遊戯王IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:LAST ALLIANCE
今回の話を執筆している中で、この小説の方向性を「IS学園で繰り広げられる架空デュエル小説」から、「IS学園の生徒達を中心に、色々な登場人物繰り広げる青春群像劇兼架空デュエル小説」に変えました。
今回はエキシビジョンデュエル後の話になります。なので『遊戯王』関係ありません。
この話からアンチ・ヘイト要素が加わりますが、キャラをアンチするのではなく、原作にあった女尊男卑と言う風潮と如何に向き合うかに主眼を置きます。
流石にイベントの邪魔はさせません……原作で一夏君とその周りのせいで行事の悉くが中止になっているので。と言うか行事の殆どが中止でそれでも学校として大丈夫なんですかね?
黒田純一とマスター・ユウギによる壮絶な死闘、もといエキシビジョンデュエル。勝ったのは純一だった。12ターンにも及んだ死闘。一進一退の展開。《混沌帝龍
観客達による暖かい拍手と声援の中、お互いの健闘を労う純一とマスター・ユウギ。流石に長時間のデュエルをこなした為か、若干ながら疲労の色を見せているが、それでも心から良い笑顔を浮かべている。
高虎による終わりの挨拶が終わった後、待機部屋に戻った純一とマスター・ユウギ。2人にとってこれが初デュエルだったが、このデュエルを通じてお互いを認め合った。
今回のエキシビジョンデュエルを通じて、『呉島エンタテインメントスタジオ』と『KONNAMI株式会社』が企業提携し、共同開発したデュエルディスクのお披露目会は大成功に終わった。
デュエルディスクの開発は訓練用ISの『
また、それだけでなく世界中から買取の注文が大量発生し、『呉島エンタテインメントスタジオ』と『KONNAMI株式会社』はこれを機に一躍大きな発展を遂げる事となった。
ISアリーナでエキシビジョンデュエルが行われた次の日。IS学園の職員室。そこでは教職員が集合して職員会議が急遽行われる事となった。主な議題は昨日のエキシビジョンデュエルを踏まえ、『遊戯王』の行事大会のクラス別のパワーバランスの調整だった。
昨日のエキシビジョンデュエルの動画を一通り観終えた後、教職員達は1年1組の純一をどのクラスに異動させるかを考え始めた。
「ではこれより職員会議を始めます。え~昨日のエキシビジョンデュエルの観戦を踏まえ、これからの授業について話し合いたいと思います。先ず今までのISと基本科目の授業と訓練を今まで通り行います。それと並行して『遊戯王』の授業を行う事となりましたが、今回は特別許可を頂いて『KONNAMI株式会社』の直営店のカードショップ、『カードターミナル』のインストラクターの方々にお願いをしました。私も以前『遊戯王』を嗜んでいましたが、今のルールを把握するのに必死なので……こういう事はプロの方にお願いするのが一番だと思いました。その方針でよろしくお願いします」
「次の議題として、『遊戯王』の大会におけるクラスのパワーバランスの調整です。やはり問題なのは純一君をどのクラスに割り当てるかですね……」
1年1組は一夏と純一の2人で1人のクラス代表で今までやってきた。ルックスとハートの強さの一夏と温和な知恵者の純一。小学生時代からの親友だった事もあり、2人の力で1組は一つにまとまっている。
一夏と箒の2人が過去に『遊戯王』で遊んだ経験があり、今はリハビリと新ルールの把握に励んでいる。本音は現在進行形で嗜んでおり、純一も一目置いている程の実力者。セシリアは初心者だが、本人の懸命な努力もあって力を付けている。
そこに純一が加わったら一体どうなるのか。学年別クラストーナメントで優勝候補間違いなしになり、1組による一強になる可能性が出てくる。
それを危惧した上層部ことIS委員会によって、今回の職員会議が行われている。今回のエキシビジョンデュエルを通じて、彼らにとって純一は目の上のたんこぶとなった。
純一をどうにかして排除したい所だ。女尊男卑を維持しつつ、ISを扱う女性デュエリストを頂点に立たせる為にも。しかしそれは難しい。世界中の人々にかなりのディープインパクトを与え、『デュエル・ストラトス』のシンボル的存在になったのだから。それに何より純一が強い事が一番。
純一が企業所属扱いとなり、専用機を持った時点で、女尊男卑とIS至上主義を掲げる女性の権利団体は純一を警戒対象と見定めた。例え世界最強の千冬が抑えても、彼女達の強欲で貪欲な執念は消える事はない。
女性権利団体はIS至上主義を掲げ、女尊男卑を絶対視している。例え女性でも自分達の考えに賛同しない者には容赦しない。無関係な男性に痴漢冤罪を吹っ掛けて人生を破滅に追いやる。買物の踏み倒しや無銭飲食。恐喝や強盗。他にも誰がどう考えても重罪になるような犯罪もしている。
女性だけが使えるIS。自分達はISに選ばれた数少ない女性。そう信じてISを絶対視し、ISの存在を穢す存在を絶対に許さないと言わんばかりに私利私欲で動く。
それを当たり前のように受け止めている者が多いIS学園の中で、純一は異端と言える。筋が通っていない事や曲がった事を嫌う正義漢である為、女尊男卑を掲げる女子生徒達と何度もトラブルを起こしている。しかし、大半は純一が巻き込まれたり、理不尽な目に遭った事への怒りから来る物なので、教師達は純一に同情している。
教師陣が純一側であり、加害者側の女子生徒達に容赦ない処分を下している為、純一を厄介に感じている女子生徒も少なからずいる。特に身内に女尊男卑を掲げる権利団体の重役がいる場合には。
「となると何処かのクラスに異動になりますね。2組~4組は専用機持ちがいるから駄目です。となると5組~8組の何処かになりますね」
「でしたら5組にお願いします」
「ナターシャ先生……!」
挙手をして純一を自分のクラスに迎え入れる事を申し出た教師。髪型は鮮やかで艶やかな長い金髪で左耳に認識票と思われるイヤリングを付けたアメリカ人。ナターシャ・ファイルス。アメリカ軍所属でテスト操縦者。
今はIS学園の防衛強化も兼ねてアメリカ軍からIS学園に出向し、教師として自分の知識や経験を皆に伝えている。2学期になって来たばかりなのでまだまだ未熟な所があるが、努力家で一生懸命な所がついつい応援したくなる。
「昨日のデュエルを観戦していましたが、純一君のデュエルはとても素晴らしかったです。真剣勝負を楽しんでいましたし、相手を心からリスペクトしていました。とてもデュエリストらしい戦いをしていたと思います。私も今回『遊戯王』を始めましたが、是非彼を通じて沢山学びたいです。どうかお願いします」
「織斑先生。どうですか?」
「ナターシャ先生は純一君にとって良き先生になるでしょう。引継ぎもスムーズに済むでしょうし」
「分かりました。では純一君は1組から5組へと異動と言う事でよろしいですね?」
IS学園の用務員でありながら、IS学園の実務関係を取り仕切る事実上の運営者。轡木十蔵の進行の下、職員会議は次の議題に進んでいく。
「次の議題ですが、『呉島エンタテインメントスタジオ』がIS学園にデュエルディスクを試供しました。実はもう1校デュエルディスクを試供した高校があります」
「その高校とは?」
「『私立鳳凰学院』です」
次の議題は『私立鳳凰学院』について。途端に職員室は瞬く間に張り詰めた空気に支配された。無理もない。『私立鳳凰学院』がどのような所なのか。それを知らない訳ではない。
「皆さんもご存知だと思いますが、『私立鳳凰学院』は明治時代からある由緒正しい学校。戦前はお嬢様学校でしたが、今では男女共学でかなりの進学校になりました。学科は普通科と国際教養学科の2学科でしたが、5年前にIS学科を設立しました。そしてISコアを保有すると共に量産に成功しました」
「我々IS学園に対抗するつもりでしょうか?」
「向こうはそのつもりはないようです。“女尊男卑によって虐げられた男性や女性の為の受け皿となる”と言っていましたから……」
「我々に対する皮肉のように聞こえますな……」
『私立鳳凰学院』は明治時代に設立された高等学校。戦前はお嬢様学校だったが、今は男女共学の進学校となった。授業料は私立な割に良心的。
学科は普通科と国際教養学科の2つに5年前に設立されたIS学科の3つ。IS学科は職業訓練と大学みたく学術的要素がある為、社会人になってからでも入学する事が出来る。
IS学園の教職員達が厄介に感じている理由。それはIS学科の事。保守系与党の自由第一党総裁、内閣総理大臣の阿部野信三が援助していると言う噂が流れている程、IS学科の設備がIS学園張りに良いのだ。
更に噂ではタイ、オランダ、ギリシャ、ブラジル、ベルギーの代表候補生達を取り込みつつ、IS学科の教職員を充実させつつあるとの事。一体何を考えているのか。IS学園としても放ってはおけない。
「平等院財閥は今回のデュエルディスク開発に多額の出資・援助を行いました。その報酬としてデュエルディスクを試供されたかと」
「成る程……しかし話はそれだけではない筈です。理事長、要件は?」
「はい。IS学科を設立してISコアを保有して量産し、代表候補生を取り込みながら教職員を充実させている。となると次は……」
「男性操縦者を狙って来ると?」
「恐らくは。彼らが狙うのは……黒田純一君です」
十蔵が告げたのは『私立鳳凰学院』の次なる狙い。世界で2人しかいない男性操縦者。そのどちらかを取り込もうとする筈だ。織斑一夏と黒田純一。
織斑一夏は世界最強の織斑千冬の実の弟。天災科学者の篠ノ之束の数少ないお気に入り。そして世界で最初の男性IS操縦者。これまでIS学園で起きた色んなトラブルを解決してきた。外見も良い上に浮ついた言葉も言う為か、学園内にファンも多い。
対する黒田純一は父親が大企業の社長で、母親が元皇族出身。天災科学者の篠ノ之束の数少ないお気に入り。世界で2番目の男性IS操縦者。見た目は地味だが性格は良い。どちらも優良物件だが、IS学園では一夏が比較的大切にされている。
「私も理事長の意見に同意します。純一君はIS学園を憎んでいます」
「憎んでいる?」
「彼は元々、尾田高校と言う日本隋一の進学校に入学する予定でした。死んだ気になって勉強して掴み取った合格。それを私達とISが奪い取った。聞いた話によると相当荒れたとの事です」
「私も進学補習を純一君からお願いされた時に聞きました。ISの道に進む気はないと」
数学担当の教員―エドワース・フランシィと、部活棟の管理を任されている教員―榊原 菜月が口々に千冬の言葉に補足説明を加える。
IS学園の授業カリキュラム。通常学科とIS学科の比率は3:7か2:8との事。とにかくIS学園では通常学科の比率が少ない。IS業界に進むつもりはない純一のような生徒には困った状態。現在の進路状況では大学進学を考えている生徒がいない為、大学受験を考える時は自分でどうにかするしかない。
純一はIS学園に入学した時から決めていた。IS学園にいる間はきちんと勉強する。でも卒業した後はISに金輪際関わらない。であれば進路はただ一つ。大学進学。父親の後を継いで社長となる。この夢を簡単に諦める純一ではない。
自分が“世界で2番目の男性操縦者”である事は分かっている。束に気に入られている事も分かっている。恐らくISからは逃げられない。それでも。それでも自分は夢を諦めたくない。諦められない。
純一は無理を承知で千冬と真耶に自分の本心を明かし、今後どうすれば良いのかを尋ねた。彼女達はIS業界以外の道に進む生徒の対応の経験があまり無かったが、純一の真剣な思いを無視出来ず、彼の願いを聞き入れる事にした。
こうして純一は通常学科の進学補習を受ける事になった。一夏が“純一が通常学科の時に物凄い集中力を発揮するから話し掛けにくい”と言う程、没頭している事が伺える。そのおかげか通常科目を担当している教員からの受けが良い。
「私としては『私立鳳凰学院』とは姉妹校のような関係を結びたいと思いますが……向こうと女尊男卑の権利団体の出方次第になりますね」
「『私立鳳凰学院』はともかく、女尊男卑の権利団体は十中八九行動を起こすと思います。そして今回のエキシビジョンデュエルの件で純一君に対する風当たりが強くなり、彼に対するプレッシャーは今まで以上となるでしょう」
「女尊男卑の風潮……私達もどうにかしたいですが、現状幾ら指導しても中々直らない人が多数います」
「風紀委員のような物を設ける必要がありますね……ただやる人がいればの話ですが」
「全く困った物です……女尊男卑と言う社会風潮、一部の驕り高ぶった女性達のせいで我々IS関係者は肩身の狭い思いを感じなければならない……」
IS学園の教職員達は険しい表情を浮かべる。“世界で2番目の男性IS操縦者”、黒田純一の扱いと彼への対応。女尊男卑を掲げる権利団体とそれに煽られた女子生徒達への指導。
どちらも直ぐには解決策が出るような物ではなく、その後も色々と話し合いが行われて、職員会議は解散となった。
ーーーーー
時間軸を前の日に戻そう。『呉島エンタテインメントスタジオ』の会議室。そこでは幾つかの長テーブルを連結させ、その上にオードブルやお菓子、飲み物やグラスが置かれている。
会議室にいるのは呉島高虎と仙谷竜馬。『KONNAMI株式会社』社長の赤羽礼二。カートショップの最大手、『カードターミナル』の代表取締役の池田直人。平等院財閥のご令嬢、平等院友希那。他にもプロデュエリストやアリーシャ・ジョセスターフ等の国家IS操縦者達もいる。
その中で異彩を放っているのが黒田純一。今回のエキシビジョンデュエルの主役の1人で、華々しいデビューを飾ったデュエリスト。その近くには純一の両親やマスター・ユウギもいる。
彼らが集まっているのは今回のエキシビジョンデュエルの打ち上げ。今回のイベントは誰か一人のおかげで成り立った訳ではない。皆の力が物凄いエネルギーを生み出し、今回のイベントを大成功に終わらせる事が出来た。
デュエルディスクのアイディアを生み出した人。『遊戯王』カードの使用を決断した人。デュエルディスクの開発を援助した人。ISアリーナの使用に協力した人。そしてエキシビジョンデュエルでデュエルした人。ここにいる皆は何かしらの形でこのイベントの成功に関わった。
「呉島社長、そろそろ乾杯の音頭を」
「では僭越ながらやらせて頂きましょう。お集まりの皆さん。今日のイベントは大成功に終わりました。それは皆さんの力があってこそのおかげです。デュエルディスクと言う概念を生み出した高橋先生、『遊戯王OCG』を販売している『KONNAMI株式会社』、デュエルディスクの開発の援助をして頂いた平等院財閥……そしてエキシビジョンデュエルを行った純一君とマスター・ユウギさん。そしてここにいる皆様。本当にありがとうございました! 今日は無礼講で行きましょう。乾杯!」
『乾杯!』
グラスを打ち付け合って一気に呷る。その後皆は仲良く談笑しながらオードブルを食べ、飲み物を飲んでいる。
その中で純一が一人飲み物を静かに飲んでいると、高虎とマスター・ユウギと友希那の3人が歩み寄ってきた。
「純一君。お久し振りです。私の事、覚えていますか?」
「貴女は……友希那さんじゃないですか! どうしてここに!?」
「実は今回のデュエルディスクの開発をお手伝いしまして……その縁もあって今回観戦しに来ないかとお呼ばれされました」
「友希那さんの名字……平等院……待てよ。平等院!? あ、あの有名な平等院財閥じゃないですか!? し、失礼しました!! 知らなかったとは言え、ご無礼を!」
「いえいえ。私は自分の家の事をなるべく話さないようにしています。もし話してしまうと恐れ多くて話し掛けられなくなるので……なのでデュエルをしていた頃のように話し掛けて下さい」
「分かりました。しかし……何故デュエルディスクの開発の援助を?」
純一にとって予想外過ぎた友希那との再会。中学生の頃にデュエルしまくった時は単純に“周りに対戦相手がいない『遊戯王』プレーヤー”と言う認識だったが、蓋を開けてみれば大財閥のお嬢様。しかもデュエルディスクの開発に携わった恩人。
その相手には低姿勢になるしかない。そうなると疑問に思う事があった。何故大財閥のお嬢様が援助を行ったのかを。
「理由は幾つかありますが、先ず何と言ってもアニメで観たデュエルディスクを使ってみたかったからです。私もアニメからOCGに入った身なので、一度は夢見ました。それが今回開発したいけどお金が足りないから援助して欲しいと要望が入ったので、今回援助させて頂きました」
「他には何かありますか?」
「私情が入りますが、私は今のこの世の中が好きじゃないです。ISが登場してから、女尊男卑の世の中になって男性が暮らしにくい世の中になってしまいました。私はISの事を否定しません。本来は宇宙開発に使われる筈なのに、今は兵器として使われている事が悲しいです。そしてISが登場して女性の方が偉いと言う風潮になりました。でも偉いのはISを動かせる女性であって、全ての女性ではありません。自分達が強い・偉いと勘違いしている一部の女性達が富や力を全て吸い上げ、私利私欲の為に使って世界を我が物にしている。それが私にとって許せないのです」
自分の思いをはっきりと告げた友希那。その言葉と思いに胸を打たれたのか、純一は押し黙る事しか出来なかった。
ノブレス・オブリージュの精神を地で行く責任感の強さを持っていて、力なき者・弱き者に手を差し伸べる優しさを併せ持つ、流石大財閥のお嬢様と言いたくなる程だった。
「だから私はデュエルディスクの援助を行い、純一君……貴方をデュエルディスクのモニターに強く推薦しました。対戦相手がいない独りぼっちだった私に、『遊戯王』の楽しさを教え、共に分かち合った貴方に私達の夢を託したいと思ったのです」
「一夏君じゃ駄目なんですか? 彼は素晴らしい人ですが」
「確かに織斑君の事も選択肢に入れていました。しかし、織斑君を選ぶと本人の意思に関係なくIS学園を、そして学園を裏で牛耳っているであろう女尊男卑を掲げる権利団体を増長させてします。私達の夢を、願いを、思いを全て悪意や欲望によって踏み躙られてしまいます。それだけは避けなければならないのです」
「だから残る私を選ばざるを得なかった……でも良かったのですか? 束さんの許可を得ずに押し通したのは……」
「許可はもらいましたよ?」
「……えっ?」
「うん。実は友希那さんから許可はもらっていたよ?」
「た、束さん!?」
何時の間にか純一の目の前に姿を現した篠ノ之束。彼女は笑顔を見せながら純一に言葉をかけると、純一は動揺する事しか出来なかった。
そう言えば肝心な事を聞いていなかった。何故束がデュエルディスク開発に協力したのかを。デュエルディスク機能搭載のISを作る気になったのかを。
「今回のデュエルを観て確信したんだ。私が見たかったISの形の一つがこれだったんだって。私も一人の『遊戯王』プレーヤーとして夢見ていたんだ……デュエルディスクを付けてデュエルするのを」
束が開発に協力したデュエルディスク型のIS。それは悪意や欲望といった、人間の負の感情が込められて開発された物ではない。
最初は一つの会社会議から始まった。強みを活かした新商品開発を考える会議の中で、『遊戯王』のアニメの話が出て大盛り上がり。そこからアニメのデュエルディスクを完全再現出来ないか?と言う話となった。
そこから『KONNAMI株式会社』に営業を仕掛けた。『KONNAMI株式会社』は『遊戯王』プレーヤーの減少と売り上げの落ち込みを抱えており、それを打開する為にこのビッグウェーブに乗る事を決めた。
しかし、ここで問題が浮上した。デュエルディスクの開発を何処に依頼し、何処から援助してもらうか。かなりの数を開発するのだ。大企業や大財閥に依頼するしかない。
そんな時に手を差し伸べたのが平等院財閥と『黒田商事』だった。この大財閥と大企業の子供が『遊戯王』プレーヤーだった事が幸いし、資金援助と開発元の宛てが見つかった。
平等院財閥が資金援助を行い、『黒田商事』が開発元を斡旋してくれた。更に『黒田商事』経由で話を聞いた束がデュエルディスク型のISの開発を行い、その代わりにIS学園にデュエルディスクの試供を約束した。
それを聞いた平等院財閥も経営している『私立鳳凰学院』にデュエルディスクの試供を申し出て、何やら波乱が起きそうな雰囲気を漂わせている。そして『黒田商事』経由で『三井重工』がデュエルディスクの開発に携わる事となった。
切っ掛けは自社の強みを活かした商品開発の会議。そこから出たアイディアだった。それが何時の間にか色んな人々の思いや願いを込めて作られたデュエルディスクとなった。
自社の強みの技術が込められた商品で遊んで欲しい。世界的に人気なカードゲームで楽しんで欲しい。アニメのような熱いデュエルを繰り広げて欲しい。そしてデュエルを通じて沢山の絆を結び、多くの事を学んで欲しい。
「純一君が初めてISを正しく使えた。正直ISは今の世界には早過ぎた。今のISはスポーツ競技とは言いつつ、やっている事は只の戦争に近い物。まぁIS学園に無人機送り込んでいる私が言えた事じゃないけど……」
「束さんが世界を憎んでいる理由は何となく分かります。宇宙開発の為に開発した物がスポーツ競技とは名ばかりの闘争に使われていると聞いたら、誰だって怒りたくなりますよ」
「だから私はデュエルディスクに賭ける事に決めたんだ。ISは兵器じゃない。宇宙開発の為に作った。でも“白騎士事件”で兵器として皆に見られた。私は何も出来ずにいた。どうやれば本来の使い方になるのかを考えていたから……」
「今回デュエルディスクとして新しい可能性を見出した、と言う事で良いですか?」
「そう。“無限の成層圏”ならぬ“無限の可能性”を魅せてくれた。そしてそれが成功した。他でもない皆の力と努力のおかげで。だったら開発者として協力しない訳には行かないよ」
限りなく優しい表情を浮かべる束に、純一も微笑みを浮かべた。自分以外の前では絶対に見せない、優しいお姉さんのような姿。何故自分にだけ見せるのか。何度も聞いてもはぐらかせてしまうが、それでも純一にとって束は大切な人である事に変わりはない。
「それにしてもこの打ち上げの席には、かなりの有名人が集まっていますね。まさかアリーシャさんがお出でになっているとは……」
「今回こうしてISのに国家代表操縦者の方々にも集まって頂いたのは我々、平等院財閥の計画に加わって頂く為です。もちろん純一君……貴方にも加わって頂きます」
「束さんもですか?」
「私も面白そうだから加わる事に決めたよ? それに私の夢を叶えるお手伝いをしてくれるとユッキーが約束してくれたから」
「これだけかなりの人を呼んだんです。大掛かりな計画かと思います。その内容をお聞かせ下さい」
平等院友希那と言う魔王を前に、純一は物怖じせずに彼女の野望を聞き出した。このビッグウェーブに乗るかどうか。それを判断する為に。
「平等院財閥が経営している『私立鳳凰学院』では、5年前にIS学科を新設しました。IS学園はIS操縦者育成用の特殊国立高等学校。操縦者や専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成される……と言われていますが、メカニックになりたい人は社会人の方でもいます。男性でも純粋にISと言う存在に興味を抱き、ISに関わる仕事に就きたい。そう思う人も少なからずいます。しかし……」
「女尊男卑の世の中がそれを許さない……と」
「はい。そこで束博士からISコアを幾つか試供して頂くと共に、国家操縦者の方々を講師に招き、代表候補生の何人かも取り込みました。ISと言う物を兵器ではなく、純粋な科学技術として研究する為に。そして在るべき姿、宇宙開発に戻す為に。その可能性の中でデュエルディスク型のISが生まれた。そう言っても過言ではありません」
『私立鳳凰学院』は女尊男卑の風潮に傷付けられた人々を守る為、IS学科を新設して社会人の為の職業訓練校としている。
そのおかげで入学者が相次いだが、女尊男卑の影響で仕事を失った人に関しては授業料無料、就職先斡旋、アフターケア万全と三ツ星ホテル顔負けのサービスを行っている。
未来が見えなくなり、希望を失った人々にはもう1度未来を信じる勇気と手に職を付けられるスキルを与える一方で、女尊男卑を掲げる連中には容赦のない対応を取る事で知られている。この時点でIS学園では取り上げられていないが。
「ですがIS学科は現状ではおまけ程度。『私立鳳凰学院』は共学の普通科と国際教養学科しかない私立高校。そこでなら貴方が諦めかけている夢を叶える事が出来ます」
「諦めかけている夢……」
「話は聞いています。お父さんの会社を継ぐと言う夢をお持ちで。素晴らしいですよ? ですが今のままでは叶う可能性は低いでしょう。IS学園にいる限りは」
「確かに。とは言ってもIS学園が私を手放すとは思えませんが」
「それはどうでしょうね? IS学園は織斑一夏と言う最高のカードを手にしています。世界初の男性操縦者であり、世界最強と謳われている織斑千冬の弟。世界情勢は相変わらず女尊男卑で男性への風当たりが強いです。一夏君と貴方。どちらが優先されるかと聞かれると、当然一夏君が優先されます」
「となると遅かれ早かれ私は研究施設に連れてかれる……かもしれないと」
純一の言葉に友希那は頷く事で答えた。織斑一夏は有名人の実弟であり、純一は実質一般生徒扱い。特別にコーチを付けられているが、専用機もなく、特に待遇は一般生徒と然程変わりない。
いざと言う時に切り捨てられる可能性はある。幾ら千冬が純一の両親と親しく、純一を守ろうとしても、あくまで一人の教師でしかない千冬でも限界がある。
「現状を言うと、今の貴方は織斑一夏の当て馬になりかけています。いやなっていると言っても良いでしょう。私はそうなる未来を阻止する為に貴方をここに招待しました。本音を言えば『私立鳳凰学院』に転校し、学業に打ち込みながら夢を追って欲しい。“世界で2番目のIS操縦者”と言う肩書を捨て、黒田純一と言う一人の人間に戻って欲しい。今日のデュエルを観て、私は強く思いました。デュエルに挑んでいる貴方は間違いなく輝いていました。その輝きを理不尽な悪意によって消させたくない!」
「純一君。友希那さんの言う通りサ。今回のエキシビジョンデュエル、そして『デュエル・ストラトス』の始動に伴い、IS委員会、及びその上層部の女尊男卑とIS至上主義を掲げる連中は君の事を邪魔に感じるようになった。今は千冬が抑え込んでいるけど、それもいつ破られるか……」
「アリーシャさん……状況はそこまで悪いんですか?」
「今はそうではないけど……“膨らみ過ぎた風船はやがて破裂する”って事だナ」
友希那の言葉に答えたのはアリーシャ・ジョセスターフ。腰まで届く赤髪のツインテール。肩から胸元まで露出する程までに着崩した着物。そしてピンヒール。特徴的な服装をしている美女。
テンペスタIIと言うISの起動実験事故に伴い、右目と右腕を失っているが、第2回モンド・グロッソ大会優勝者でイタリアの国家代表を務めている。2代目ブリュンヒルデと言われているが、本人は“千冬との決着はついていない”と言って、第2回モンド・グロッソのブリュンヒルデ受賞を辞退している。
「……まさかこのような事態になるなんて」
「私の願いは女尊男卑を壊して元々の社会を取り戻す事。ここにいる皆さんはそれに賛同してくれました。中には自分達のいる業界が冬の時代になってしまったが為に、かつての勢いを取り戻したいと考えている人もいますが……それでも願いは一つです。元々の社会に戻って欲しい。皆が未来を見れない社会に明日はありません。男性も、女性も、老人も、子供も等しく希望を持って生きられる。そんな世の中にする事。それが私の、いや平等院財閥の使命です。純一君。貴方に私の夢を叶えるお手伝いをして欲しいです。難しい事は頼みません」
純一は考える。友希那の考えは理解出来る。自分も女尊男卑の思想が蔓延る前の社会に戻って欲しい。しかし自分に出来る事は何なのか分からない。大企業の息子で学生でしかない自分に一体何が出来るのか。
世の中の事を知ろうと、色んな人に会って見聞を広めている。自分でやっている副業で稼いだお金を寄付したりしている。でもそれ以上の発想が出てこない。
「私も友希那さんと思いは一緒です。確かにIS学園で多くの事を学び、沢山の思い出や仲間が出来ました。しかし私が目指している未来と今いる場所は相容れません。父親の会社を継いで、社長になる夢を私は諦めたくありません。正直私に何が出来るのか分かりませんが、この私でも出来る事があるのならば私は全力を以て応えます」
「ありがとうございます。何れ貴方の夢を叶える手筈を整えます」
こうしてエキシビジョンデュエルの打ち上げはお開きとなり、デュエル産業の勃興と共に水面下で何やら動き始めた。
今まではIS学園の一人の生徒だった純一だったが、エキシビジョンデュエルを通じて一気に世界の中心へと追いやられた。しかも友希那の企みに乗っかる事を決め、同時に自分の叶えたい夢に向けて動き出した。
その切っ掛けはエキシビジョンデュエル。今までISの世界では輝けなかった自分が輝く事が出来た。自信を得ると共に前に進む勇気を貰えた。だから自分を変えようと決意する事が出来るようになった。
実を言うと、純一は内心IS学園に不満を抱いていた。女尊男卑の風潮が蔓延っている事や、誹謗中傷を受ける事もそうだが、自分が目指している夢が遠のいていく気がしている事が一番大きい。父親の会社の社長となり、後を継ぐと言う夢。
当然の事だが、IS学園の授業カリキュラムはISに関する授業や訓練の比重が大部分を占めており、純一はセンター試験の科目を進学補習と言う名前の個人指導でやりくりしているのが現状だ。
時々模擬試験を受けているが、志望校たる東京大学はC~D判定とあまり良い結果ではない。IS学園にいる状態で少ない勉強時間で頑張っている方だと励ましの言葉をかけられても、純一は満足出来ない。納得できない。
自分の中学生時代の親友はその先に進んでいると言うのに、どうして自分はこの位置にいる? 足りない。足りなさすぎる。時間が足りない。もっと勉強に打ち込めるだけの時間が欲しい。もっと勉強のやり方を考える時間が欲しい。こんなんじゃ志望校に合格する事が出来ない。満足出来ない。
今まではISの勉強や訓練もあって溜め込んでいたが、『遊戯王』に復帰した事で心の奥底から沸き上がってくる強欲で貪欲な渇きが沸き上がってしまった。かつてデッキを組んで対戦していた日々が、大会に出て一心不乱に勝利を求めるあの野心が純一の奥底に眠る物を呼び覚ましてしまった。
ここまで呼んで下さり、大変ありがとうございます。
今回も後書きとして裏話・裏設定を書いていこうと思います。
・純一君が1組から5組に!?
1組は一夏君と箒さんとセシリアさん、そしてのほほんさんがいるので純一君がいなくてもそこそこ戦えます。
純一と言うジョーカーがいると流石に手が付けられないので、他のクラスに飛ばされる事になりました。決定したのはIS委員会。
本編でも触れましたが、女尊男卑を掲げる女性達が純一君の活躍を快く思わず、最悪命を狙う事も想定されます。なので寮部屋も変更になります。
・女尊男卑って……
原作だと”女尊男卑が当たり前になってしまった”と言っていますが、具体的にどういう所がそうなったか今一分からないんですよね……なので手探り状態で執筆しています。
原作読んでいると一夏君も適応出来ている(?)みたいなんですが、純一君は女尊男卑に中指立てて抗っています。なのでトラブルが絶えません。
でも大事にならないのは彼の人徳だったり、トラブルの内容が理不尽な言いがかりばかりで「そりゃ怒っても仕方ないよな~」と思える物ばかりです。
・ナターシャ先生
原作に登場したけど、アニメには登場しなかったナターシャ・ファイルスさん。
この人は「元々アメリカ軍でISのテスト操縦者だったけど、防衛強化の一環で教師としてIS学園にやってきた」と言う設定です。
原作でも「銀の福音暴走事件」の後出番がないので、良いキャラと言う事もあって私個人の独断と偏見でレギュラーに昇格させました。
・『私立鳳凰学院』関係の元ネタ
名前の元ネタは漫画『クローズ』と『WORST』に登場した鳳仙学園です。
内閣総理大臣の名前は安倍首相。
取り込んだ代表候補生は『アーキタイプブレイカー』の方々が中心です。
・一気に注目度が上がった純一君
今回のデュエルディスクのモニター案件、エキシビジョンデュエルを通じて、比較的安値だった純一君の株が大幅に上昇しました。
それと共に世間の注目が集まり、女性権利団体の標的になる事に……この小説ではIS学園の先生方はかなり良心的な人ばかりなので、どうやって純一君を守り通すかをテーマにしていきます。
とは言っても女尊男卑に染まった女子生徒達と今後もトラブルがあるので、純一君からしたら「転校したいよ~」と思いたくなるのが現状です。
・純一君の本音
元々日本一の進学校に進むはずが、IS学園に入学させられたので内心不満があります。
そりゃ死んだ気になって勝ち取った合格をかき消されたら怒りますよ……
本人は夢を諦めきれず、センター試験に向けて独学+補習で頑張っていますが、IS学園の都合上中々上手く行っていない……
・純一君教師達の苦悩
『デュエル・ストラトス』の開始で純一君が勢いに乗り、カードゲーム業界や男性達が希望を抱く一方、IS学園の教師達は女尊男卑に染まった女子生徒達をどう抑え込むかを考えなければいけない……
一方で純一君は夢を叶えたいから努力しているけど思うように上手く行かない。IS学園に正直いたくないから離れたいけど、そういう訳にも行かない。
だから『私立鳳凰学院』に来ないかと誘われていますが……本人は乗る気になりました。
この小説の最終章では答えが出ますが、それまではお互いに苦悩しながら毎日を過ごしていく事になります。
・『私立鳳凰学院』
ありそうでなかったIS学園の対抗馬。
IS学科を職業訓練校扱いにしたのは、現実にある職業訓練校をリスペクトしたからです。後々ハローワークと提携するとかしないとか……
・2人目のIS男性操縦者が出たら?
このサイトでは色々な小説が出ていますが、原作だと2人目以降のIS男性操縦者が出たらどうするんですかね?
この小説では今までは「あまり目立たせたくないし、大したことないから専用機を与えない・でも仮にも2人目だから教えないと駄目だよな~」だったのが、「えっ!? こいつデュエル強くない!? しかも世の中の男性が元気になっているし、このままだと私達の優雅な生活が無くなってしまう!? 潰せ! 潰せ!」と言う感じになりました。自分で書いてて思いましたけど、身勝手過ぎる……
次回からいよいよ第2章、本格的に『デュエル・ストラトス』が始まります。先ずはルール説明(モンスター・魔法・罠等々)を行い、最後にインストラクターの方と純一君がデュエルして終わりと言う流れにします。
ルール説明は1話ずつモンスターカードや魔法カード、それに罠カードをテーマ別に分けて説明します。
その前に用語・世界観・キャラ設定を投稿します。
登場キャラにこのデッキを使って欲しい・このデッキを使う人出して欲しいと言う意見があれば、感想に添えてお願いします。
次回をお楽しみに! LAST ALLIANCEでした!
p.s.皆さん。よろしければ感想・高評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
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