笑わない妹と夢見る頂点へ   作:イチゴ侍

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とある男の曲と俺

 そして翌日。放課後俺たちは、いつものスタジオに集まっていた。

 

「よーし、これで全員そろったみたいだね。それじゃあ、セットリストについて話し合おっか」

 

 昨日、各自に出した課題をそれぞれ考えてきて、今リサが結果をまとめているところだ。

 

 

「えーと、みんなが考えてきてくれたリストをまとめると1、2曲目は満場一致で決まりって感じか」

「ええ、賛成よ。3曲目はこのまま勢いにのっていくか、緩急をつけるべきか、考えどころね」

 

 1,2曲はどれも激しい言わばテンションが上がる曲だ。客の盛り上げ方にもいろいろあって、最初はしっとりとした曲で攻め、最後にドーンっと盛り上がる曲を持ってくるバンドもいれば、初めからMAXな盛り上げ方もある。

 

「あこはこのままバーン! って行きたいですっ!」

「アタシも賛成! 今回は全曲アゲていきたいな」

「ちなみに俺も賛成」

 

 あことリサに同意見だった。逆にうちのバンドにそこまでしっとりとした曲があるのかと言われれば無い。一方、別名Roseliaの最後の壁と言われる(※言われません)紗夜はというと、

 

「盛り上がりも大事だけど、ずっと同じテンションの曲では、単調に聞こえてしまう可能性もあるわ」

 

 これもまた一理ある答えが返ってきたもんだ。さて、こんな時うちの妹なら黙っていないはずなのだが。

 

 

「ゆ、友希那?」

 

 おかしいっていうよりか、朝からやけに静かというか、考え込んでいるというか。

 

「うーん、紗夜の言うことにも一理あるなぁ〜」

「……」

 とんとん拍子で話が進む中、今もなお何か考えている友希那。そして、燐子もまた、いつもと様子の違うことにきずいたらしく俺に耳打ちしてきた。

 

「秋也さん……友希那さんの様子、おかしい気がするんです……何か知ってますか?」

「いや、俺もさっぱりなんだ。今朝からずっとあの調子でさ」

「なにか……悩み事でしょうか」

 

 悩み事ならいつでもお兄ちゃんが聞いてあげるのにな……某シスコンな兄なら、妹の人生相談の相手にされてたりギャルゲープレイさせられてたりでとっても羨ましいってのに……俺と来たら相談は愚か、一緒に遊ぶ事さえやってこなかった。

 ……はっ そうか、友希那が悩みを打ち明けてくれないのはそのせいか! そうなのか…………頼れないお兄ちゃんでごめんよぉぉぉぉぉ!! 

 

「あ、秋也さんっ……! そ、そんなに頭打ち付けたら……怪我しちゃいますよ……」

「止めないでくれぇ! これはダメ兄貴な俺への罰なんだああああああ 」

「ど、どうしよう……こういう時ってどうしたらいいんだろう……」

「な、なにやってるのさ……秋也さん」

 

 俺が何度目かも分からない頭突きをする時に、今まで話し合っていたリサが苦笑いでやって来た。

 

「こ、これはその……」

「何も言わないでくれ」

「ん〜 まぁ、とりあえず秋也さんは頭上げて……ほら」

「かたじけない……」

「いつの時代の人さ。それより、友希那がなんか聴かせたい曲があるんだって」

「友希那が?」

 

 そこには、一つのカセットテープを取り出し曲をかける準備をする友希那が見えた…………って、あのテープ! なんであいつが持ってるんだ? ということは、今から流れる曲は親父の……。

 

 案の定、カセットテープから流れた曲は一番この中で俺がよく知っている曲だった。とても懐かしい、激しくも繊細な……それでいて親父の"楽しい"っていう感情が滝のように溢れ出している歌声。

 ────もしかしたら友希那のやつ、これを演るきか? だとしたら……いいきっかけになるかもな。

 

 全員が無言のまま、曲は終わりを迎えた。

 

 

 ◇

 

 

「…………ごい」

 無言の空気の中、最初に口を開いたのはあこだった。

 

「すごい、すごいっ……すっごーい!! カッコいい! 超カッコいいですっ! ね、りんりん!」

「う、うん……! すごく……素敵な曲」

「あこ、この曲ライブで演奏してみたいっ! お客さんだって絶対ぜ〜ったい、わーって盛り上がるよ 」

「あはは、完全に気に入ったみたいだね。まぁ、アタシもこの曲好きだな〜♪」

「確かにこの曲は良いと思います。けれど……この曲は一体、誰の曲なのかしら 」

 

 紗夜から当然の疑問が出た。多分この中で薄々感ずいてる奴は、俺と友希那を除いてはリサだけだろう。その他は3人とも、この声の主が誰なのか想像もついてないだろうな。

 

「そ、それは……」

「ねぇ、友希那、この曲ってもしかして……」

「ああ、それは俺達のおや「……いえ、やっぱりこの曲は今のレベルには見合わない」……ゆ、友希那?」

 

 何故か遮るように友希那は話し続ける。

 

「ごめんなさい。余計なことに時間をとらせてしまったわね。今の事は忘れて、改めてセットリストを考え直しましょう」

「えぇ〜っ かっこいい曲だと思ったのになあ……」

「…………」

 

 あくまで親父の事は伏せていたいって事か。

 ……それにしても、〝レベルに見合わない〞ってどういう事だ? 今のRoseliaならこの曲を、親父の曲をもっとさらによくできるはずなのに……。それとも何か、別の……友希那を躊躇わせる理由があるのか? 

 

 悶々としたまま今日も練習が終わった。

 

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