遊戯王IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:LAST ALLIANCE

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話数のカウントを”~話”から、”TURN”に変更しました。
そちらの方が『遊戯王』っぽいと思ったので……

第1章は次回で終わる予定です。
次々回からいよいよIS学園で『遊戯王』が行われると言う事で、改めてルール説明もかねて授業風景を描写しようと思います。
原作だと学園らしい事していないような……それで良いのかな?

今回はプレゼンとルール説明の回となります。
前回の前書きにも記しましたが、ルール解説と登場人物紹介を合わせて投稿するので暫しお待ちを。
デュエル描写がある場合、サブタイトルの所に星マークを付ける事にしました。


TURN04 この学園はデュエルフィールドとなる!

 純一が『呉島エンタテインメイトスタジオ』の本社に赴き、デュエルディスク機能を搭載したISのモニターになる面談を行った金曜日。それから3日経過して月曜日になった。

 この日の6時間目に全校集会が行われる。そこでは『呉島エンタテインメントスタジオ』の社長の呉島高虎と、開発事業部部長の仙谷竜馬が自社で開発したデュエルディスクについてプレゼンテーションを行う。

 そして『KONNAMI株式会社』所属のカリスマデュエリスト、マスター・ユウギがIS学園で行う『遊戯王』のルールを説明する。このような手順になっている。

 

「おはようございます!」

 

『純一君おはよう!』

 

「あ、純一君。髪切ったの?」

 

「ん? あぁ、昨日美容院に行ったんだ。寝癖が出来るようになったからそろそろかなと思って……やっぱり僕は短い髪が好きだよ。こう見えて癖毛だし」

 

「そうかな? あたしは長い方が好きかな?」

 

「いや私は今の方が良いよ~」

 

 月曜日の朝。休日に英気を養いつつ、『遊戯王』の勉強とIS学園の勉強に打ち込んだ純一。彼は1年1組の教室の扉を開くと、元気よくクラスメートに挨拶をする。

 純一の声を聞いた女子生徒達は一斉に純一の方を振り向くと、純一も元気よく挨拶を返して席に着く。女子生徒達に微笑みを見せながら、日曜日に髪を短くした純一は軽快に言葉のキャッチボールを交わす。

 

「純一おはよう。土曜日はごめんな」

 

「一夏おはよう。気にすんな。こっちは弾と一緒に遊んだから」

 

「そっか……それなら良かった」

 

「次はさ、弾や数馬と一緒にどう? 男連中でやるのもたまには悪くないよ?」

 

「そうだな……また次の時に」

 

 自分の所に来た一夏と話している間に時間が過ぎ、チャイムがなって朝礼の時間となった。全員が席に付き終わると、担任と副担任が教室に入って来た。

 1組の担任は織斑千冬。一夏の姉で、第1回IS世界大会総合優勝および格闘部門優勝者。ISに開発当初から関わっていた為、ISに関する知識は豊富で、操縦技術も他のパイロットよりも遥かに高い。公式試合で負けたことがなく、大会で総合優勝を果たした、世界最強のIS操縦者。その実力は健在だ。

 純一の両親とは小さい頃からお世話になっており、まるで純一の姉みたいに可愛がられていた過去がある。その為純一の両親には頭が上がらず、純一がIS学園に入学する事が決まった時は純一を守る事を誓い、純一を自分の二人目の弟のように可愛がりつつ、叱咤激励している。

 副担任は山田真耶。元日本代表候補でISの操縦技術は千冬が認める程の高さを誇っている。二人の代表候補生が同時に挑んでも歯が立たない程に。

 

「先週も話したが、今日の6時間目は全校集会だ。『呉島エンタテインメントスタジオ』の社長と、『KONNAMI株式会社』の方が来て説明会を行う。と言うのも、IS学園で『遊戯王OCG』をやる事になったからだ」

 

『ッ!?』

 

「静かに! 今回の話が理解出来ない人や付いていけない人がいるのも無理はない。実は『ソリッドビジョンシステム』を開発した『呉島エンタテインメイトスタジオ』が、『遊戯王OCG』を生み出した『KONNAMI株式会社』と企業提携をする事になった。皆も新聞やニュース、ネット情報を見て知った筈だ」

 

 1組の中で事前に話を聞いていた生徒は純一、一夏、箒、セシリアの4人だけ。残る女子生徒達は今回初めて聞かされた内容に驚き、教室中でざわめきが起きる。

 まさかIS操縦者や専門のメカニック等、ISに関連する人材を育成する特殊国立高等学校で『遊戯王』をする事になるのか。一体どういう風の吹き回しなのか。そもそも自分達に教えられる人はいるのか。ちゃんと対戦出来るのか。

 様々な不安や疑問が渦巻くが、千冬は一喝してクラス全体を静かにしてから話を続ける。今回IS学園で『遊戯王』をする事になった理由を話す為に。

 

「『KONNAMI株式会社』は最大のヒット商品の『遊戯王OCG』を、『呉島エンタテインメイトスタジオ』は主力商品の『ソリッドビジョンシステム』を合わせた物を開発した。アニメを観た人なら知っている筈だ。デュエルディスク。それを開発した。今までのコスプレ用ではない。アニメに出てくるキャラのようなデュエルが本当に出来てしまう。本物がついにこの世界に生まれた」

 

 1組の中には『遊戯王』のアニメを観た事がある人もいれば、純一達以外に『遊戯王』の知識がある人もいる。そんな彼女達は唖然となるしか無かった。

 無理もない。今まで実現不可能と言われていたデュエルディスクが現実の物になり、しかも自分達が使う事になるのだから。

 

「だが軍事利用される等の大事にならないように、ISにデュエルディスクを装着し、ISを身に纏いながら『遊戯王』を行う事が決定されている。スポーツ競技型のカードゲーム、『DS(デュエル・ストラトス)』だ。突然で大変済まないが、これからIS学園で『DS(デュエル・ストラトス)』を行う。その為には『遊戯王』の勉強をしなければならない。カードゲームだからと言って手を抜く事をしないように」

 

「織斑君、篠ノ之さん、セシリアさんの3人には事前にデュエルディスクと『遊戯王』カードを渡しました。そして、このクラスからデュエルディスク機能を搭載したISの専用機のモニターに黒田純一君が選ばれました!」

 

 真耶が告げた事実に一夏、箒、セシリア以外の全員が驚き、一斉に純一の方に視線を向けると、純一は恐縮したように何度も頭を下げていた。

 純一の事を信頼している人や彼の人となりを知っている人は歓迎するが、中には一夏ではなく純一が選ばれた事に疑問を抱いたり、不満に感じる人もいた。それを見た千冬は注意も込めて理由を説明する。

 

「純一を選んだのは『呉島エンタテインメイトスタジオ』側だ。それに純一には『遊戯王』の大会に参加して優勝したり、上位進出した経験がある。ショップで開かれる公認大会や非公認大会で優勝経験があり、店舗代表決定戦やCSといった大きな大会にも出て上位進出した経験がある。恐らくこの学園の中で一番頼りに出来るだろう」

 

「織斑先生。僕は強くありません。強いのは僕が作ったデッキであり、僕はたまたま運が良かっただけです。今強いデッキの傾向と対策をしっかりやっただけなので……」

 

「……と本人は言っているが実力は確かだ。某動画サイトに大会動画が転がっているからな。皆は困った事や悩んだ事があったら遠慮なく純一に聞くように。私も『遊戯王』をやるのは久し振りだからな。皆も知っているとは思うが、純一は優しくて良い子だ。求められればきちんと応えてくれる」

 

「そういう訳なので今日の6時間目は体育館で全校集会があるので、遅れずに整列して下さいね~」

 

 この日は1時間目から5時間目までは普通の授業で、6時間目に全校集会が行われる。しかし、純一はいきなり頭を抱える事となった。

 自分が大会に出ているガチ勢で、そこそこ強い事が明かされた為、クラスの女子生徒からの質問攻めに遭う事が確定したからだ。

 余談だが、純一の予想通りに一夏を含めた皆から質問攻めに遭った。しかも他のクラスからも噂を聞き付けた女子生徒も参戦した為、全ての質問に答えるのが大変だったのは言うまでもないだろう。

 

ーーーーー

 

 6時間目の授業が始まる時間。普段なら6時間目の授業が行われるが、この日は特別に全校集会が行われる事となった。

 『呉島エンタテインメイトスタジオ』の社長、呉島高虎によるデュエルディスク機能を搭載したISのプレゼンテーションが行われ、『KONNAMI株式会社』所属のカリスマデュエリスト、マスター・ユウギがIS学園で行う『遊戯王』のルールを説明する事となった。

体育館の至る所には各国の首脳に向けたプレゼンと言う事もあって、ビデオカメラが設置されている。画面の向こう側にいる各国の首脳も固唾を飲んで見守っている。

 

「これより、『呉島エンタテインメイトスタジオ』、呉島高虎代表取締役社長によるプレゼンテーションを始めます」

 

 全員が整列し終わると、千冬の司会進行と共にプレゼンテーションが始まった。高虎が舞台袖から現れると共に拍手が鳴り響いた。その高虎の後を純一が続いていると、事情を知らない女子生徒達は首を傾げる。

 

「皆様、初めまして。私は呉島高虎と言います。『呉島エンタテインメイトスタジオ』の代表取締役社長を務めています。今日お集まり頂いたのは、我が社が開発した『ソリッドビジョンシステム』を用いた新たなるISを皆様に紹介する為です」

 

 『呉島エンタテインメイトスタジオ』が誇る主力製品、『ソリッドビジョンシステム』。それを搭載した新型のIS。その全貌に生徒や教師のみならず、各国の首脳が固唾を飲んで見守る中、高虎の説明が始まる。

 スクリーンには『呉島エンタテインメイトスタジオ』の紹介映像が映し出され、高虎の説明と共にプレゼンが進んでいく。

 

「そもそも我が社が開発した『ソリッドビジョンシステム』とは一体何なのか。3D映像を具現化・実体化するゲーム技術の事です。これを用いたゲーム作品が数多く世に出て、ヒット作を生み出しました。これが第一世代。次の第二世代はこれまでの3D立体映像から、質量を持った3D立体映像を実体化させる『リアルソリッドビジョンシステム』。そしていよいよ第三世代となる技術をついに発表出来るようになりました!」

 

 高虎が第一世代と名付けたのは、『ソリッドビジョンシステム』を用いたゲーム作品。スクリーンに映し出されたタイトルを見た教員達は、自分が遊んだ作品の事を思い出して昔を懐かしんでいた。

 

「それが『リアルソリッドビジョンシステム』搭載のデュエルディスク! 今までの机に座って行うカードゲームから、スポーツ競技型のカードゲームに昇華させる事に成功しました! 今回『KONNAMI株式会社』と企業提携を行い、アニメのような『遊戯王』を皆さんに楽しんで頂きたいと思い、この度IS学園にて発表を行っています。ISはスポーツ競技に用いられ、使用者を死から守るシステムを搭載されていると伺いました」

 

「であれば、『リアルソリッドビジョンシステム』で受ける衝撃で怪我をしたり、命に関わる大事故も防げると言う訳です。それがISを用いて行う『遊戯王』。デュエルディスク機能を搭載したISで大地を駆け巡り、空を舞い、デュエルフィールドで熱いデュエルを繰り広げます。それが『デュエル・ストラトス』。ISを用いた新しい競技、新しいカードゲームを今回IS学園の皆さんにプレイして頂きたいと思い、今回プレゼンテーションの機会を設けました。そしてこちらが新しい可能性を秘めたデュエルディスクを使うデュエリストであり、新型のISのモニター……“世界で2番目の男性IS操縦者”の黒田純一君です!」

 

 高虎の紹介に応じた純一はマイクを手に取り、目の前に広がる大勢の人々を見渡すと、そこには自分が見知った人を含めた全員が自分を見つめている。

 事前に世界各国の首脳も見ている事を聞かされていた為、純一は一瞬頭の中が真っ白になった。経験者・ガチ勢と言う立場への重圧。世界で2人しかいない男性IS操縦者への期待。一夏以外周り全員が女子と言う普段なら有り得ない光景。

 それでも何とか持ち堪える。しっかりしろ。お前はこれから大企業の社長になるんだ。このくらいの人の前で発言する事なんか嫌でも増えてくる。落ち着け。深呼吸してゆっくりでも良いから自分の思いを吐き出せ。

 

「純一君は大会の優勝経験もある素晴らしきデュエリストです。今回モニターとして選ばれた彼に抱負を伺いたいと思います」

 

「只今紹介に預かりました、黒田純一と申します。この度、『呉島エンタテインメイトスタジオ』様が開発されたデュエルディスクのモニターに任命され、デュエルディスク機能を搭載したISを頂く事になりました。“世界で2番目の男性IS操縦者”として、今までこの学園に入学してからISの技術や知識の習得に励んできました。その成果が今実ったと思いますし、これからは今まで以上にもっと頑張らないといけないと身を引き締めています」

 

「呉島社長も仰っていましたが、これからISを用いた『遊戯王』を行うと言う事で、経験者である私の知識や経験が皆さんのお役に立てるようにしていきます。皆さんと一緒に『遊戯王』を楽しみながら、多くの事を学んでいきたいです。もし『遊戯王』で困った事や相談したい事があれば、遠慮なく私に申して下さい。そして私を信じてこのような大役を任せて頂いた呉島社長と仙谷開発事業部部長、ISの開発者の篠ノ之束博士、学園の先生方や日頃から仲良くさせて頂いている皆様。本当にありがとうございます! そして皆様の期待に応えられるよう、精一杯努力していきますのでどうぞよろしくお願いします!」

 

 深呼吸をしてから皆を見渡しながら、自分の思いを素直に伝えた純一。自分の時代が来たからと言って天狗にならず、自分がこれまで培った経験や知識を皆の為に役立てていきたい。その中で自分自身も多くの事を学びたい。

 実直でストイックな人柄が伝わるコメントに暖かい拍手が返ってきた。まるで純一を祝福するかのように。彼の思いを受け取ったかのように。

 

「ありがとうございました! 以上でプレゼンテーションを終わります。後程質問タイムを設けますので、質問ある方はその時にお願いします」

 

「続いては『KONNAMI株式会社』所属のカリスマデュエリスト、マスター・ユウギさんによるIS学園における『デュエル・ストラトス』の説明です。マスター・ユウギさんよろしくお願いします」

 

 ステージに登壇したのは、アニメ『遊戯王DM』に登場する闇遊戯ことアテムのコスプレをした一人の男性。彼の名前はマスター・ユウギ。

 カリスマデュエリストとは、遊戯王のアニメのキャラクターを元にしたイメージキャラクターもどき。 二次元ではなく三次元の人々であり、基本的にアニメの登場人物のコスプレをしている。

 

「皆さんこんにちは。私はマスター・ユウギと申します。見ての通り、武藤遊戯さんが大好きなただのデュエリストです。はい。前置きはここまでにして、IS学園における『デュエル・ストラトス』のルール説明をしたいと思います。本格的に『遊戯王』を行うのはもう少し先になるので何言っているか分からない人がいましたら、純一君に聞くなり、公式サイトを見て頂くなりお願いします。先ずはルールの方ですが、2020年4月1日から施行しているマスタールールに則ります。禁止制限も公式のリミットレギュレーションに則ります。そしてここからが一番大事なのですが、IS学園で行う行事……例えばクラス対抗デュエルリーグだったり、学年別タッグトーナメント等の大会では特殊制限ルールを設けます。公式のリミットレギュレーションの他に、平均価格が1000円以上するカードの使用を禁止します」

 

 マスター・ユウギが言葉を言い切ると、スクリーンに特殊制限ルールで使用禁止になるカードの名前が出た。

 それを見ている殆どの女子生徒は話に付いていけずにスクリーンを見ているが、勉強熱心な女子生徒達はリストに上がっているカードを見て頭を抱えていたりする。

 

「何故今回このようなルールを設けたのかと言いますと、現在の『遊戯王』で強くてどのデッキに入るカードはけっこう良いお値段をするからです。皆さんのお小遣いが月にどれくらいするかは私には分かりません。沢山貰っている方もいれば、そうでもない方もいるでしょう。そうなった場合、資金力だったり、カードの知識や経験が物を言う世界になってしまいます。多くの方々は付いていけないでしょう。なので強力で高額なカードの使用を一律禁止しました。そうする事でデッキパワーだったり、資金力の差が生まれにくくなります。流石にプレイングだったり、経験の差が物を言う事もありますが、極力皆さんが平等な状態でデュエル出来るようにこちらとしても配慮していきます」

 

「そしてもう1つの特殊制限ルールですが、今現在至る所で『遊戯王』の大会が開催されていますが、そこで結果を残しているデッキ……我々で言う環境入りしているデッキの使用を禁止します。このルールも先程説明した通り、資金力の差を無くす事が挙げられます。しかし、環境デッキの中には安く出来るデッキもあります。確かに安く組めて強いデッキを使えば初心者の方も勝ちやすく、勝つ喜びを知って『遊戯王』を楽しめるでしょう。しかし、それだと『遊戯王』と言うカードゲームではなく、とある一定のカードとデッキしか使わない狭い世界のカードゲームになります。『遊戯王』カードは1万種類以上あるのに。それだと結局飽きちゃうんですよ」

 

「皆さん想像して下さい。友達とデュエルする時、これから行われる大会に出た時、同じデッキしか使わない人達を見てどう思いますか? Aさんも、Bさんも、Cさんも、Dさんも皆同じデッキです。中身が少し違うだけでデッキは同じテーマ。こんなカードゲーム面白いですか? 面白くないですよね? 『遊戯王』を始める皆さんが楽しくデュエルし、勝ち負けの先にある物を感じ取って欲しい。そう思って我々は環境デッキの、ガチデッキを使用禁止にしました」

 

 一夏は全校集会が始まる前に配られた資料にもう一度目を通した。そこには今回の特殊制限ルールで禁止カードに指定されたカードと、使用禁止になったデッキテーマが掲載されている。

 環境デッキは軒並み禁止に追いやられ、環境下位だったり、かつて環境にいたファンデッキがこの特殊制限環境で活躍する事が予想されている。奇しくも純一と弾が予想した通りの展開になりそうだ。

 【ドラグーンビート】。【オルフェゴール】。【サンダー・ドラゴン】。【エルドリッチ】。【サラマングレイト】。【閃刀姫】。【オルターガイスト】。【エンディミオン】等々。2020年4月時点で環境にいるこれらのデッキは使用禁止となり、IS学園の特殊制限環境は先が全く読めない混沌世界となった。

 

「これから皆さんには『遊戯王』をやってもらいますが、大半の方がルールが分からない人ばかりだと思います。ですがご心配なく! プロデュエリストの方々を今回講師として招く事が学園とのやり取りで決定しましたので、皆さん遠慮せず分からない事は聞いて下さい!」

 

「そして今週の土曜日、私と純一君でデュエルディスクを使ってエキシビジョンデュエルを行います。IS学園の特殊制限環境を用いたデュエルで、場所はIS学園にあるアリーナではなく、『キャノンボール・ファスト』と言うイベントで使用されたISアリーナです。強制参加ではないですが、実際のデュエルディスクを使ったデュエルを観たい方は是非来てください!」

 

 『キャノンボール・ファスト』。ISを使用して疾走するレースの事だ。安全性が約束されている為、相手への妨害が認められている。

 アクシデントによって中止となり、純一は“何か僕ら1組のせいで行事が悉く潰されてない? 一度皆でお払いに行く?”と自嘲気味にジョークを言ったのは秘密だ。

 こうして質問タイムを挟んだ後、呉島高虎によるプレゼンテーションは終了した。結果は言うまでもなく大成功。デュエルディスクの実用化に向けて大きな一歩を刻む事となった。

 

ーーーーー

 

「先程のプレゼンテーションであったように、今回IS学園にデュエルディスクが特別に試供される事となった。デュエルディスク機能を搭載したISだが、諸事情で純一用にしか新型を作っていない。そこで1人1台ずつデュエルディスクを購入し、訓練機に装着して使うように」

 

「皆さんに渡したのは注文書です。『スターターデッキ』と、『ストラクチャーデッキ』、スリーブとプレイマット等。『遊戯王』をする上で必要になる物ばかりです。専用機持ちの皆さんには事前にデュエルディスクを渡していますので、デッキだけを注文するようにお願いします。間違って余計に注文する事をしないように。注文書は3日後のHRで回収しますが、書き終えた人は適宜渡してもらっても構いません」

 

(この内容なら……『シャドール』に『マシンナーズ・コマンドR』で良いかな? 買い逃した奴をここで一気に買ってしまおう)

 

 帰りのSHR。純一達に配られたのは1枚のプリントと集金袋だった。プリントはデュエルディスク、初心者用のスターターデッキとストラクチャーデッキの注文書だった。

 千冬と真耶の説明を聞きつつ、純一は注文書に素早く購入するデッキの個数を書いていた。もちろんスリーブとプレイマットも購入する。スリーブとプレイマットはあればあるで気にしない主義だ。

 

「先生! 質問があります!『遊戯王』初めての人はどれを買えば良いですか?」

 

「初心者は『スターターデッキ』がお勧めだ。初心者向けで“これから遊戯王始める”人用の商品だからな。デッキの内容がそこまで難しくなく、どんなデッキにも入れられる強いカードが揃っている。……純一。お前はどう思う?」

 

「いきなり来ましたか……僕は『ストラクチャーデッキ』から入るべきだと思います。『スターターデッキ』は初心者向けとは言っても、デッキとして組めるかと言われると少し疑問に感じます。『スターターデッキ』には確かに強くて安くてどんなデッキにも入るカードが入っていますが、『ストラクチャーデッキ』を3箱買って、必要に応じてカードを足していくやり方でも良いと思います」

 

 純一は『遊戯王OCG』を本格的に始めた時は『ストラクチャーデッキ』を3箱買い、必要に応じてカードを買い足していくスタイルだった。

 そこから作りたいテーマがあればデッキレシピをネットで調べて模倣し、そこから自分色に染め上げていった。

 

「同じ内容のデッキを3つ買った方が良いと言うのは、1つのデッキに大抵1種類ずつカードが入っているからです。『遊戯王』は1つのデッキに同じカードを3枚まで入れる事が出来るから、3つ買った方が良いです『遊戯王』のメインデッキは40枚以上60枚以下と指定されています。40枚の中から強いカードを1枚引き当てるより、3枚引き当てる方が確率として高いですよね? それとスリーブは必ず買って下さいね? カードを傷から守り、カット&シャッフルをやりやすくする為にも」

 

「……と言う事だ。『ストラクチャーデッキ』はそのテーマの動きを学べるが、それだけになってしまう。『スターターデッキ』は強くて安くてどんなデッキにも入るカードが入っているから、『ストラクチャーデッキ』を強くするにはもってこいだ」

 

「ありがとうございます! 純一君もありがとう!」

 

「……どういたしまして」

 

 質問者は『遊戯王』初心者となる相川清香。純一と仲が良いが、もっと彼と仲良くなりたいと内心で思っている。

 そんな清香のお礼の言葉に照れ臭そうに答える純一だったが、この後にクラス中の女子生徒から可愛がられたのは言うまでもない。

 

ーーーーー

 

 放課後。純一は千冬に職員室に呼び出され、とあるアイテムを渡された。それは腕時計のような形をした物。これはデュエルディスク型のIS。その待機状態。束が純一の為に開発した、純一の為のIS。

 

「束がお前の為に開発したそうだ。名前は『亜白龍』。お前が一番大切にしているカードの名前らしいな」

 

「束さん……やっぱり僕には優しいんですね」

 

「そうだな……このコアは普通のISとして使う事も出来るが、デュエルディスク機能を搭載している事もあって、コア自体が普通のISとは違っているらしい。これから何度もデュエルを行うだろう。純一、お前はクラス副代表として、一夏を支えながらクラスを盛り立てて欲しい。一夏には楽しめと言ったが、奴は小学生の時から『遊戯王』から離れている。対してお前はつい最近まで大会に出ていて、それなりに知識もある。そうなるとこっちとしてもお前に期待しがちになり、プレッシャーをかけてしまう事もあるだろう。済まないな、こういう言葉しかかけられなくて……」

 

「いつもの事なのでご心配なく。僕は自分がやるべき事に常に全力で挑むだけです」

 

「そうか。まぁ折角だ。少しは『遊戯王』を通じて学園中の女子達と仲良くやるのも良いんじゃないか? それに私も一度お前と満足するまでデュエルしてみたい」

 

「それは僕もです。その時を楽しみに待っていますよ?」

 

 デュエルディスク型のIS、『亜白龍』を受け取った純一は、そのまま第一アリーナへと向かっていった。待っていたのは2年生で生徒会長の更識楯無。純一の専属コーチ。篠ノ之束と高虎と竜馬の3人。

 同じアリーナで訓練している女子生徒達は純一の事を好意的に見る人もいれば、悪意を持って見ている人もいる。悪意を抱く理由は純一が専用機を持つ事への妬みや嫉妬だったり、モニターに選ばれるのは一夏だと決めつけている連中ばかりだった。

 

「お待たせしました。これからデュエルディスクの調整ですね?」

 

「はい。先ずは全ての種類のカードが正常に読み取れるか、正常に発動出来るかを確認します。そして召喚方法もきちんと出来るのかも」

 

「了解しました」

 

 純一は右腕に付けた純白に光り輝く腕時計―『亜白龍』の待機状態を見た後、“展開”と一言呟くと、全身を光の粒子が覆い尽くした。

 その時間は僅か一瞬。彼の身体にISが纏われ、デュエルディスク機能を搭載したIS―『亜白龍』が今ここに降臨した。

 

「あれ? 全身装甲型なんですね?」

 

「うん。ジュン君が“姿がほぼ丸見えなのが嫌だ”と言うから、フルスキンにしてもらいました!」

 

 頭部は騎士を象ったような白兜で、両腰にバインダーを付け、両腕にガントレットを装備し、背中にH型のバックパックを背負い、大型のエネルギーウィングを備えたIS。束が純一の要望を踏まえ、純一が使っていた『打鉄』のデータを取り入れて完成させた機体。

 その後は『遊戯王』カードを使い、モンスターカードの召喚と効果の発動、魔法・罠カードのセットから発動、融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・リンク召喚を一通り試してみた。

 結果は見事に大成功に終わった。これでようやく実用化に向けて歩き出せる。胸を撫で下ろす竜馬を見た後、高虎は純一に話し掛けた。

 

「どうだったかな? 君の専用機は」

 

「いやもう、素晴らしいです! ISの事は置いといて、アニメで観ていたようなデュエルが本当に出来るんだな~って思えましたし、それにリアルソリッドビジョンの質感や存在感がまるで現実に存在しているように感じました……本当にありがとうございます!」

 

「気に頂けて嬉しいよ! 土曜日のエキシビジョンデュエルは私も観戦する予定だ。楽しみにしているよ」

 

「一人でも多くの人に『遊戯王』の魅力を伝えて、会場を盛り上げられるように頑張ります!!」

 

 この後、高虎と竜馬は仕事がある為『呉島エンタテインメントスタジオ』に戻り、純一は楯無の指導を受けながらISの訓練に励んでいた。その様子を見ながら、束は自分が開発したISのデータ取りに励んでいた。

 




ここまで呼んで下さり、大変ありがとうございます。
今回も後書きとして裏話・裏設定を書いていこうと思います。

・カリスマデュエリストとは?

 YoutubeのVジャンプチャンネルの、遊戯王動画に登場するアニメキャラのコスプレをした方々です。分からない人は検索して一度動画を観て下さい。

・IS学園の特殊制限環境

 以前にも記しましたが、平均価格が1000円以上するカードの使用禁止に加え、環境デッキが使用禁止になりました。さてどんなデッキが環境を席捲するのか……?

・純一君のIS

 あんまり使う場面はありませんが、戦闘用ではありません。原点回帰して宇宙活動を想定して開発されました。

次回はエキシビジョンデュエルを記します。
次回をお楽しみに! LAST ALLIANCEでした!

p.s.皆さん。よろしければ感想・高評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
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