「なに待たせてるのよあんたら」
その声と共に続けて『腕』に四方八方から光線が放たれる。絹旗やフレンダのように破壊するだけではなく消滅させるその光線はあっという間に『腕』を消し去った。その光線が放たれた先には
「む、麦野~‼」
「ただ女を捕まえるだけでしょうが。ったく、お陰で逃したみたいね」
「す、すみません麦野……」
「まぁ、いいわ」
そこに現れたのは麦野と滝壺。そして麦野の放った光線により破壊された『腕』から粉塵が舞い、晴れたときにはすでに褐色の女はこの場からいなくなっていた。ハァーとため息をつきながら状況を確認しようと麦野は絹旗達の元へ向かい滝壺は黒子の元へ向かった。
「足、大丈夫??」
「大丈夫……ではないですわね。捻挫に加えて火傷ですから」
ポケットからハンカチを取り出し、壊された自動販売機から出てきたミネラルウォーターでハンカチを濡らしてそっと火傷した足にハンカチを当てる。激痛は走るが応急措置はできた
「助けられてこういうのは失礼だと思いますが、もっと他に助ける方法はありませんでしたの??」
「あぁ??ならその足ごと消した方が良かったかしら」
「………いえ、ありがとうございました」
「最初から素直に言えばいいのよ」
確かに最初から文句を言っても勝てるとは思っていなかった。しかし足に光線が当たらなくて良かったと本気で感じている。するとむこ向こう二人も無事だったようでこちらに近づいてくる
「何だったんでしょうかあれは??」
「こんな能力、始めてみた訳よ」
「そんなに驚くことじゃないわよ、規格外なんて時崎がいるでしょうが」
「……確かに時崎さんの能力はスゴいですが、あの力は
どんな能力ならあんな風に『腕』や『歯』を作り出せるのか、さらにあのチョークによるオカルトじみた魔法のような文字はなんだったのか……
「なんだっていいわ。とにかくあの女をぶっ潰せばいいのよ」
「そういうわけにはいきませんわ。身柄は風紀委員や警備員が確保することになってますので」
「アァ??知らないわよ、こっちは仕事してんのよ」
「それこそ知りませんわ。わたくし達は学園都市の治安のためにやっておりますの。こちらが優先されることについてお分かりにならないのですか??」
一歩も引かない両者。一方は学園都市の治安維持活動。一方は学園都市の闇からの
「麦野、あの人、追えない」
「…どういうことだぁ??」
只でさえ不機嫌な所に滝壺からの言葉。麦野はあの褐色の女のAIM拡散力を滝壺に記憶させて追跡しようと考えていたのだが、
「よく分からないけど、掴めなかった」
「時崎じゃあるまいし、あれが普通の女だというのか!?」
「違うと思う」
「あれが超普通なら私達がとっくに捕まえてますよ」
「とにかく容疑者の逃亡を許してしまいました。警備員に連絡を取り巡回の強化をしませんと……貴女方にも事情を話して頂かないといけま……って、あれ??」
気がつくと麦野達はこの場から去ろうとしていた。あまりにも自然に、まるで最初からいなかったように、それは時崎の時と同じ現象にビックリする。すぐさま空間移動で麦野達の前に現れる
「お待ちください‼どこに行かれるのですか!!」
「あの女を捕まえに行くんだよ」
「申し上げたはずです。風紀委員の邪魔をしないで下さいと」
「五月蝿いわね、潰すわよ」
明らかな殺気に思わず表情が歪む。いままで色んな人を見てきたが目の前にいるこの女は
それでも黒子は一歩も引くことはなかった。
「潰されるわけにはいきません。しかし私も風紀委員の端くれ、貴女達がどうしても引かないなら私が貴女達に着いていきますわ」
「……何を勝手に決めてるんだテメェは……」
「捕まえるだけなら私達と目的は同じはず。それとも何か捕まえる以外にあるんでしょうか??」
こうしてアイテムがシェリーを捕まえに来たのは闇からの依頼。時崎が進言してくれたお陰で大分キレイな仕事だけが回ってくるようになった。確保したあとはどうするなどは特になかったが、黒子の思う通りにいくのは面白くないと考えた麦野は
「なら、勝負といきましょう」
「はい??何を考えているのですか??」
「あんたの所の第三位にも協力してもらってもいいわよ。じゃないとフェアじゃないしね」
「勝手に話を進めないでください‼」
「もちろん勝負は先にあの女を捕まえた方が勝ち。勝った方は……そうね……時崎に何でも要求できるってのはどうかしら??」
「なっ!!!?」
何とも魅了的な賞品だと黒子は思ったが直ぐ様頭を切り替えて
「それこそ何を勝手に決めてますの??時崎さんがそのようなことを言ったというのですか??」
「言ってはいないわね」
「でしたらこの話は」
「でも、今から言うわ」
はっ、と思わず声に出したときには麦野は時崎に電話をしていたところだった。ワンコールで電話が繋がり
『はい、シズ姉どうしましたか??』
「第三位のところのツインテールと勝負をすることになったのよ。それで賞品は時崎に何でも要求できる権利ってことになったのだけどいいわよね??」
『いいですよ、僕に出来ることなら』
「流石ね、今日中に決めるからよろしくね」
簡単に承諾した時崎にご満悦な麦野に、頭が痛くなってきた黒子。確かにその景品はとても魅了ではあるが、これはちゃんとした風紀委員の仕事であり、それも相手はすでに被害を出している。そんな浮かれ気分で出来る相手ではないと分かっている
「もう勝手に何処へにでもいってください。私は風紀委員として仕事をしなければいけませんので」
「へぇー勝負に負けるのが怖いのかしら??」
「そんな安い挑発に乗るとでも??」
「まぁ、いいわ。時崎にはOKもらってるんだから好き勝手に要求させてもらうわ。例えば時崎とデートとか」
「!!!??」
デート。
その単語を聞いた瞬間、沸々と胸の奥から何かが沸き上がってくるのを感じた。そのデートというものが、時崎が、自分以外の誰かとしているという想像をしただけで心が落ち着かなくなる。それもこんな強情でおばさんに時崎を……と、頭の中を駆け巡ったときには無意識に口が動いていた
「………上等ですの……その安い挑発、乗ってやりますわ!!!!」
「決まりね」
「すみません、お待たせしました」
「誰だったんだ??」
「シズ姉からです。どうやら友達と遊ぶために勝ったら言うこと聞いて欲しいということでした」
「あのお姉さんがね……そんなイメージなかったけどな……」
学校から少し離れた場所を歩いている時崎。途中で電話が掛かってきたということでコンビニで待機していたことろだった
「とうま!!これ買って!!!」
「いまから昼飯食いにいくのに必要ありません」
「問題ないんだよ!!!ちゃんとお昼ご飯も食べるから」
「上条さんの財布が問題あるの!!」
「カミやんー、これ買っておいたぜ」
「サンキューな土御門……って、おいその手にしているものはなんだ??」
「あぁこれかにゃー、ゴチになります」
「なに勝手にアイス買ってるんだよ!!!」
「ご、ごめんなさい……」
「い、いや、風斬はいいんだけど……」
「あぁ!!差別なんだよ!!!私にも買って欲しいんだよ!!!!」
「もうー!!分かったからアイス一本だけだけらな」
「やったー!!!おじさんーアイスとこれもお願い!!」
「だから肉まん、餡まん、カレーマンはいらないだろうが!!!!」
なんだか普通の学校生活を送っているように見える。しかし彼らの見えない所で何かが動き始めている。いやすでに巻き込まれている。その元凶一人である土御門さえも知らずに
……自分の力を恐れ、しかし、その力を使い、目的を成し遂げようとする者によって……