遊戯王IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:LAST ALLIANCE

29 / 31
22話の投稿になります。

先日の活動報告で記しましたが、『インフィニット・ストラトス』要素が薄くなった事を感じた事を受けて、新しい小説に移行した方が良いのではないかと思うようになりました。
今の小説を続けるべきか。それとも新しい小説に移行するべきかを考えているので、意見がある人は”活動報告”の方にコメント下さい。”活動報告”の方です。




TURN22 同好会の始動と変化する世の中

「さて始めるのは良いけど、先ずは人を集める所からだね。今調べてみた所、IS学園の校則で同好会として認められるには、“5人以上のメンバー”と“3ヶ月の活動実績”が必要なんだ」

 

「同好会の活動内容と言えば、皆で集まってデュエルするぐらいですよね……後一人いないと同好会として認められない……」

 

「どうしますか?」

 

「広告を打とう。放送を入れたり、チラシを作って各クラスの提示版に張るなり、勧誘するのもありだな。ただし無理やりな勧誘は認めない。まぁやらないとは思うけど」

 

「チラシやポスター作りなら俺に任せろ。こう見えても『カードターミナル』では広報・営業担当だったからね」

 

「おぉ、それは頼もしい!」

 

 IS学園。『カードターミナル』IS学園店。そのデュエルスペースの一角で、『遊戯王』同好会こと『チーム・サティスファクションズ』が会議を行っている。

 同好会の会長に就任した純一が現実を突き付けたのは、メンバーを5人以上集めないと同好会として設立する事が出来ないと言う事。今は純一、ナタリア、神楽、比奈の4人しかいない。後1人集まれば同好会として設立する事が出来る。

 先ず『チーム・サティスファクションズ』がやる事はメンバー集め。広告を打って人を集めたり、勧誘するなりして同好会に入りたいと言う人を募る。何事も地道な活動から。営業活動から全てが始まる。

 幸い、『チーム・サティスファクションズ』をサポートするのは『カードターミナル』の今村俊介。広報・営業担当の経験からパソコンでのチラシ作りを得意としており、メンバー集めの時に役立つだろう。

 

「一通り出来たタイミングを見計らって、僕とナタリアさんでクラスに声掛けをしてみる。何で僕とナタリアさんかと言うと、お互いに顔が広いから。神楽さんと比奈さんは学内にポスターを張り出して欲しい。出来ればチラシも配って欲しいけど、果たして受け取ってくれる人がいるかどうか……」

 

「分かりましたわ。しかし応じてくれる人はいるのでしょうか?」

 

「一応応じてくれそうな人はいるけどどう出るか……」

 

 この後は細かい事項の話し合いとなり、『チーム・サティスファクションズ』の最初の活動は、顔合わせと活動方針を決める話し合いで終わった。

 その中で出た取り組みの一つとして、自分達の活動内容として対戦動画を撮影して純一のYoutubeアカウントで投稿していく事が決まった。

 

 

 

 2日後。純一は『チーム・サティスファクションズ』の宣伝として、放送部に頼んでお昼の放送で『チーム・サティスファクションズ』の紹介を行う事にした。

 原稿は話し合いが終わった直後に寮部屋に戻り、夕食を取る時間を遅らせてまで考えた内容。自分達の事を正しく伝えつつ、如何に聞き手の心を掴めるかどうか。

 翌日にナターシャと俊介にチェックして添削して貰った程、純一は放送に力を入れている。全ては満足するデュエルを行う為に。

 

―――あ~、あ~、マイクテスト中です。ワンツー、ワンツー。皆さんこんにちは! 1年5組のクラス副代表兼参謀の黒田純一です。IS学園の生徒の皆さん、お話があるので少し聞いて下さい。この度私、黒田純一は『遊戯王OCG』同好会、『チーム・サティスファクションズ』のリーダーとなりました。この放送は『チーム・サティスファクションズ』の宣伝と勧誘の為の放送です。

 

―――今、ISを取り巻く状況は極めて過酷です。IS学園の卒業生が、一般企業に勤めている女性が自殺したと言うニュースが流れたり、IS関係の暗いニュースが報道されたり、この前の大会による失敗で世間から叩かれ、私を含めた皆さんは厳しい状況に置かれています。

 

―――そこで私達は自分が出来る事を考えていました。その結果、『遊戯王OCG』の同好会を立ち上げて活動する事にしました。

 

―――この状況だからこそ、厳しい世の中だからこそ、自分に出来る事、やれる事を精一杯やろうと決めました。どうやっても今の状況を変える事は出来ません。だったら今を思い切り楽しみ、全力で満足しましょう。と言う訳で……『チーム・サティスファクションズ』は『カードターミナル』のデュエルスペースで放課後に活動します。入りたい人は僕かナタリアさんに声を掛けて下さい。毎日出ろとは言いません。週1でもOKです。他の部活動と掛け持ちでも大歓迎です。デッキが無くても心配ありません。やる気だけあれば十分です。一人でも多くの参加者を心よりお待ちしています。

 

 この放送によって『チーム・サティスファクションズ』の存在が知られる事になり、女子生徒達の間では話が持ちきりとなった。

 何も出来ないからこそ現状を受け入れ、ありのままに楽しもうと言うメッセージが受け入れられた事と、リーダーが純一である事が関係していた。

 その日の夕方。『カードターミナル』IS学園店のデュエルスペース。『チーム・サティスファクションズ』の面々が集まっていた。

 俊介が見守る中で神楽と比奈はフリー対戦を行い、純一とナタリアは入会者が来ないかどうか待っている。顧問のナターシャは所用でこの日は同好会には来れないとの事。

 

「どれくらい人が来てくれれば良いですか?」

 

「最低でも1人。5人来れば上々。何事も素早くスピーディーに行う。先手必勝。今の内にメンバーを集める。まだこれといった実績を出していないけど、何れは同好会を部活動に格上げ出来れば良いな」

 

「! 2人来ましたよ! 伊藤さんと徳川さんです」

 

「あの……『チーム・サティスファクションズ』の活動場所はここで合っていますか?」

 

「あぁ、合っているよ。入会希望で良かったかな?」

 

『はい!』

 

 純一とナタリアが話をしていると、6組の元出場メンバーの伊藤亜依と徳川蘭の2人が『カードターミナル』IS学園店に入って来た。

 辺りをキョロキョロ見渡してから純一達を見付けると、そのまま歩み寄って純一に同好会への入会を希望した。

 

「伊藤さんと徳川さん……先日はお疲れ様。色々大変な事になっちゃったね……」

 

「うん……純一君は入院してたから分からないと思うけど、大会の失敗から皆から陰口叩かれるようになったよ」

 

「こうなったのはお前達のせいだって……悪いのは私達じゃなくてIS委員会と女性権利団体のせいなのに……」

 

「そうですね……私達も同じような事言われていました」

 

 大会の中止の原因の1つとなった6組の棄権。世論は同情して庇ってくれているが、IS学園の生徒や教員はそうではない。中には亜依や蘭に誹謗中傷を行ったり、罵倒する心無い者も少なからずいた。

 しかし、千冬や真耶、ナターシャのような心ある教師やナタリア等の生徒達が彼女達を守り、心の支えとなった。その為、亜依と蘭の2人は何とかやってこれている。

 

「まぁまぁここではこういう暗い話は無しにしようよ。それで、2人は同好会が何する場所かは分かっている?」

 

「はい。皆でルールを守って楽しく『遊戯王』をやる場所です」

 

「満足を追い求めるデュエリストが集まる場所です」

 

「採用!」

 

『やった~!』

 

 亜依と蘭の質問の回答を聞いた純一は直ぐに入会を認めた。喜び合う亜依と蘭を見やりつつ、ナタリアと純一は嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 そうしていると、今度は1人の女子生徒が『カードターミナル』IS学園店に入店して純一達の所にやって来た。

 

「やぁ上田さん。もしかしたら入会希望かな?」

 

「はい。入会して大丈夫?」

 

「いや全然OKだよ! むしろウェルカムだよ! 実は同好会として設立出来るのは5人以上いないといけないんだ。丁度良いタイミングで来てくれたよ!」

 

「そうなの!? 良かった~!」

 

 その女子生徒の名前は上田詩織。長い黒髪を棚引かせ、カチューシャをしている事が特徴な少女。実は隠れ巨乳。1年4組の元出場メンバーであり、純一とは面識がある一般生徒。

 純一とは図書室で知り合い、本を通じて意気投合して父親経由で仲を深めた。と言うのも、『黒田商事』の関連会社、『黒田食品』の課長を父親が務めているからだ。

 お昼の放送は宣伝として効果はあったようだが、何しろIS学園には部活動がある為入会を悩んでいる女子生徒も少なからずいた。

 IS学園の部活動で確認されている範囲ではテニス部、ラクロス部、茶道部、剣道部、料理部、ハンドボール部、陸上部、山岳部、新聞部がある。これだけ数多くの部活動がある為、掛け持ちOKと言われても直ぐに決断しにくい。

 詩織は文芸部に所属しているが、特にやる事もあまり無い為か、『チーム・サティスファクションズ』のメンバーになろうとしている。

 

「それで……やっぱり入会するには面接とかあるの?」

 

「まぁ何も無い訳には行かないけど……どうして同好会に入りたいと思ったの?」

 

「単純にデュエルしたかったから。私はあまり目立たないし、ずっと地味だったけど、『遊戯王』の授業で出場メンバーに選ばれたの。更識さん以外誰もやる人がいなかったから実力で櫻井さんと私が選ばれて……それで大会までの間、デッキを作って対戦していたら、講師の人に褒められたの。“間違いなく純一君と戦えるポテンシャルがある”って」

 

「マジ!? そこまで強いの上田さん?」

 

「でも大会は知っている通り中止になって、実力を発揮する機会が無くなった。授業も実質中止になったけど、私は続けたいと思っていた。だって今まで頑張って練習したのに、それを見せる機会を奪われて、それで終わりたくなかったから……だから今日の放送を聞いて同好会に入りたくなった。純一君ともっと仲良くなりたいのもあるけど、このまま何もしないで終わりなのも嫌だから……」

 

「成る程ね。やっぱりそういう人もいたんだ。何となく予想していたんだよ。授業でやらされていたけど楽しくなって、大会中止になったけど続けたい人が少なからずいるんじゃないかって。予想通りだった」

 

 詩織が強いと言う話を聞いた純一はデュエリストの本能が一瞬疼いたが、それを押し殺して詩織の話を聞いた。

 彼女が同好会に入りたい理由は、授業を切っ掛けに始めた『遊戯王』を続けたいと言う思いから来ていた。純一はそういう人が一定数いると予想していたが、いきなり的中する事となった。

 

「じゃあ最後の質問に行こうかな? 『遊戯王』で好きなカードを一枚自由に語って欲しい」

 

「好きなカード……《ルドラの魔導書》かな? 【魔導書】デッキの要で、私が文芸部にいて魔法物やファンタジー物の物語を読んでいるから、イラストが好きになったから……で良いかな?」

 

「採用!!!」

 

『オオオオオオォォォォォォーーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

 純一が簡単な面接をして詩織に採用を告げると、それを見ていたナタリア達が祝福の歓声を上げた。詩織も嬉しそうに笑顔を浮かべ、ナタリア達とハイタッチを交わした。

 これでメンバーが7人揃って5人以上を超えた為、生徒会に同好会設立の申し出を行う事が出来るようになった。

 詩織はポテンシャルを秘めていて対戦経験があまりないが、経験を積めば間違いなく純一に匹敵する強さを持てる。

 純一は入会の基準を強さよりも心構えを重視している。強さは後で付いてくるが、心構えは人間性の問題。相手をリスペクト出来ない、ルールを守らない、そのようなプレーヤーは問答無用で退会させる。

 この同好会はサティスファクションと言う単語の意味の通り、満足する事に重点を置いている。対戦を楽しんだり、勝ち負けに拘ったり、真剣に色々な満足を追求して心から満足する。それがこの同好会において大切な事だ。

 

「これで5人以上になりましたね! 同好会としてやっていけます!」

 

「いや、代表候補生が後1人か2人欲しい」

 

「どうしてですか?」

 

「僕は毎日同好会に顔を出せる訳じゃない。楯無さんとのIS訓練や進学補習がある。ナタリアさんだって用事があるだろう? だから仕切れる人がもう1人くらいいた方が小回りが効きやすい」

 

「確かにそうですね……」

 

 亜依と蘭、詩織がフリー対戦に加わる傍ら、純一は自分達が不在の時のまとめ役の存在を欲していた。出来れば代表候補生が良いと言っていたのは、何れはこの同好会を起点にIS学園内に一大勢力を築き上げようと言う考えがあるからだ。

 今の同好会のメンバーは自分とナタリアぐらいしかインパクトのある人物がいない。ナタリアも代表候補生の中では中堅であり、それを差し引くと純一頼みになっている事が現実だった。それだけにもう1人有力な人物が欲しかった。

 しかし、今は高望みをせず、先ずは同好会が設立出来た事を喜ぼう。そう考えながら皆で盛り上がった。

 

「まぁまだ活動始めたばかりだし、届け出も出せるようになったから良しとしよう。じゃあ生徒会室に行って書類出して来るね~」

 

「いってらっしゃい!」

 

 純一は申請書類に必要事項が全て記入されている事を確認すると、生徒会室に向かっていった。同好会のリーダーになってから事件が起きる前の強欲で貪欲な姿勢が戻り、自分がこう在るべきと言うイメージがはっきりと分かるようになった。

 生徒会室と言う表札を確認してドアをノックして入室すると、そこには生徒会長の楯無と会計の布仏虚がいた。彼女達は生徒会の仕事をしている最中。

 

「あら、純一君じゃない。どうしたの?」

 

「楯無さん。こんな時で大変申し訳ありませんが、同好会の設立をお願いしたくて来ました。書類はこちらになります。全て必要事項は書いていますが、確認の方お願いします」

 

「同好会ね……どれどれ。……『チーム・サティスファクションズ』?」

 

「『遊戯王OCG』の同好会です。5人以上メンバーを集めましたし、顧問の先生も用意しました。何か不満でも?」

 

「いやそういう訳じゃないけど……よく同好会を立ち上げようって気になれたわね」

 

「今の世の中だからこそ立ち上げようって決めたんです。この状況はかなり大変ですが、僕達に出来る事をやろうと決めた結果がこれです」

 

 生徒会長の楯無に申請書を提出すると、楯無は書類に一通り目を通してから苦笑いを浮かべた。まさか『遊戯王OCG』の同好会を立ち上げるとは。予想外の展開だった。

 純一達の行動力に目を見張る事しか出来ない。自分を含めた誰もが何も出来ず、現状に不平不満を言う事しか出来なかった。ピンチをチャンスに変える姿勢と行動力が今の自分達に必要に思えた。

 

「そう言えば放送で言っていたわね……良いわ。書類も全部書くべき事は書いてあるから、この書類は担当の先生に渡しておくわ。設立は私の方から許可させるから」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

「その代わり、明日『カードターミナル』に行くから活動内容を見せて欲しいな。要はデュエルしている所を見せて欲しいって事。新聞部に声を掛けて記事にしてもらおうと思うの。これでまた宣伝になって、同好会に入りたい人も増えるでしょう?」

 

「OKです。動画投稿も考えているので撮影するなりしても大丈夫です」

 

「ありがとう! じゃあ明日。楽しみにしているわ!」

 

 楯無から同好会の設立の許可を貰った純一は『カードターミナル』に戻り、メンバーに『チーム・サティスファクションズ』設立の許可を貰った事と、明日生徒会と新聞部が撮影しに来る事を伝えた。

 その日は記念すべき1日となる。何しろ『チーム・サティスファクションズ』が初めてデュエルを行う日になるのだから。

 そのデュエルを撮影して動画投稿サイトに投稿しながら同好会のPR動画に使う。これによって新しいメンバーを増やしつつ、世間一般からの支持を勝ち取ろうと言う魂胆だ。

 

 

 

「……と言う訳で明日のPR動画の対戦なんだけど、やはりリーダーとして僕が出ようと思う」

 

「そうなると問題なのは対戦相手ですね……この中で純一さんと対等以上に戦えるのは……」

 

「私と上田さんしかいませんね……」

 

 フリー対戦が終わったのを見計らい、純一達は机を囲って明日の動画撮影について話し合いを始めた。議題は対戦動画の事。

 先ずデュエルを行うのはリーダーであり、Youtubeアカウントを持っている純一。問題なのはその相手だ。純一と対等に渡り合えるデュエリストは現時点で神楽と詩織の2人だけ。

 どちらかが動画に出演しなければならないが、神楽と詩織のどちらかが出演するかで悩む事となった。詩織はおとなしい性格で動画出演には少し難しい。

 

「ここは俺にやらせてくれないかな? 『カードターミナル』の人間として、エンターテインメントをお届けしたいからね」

 

「今村先生、ありがとうございます。皆はそうだな……お客さんを呼んで欲しいな。ギャラリーが沢山いるとやりがいがあるからね」

 

 動画の出演と純一との対戦は俊介が名乗りを上げた。初回である事から活動の方向性を解説する傍ら、純一と真剣勝負をしたかった事が背景にあった。

 純一と俊介はお互いに良い笑顔を浮かべているが、目に見えない火花をぶつからせていた。お互いに負けず嫌いな実力者。絶対に負けたくない思いがぶつかりあっている。

 

 

 

『もしもし?』

 

「純一です。久し振り、友希那さん」

 

『純一君! そっちはどう?』

 

「どうと言われても最悪だよ……学園の雰囲気悪いし、もうやってられねぇって感じだよ。まぁ休日は変装して外出しているけどね。何処もかしこもIS学園の生徒にはきつくてさ……僕は大丈夫だけど、皆が心配だよ」

 

『そう……私達が思っているより状況は大変と言う訳ね。後でインターネットで調べた方が良いけど、企業や大学の方でIS学園生を受け入れ拒否しようとしている所が増えているわ。テレビでは報道されないのは、したらしたでとんでもない事になりそうだからかも』

 

「何……!?」

 

 『チーム・サティスファクションズ』のその日の活動を終えると、純一は人目のつかない場所に行って平等院友希那の所に電話をかけていた。

 友希那は重傷を負った純一の所にお見舞いに行ったり、差し入れを渡したり等、純一を心底大切に思っている。だからこそ自分達の所に来るようにオファーを出している。

 

『本当よ? これだけ世間から叩かれているから巻き込まれたくないんでしょうね。それで、私に電話しに来たって事は何か動きがあったって事よね?』

 

「あ、あぁ……そうだね。実は『遊戯王』の同好会を立ち上げてさ、明日の放課後に動画撮影して近日中に投稿する予定なんだ。そのお知らせを伝えたかったんだ」

 

『えっ!? 同好会始めたの!? 大丈夫なの!?』

 

「別に『遊戯王』をやるなって言われていないし、学内でやる分なら大丈夫だと思ったんだろうな。僕が入院している間、僕のクラスメートのナタリアさん……スペインの代表候補生なんだけど、彼女が神楽さん達と一緒にナターシャ先生を顧問に据えたんだって。僕がリーダーになって一昨日から本格的に活動始めて、ついさっき人が集まったから同好会として設立出来たよ」

 

 友希那は純一から『遊戯王』の同好会を立ち上げた事に興味津々そうになり、動画投稿すると言うお知らせには目を輝かせている。

 純一が入院している間、同好会の下準備を行っていたナタリアの発想と行動力に友希那は純粋に興味を抱いた。

 

『おお~! そのナタリアさんって人、凄い行動力ね。スペインの代表候補生?』

 

「そう。元々『デュエルリンクス』やってて『OCG』に来たけど、凄い努力家で飲み込み早いし、正直弟子にしたいぐらい良いよ。同好会立ち上げたのもナタリアさん自身が試合に向けて頑張っていたのが中止になって、このまま終わりたくないって言う話から『遊戯王』が好きな人や、何か楽しい事や気晴らしが欲しい人の為の居場所を作りたいってな感じで用意したんだ。僕には考えられない事やってて、本当にすげぇと思ったよ」

 

『興味湧いてきた……一度会ってみたいわ……そうだ! 純一君、ちょっと良い話があるけど聞いてみない?』

 

「聞きましょう」

 

『実は来週の土曜日に鳳凰学院の学院祭があるんだけど、そこに純一君をゲストとして招こうかなと思っているの。私もデュエルディスクのモニターに選ばれたけど、モニター同士の対戦をやろうと考えていた時に事件が起きたでしょう?』

 

「あぁ。おかげでこっちは外出するのが難しくなったし、どうしようもなくなったよ」

 

 平等院財閥はデュエルディスク開発に大きく貢献した為、『呉島エンタテインメントスタジオ』は『私立鳳凰学院』にもデュエルディスクを送り、友希那をデュエルディスクのモニターの権利を与えた。

 純一程ではないものの精力的に活動している友希那は、『私立鳳凰学院』の学院祭で純一をゲストとして招き、デュエルディスクのモニター同士のデュエルをやろうと考えていた。

 

『でもまだデュエルディスクのモニターなんでしょう? だったらモニターの仕事だの云々言ってこっちに来ちゃいなさいよ。ナタリアさん連れて』

 

「そうだね……ナターシャ先生に許可取らないとだけど」

 

『ナターシャさんもこっち陣営だから、話通して当日引率で連れて来させるわ。学院の雰囲気を掴んで転校した時のギャップに悩まないようにさせてあげるし、純一君の悪いようにさせないから』

 

「分かった。来週の土曜日だね? こっちで調べておくよ。まぁモニターの仕事と言えば向こうも無下にはしないだろうさ」

 

『そういう事。じゃあ電話切るわね? お休みなさい』

 

「お休み~!」

 

 電話を切った友希那は一人考える。実は親友の神楽から同好会の話は聞いていた。『チーム・サティスファクションズ』。まだ小規模な同好会だが、純一が率いるだけあって、これから大きくなる事が予想されている。

 本来であればIS学園と『私立鳳凰学院』による全面対決を行う予定でいたが、先日の事件によって外出自粛によってこのプランは延期にせざるを得なくなった。

 そこで計画を変更し、学院祭で純一とナタリアとの関係を改めて築き上げた後、『チーム・サティスファクションズ』との全面対決に持ち込む事を決めた。

 

「ただ前回の大会がIS委員会の意向が絡んでいたから、今回の同好会も同じような事があるのかもしれない……そこは学院祭で試してみましょう」

 

 純一を信頼しているとは言えど、友希那としてはIS委員会やIS学園の密偵のような役割で来る可能性もあった。彼女は目の前で純一が斬られたのを見てしまった事でISを兵器として認識し、兵器としてのISを排除するつもりでいる。

 それに加え、『私立鳳凰学院』の中にはIS学園を敵視していたり、忌避感を抱いている者も少なくない。特に“鳳凰四天王”の鬼塚公輝がそうであるように。

 更に先日の事件の影響で、IS学園内の状況は限りなく悪化している。そのような状態でIS委員会やIS学園が純一をコントロール出来るかどうかさえも怪しい。何しろ純一がこの状況を利用して暗躍し始めているのだから。

 

 

 

「明日ナタリアさんと神楽さんとナターシャ先生に話通さねぇとだな……」

 

 自分の寮部屋に戻っている最中、純一は友希那から受けたお誘いを頭の中でまとめていた。来週の学院祭に自分がゲストとして招かれる。そこにナタリアを同席させ、IS学園と『私立鳳凰学院』の対決を実現させても面白そうだ。

 しかし、問題なのはIS学園が孤立している事。学年別クラス対抗デュエルトーナメントの結果、IS学園は孤立していると言える程追い詰められている。

 大会で発生した事件を経て、活発化した反女尊男卑及び反IS至上主義の思想から生徒を守る為に、外出自粛も止む無しと判断するような状態になっている。必要な物は通信販売で仕入れる形になると言っているが、そもそも受けてくれるような人の良い業者はいるのか。

 

「……さて友希那さんの言葉が真実かどうか確かめてみますか」

 

 純一はスマートフォンを操作しながらニュースを検索してみると、“反IS至上主義団体の発足”や“反女尊男卑団体の設立”、終いには”IS学園見直しへの議論が始まる“等といったIS関係の人にはネガティブな印象を与える見出しが真っ先に飛び込んできた。

 試しにそれ以外のニュースを検索してみたが、ポジティブなニュースや良いニュースはあまり無かった。ニュース記事のコメント欄を見てみると、案の定IS学園やISについてネガティブなコメントばかり書き込まれていた。

 

―――このまま行くとIS学園無くなるんじゃないかな? でもそうしたら女尊男卑主義者がこっちに来そうで嫌なんだよ……皆はどう思う?

 

―――流石にIS学園が無くなる事は有り得ないと思う。だって同じIS学科がある鳳凰学院は私立だぜ? IS学園は腐っても国立だし、政府が支援を打ち切らない限りは無くならないだろう。

 

―――でもさぁ……今の状態だと、政府も支援を打ち切るのも時間の問題じゃないかな? 何しろ菅野首相は反IS派……と言うより兵器としてISが使われている事に疑問を持っているから、何かしらの対策を打ち出しそう。実際今のIS学園って社会から切り離されているようなもんじゃん。更に追い打ちかけそうで怖いよ。

 

―――それはありそうだね。嫌だな~笑いながら銃撃ってきたり、攻撃してきたりするのは。そういう奴らは全員刑務所行きだ!

 

(確かに今の状況は企業から見放されているに等しいし、もし政府も見放されたらIS学園の生徒はどうなる? 僕は鳳凰学院に行ける。と言うか来いと言われている。でもそれ以外の人はどうなる? まさかIS学園に入った事が失敗と言われて、一生陽の目を見る事が出来ない人生を送らないといけないのか?)

 

 今の日本政府、政権与党の自民党の首相は菅野拓郎。若手の政治家で貧乏人上がりの超苦労人だけあり、一般市民の気持ちに寄り添った政治を目指し、これまでになかったような政策を次々と打ち出している。

 前の首相の阿部野信三内閣の路線を引き継ぎ、ISの在り方を見直す事を前提として、IS学園の見直しを掲げていたが、今回の事件によってそれが現実味を帯びて来た。

 コメント欄を見ている純一は途端に考えた。自分は『私立鳳凰学院』からオファーを貰っていて、世間からも全くと言って良い程叩かれていない。むしろ心配されている。しかし、IS学園の女子生徒達はどうなのか。

 彼女達はISの事を勉強したいから、将来はIS関係の仕事に就きたいと思って入学した人も一定数いる。それが一度の失敗で二度と立ち上がれなくなって良いのか。純一は疑問に思いつつも、コメント欄を読み進める。

 

―――IS学園って女子高だろ? 女子の虐めってけっこう悪質で陰湿と言う噂を聞いた事がある。ISを使う事なんか日常茶飯事だろうな……それで気に入らない人を自殺に追いやったりしているんじゃないの?

 

―――いや~どうなんだろう? と言うかそんなニュースあったっけ? 少なくとも俺は知らないなぁ。

 

―――いやいやいや。隠蔽していて俺達が知らねぇだけだって。毎年何人もの生徒が自殺しているんじゃねぇの? ひでぇ話だよ。だからさ、女尊男卑思想の奴らは全員消えてくれた方が良いって事だよ。

 

―――まぁそうだね……それに本当かどうか分からないけど、よくニュースとかネットの書き込み見ていると、女尊男卑思想の連中が昼食代とか踏み倒しているって言うけど、あれって本当なの?

 

―――あ、それはマジです。本当です。知り合いから聞いた話だけど、滅茶苦茶化粧して着飾っていた女がブランド物の服とか鞄とか踏み倒していたって。

 

―――何だと!? 信じられねぇ……IS学園はそういう奴らの育成所なのか? 見た目は美人で優秀でも、中身は女尊男卑思想の信奉者なのかよ!? 勘弁してくれよ!

 

 純一はコメント欄を少しの間見ていると、友希那が言っていた事を思い出した。“企業や大学の方でIS学園生を受け入れ拒否しようとしている所が増えている”と言っていた。

 その事を思い出すと、直ぐに該当するような見出しのニュース記事を探した。すると、“IS学園生のお先真っ暗!? 受け入れ拒否の企業が続出中!?”と言う見出しの記事が見つかった。

 純一がその記事を詳しく見ていくと、『黒田商事』の取引先の会社の人事担当者が記者の質問に答えていた。

 

―――今回の件も踏まえて、IS学園の卒業生の方々を採用したく無くなりました。我々は『黒田商事』と取引しており、その社長の息子さんが大変な目に遭った事を伺っています。この状況ですし、例えIS学園の卒業生の方々が人格や能力が優れていても、採用した我々が逆にデメリットを背負う事になるのでこの決断に至りました。

 

―――そもそも、IS学園その物が閉鎖的で一体何なのかが分かりづらい事に問題点があると思います。IS企業や政府関係者ぐらいしか入らない事もありますが……そもそも日常生活で役に立たないISの知識や操縦技術の話をされても、我々からしたら“だから何?”の世界です。

 

―――恐らくこの決断を下したのは私達の企業だけでなく、他にもいると思います。例えば飲食業や接客業だと、女尊男卑思想を持った人がいると言う事が知られただけで、イメージダウンに結び付く事もあります。なのでIS学園生が一般企業に就職するのは困難になるでしょうしし、IS企業も世間から叩かれているのでどうなるか分からないです。

 

(やはり本当だったのか……)

 

 IS学園の生徒の進路。それは国家代表や代表候補生を目指す操縦者の道と、メカニックとして生きていく整備士の道と、IS企業や一般企業として社会人となる道と、短大や専門学校、大学に進学する道の合計4パターンがある。

 その社会人となる道が事実上閉ざされたと言う事実に純一は打ちのめされながら、友希那の言葉が事実だった事を感じた。

 この記事のコメント欄を見てみると、人事担当者の決断を評価している声が圧倒的であり、純一は一つ一つ目を通す事にした。

 

―――まぁこの決断は妥当だよ。下手に採用して社内でトラブル起こすより、就職試験で落とした方がお互いに幸せかもしれないね。

 

―――純一君はよくやっていられるなぁ。俺だったら3日でギブアップだよ。

 

―――普通に考えて俺達には無理だよ……兵器の使い方や動かし方を勉強してきた奴と一緒に仕事するのは。普通に軍隊や自衛隊に行った方が良いと思うんだけど……

 

―――それも無理じゃね? IS学園の連中って何か気に入らない事があるとヒステリー起こしてIS展開するんだろう? それで殺人事件とか起こされたら夜も眠れないよ。

 

―――何かISが登場してから世界は悪い方向に変わっちゃったよな……これならISなんか出て来なきゃ良かったのに。その方がまだ幸せだよ。

 

―――そう言えば俺の通っている大学、東大と双璧を為している京〇大学なんだけど、何か噂で聞いた限りだとIS学園の卒業生の受け入れを拒否するらしいぜ? 多分他の大学も同じような事考えているんじゃないかな?

 

―――何だと!? 就職出来ない、進学出来ないってほぼ人生詰んでないかこれ!? 高校生で進路絶たれたらどうしようもねぇぞ!?

 

―――ヤバいぞこれ……進学するにしても最終的に就職する人大半だから、これで大半が詰んだって事になる。IS学園の中にはまともな人もいるから、その人達を助けるようにしないと、また良からぬ事が起きそうだよ。

 

(マジか……もうこれはきついってレベルを超えているぞ)

 

 ニュース記事のコメント欄を一通り見た純一は溜息を付きながら、空を見上げる事しか出来なかった。今回の件で一般市民が抱えていたISへの印象が表に出てしまい、女尊男卑と言う歪んだ社会風潮に対する怒りや不満が爆発している。

 それに進路先も徐々に狭まれている。大学や一般企業は受け入れ拒否の姿勢を見せており、IS企業に就職したり、IS関連の道に進むしか選択肢が無くなってきている。

 気が付けばIS学園の生徒達の進路は悲惨な事になっており、それが純一の心に突き刺さる物が重く鋭くなっている。

 

(今まで僕は自分の事しか考えて来なかったし、見ようとしなかった。けど『遊戯王』の授業が始まって、今回の事態になってようやく僕は大切な事に気付けた。他人と初めて向き合える機会を貰えて、やっと分かった。リーダーは自分に付いてくる奴らの為にある。背中に付いてくる奴らの気持ちが分からない、気付けない奴がリーダーになる資格はない。父さん。僕はやっと分かった。社長になる為に必要な物が何なのかを)

 

 しかし、この事実が純一にある責任感に目覚めさせる事となった。それはリーダーとしての在り方。今までは自分さえ良ければ良いと言う自己中心的な在り方だったが、『遊戯王』の授業を経て、少しずつ自分が皆を引っ張る事を意識してきた。

 そして今回の事態を踏まえ、如何にしてIS学園の生徒達の未来を少しでも明るくさせるかを考えなければいけない。そのような立ち位置に自分が置かれた事を実感させられた。

 




ここまで呼んで下さり、大変ありがとうございます。
次回をお楽しみに! LAST ALLIANCEでした!

皆さん。よろしければ感想・高評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
あたたかい感想や前向きなコメント、アドバイスやモチベーションが上がるような応援メッセージや高評価もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。