遊戯王IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:LAST ALLIANCE

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約2週間ぶりの投稿になります。
お話自体は既に完成していたのですが、中々投稿時間を取る事が出来ませんでした。
投稿が遅れた事をこの場をお借りして謝罪します。

そして番外編で書く内容のアンケートを取っていたのですが、気が付いたらUAが5,000を突破していました。
なのでここで一度投票を締め切り、執筆に取り掛かろうと思います。
投票して頂いた皆さん、本当にありがとうございました!





TURN12 シンクロ・エクシーズ召喚を覚えよう! 動き出す波乱の芽

 IS学園の学年別クラス対抗デュエルトーナメント開催まで残り1週間と少し。この大会はIS学園のアリーナで行われるが、先日のエキシビジョンデュエルとは違い、IS委員会が主催となっている。

 協賛は『呉島エンタテインメントスタジオ』、『カードターミナル』、『KONNAMI株式会社』等々となっているが、彼らは主催者のIS委員会に快い感情を抱いていない。と言うのも、IS委員会は女性権利団体と癒着関係にある事が関係している。

 本来ならば、協賛となっている色んな会社や事業者が協力してこのイベントを成功に導く事になっていたのだが、IS委員会は彼らの仕事を全て自分達で行う事に決めた。下請けと言える女性権利団体に委託し、その報酬として売り上げの一部を着服すると言う犯罪じみた取り決めをして。

 とは言え、彼らも何もしない訳ではない。恐らく観客の殆どが黒田純一である事を最大限活用し、純一本人もそれを承知の上で仕事を受け持った。

 それは他のクラスや学年のデュエルの実況・解説。『KONNAMI株式会社』からカリスマデュエリストのマスター・ユウギと工藤流星が来る予定だが、1年生の部限定ではあるものの、純一が解説を務める事となった。当然自分のクラスの試合がある時は来れないが。

 そしてついに対戦カードが決定した。1年生の部だけでもかなり見応えのありそうなデュエルが予想されている。

 第1試合は1年5組と6組。第2試合は1年1組と7組。第3試合は1年2組と3組。第4試合は1年4組と8組。

 各クラスは出場メンバーを決定し、各自が使うデッキのテーマも決めて特殊ルールを踏まえてデッキ構築をしている。そんな中、『遊戯王OCG』の授業は行われている。

 

「はい! 今日の授業はシンクロ召喚とエクシーズ召喚の2つの召喚方法について説明します。前回勉強した儀式召喚と融合召喚は魔法カードを使う必要がありましたが、シンクロ召喚とエクシーズ召喚はその必要はありません。では先ずはシンクロ召喚について勉強して行きましょう」

 

 IS学園で初となる『遊戯王OCG』の大会まで後少し。この日も授業が行われていた。今回のお題はシンクロ召喚とエクシーズ召喚。デッキの切り札として使われる事が多く、レアリティ―の高いカードばかり。

 制限・禁止カードにも何枚か入っている・入っていた時期もあった。それ程汎用性が高く、効果も強力なモンスター揃いだ。

 

「シンクロモンスターはカードの枠が白いモンスターカードです。使用する時はメインデッキではなく。エクストラデッキに入れて、エクストラデッキゾーンに置いて下さい。シンクロモンスターを召喚する、シンクロ召喚に必要なのは2種類のモンスター。“チューナー”とテキストに書かれているモンスターと、それ以外のモンスター。それらのモンスターのレベルを合計したレベルのシンクロモンスターを特殊召喚する事が出来ます」

 

「一度正規召喚をすれば、蘇生制限を満たすので殆どのシンクロモンスターは墓地から特殊召喚出来ます。しかし、中には“シンクロ召喚でしか特殊召喚できない”とテキストに書かれたモンスターがいるので、注意して下さい。ちなみにシンクロ召喚をする時に必ずモンスターを2体以上必要とする為、今の所レベル1のシンクロモンスターはいません」

 

「ではシンクロ召喚のやり方を純一君の実演を交えて教えて行きます。例として使うのは《スターダスト・ドラゴン》です」

 

 

《スターダスト・ドラゴン》

シンクロ・効果モンスター

レベル8/風属性/ドラゴン族

ATK/2500 DEF/2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。

(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。

その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

「先ず自分のフィールドに、シンクロ召喚したいシンクロモンスターの素材となるモンスターを揃えます。素材となるモンスターは表側表示であれば、攻撃表示でも守備表示でも構いません。次にシンクロ召喚に必要なモンスターが自分フィールドに揃ったら、自分のメインフェイズ時にシンクロ召喚を行うと言う宣言をします。素材として使用する自分フィールドのモンスターとチューナーを墓地へ送り、シンクロモンスターをエクストラデッキから取り出し、エクストラモンスターゾーンか、メインモンスターゾーンのどちらかに出します。これでシンクロ召喚完了です」

 

「シンクロ召喚したシンクロモンスターは特殊召喚扱いとなる為、表側攻撃表示・表側守備表示のどちらの形式で出しても大丈夫です。では純一君にやってもらいましょう。今回から召喚の仕方をやや実戦方式にします。自分フィールドにモンスターがいなくて、手札に《簡易融合《インスタント・フュージョン》》と《シャドール・ヘッジホッグ》が、エクストラデッキに《テセウスの魔棲物》と《スターダスト・ドラゴン》がある状況です。ではお願いします」

 

「はい。手札から魔法カード、《簡易融合《インスタント・フュージョン》》を発動します。1000ライフポイントを払い、エクストラデッキからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚します。《テセウスの魔棲物》を特殊召喚!」

 

 

《テセウスの魔棲物》

融合・チューナーモンスター

レベル5/水属性/アンデット族

ATK/2200 DEF/1800

チューナー×2

 

 

 

「続いて手札から《シャドール・ヘッジホッグ》を通常召喚します。……今村先生、これって召喚口上言った方が良いですか?」

 

「うん。言った方が盛り上がるよ?」

 

 クラスの皆の前で召喚口上を言う事に抵抗があるのか、純一は冷や汗をかき、顔を強張らせながら講師の俊介に尋ねる。

 クラスを見渡すと、担任のナターシャを含めた皆が目をキラキラ輝かせている。誰がどう考えてもやってくれと言っているような物だ。

 

「……分かりました。やります。レベル3、《シャドール・ヘッジホッグ》にレベル5、《テセウスの魔棲物》をチューニング!……集いし願いが新たに輝く星となる! 光さす道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!」

 

『オオオオォォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!!!』

 

 《スターダスト・ドラゴン》は、テレビアニメ『遊☆戯☆王5D's』の主人公、不動遊星の切り札と言えるシンクロモンスター。純一はその召喚口上を一言一句間違えずに言い切り、シンクロ召喚を再現してみせた。

 5組の皆は大喜び。拍手喝采を純一に送るが、当の本人は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。

 

「はい! ありがとうございました! 以上がシンクロ召喚の説明とやり方でした。続いてエクシーズモンスターの説明とエクシーズ召喚のやり方を説明します。では教科書の25ページを開いて下さい」

 

「エクシーズモンスターはカードの枠が黒いモンスターカードです。使用する時はメインデッキではなく、エクストラデッキに入れてエクストラデッキゾーンに裏向きにして置いて下さい。それでですね、エクシーズモンスターの特徴はレベルがない代わりにランクがある事です。基本的に自分フィールドに同じレベルのモンスターを2体以上揃えた後、“エクシーズ召喚”と言う方法で特殊召喚されます」

 

「エクシーズ召喚の素材となったモンスターはエクシーズモンスターの下に重ねられ、様々な効果を発揮するのに使用されます。なのでエクシーズ召喚した時に間違えて墓地に送らないで下さいね? 墓地に送る時はモンスター効果を発動する時や、除去された時だけなので」

 

「エクシーズ召喚を行うには、エクシーズモンスターをあらかじめエクストラデッキに入れておきましょう。また、エクシーズ召喚を行うには、エクシーズモンスターに記載されている素材となるモンスターが必要です。例えば……今回は《No.39希望皇ホープ》を例にしますけど、黒い星マークが4つあるのが見えるでしょうか? これはランクが4つあると言う意味です。つまり《No.39希望皇ホープ》はランク4のエクシーズモンスターと言えます。ちなみにランク4のエクシーズモンスターは出しやすさもあって、モンスター効果が多彩です。汎用カードは実戦テキストに載っているので、そちらを参照して下さい」

 

 

《No.39希望皇ホープ》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/戦士族

ATK/2500 DEF/2000

レベル4モンスター×2

(1):自分または相手のモンスターの攻撃宣言時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。

(2):このカードがX素材の無い状態で攻撃対象に選択された場合に発動する。

このカードを破壊する。

 

 

「エクシーズ召喚に必要なモンスターが自分のフィールドに揃ったら、自分のメインフェイズに“エクシーズ召喚”を宣言します。素材となる自分フィールドのモンスターを、メインモンスターゾーンかエクストラモンスターゾーンに重ねるようにして置きます。重ねたモンスターを素材とするエクシーズモンスターをエクストラデッキから取り出し、素材としたモンスターの上に重ねます。これでエクシーズ召喚完了となります。エクシーズ召喚する場合、エクシーズモンスターは表側攻撃表示・表側守備表示のどちらの形式で出しても構いません」

 

「今回は手札に2枚のカードがあります、レベル4モンスター、《召喚僧サモンプリースト》と言うモンスターカードと、《成金ゴブリン》と言う魔法カードです。メインデッキの中にレベル4モンスター、《翻弄するエルフの剣士》があると言う設定で行きます。では純一君に実演してもらいましょう」

 

「はい。では手札から《召喚僧サモンプリースト》を通常召喚します。このカードが召喚・反転召喚に成功した場合、このカードは守備表示になります。手札から魔法カード1枚を捨てて、モンスター効果を発動します。デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚します。手札の《成金ゴブリン》を捨て、デッキから《翻弄するエルフの剣士》を特殊召喚します」

 

「これでレベル4モンスターが2体揃い、エクシーズ召喚の準備が出来ました。後はエクシーズ召喚をするだけです」

 

「行きます。俺はレベル4《召喚僧サモンプリースト》と、《翻弄するエルフの剣士》でオーバーレイ! 2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れよNo.39!我が戦いはここより始まる。白き翼に望みを託せ。光の使者、《希望皇ホープ》!」

 

『オオオオォォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

 『遊☆戯☆王ZEXAL』の主人公、九十九遊馬のエースモンスターの《No.39希望皇ホープ》の召喚口上を言い切った純一。再び教室中のボルテージが急上昇し、黄色い歓声が響き渡る中、純一は机に突っ伏している。

 これは言わば公開処刑。後で他のクラスの女子生徒に弄られる事間違いなし。かなり大声で召喚口上を言ったからだ。

 

「はい! 純一君ありがとうございました! これでエクシーズモンスターの説明と、エクシーズ召喚のやり方の説明を終わります。ではここからシンクロ召喚・エクシーズ召喚の補足説明に入ります。シンクロモンスターにはシンクロ召喚の素材に条件が記されていますが、種族や属性等制限があります。例えば、《シューティング・スター・ドラゴン》はシンクロ・チューナーモンスターと、《スターダスト・ドラゴン》が召喚条件となっています」

 

「そしてシンクロ召喚は基本的に自分のターンに自分フィールドで行いますが、中には墓地でシンクロ召喚する効果を持つモンスターもいます。例として、《BF-大旆のヴァーユ》を挙げておきます」

 

「更に《アルティマヤ・ツィオルキン》と言うシンクロモンスターなんですが、これはシンクロ召喚出来ないんですよ。自分フィールドの表側表示のレベル5以上で同じレベルの、チューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ墓地へ送った場合のみ特殊召喚出来ます。このように色々なシンクロモンスターがいるので、勉強がてら色々なカードに触れておいてください」

 

「そしてエクシーズモンスターなのですが、中には特殊な召喚条件を持つエクシーズモンスターがいます。エクシーズ召喚は基本的に、同じレベルのモンスター2体以上をエクシーズ素材として行うのですが、中にはエクシーズ素材をレベルではなく、特別な条件を満たすモンスターを要求したり、1体のモンスターをエクシーズ素材にする物もあります。そこはテキストをよく読み、分からなかったら各自調べたり、純一君や私に説明して下さい」

 

「補足説明はここで終わります。残り時間ですが、クラス対抗戦に出る人は各自デッキ調整を、そうでない人は自習にして下さい」

 

 次回の授業はペンデュラム召喚とリンク召喚を取り扱い、最後にデュエルの進め方を実戦を交えて行い、一通りの基礎は終了となる。

 少し駆け足気味になったが、何とかクラス対抗デュエルトーナメントまで間に合わせる事が出来る。俊介は内心ほっとしていた。

 

ーーーーー

 

 今回の学年別クラス対抗デュエルトーナメントが開催される事が決まった理由。それはエキシビジョンデュエルを観たIS委員会の意向が大きく働いているから。

 もちろんIS委員会の面々は『遊戯王』の事を全く知らない。しかし、純一とマスター・ユウギが魅せた真剣勝負を観た事で、彼女達は大きく焦る事となった。

 世間はデュエルディスクと『遊戯王OCG』に夢中となり、黒田純一が一躍有名人となり、ISに全くと言って良い程見向きもしなくなったからだ。

 ISの開発者たる篠ノ之束はと言うと、『遊戯王OCG』の大会優勝経験もあり、デュエルディスク開発に大きく関わっている為、自分が開発したISがこのような形で使われる事にとても満足している。

 しかし、IS委員会や女尊男卑を掲げる権利団体は違う。彼女達は兵器といった側面でISを見ていた。それを篠ノ之束が望んでいないとしても。

 女性でしか使えないISによるアドバンテージで男性にマウントを取り、私利私欲のまま世の中を思い通りに動かしてきた。これまでは。

 そこに登場した『デュエル・ストラトス』。デュエルディスクは男性・女性に関わらず、使用可能。必要なのはカードの知識と情熱。カードを買うお金がなくても、データベースに無料登録さえすれば無料でカードを使い、デッキを作る事が出来る。流石に紙のカードを買う必要はあるのが欠点だが。

 日々の仕事やストレスやらで疲れ切った人々の心を癒す物。それは心から笑えるお笑いと観戦しながら熱くなれるスポーツ。これまでのISとは正反対とも言えるアプローチで熱狂させた『デュエル・ストラトス』。女尊男卑の風潮もあって、荒み切っていた人々の心を掴むのに時間はそこまで掛からなかった。

 しかも、熱狂的なデュエルを繰り広げたのが純一とマスター・ユウギの2人の男性である事が問題だった。純一は“世界で2番目の男性IS操縦者”だが、IS委員会から見た価値は低かった。身内にIS関連の有名人がいないからであり、彼自身に光り輝く物が無かったからだ。或いは光り輝く物がないと判断したのか。

 隙あらば男性がISを動かせるメカニズムを解析する為のモルモットにするつもりでいたのだが、専用機を貰えて企業所属となって強力な後ろ盾が付いてしまった。

 更に新たなるISの可能性を魅せてしまい、一躍時の人となった。そうなると、迂闊に手を出せなくなり、今までのような行いが出来なくなる。

 

―――物凄い倍率の試験を潜り抜け、入学したIS学園の生徒達があのようなデュエルが出来ない筈がない。1ヶ月さえあれば十分だ。あのエキシビジョンデュエルを凌駕するデュエルなど、ISを動かす事の出来る女子生徒達なら楽勝だ。

 

 このように豪語したIS委員会と女尊男卑を掲げる権利団体。実の所、IS学園に対する印象は世間的にダウンしていた。と言うのも、文化祭で発生した黒田純一襲撃事件で一般客に怪我人を出してしまい、その様子がSNSで拡散されてしまったからだ。

 これによってIS学園の警備のガバさと対応の遅れに多くの人々から批判を集め、IS学園のイメージダウンに繋がってしまった。

 更には襲撃事件の実行犯が“女尊男卑を掲げる権利団体が雇ったIS部隊”だった事が明らかになると、女権団体とISに対して更なる批判が向けられる事となった。

 以前のような傍若無人とも言える所業が出来なくなり、世間からの信用が下落した事を受け、IS委員会と女権団体はIS学園とISの信用回復も含め、『デュエル・ストラトス』の大会を開催する事となった。

 『遊戯王』の授業開始から1ヶ月と言う短いスパン。そんな短い期間で開催される事となった学年別クラス対抗デュエルトーナメント。その開催が発表された事で、世間はどのように受け取ったのか。SNSでは何とも言えない反応だったり、ネガティブな反応が多数を占めていた。

 

―――何か開催するの早くない? もう少し時間をかける物だと思ったけど……『遊戯王』って簡単なカードゲームじゃないんだろう?

 

―――『KONNAMI語』を理解するのはIS学園の生徒でも難しいだろうに……1ヶ月で大丈夫か? 問題しかないよ。

 

―――確かに。IS学園ってISの事を勉強したり、訓練するのがメインだろう? 時期尚早だろうに……生徒達が可愛そうだよ。

 

―――多分だけどさ、IS学園の上層部、いやIS委員会は焦っているんじゃないかな? 正直大した事がないと思っていた純一君がすげぇデュエルをしちゃったから。中々話題に出なかっただろう?

 

―――あ~! それだ! それだよ! ISを使える筈のなかった男性がISを使えるだけじゃなく、凄いデュエルをしたなんて聞いたら、女尊男卑を掲げる女共のプライドに傷が付くだろうな!

 

―――分かる! 絶対思っていそう! と言うかさ、一般販売されたチケットの金額見た? 高くねぇ!? 俺二度見したよ! チケット代だけでも5万円だよ!? ちょいと高くない!? 手数料とかその他含めるともっとかかるよ!

 

―――俺も俺も! 俺はたま~に好きなアイドルとかロックバンドのライブ行くけどさ、この大会観戦するお金だけで野外フェス2、3回は行けるよ!

 

―――それは高すぎだろ!? しかも平日にやるんだろ? 俺らサラリーマンは観に行けないよ! 有給使わないと無理だし……観に行く人は富裕層とかそういう連中じゃん。需要ねぇよ! 少しは配慮しろよ!

 

―――高いお金払ってまで行きたいかと言うと、正直微妙なんだよな……だって殆どが初心者なんだろう? いや純一君以外に経験者はいるだろうけど、けどな~そこまでして観戦したいかって言われると……正直言って微妙なんだよな。正直ネット配信観れば良いやって感じになるよ。

 

―――生観戦は生観戦の良さがあると言うけどね……(苦笑)と言うか、俺地味に『遊戯王』やってんだけど、沢山のお客さんの前でデュエルするなんて公開処刑も良い所だぜ!? アニメのようにやれって言われても無理だし、純一君メンタル強すぎ!

 

―――純一君は大企業の跡取りだからじゃないかな? でも本人も緊張していたって言っていたよ? ……俺も『遊戯王』やっているし大会にも出てるけど、正直大会のノリとアニメのノリは別。大会出てる俺からしてみると、アニメのノリはちょっと苦手なんだよ。俺が陰キャだからってのもあるけど。

 

―――まぁつまり、IS学園の女子生徒は叩くなって事だね。彼女達は一生懸命やっている訳だし、中には好きでやっている訳じゃない人もいるんだよ。でも純一君のデュエルは観たい。まぁネット配信で満足するしかないな。

 

―――そうしよう。その方が良いよ。俺もネット配信で満足するよ。

 

「これが世論の声って奴か……」

 

 放課後。楯無とのISの訓練を終えた純一は、『カードターミナル』IS学園店で俊介とデュエルをする約束をしていた。

 もう少しで開催される学年別クラス対抗デュエルトーナメントに向けて、1年以上離れていたブランクを埋めつつ、デッキの調整を『カードターミナル』のスタッフと共に行っている。この日も講師の俊介と約束していた。

 時間までまだあった為、スマートフォンでニュースを検索していた。試しにIS学園で開催される『遊戯王OCG』の大会について検索してみると、あまり良い反応は無かった。

 初心者ばかりのデュエルは時期尚早ではないか。チケット買って観戦するお金や時間もない。そもそもチケットが高額過ぎて一般客には厳し過ぎる。平日の昼間にやるからネット配信で結構。そのような意見で溢れ返っていた。

 世論の反応を見た純一は確信した。このイベントは何か良からぬ事が起きそうだと。開催前だと言うのに、問題が起きそうな予感しかしない。

 

「遅くなってごめんね。いや~ナタリアさんと比奈さんに付き合っていると、何だか初心者を自分で育てている感じがして時間を忘れてしまうんだよ……」

 

「お気になさらず。僕の方はどうにでもなるので、2人を育ててあげて下さい」

 

 俊介はナタリアと比奈の専属コーチとなっているが、それは純一が依頼したからだ。自分と神楽とは違い、経験や技術で劣る2人をサポートして欲しいと。

 確かに自分と神楽が出続ければ勝てるだろう。しかし果たしてそれがクラスの為になるのか。2人が納得するのか。クラスの為にもならないし、2人の為にならない。

 例えデュエルに負けたとしても、自分達の出番が来たとしても構わない。最初は誰だって大会に出れば負ける事を経験する。そこで何を掴み、何を学び、どのように活かすか。大事なのはそれだ。

 

「とはいえ、僕も1年以上ブランクがあるので相手の方をお願いします」

 

「ああ。それじゃあやっていこうか」

 

 純一と俊介がフリーデュエルに没頭しているように、学年の各クラスは初めての『遊戯王OCG』の大会に向けて準備を進めていた。

 純一のように対戦相手を見つけてデュエルしたり、デッキを調整したり、中には相手のデッキ対策を考えたり、色々な方法で大会に向けて準備を行っている。

 しかし、中には例外が存在する。1年6組。純一がいる1年5組が初戦で戦うクラスなのだが、このクラスは割と重大な問題を抱えていた。

 

「一体どういう事なの!? 何で寄りにも寄って黒田純一のいるクラスの隣を引いちゃったの!?」

 

「すみません! 本当にすみません!」

 

 時間を遡る事を許して欲しい。学年別クラス対抗デュエルトーナメントの抽選会が行われた日の昼休み。IS学園の整備室。そこでISのシュミレーター訓練に没頭していたのはエヴァ・ヨハンソン。1年6組のクラス代表であり、オーストラリアの代表候補生。

 本来であれば、彼女は学年別クラス対抗デュエルトーナメントの抽選会に出席しなければならなかった。しかし、どういう訳か彼女は出席せず、この日もISのシュミレーター訓練に没頭していた。

 エヴァはオーストラリアの代表候補生であり、学年別クラス対抗デュエルトーナメントの抽選会に出場義務がある。これは『カードターミナル』ではなく、IS委員会が定めたルールだ。

 ところが、エヴァのオーストラリアの代表候補生と言う地位は偽りの物。本来の実力は一夏はおろか、純一にすら及ばないとナタリアから評価された程。一般生徒より強いが、代表候補生には劣る。それだけでなく、半年前まで素人だった一夏や純一にも劣る始末。2人のポテンシャルや努力が凄まじい物もあるが。

 それでも代表候補生に選ばれ、今でもその地位にいられるのは、女尊男卑を掲げる権利団体の役員を務める母親のおかげ。彼女が政府要人とパイプを持っており、賄賂を贈った事でエヴァは代表候補生になる事が出来た。

 しかし、エヴァが代表候補生になれた理由や本当の実力を知っている者達からは総スカンを喰らっており、中には “あんな奴は代表候補生じゃない”と言い切る人もいる程。それでも本人は自分が代表候補生になれたのは実力があるからと勘違いをしている。

 そんなエヴァは『遊戯王OCG』の授業をサボり、その時間は毎回一人ISのシュミレーター訓練をこなしている。

 そこで休憩している時、クラスメートの伊藤亜依がやって来て抽選会の結果を伝えた。その結果に激怒して亜依を叱り付けている。

 その理由は彼女が毛嫌いしている黒田純一率いる1年5組と対戦する事になった為。母親が女尊男卑を掲げる権利団体の役員である事から、娘も自然と女尊男卑の考え方に染まってしまった。

 

「ハァ~どうするのよ全く! これじゃ勝てる訳ないじゃない! ふざけないでよ~私は出ないからね。デュエルトーナメントとか知らないから」

 

「し、しかし、今度の大会は各国の要人が多数訪れますし、代表候補生は必ず参加しろと織斑先生が……」

 

「知らないわよそんなの!! 大体、何でIS学園でカードゲームなんかやらなきゃいけないの!? 馬鹿でしょ!? 何で誰も疑問に思わないの!? 幾らISを使うって言っても、所詮飾りじゃない! やってやれないわ! 私は出ないから! 誰が何を言おうと出ないから!」

 

「で、でも……この大会は代表候補生は出場義務があるってIS委員会が……」

 

「名前だけ登録しておいて! 後はあんたら3人で出場して! 私は当日無関係だから!」

 

「は、はい……」

 

 エヴァから怒られた事もあって、萎縮したようにシュンとなりながら整備室から出て行った亜依。溜息を付きながら。彼女は学年別クラス対抗デュエルトーナメントについて考え始めた。正直1年5組に勝てる確率は限りなく低い。

 相手は大会優勝経験のあるトーナメントプレーヤーを擁し、彼の教えを受けながら成長し続けているクラス。対するこちらは初心者しかいないクラス。普通に考えればこちらが負けるに決まっている。

 

「どうすれば良いのかな……?」

 

 亜依は途方に暮れた。こういう時に頼りになる人は6組にはいない。いるのは話を聞いてくれて、一緒にクラスをまとめ上げている親友達だけ。

 クラス代表で代表候補生のエヴァは今回の大会には不参加で、無関係を貫き通すと言っている。恐らく男子生徒がまとめているクラスに負けたと言われるのが怖く、恥ずかしいだけなのだろう。

今のままではまずい。代表候補生が名前だけ登録して、大会に出場しないのはルール違反となる。IS委員会が定めた以上、もし違反となれば何らかのペナルティーを受ける事となる。そうなれば、自分達も被害を受ける事になる。

 

「? 亜依さんじゃないですか。大会当日はよろしくお願いしますね!」

 

「ナタリアさん……」

 

「何か悩み事がありますね? 私で良ければ話を聞きますよ」

 

「あ、ありがとうございます。実は……」

 

 中庭を歩いていると、ナタリアに出くわした亜依。ナタリアは6組の事情を知っている事もあってか、亜依の悩みを吹き飛ばすような笑顔を浮かべている。

 亜依もナタリアの人の良さを知っており、純一が来てからの5組の活気の良さを羨ましがっていた。それと同時にナタリアのような人が自分達のクラス代表になってくれればと内心切望している。

 

「抽選会があった日に純一君には話していたのですが、まさかそこまで……」

 

「はい。私達6組の皆はエヴァの道具ではありません。ISの事を勉強し、IS業界の道に進みたいんです。正直もう限界です」

 

「確かに私もエヴァさんのやり方は気に入りません。代表候補生の地位だけしか取り柄がないのに、自分の好き勝手に振る舞っている。私のように努力して代表候補生になった人達を侮辱しています」

 

「ナタリアさんもそう思うんですか?」

 

「はい。私は代表候補生の中でも中間クラスで、専用機を頂けるかどうかも怪しい所です。それでも毎日努力はしています。もしかしたらいつか頂けるかもしれない。努力はいつか必ず何処かで、何かしらの形で実るかもしれない。そう思って毎日続けています。なのでそれを侮辱した彼女には怒りしか出て来ません」

 

 ナタリアがエヴァに対して怒りを覚えるのも無理もないが、やはり新しく来た純一の存在や彼の人となりもあるだろう。

 時間を見つけて『遊戯王OCG』の初心者の自分と向き合い、どのようにして強いデッキを作るか・どのように回すのかといったような事を丁寧かつ根気強く教えている。その知識や経験を積み上げるには相当の努力を要したのだろう。

 また、1組に赴いては純一の事を聞き、彼が入学してから物凄い努力家で人格者だった事を知り、益々純一に好意を抱くようになった。

 

「しかし、このまま何もしないでいる訳にも行きません。私に考えがあります。今ここで行動を起こしたらクラス対抗戦に影響が出てしまいますが、状況が状況なだけに仕方ないです。もうチケット販売が始まり、既に準備の方も動いています。今更中止には出来ないでしょう。なので6組を中から変えていきましょう」

 

「と言うと?」

 

「エヴァさんを代表候補生の座から引き摺り下ろし、6組から追放させれば良いのです」

 

「ッ!?」

 

 後に亜依はこう語っている。“普段は人当たりが良く、明るいナタリアさんが悪い顔をしていた”と。それ程までにインパクトが強かったようだ。

 或いは余程エヴァの事が気に入らなかったか、彼女のような人物が代表候補生になれた事に怒りを覚えているのか。

 

「でもどうやって……?」

 

「今までエヴァさんが行った振る舞いを記録した物や、動画や音声記録を使って嘆願書を記して下さい。それを理事長に提出するのです。流石に無視は出来ないでしょう。代表候補生あろう者が横暴な振る舞いを半年以上もしていたとなると……」

 

「もし駄目だった場合は?」

 

「世論を味方に付けましょう。SNSに拡散させるのです」

 

「随分とブラックですね……さては純一君に影響されました?」

 

「さぁどうでしょう。私は昔からこういう人間ですよ? ただ人よりISを使うのが少しだけ上手なだけの女子高生ですし」

 

 亜依に秘策を預けたナタリアは一人夕日を見ながら考える。純一が5組に来てから、少しずつではあるものの、ISの時代が変わろうとしている。

 ISの技術を利用したデュエルディスクの開発が始まり、ISを兵器以外の用途に使えないかと各国で開発が始まった。例えば医療。農業。レスキュー。本来の宇宙開発は停滞していたが、ここ最近になってようやく復活の目途が立ち始めている。

 もし時代が変わろうとする時、IS学園はどうするのか。それに合わせて自分もどのような行動を取らないといけないのか。難しい頃になったと感じるナタリアだった。

 




ここまで呼んで下さり、大変ありがとうございます。
今回も後書きとして裏話・裏設定を書いていこうと思います。

・学年別クラス対抗デュエルトーナメント

 イベント自体は成功しそうですが、波乱は起こりそうです。IS委員会と女性権利団体の癒着のせいですが……

・シンクロ召喚とエクシーズ召喚

 個人的にこの2つの召喚方法は好きです。レベルが低く、攻撃力が高くないモンスターでも活躍できるので。ただインフレが加速した感は否定できません。

・日々の仕事やストレスやらで疲れ切った人々の心を癒す物

 似たような事を『ビーストウォーズ メタルス』でダイノボットが言っていました。藤原さん……(涙)

・平和を取り戻せ!

 6組のエヴァさんを追放する計画が新たなる波乱を呼ぶ事になりますが、それはまた別の話で。この小説はかなり動乱が多くなります。

次はペンデュラム・リンク召喚を取り扱います。
次回をお楽しみに! LAST ALLIANCEでした!

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