになります!


LOUDER編
新曲案と繋ぐ手と俺


『新曲がやりたいですっ! 』

 

 事の発端はもうすぐに迫っているライブに向けて、練習していた時のことだ。

 今回のライブでRoseliaが歌える楽曲は、3つ。我らがボーカルの友希那が曲の希望を聞いたところ、あこから〝新曲がやりたい〞と要望があったのだ。

 

 

「確かにその案はありかもな。既存の曲でもいいんだが、俺たちRoseliaはまだまだ楽曲が少ないだろ 」

「かと言ってライブまでほとんど時間がありませんよ? 新曲もいいかもしれませんが、やはりここは今ある曲の精度を上げるべきです」

「でもでも! いっぱい、いっぱ〜い練習すれば、ライブまでには間に合うと思います……っ! 」

「中途半端な演奏はできない。分かるわよね? こんな短時間で、しかも他の曲の練習もあると言うのに、果たしてそれで新曲を妥協せずに演奏できるかしら? 」

 

 確かにあこの新しい事に挑戦したいって気持ちは分からないでもない。しかし、このRoseliaっていうバンドは、"一切妥協のない完璧な演奏"を目的としている。それゆえ、紗夜にも一理ある。

 

 

「うぅ……で、でも……っ! 」

「あ、あこちゃん……落ち着いて……」

 

 それでもなかなか引かないあこ。このままでは決着が着きそうにもないな……。

 

「おい、そろそろスタジオ出る時間だぞ?」

「それじゃ、明日の練習までにセットリストを考えてくること、いいわね 」

「はーい! 」

「は、はい……」

「わかりました」

「それじゃ〜解散っ 」

 

 今日の練習は、友希那の言葉によってお開きとなった。そしてスタジオを出て各自それぞれの帰路についた。俺たちと家がお隣のリサは、そそくさと先に帰っていき、俺と友希那は2人で家に向かっていた。

「ねぇ、兄さん」

「お? どした」

「…………」

「……」

 

 無言になってしまった。妹が何やら言いたげな様子なのだが、妙に貯めているのかどうか分からないが、とりあえず本人から話すまで待つとしよう。

 暫く無言が続いた後に、遂に何か考え込んでいた友希那が口を開いた。

 

「兄さん……その、手……」

「ん 手がどうしたんだ 」

「……手、繋いでいいかしら……」

「そうかそうか〜……って、へっ? 」

 

 なんという事だ……これは夢か? 幻か? 小幅合わせて歩く隣の妹は、見てわかるほど右手をぶらぶらと揺らしては俺の左手を誘っていた。

 

「だ……だめかしら?」

 

 そう聞いてくる友希那からは、先程までステージの上にいた"Roseliaのボーカル"の面影は一切なく、"孤高の歌姫(ディーヴァ)"なんていう肩書きも存在しない。

 この場にいるのは俺の妹、湊友希那だ。俺が一番大好きで大切な妹だ。兄の俺が、そんな可愛い妹のお願いを聞かんでどうする? 

 

 

「……ほら、これでいいか? 」

「っ……ありがとう」

 

 滅多に触ることのできない妹の手のひらは、とても暖かく、少しでも力を入れてしまえば壊れてしまいそうなほど繊細で、ずっと繋いでいたい。そんな気持ちにさせる温もりがあった。

 

 

「そういえば、リサからクッキー貰ったんだよ。食後にでも食べるか?」

「ええ」

「ちゃんとお前が好きなはちみつティーも買ってきてあるからな」

「ありがとう、兄さん」

 

 少し声から嬉しさが伝わってきた。もうずっと一緒にいるからか、細かな声質だけで友希那の喜怒哀楽が分かってしまうようになったな。

 

 

「少し言い過ぎたかしら……?」

「今日の事か? 別に間違っちゃいないよ。でも同時にあこみたいな冒険心も持っておくべきだな」

 

 話はそこで終わった。

 もう少し、コミュニケーションが取りたいところだけど……今はこれでいっか。

 

 

 ◇

 

 

 練習を終え家に帰ってきた私は、晩御飯を済ませ自室に戻ってきていた。部屋に入るなり、私の頭ではライブの事でいっぱいになっていた。

 

 

「……ふぅ。セットリスト……」 私たちが次のライブで演奏できる曲はカバー込みで6曲。私の中で、いや、きっとメンバー全員の中で最初の曲は決まっていると思う。

 

 

(あとの曲は……確か押入れに前に演った曲のスコアが…………ん? こんなのあったかしら……?)

 

 そこには、私の物ではないであろう一つのカセットテープが置いてあった。

 

(この字……もしかして、お父さん )

 

 でもどうして私のところにあったのだろう。お父さんの物だった"音楽関係の品は全て捨てられしまった"はず……。何かの拍子に紛れ込んでしまったのだろうか。

 

(確認のために……)

 

 そこからは記憶が妙に曖昧になっていた。何のために押入れを開いたのか、その理由さえ忘れていた。

 その時の私は、傍から見れば心ここに在らず……といった感じだったのだろう。 ────それほどまでにカセットテープの中身に驚愕した。

 中に入っていたのは、昔、お父さんがまだバンド活動していた時の歌声だった。

 

 とてつもないほどのシャウト、そして心をこれでもか、と言うほど揺さぶる感覚……激しい音色の中に感じるお父さんの音楽への"純粋な気持ち(・・・・・・)"それが骨の髄まで響いて伝わってくる。

 

 

(この曲、歌ってみたい……。でも、果たして今の私に歌う資格があるのかしら……)




この頃のロゼ曲ってカバー合わせても3〜4曲くらいだったの覚えてますね笑
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