とある科学の一時停止   作:ガイドライン

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一時停止と「ヒーロー」の一日目②《ゴウカ》

炎と煙が晴れてみれば、辺り一面は地獄だった。

金属の手すりは飴細工のようにひしゃげ、

床のタイルさえも接着剤のように溶け出している

壁の塗装は剥がれてコンクリートが

剥き出しになっている

 

少年の姿はどこにもなかった

だが、階下の通路を走り抜ける足音が1つ

ステイルの耳に届いた

 

 

 

ステイル=マグヌス

イギリス清教第零聖堂区

「必要悪の教会(ネセサリウス)」所属の魔術師。

専門分野はルーン魔術(炎属性特化)で、

「魔女狩りの王」、「炎剣」などの 術式を使う。

魔法名は「Fortis931

(我が名が最強で ある理由をここに証明する)」。

 

 

身長2mという非常な長身痩躯に、

肩まで届く長髪は真っ赤に染めている。

背の割に顔立ちは幼さが残っており、

上条や小萌からは年齢相応に見られる。

耳には大量のピアス

十指全てに大きな指輪をゴテゴテと嵌め、

右目の下にはバーコードの形の刺青が彫られ、

常に香水臭いという特徴だらけの容姿。

服装は常に漆黒の神父服を着込んでいるが、

このような派手な外見ゆえに

よく「不良神父」と形容される。

 

 

 

 

 

「………、『魔女狩りの王(イノケンティウス)』」

 

 

 

 

 

ささやくと、辺り一面の炎は人のカタチを取り戻し

手すりを越えて足音を追う

 

その先には上条 当麻がいる

幻想殺しを右手に宿すlevel0がいる

そしてステイルの後ろには

怪我をしている女の子がいる

 

 

 

インデックス

イギリス清教第零聖堂区

「必要悪の教会(ネセサリウス)」に

所属するシスターにして魔術師の少女。

10万3000冊の魔道書を記憶する

「禁書目録」という 過酷な役割を担っている。

魔法名は 「Dedicatus545

(献身的な子羊は強者の知識を守る)」

 

完全記憶能力によって10万3000冊の魔道書を

記憶している「魔道書図書館」を担っている。

それ故にその身を魔術師に狙われる ことも多い。

 

 

 

そしたインデックスとステイルは同じ

必要悪の教会に所属しており、

インデックスはステイルから追われ

いまこうしてインデックスは怪我をしている

 

ステイルは言っていた

インデックスを保護すると、

しかしその保護対象をどうして怪我させる必要がある

守る人をなんで怪我させてまで保護を

いや捕まえる必要性があるのか??

 

インデックスの10万3000冊の魔道書の価値が

どれ程のものか未だにピンときてない

だけど怪我させてまで守るものなのか??

こいつらは「インデックス」を見てないのか??

 

 

 

だからだ、上条がその右手を振るったのは

科学では説明できない力を前に

驚き恐怖し、どうすればいいのか分からなくても

上条は決意したのだ、小さな女の子を

追われているのにも関わらず

巻き込まないようにと戻ってきてくれた女の子のために

この右手で守ろうと決意したのだ

 

 

 

しかしその右手でも打ち消せなかった

ステイルの使う魔女狩りの王(イノケンティウス)を

 

教皇クラスの高度な炎魔術で、

ステイルの得意術式にして切り札。

その名の意味は「必ず殺す」

摂氏3000度の炎で形作られた

巨人を生み出し自在に操る術式。

外観は、重油のような黒く

ドロドロとした人型の芯を軸に、

深紅に輝く紅蓮の炎が燃え盛っている。

その超高温から、どんな物でも触れるだけで

焼き尽くす或いは溶かし落とす事ができ、

さらに巨人自体の拳や同種の炎で出来た

十字 架を武器として振りかざし、

爆発させて爆風や衝撃波を起こす事も可能

圧倒的な攻撃力を誇る。

一度発動すると核であるルーンを

全て破壊しない限りは無限に再生を繰り返す

 

 

そうその右手でも消すことの出来なかった

まず対策を打つために、ここで倒れないように

この場から離脱した上条なのだが

 

 

 

「君には出来ないよ

この建物に刻んだルーンを完全に

消滅させるなんて君には絶対に無理だ」

 

 

「ルーンってこれですか??」

 

 

 

 

「うおっ!!!

なんだ君は!!!??」

 

 

 

 

突然、目の前に少年が現れた

なにも前触れもなく突然にだ

それも手にはルーンを持っている

 

学生寮にはほとんど人がいないとしても

こんな危険かもしれない場所に来るものか…

 

ならどうしてこんなとろに来たのだ……

いやそんなことはどうでもいい

 

 

 

 

 

「………あぁ…君はどうしてここに??」

 

「友達がいると思いまして」

 

 

 

「なら早くその友達の所にいくんだね

ここに長くいると痛い目をみるよ」

 

「その子、怪我してますね

止血してほうがいいですね」

 

 

 

 

 

時崎が近づこうとするとステイルが

タバコを持った右手でそれを遮る

その目は殺意に満ちている

 

 

 

 

「あの子に…近づくんじゃない」

 

「このままだと出血死してしまいます」

 

 

「この子は僕が守る

君が出る幕ではない」

 

「そうでしょうか

僕からしたら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方が邪魔にしか見えません」

 

 

「なっ!!?」

 

 

 

今まで目の前にいた少年が

どういうわけか目の前から消えていた

そして気づいたときにはあの子の側にいる

 

なにをしたんだ…こいつは……

魔術を使用した気配はなかった

ということはこの学園都市の力なのか

 

 

 

 

 

「理由は知りませんが怪我している人を

ましてや女の子をそのままにしておくなんて

理由というものがあっても助けます」

 

「ふざけるな!!!

なにも知らない素人があぁ!!!!」

 

 

 

 

 

ステイルはその手から炎剣を生成し

その炎剣を時崎に向けて降り下ろした

別に当たらなくとも炎剣を爆発させたり

爆風で吹き飛ばせることができる

 

 

 

要はインデックスからこの時崎を

引き剥がせばいい

どんな理由で歩く教会が破壊されたのか知らないが

今ならインデックスを保護できるのだ

 

歩く教会は物理・魔術を問わず

どんな攻撃も無効化する法王級の結界を持つ霊装

身を守ると同時にその存在を

探知させないという効果もある。

 

 

この時を逃せない

もうインデックスには時間がないのだ

だから邪魔するやつは消す!!!

 

 

すでに降り下ろした炎剣は

避けられない距離まで近づいた

もうなにも悩まず考えずただ降り下ろす

それでインデックスを助けることが

 

 

 

 

「どうやら貴方にはこの子を任せられません」

 

 

 

 

その言葉を言い終わった時に

やっと自分の置かれている状況が理解出来る

降り下ろしたはずの炎剣は

その男に確かに当たった

 

当たったがそこで止まっているのだ

切ることも出来ず、溶かすことも出来ず

爆発させることも出来ずにいる

どうして、いったい、なにが…

 

 

 

 

そんな思考を巡らせていると

突然に雨が降ってきた

いや雨ではない

スプリンクラーが台風のような雨を撒き散らした

消防隊を呼ばないように『魔女狩りの王』には

警報装置に触れないようにしていたのだが

もしやこれは、上条 当麻が

『魔女狩りの王』という炎の塊を

消すためにしたというのか??

 

 

しかしコレ程度の水で消せるほど

『魔女狩りの王』はやわではない

このままにしておいてもやがて

自動追尾の『魔女狩りの王』に捕まり

真っ黒の炭か真っ白な灰に変わるだろう

 

 

だからいまは目の前の男を消すことを優先させる

数秒間だけ思考に向けていたものを

意識をインデックスに再び向けると

またしても目を疑う光景を目にした

 

 

この男は言っていた

「その子、怪我してますね

止血してほうがいいですね」と

 

どうして病院ではなく止血といったのか??

普通なら病院だと連想するはずだ

止血も大切だがそんなことを思い付くのは

医者か「そういう現場に立つもの」ぐらいだ

 

 

この男はどうみてもそんな風に見えない

例え止血を知っていても道具もない

なのに、どうして、僅か数秒で止血したのだ!!

 

 

インデックスから流れていた血は止まり

苦しんでいた表情も和らいでいるように見える

なにを…した……こいつは…なにを……

 

 

すると今度はエレベータの音がした

それがとても不吉な音に聞こえた

理由はない、ただ直感がそう告げている

ゆっくりとエレベータの方を見てみると

 

 

 

 

 

 

上条 当麻が、そこにいた。

 

 

 

 

 

(………何だ?

自動追尾の『魔女狩りの王』は一体どうしたんだ?)

 

 

もうステイルの頭の中はぐるぐると思考が空回りする

一度ロックしたら最後、普通に建物を走り回ったり

鋼鉄のなどの障害物があろうとも

その3000度の炎の塊を止められるはずがない

 

 

 

なのに、上条 当麻はそこにいた。

不敵に。無敵に素敵に宿敵に、

そしてなによりも天敵として―――立っていた

 

 

 

 

「うん??

確かあんたは…昨日の」

 

「やっぱり覚えてましたか

と、なるとあの時いたみーちゃんも…」

 

 

「みーちゃん??

と、いうかなんでここにいるんだよ、って

おいインデックス大丈夫なのか!!!!!」

 

「大丈夫ではないですが、止血はしました

傷口を「塞いだ」わけではないので早く病院に」

 

 

 

 

 

「僕を無視するんじゃない!!

『魔女狩りの王』!!!!」

 

 

 

 

叫んだ瞬間に、上条の背後から―――

エレベータの扉を飴細工のように溶かしながら

炎の巨神が通路に這い出てきた

 

しゅうしゅう、と。

炎の体に雨粒がぶつかるたびに

獣の吐息のような蒸発音が響く

 

 

 

 

「は、はは、あははははははは!

すごいよ、君達ってすごいよ!!

インデックスの傷を僅か数秒で塞ぐは

どうやったか知らないが『魔女狩りの王』から

こうして逃げ切れるは、本当にすごいよ!!

 

だが後者は残念だったね

この程度の水じゃ消すことは出来ない

そしてたかが水に濡れた程度で、

ルーンが完全に溶けてしまうほど弱くないのさ!!!」

 

 

 

ステイルは上条の行動の意味が分かっていた

そう紙は水に弱い。

スプリンクラーを使って建物中を

水浸しにしてしまえば全ての紙切れを殺せると

 

ギチギチと。

両手を広げて爆発するように笑いながら

魔術師は『殺せ』と叫んだ

『魔女狩りの王』は、その腕を

ハンマーのように振り回して、

 

 

 

 

「邪魔だ」

 

 

 

 

一言。

上条 当麻は、振り返りすらしなかった

すぼん、と。

裏拳気味の上条の右手に触れた炎の巨神は、

正直笑ってしまうほど間抜けな音を立てて爆発、

四方八方へ吹き飛ばされた

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

その瞬間、ステイルの心臓は

確かに一瞬にだけ驚きで停止した

 

吹き飛ばされた『魔女狩りの王』が復活しない

重油のように黒い肉片は辺り一面に飛び散ったまま

もぞもぞとうごめくのが精一杯のようだった

 

 

 

「ば、か――――な。何故!

僕のルーンはまだ死んでいないのに…………ッ!」

 

「インクは?

コピー用紙は破れなくても

水に濡れりゃインクは落ちちまうんじゃねーか?

………ま、それでも1つ残らず潰すことは

出来なかったみてえだが」

 

 

 

 

黒い肉片はが1つ、また1つと

空気に溶けるように消えていく

ルーンがコピー用紙のインクが1つ1つ

雨に溶けていき、どんどん力が失っていくように。

 

 

 

 

「い、のけんてぃうす…『魔女狩りの王』!」

 

「さて、と」

 

 

 

たった一言。

上条の言葉に、魔術師は体全体をビクンと震わせた

 

 

 

 

「どうやら僕が貴方を

「一時停止(とめる)」必要はなかったですね」

 

 

 

 

もう一度、体全体がビクンと反応した

その言葉に恐怖に似たものを感じた

上条以上の異常なる存在

なにかをするわけではないようだが

そこにいるだけで……

 

コツンと上条の足が一歩、

ステイルの元へ踏み出される

思考を切り替えると天敵が近づいてくる

近づくたびにステイルは『魔女狩りの王』を名乗る

そして上条の足がついに、

ステイルの元へ弾丸のように駆け抜ける

 

 

 

 

「ァ――――灰は灰に、塵は塵に。

吸血殺しの紅十字!」

 

 

 

 

魔術師はついに吠えた。

けれど、炎の巨神はおろか、

炎の剣さえ生まれなかった。

 

上条 当麻の足はそしてステイルの懐まで飛び込み

さらに奥へと突き進み拳を、握る

 

 

 

時崎は分かっていたのだろう

いつのまにか、ステイルの背後から

上条の背後に移動していた

 

それを目撃してもステイルは驚けなかった

いや、驚くことは出来なかった

 

 

 

上条の拳が魔術師の顔面に突き刺さる

魔術師の体は、それこそ竹とんぼのように回転し

後頭部から金属の手すりへ激突した。

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