遊戯王IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:LAST ALLIANCE

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第24話になります。次回はデュエル回となります。

新作小説の件はこの小説を終えてからにする事を決めました。
そしてもう少しでUA20,000になるので、番外編を記す頃合いになりました。
「チートオリ主VS小説オリ主」として、【邪神】と【ドライトロン】の対戦にする予定です。




第24話 決闘への序曲

―――IS学園にて『遊戯王』同好会設立!

 

―――満足しようぜ! 『チーム・サティスファクションズ』始動!

 

―――新デッキ【ドライトロン】を携え、黒田純一復活!

 

 IS学園において『遊戯王』の同好会が設立された。『チーム・サティスファクションズ』が活動を本格的に始めた。このニュースは学園新聞として大々的に報じられただけでなく、『遊戯王』のニュースを取り扱うサイトでも大きくピックアップされた。

 

「同好会に入りたい?」

 

「うん♪ ジュン君の対戦動画を観ていたら私もデュエルしたくなったのだ~♪」

 

「私も……純一と一度デュエルしたくて」

 

「ボクもかな? あの動画観ていたらやりたくなって……」

 

 この日も『チーム・サティスファクションズ』は活動を行っているが、純一は新しく入会を希望する女子生徒達の話を聞いていた。

 布仏本音。更識簪。シャルロット・デュノア。先日投稿された対戦動画を観て純一が『遊戯王』を再開させた事を知り、同好会への参加を決めた。

 

「歓迎しよう。一緒に満足しようぜ!」

 

 対戦動画の投稿によって、この日新たに3人のメンバーが加わった。しかもその中の2人は代表候補生であり、純一と互角以上の実力者がいる。『チーム・サティスファクションズ』も賑やかになった。

 入会参加が通って笑顔を浮かべる3人を前にして、純一は少し考え事をした。今日は皆に伝える事があった。これは自分を含めた同好会メンバーにとってとても大事な事だった。

 

「皆一度手を止めて聞いて欲しい。実は今週の土・日に僕とナタリアさんと神楽さんの3人は仕事が入って同好会に出れなくなった」

 

「仕事? 同好会の取材か何か?」

 

「いや違う。これは僕個人が引き受けた仕事なんだけど、それにナタリアさんと神楽さんが同行する形になった。僕は今もデュエルディスクのモニターだ。そのモニターとしての案件が今回の仕事だ」

 

「新型のデュエルディスクが出来たとか?」

 

「それも違う。単刀直入に言おう。皆は『私立鳳凰学院』と言う学校を知っている?」

 

 純一の問いかけに誰もがキョトンとしながら首を傾げた。『私立鳳凰学院』と言う学校があるのは誰も知らない。名前さえも聞いた事がない。

 流石にこの質問をしたのは悪かったみたいだ。純一が苦笑いを浮かべていると、簪がゆっくりと手を挙げた。

 

「私、知ってる……と言うかお姉ちゃんが言っていた。IS学園の他に、ISを取り扱う学校があると言う事を」

 

「えっ!?」

 

「それ本当!?」

 

「初めて聞いた……」

 

「じゃあ簪さん。説明お願いしてくれるかな?」

 

「うん……あそこは平等院財閥と言って、世界の富の数%を所有しているくらい凄い財閥が経営していて、ISを他の分野に使えないかを研究するIS学科があるんだって。確か……専用機持ちも何人かいて、対IS用の装備とか部隊を持っているとかいないとか」

 

 同好会の面々が驚く中、簪は淡々と事実を話していく。彼女は姉の楯無から話を聞かされている為、話す事が出来ている。

 

「その……『私立鳳凰学院』から頼まれた案件ってどんな物なの?」

 

「あの学校にも僕と同じデュエルディスクのモニターがいて、今度の学院祭でエキシビジョンマッチをする事になったんだ。向こうから話を持ち掛けられて参加に応じたら、同好会を立ち上げたナタリアさんに興味を持たれて……」

 

「そうなんだ……」

 

「向こうに僕の知り合いがいてさ、それで今回のエキシビジョンマッチが実現したんだ。流石に皆を連れて行く事は無理だけど、ナタリアさんが撮影してくれるからそれで我慢してね。僕の話は以上。そういう訳でよろしく!」

 

 純一は口が裂けても言えなかった。まさか自分が平等院財閥のお嬢様と知り合いであり、彼女のおかげでデュエルディスクのモニターになれた事を。連絡事項を伝えると、皆は再びデュエル等の同好会活動に戻っていった。

 

 

 

 時を遡る事を許して欲しい。この数日前。『私立鳳凰学院』でも1つの動きが見られていた。今回の事件で『私立鳳凰学院』側も少なからぬダメージを受けていた。

『私立鳳凰学院』は普通科と国際学科、そしてIS学科の3つのコースがあるのだが、IS学科の方に主に事件の皺寄せが来るようになった。

 IS学科ではISを学術・技術的に勉強する場所であり、IS技術をどのように広めていくか、どの分野で活用できるか等を研究している場所でもある。レスキューや医療、農業等に転用出来るか検討されていたが、今回の事件による影響で全てが台無しになった。

 

―――ISは所詮兵器だ。人を殺すだけの力があるのに、それを女性をアクセサリーのように身に付け、ファッションのように着飾っている。そのような在り方は極めて危険だ。

 

 IS企業も叩かれている中、『私立鳳凰学院』のIS学科にも誹謗中傷や風評被害が多発するようになり、IS学科にいる生徒達は気が滅入っていた。

 IS学園の生徒の進路先が自然と狭まれているが、IS学科の生徒達もまた進路先について見直す事が求められるようになった。

 幸い平等院財閥と繋がっているIS企業に受け入れが出来る分、『私立鳳凰学院』の方がまだ良いと言えるレベルなのだが、時間が経てば経つ程苦しい状況に追い込まれる可能性もあった。

 彼らの声は嘆願書や署名として生徒会長の平等院佐智雄に届けられ、それだけで一つの書類の山が出来ていた。その嘆願書や署名が書かれた紙を1枚1枚見ている佐智雄の表情は険しかった。

 

「どのニュースを見ても、IS反対IS反対か……」

 

「日ごとにIS反対意見が大きくなっていますね……」

 

「女尊男卑と言う社会風潮への不満、IS委員会や女性団体の介入による最悪の結果が招いた……それが此方にも飛び火している。一般市民からの感情は最早最悪と言った所だな」

 

「今度の学院祭は録画や配信等は一切禁止し、純一君を招いたデュエルも慎重に行わないといけないわね」

 

 生徒会室で行われているのは生徒会定例会議。佐智雄が嘆願書や署名が書かれた紙を1枚1枚見ている目の前で、“鳳凰四天王”と友希那と零児の6人がニュース記事を真剣な表情をしながら見ている。

 兵器としてISの存在感を示しながら、私利私欲のままに好き勝手してきた女性達。その横暴が許されたのはISの存在感があったから。しかし、純一をめぐる2つの出来事が引き金となり、ISの在り方に限界が見え始めていた。

 

「一旦話を聞いて欲しい。ニュースやインターネットを見ているから分かっているとは思うけど、いよいよ時間が無くなって来た。ISによって日本が大荒れになるまでの時間が」

 

「日本が大荒れに……!?」

 

「あぁ。今の日本は例えるなら火のついた火薬庫同然の状態。何かの引き金で国を巻き込んだ争い事が始まると言える。女尊男卑と言う社会風潮が蔓延していたこの国だったけど、IS学園で発生した襲撃事件でISの在り方に疑問視されるようになった。今まで競技用パワード・スーツと言っていたのが、ここに来て兵器として運用されていたって事実が隠蔽されていたんだからな」

 

 21の国と地域が参加して成立したアラスカ条約に基づいて日本に設置されたIS学園。それが設立したのは割と最近であり、当時政権与党だった民進党(今は野党第一党)が大きく関係していた。

 民進党はIS学園を設立する為に犯罪じみた事を平気で行った。様々な団体や有名人から多額の支援を受け、今の政権与党の自民党を打ち破り、政権与党になって最初の仕事としてIS学園を設立した。

 彼らはISを兵器として認識していたが、戦争や兵器に関して過剰なアレルギーを持っている日本人を納得させる為、ISを競技用パワード・スーツと偽ってまでIS学園を設立させた。これはISの技術を独占的に保有していた日本への情報開示とその共有に応える事が表向きの理由だった。

 では本来の目的は何か。それはISに関連する人材を育成させると共にISのデータ収集を行い、IS開発を行いながら莫大な利益を得る為。その得た利益は自分達を支援してくれる人々に渡す。

 当時“白騎士”の操縦者が女性である事が分かっていた為、民進党の支援者の女性達は一生遊んでくれる程の大金を手にしながら、このように言いふらした。“ISを動かす事の出来る女性の方が優れていて、ISを動かせない男性は劣っている”と。

 その考え方が何時の間にか人々の間に撒き散らされ、それが社会風潮となって今の世の中になった。それが“女尊男卑”と言う名前の歪みの正体だった。

 

「それを隠蔽したのが当時の政権与党だった民進党。奴らが今の世の中を築き上げた元凶って奴だ。この事実は未だに公表されていない。と言うか出来ない。今公表したら何が起きるか分からないぞ」

 

「このまま何れにしても内乱が起きる……それを見逃す諸外国じゃない。ISの技術を手に入れようと内乱に乗じて手を出して来るに決まっている」

 

「そうだな。だから俺も本腰入れて動かないといけない。今のIS学園は外出自粛と連日の世論からの批判に晒されて身動きが取れない。ならば俺が動くしかない」

 

「何をするんですか?」

 

「決まっている。今週の土曜日にある学院祭に招待する純一君に話をするんだ」

 

 『私立鳳凰学院』で平等院佐智雄が動き出す事を決めたのと同じ頃。女尊男卑派を追放したIS委員会が新体制となって動き始めた。

 その新体制の中心にいるのは元管理官で執行官となった元IS学園OGの沖田美紀と、平等院財閥派のスコールこと巻紙礼子。彼女達は反女尊男卑派であり、原点回帰を掲げる事を記者会見で堂々と宣言した。

 最初に行った事はIS委員会にいる女尊男卑派の取り締まり。これまでIS学園の運営に関わっていたとされる女性権利団体とIS委員会のメンバーの名簿、及びその証拠となる書類等が公表された。

 IS委員会は女尊男卑派の役員達を全員追放する事を発表すると、世論はこれを見逃す筈が無かった。IS委員会の対応に評価を下し、女性権利団体とIS委員会の女尊男卑派に攻撃の矛先を向けた。

 この頃学年別クラス対抗デュエルトーナメントの現場監督をしていた女性権利団体のメンバーが逮捕されたと言うニュースが報道され、その女性達は現金の持ち逃げ等の沢山の犯罪を犯していた事が明らかになった。

 その女性達は裁判にかけられる事になったのだが、学年別クラス対抗デュエルトーナメントの観客達による誹謗中傷や卵投げ攻撃等、とにかく散々な目に遭っているらしい。

 そして犯した犯罪が複数あって世論からの反応もある為、必然的に厳罰が下される事が目に見えていた。目の前の利益を追い求め、感情のままに動いた末路。因果応報と言う事実を受け入れる事しか出来なかった。

 

 

 

 同好会活動を終えた純一は校庭の中庭でスマホ越しに話をしていた。その相手は平等院友希那。今週末に行われる学院祭に純一を招待する上で、一度直接会って話をしたいと言う理由で、純一に電話をかけてきた。

 

「僕とナタリアさんに来て欲しい?」

 

『えぇ。明後日から始まる学院祭に純一君をゲストとして呼ぶ話は前にしたけど、前に純一君の話に出たナタリアさんにも興味が出て来たって話は前にしたよね? だから学院祭に純一君と一緒に呼ぼうかなと思うんだけど、その前に一度会いたいと思って……』

 

「成る程。場所と時間は?」

 

『場所は“椿園”と言う料亭。時間は明日の午後6時30分に予約を入れたわ』

 

「“椿園”……ですか!?」

 

『えぇ。そこならお忍びで会えるでしょう? それにまさかIS学園の人も“椿園”に行くなんて思いもしないでしょうし』

 

 “椿園”と言う料亭は由緒正しい料亭であり、世界的にも有名な高級料亭として知られている。純一ももちろん名前を知っているが、友希那から聞かされた時は流石に驚きを隠せないでいた。

 “椿園”はかなりの金持ちや政治家でないと予約が取れないと言う噂があるからだ。純一も父親の洋介と共に使った事があるが、その時は取引先の大企業との食事に付き合ったりした程度だった。

 過去に3回日本で行われた先進国首脳会議、もといサミットの社交晩餐会を担当した経験もあり、今でも政界や財界の有名人や外国要人の接待に使われている。

 

「分かった。ナタリアさんには僕の方から話をするよ」

 

『お願いね。神楽さんとナターシャさんには話は通しているから』

 

「はい、では当日はよろしく」

 

『えぇ。お休みなさい』

 

「お休み」

 

 当日は純一とナタリアの他に、神楽とナターシャも参加する事になっている。純一は友希那から神楽とは親友の間柄である事を聞いて驚くと共に、彼女が平等院財閥の密偵としてIS学園に入学していた事には呆然となった。

 

 

 

 料亭“椿園”。それはIS学園の大半の人物が立ち入れないような高級料亭。その料亭の一室にIS学園の面々がいた。

 黒田純一。ナタリア・スアレス・ナバーロ。四十院神楽。ナターシャ・ファイルス。学年別クラス対抗デュエルトーナメントにおいて、1年5組の元出場メンバーとその担任。更に言えば『遊戯王』同好会、『チーム・サティスファクションズ』の中心メンバーと顧問。

 この日彼らは同好会活動を早々に切り上げ、ナターシャの車で料亭に来ている。純一は久し振りに訪れた料亭の雰囲気に浸っているが、ナタリアとナターシャは何処か居心地が悪そうにソワソワしている。

 

「な、何か凄い違和感しかないです……」

 

「私こういう所始めて来るから慣れないのよね……純一君と神楽さんは大丈夫なの?」

 

「はい。僕は何回かここに来た事があるので大丈夫です」

 

「私もです」

 

「こ、これが旧華族出身と大企業の跡取りのパワー……!」

 

 ナタリアとナターシャの2人は日本の高級料亭に入る事は初めてであり、早く『私立鳳凰学院』の人が来ないか待っていた。

 すると、襖が開いて4人の人物が入室してきた。平等院佐智雄と友希那と零児の平等院兄妹、そして彼らの父親である平等院十次郎。

 

「大変お待たせして申し訳ありませんでした。初めまして、平等院十次郎と言います。今日はどうぞよろしくお願いします。こちらは私の子供達です。佐智雄、友希那、そして零児です」

 

 筋骨隆々で強面だが、声がとても優しいと言うギャップが特徴な男性が平等院十次郎。現在の平等院財閥のリーダーであり、佐智雄と友希那の父親。零児とマドカには義父と言える存在である。

 父親に促されるように佐智雄と友希那、零児の3人が一礼すると、純一達もそれに応えるように頭を下げる。

 

「これで皆さん揃いましたね。さぁ楽しい宴会の始まりと行きましょう」

 

 飲み物と食事を注文して一通り来た事を確認してから全員で乾杯すると、IS学園と『私立鳳凰学院』の垣根を超えた宴会が始まった。

 ナタリアとナターシャは最初こそ緊張していたものの、時間が経つにつれて緊張やぎこちなさが無くなっていった。

 

「ナタリアさん。純一君から話は聞きました。彼が入院している間に同好会を設立したと。今回招いたのも是非貴女の事を聞きたいからなんです。明後日の学院祭の話は聞きましたか?」

 

「あ、はい。特別に招待させて頂けると……でも私なんかで良いんですか?」

 

「もちろん。貴女の行動力は凄い物を感じました。スペインの代表候補生なんですよね? 代表候補生に上り詰めるのは素晴らしいです」

 

「いえ、私はたまたまISを動かせるのが上手だっただけです。それに専用機ももらえない中途半端な立ち位置です。私は、恐らく今回の一件で代表候補生を首になってもおかしくありません。そうなったらISしかなかった私の居場所は何処にもなくなるでしょう」

 

「ナタリアさん……」

 

「だってそうでしょう? 今回の件でISは兵器として見なされるようになった。毎日テレビで言っていますよ……“IS学園は人殺しの道具の使い方を教える軍学校だ”、“女尊男卑の育成所だ”って」

 

 今回の一件によって世論からの批判を受けているIS学園。そこに在籍している女子生徒達の中には、将来に不安を感じるようになった者が続出するようになった。

 ナタリアもその一人だった。話を聞いた純一はともかく、ナタリアの気持ちを聞いている面々は静かに耳を傾けている。

 

「私は何をやっても駄目でした……勉強もスポーツも人並みで、人より優れている所なんか何一つありませんでした。でもISを動かせた事で世界が変わりました。代表候補生まで登り詰めたんです。……でも今回の一件でどうすれば良いか分からなくなって……だから自分に出来る事をやって、自分の世界を変えていこうと思ったんです」

 

「それで良いと思う。俺はIS学園の状況とかニュースで見る程度だから、ナタリアさん達が置かれている環境とか詳しい事は分からない。けど、自分でどうにか行動して世界を変えようって言うのは凄い事だと思う。考えているのと行動するってのは全然違うからね」

 

「ナタリアさん。だから私は貴女を招待しようと思ったんです。自分の進むべき道が分からない人に少しでも世界を見せてあげたい。そう願って……」

 

「友希那さん……」

 

「無理にこっちに来いとは言いません。でもこのままIS学園にいても何も変わりません。自分に正直になって何をしたいかを真剣に考える中で、色々やってみても良いと思います。少しくらい夢……見ても良いじゃないですか」

 

「そうですね……やっぱりここに来て正解でした。ありがとうございます」

 

 平等院兄妹と話をしていく中で、ナタリアの表情が憑き物が落ちたように晴れ晴れとした物に変わっていった。

 今回の事件で自分の将来が分からなくなり、不安を抱くようになったナタリア。自分の行動を肯定してくれる人がいる、自分は一人じゃないと言う自信を手にする事が出来た。

 

「そう言えば友希那さんと零児さんって純一君と親しそうですが、前に何処かで会った事があるんですか?」

 

「あぁ……俺はこの前カードショップでフリー対戦した時に知り合ったよ。終わった後にカフェで話している間にお互いの事が分かってつい意気投合したんだ」

 

「そうそう。いや~まさか平等院財閥の人とは分からなかったよ~」

 

 零児は多少事実を捻じ曲げてナタリアに伝えると、純一も若干苦し紛れではあるものの助け舟を出した。

 まさか自分を試す為にIS学園の敷地内に侵入したなんて口が裂けても言えない。とは言えど、その様子を知っているのは純一と零児の2人だけなのだから。

 

「友希那さんとは?」

 

「私は中学生の時になるわね……純一君が私を対戦に誘ってくれた。そこから始まったの」

 

 友希那はナタリアに話し始める。自分と純一の出会いを。それは今から数年前に遡る。純一と友希那が中学生だった頃。とあるカードショップで彼らは出会った。

 そのカードショップに純一はシングルカードとスリーブを買いに来て、お目当てのカードとスリーブを購入して店を後にしようとした時、純一は対戦スペースで一人ポツンと座っている少女が目に入った。

 

「……店員さん。彼女、一人でいますけど大丈夫ですか?」

 

「あぁ、彼女ね……週に2,3回のペースでここに来ては対戦相手を探しているけど、綺麗な女の子だから誰も近付こうとしないんだ。ほら、女尊男卑の世の中だろう? だから近付きにくくて……」

 

「ちょっと対戦出来るか声かけてきます」

 

「あぁ。普段だったら俺達店員が相手してやっているけど、今は忙しくてね……頼むよ」

 

 その少女は如何にもお嬢様と言う雰囲気を放っていた。黒髪ロングの美少女。スタイル抜群で普通だったら色んな男性に声を掛けられそうだが、女尊男卑と言う社会風潮から逆に避けられている。女性に手を出して変な事に巻き込まれたくない。

 しかし、純一は女尊男卑と言う社会風潮に全く動じる事はない。少女の所に近付いて優しく声を掛けてみた。

 

「君、一人かい? 対戦相手探しているんだけど大丈夫?」

 

「あっ、はい! 大丈夫です……」

 

 これが切っ掛けで純一と友希那は仲良しになった。フリー対戦をしたり、連絡先をお互いに交換し合って電話やメールのやり取りをしたり、カフェでお茶をしながら『遊戯王』の話をしたりして仲を深め合った。

 純一がIS学園に入学してからは疎遠になったが、デュエルディスクが登場してからは今まで以上に話すようになった。

 

「最初の友希那さんはお嬢様と言うか、人形みたいな感じだったけど……何か話している間に少しずつ自分を出せるようになって、少しずつどういう人なのかが分かって来たよ」

 

「純一君には話してなかったけど、実は俺達の中で最初に『遊戯王』を始めたのは友希那なんだよ。アニメの『VRAINS』に出て来るゴーストガールが使う【オルタ―ガイスト】って言うデッキを組みたくて始めたんだけど、俺や零児は遊んであげる時間が無かった。だからカードショップに行って相手を探していたんだけど……」

 

「女尊男卑の世の中。しかも美人なお嬢様。誰も近付きたがらず、毎回店員さんとやっていて申し訳なく思っていた所に純一君が声を掛けてくれた。最初の頃の友希那は凄く落ち込んでいてネガティブだったけど、純一君が声を掛けてくれたおかげで『遊戯王』をやっと楽しめるようになったんだ。だから本当に感謝しているんだよ。純一君がいなければ今の義姉さんはいなかった。そう言い切れるくらい」

 

「あの頃の私は本当に弱かった。カードの効果を間違えたり、タイミングを間違えたり、プレミも多かった……でも純一君に追い付きたい、いつか恩返しをしたいと思って頑張っている内に大会に優勝出来た。やっと純一君と同じ場所に立てるようになったって嬉しくなったの……」

 

 友希那は平等院財閥のお嬢様として、礼儀作法や言葉遣い等の全てが上品で完璧である事を求められて教育を受けてきた。

 しかし、彼女は偶々見た『遊戯王VRAINS』で『遊戯王』に嵌ってしまい、大好きなキャラが使うデッキを作った。家族で当時やっていたのは自分だけだった為、カードショップに行って対戦相手を探したが、中々見付からずにいた。

 言われたことをしてるだけ。空っぽで、退屈で、楽しくないのに笑ってて、何もかも嘘だらけな毎日。そんな日常を変えてくれると思ったカードゲーム。でも対戦相手が見つからず、不満足な日々を送った。

 そこに現れたのは黒田純一。彼と対戦していく中でモチベーションが上がり、経験を積んでいく中で自然と強くなった。大会で優勝出来るくらいに。それも全て純一との出会いがあったから。

 

「だから私は純一君に恩返しがしたい。デュエルディスクのモニターを呉島社長にお願いしたのも、学院祭に招待したのも全部純一君の為。私は純一君のおかげで変わる事が出来た。前に進めるようになった。強くなれた。だからその証を純一君に魅せたい! そう願った……例え間違っていたとしてもこの思いは絶対に譲れない……」

 

「友希那さん……ありがとう。明日の学院祭、一緒に盛り上げようね」

 

「はい!」

 

 友希那の真っすぐな思いに当てられたのか、純一は言葉を失う事しか出来なかった。自分をそこまで大切に思ってくれていたのか。自分の為にそこまでしてくれるのか。

 純一は俯けていた顔をゆっくりと上げて友希那にお礼を言うと、友希那は心底素敵な笑顔を浮かべて答えた。

 

 

 

「さてそろそろ肝心の学院祭について話そう。先ず明日・明後日の2日間に渡って開催される学院祭で、午後にエキシビジョンデュエルがプログラムに入っている。その対戦相手に純一君を招待しようと思って、今回声を掛けたんだ」

 

「純一君と神楽には話していたけど、私は『私立鳳凰学院』のデュエルディスクのモニター。そもそも今回のデュエルディスクの開発の援助は平等院財閥がけっこう出資していて、援助の代わりに純一君をモニターにするよう頼んだの」

 

「と言う事は純一君がモニターになるのは決まっていたんですか? えぇ~何か凄いです……」

 

「言ったでしょう? 純一君に恩返しがしたいって」

 

「な、成る程……そう言えばそうでしたね。と言う事は、IS学園と『私立鳳凰学院』のデュエルディスクのモニターによる、正に頂上対決……!」

 

 良い感じの雰囲気になると、ようやく本題に入る事となった。『私立鳳凰学院』の学院祭は土・日の2日間に渡って開催される。

 その午後にデュエルディスクを用いてエキシビジョンデュエルが行われるが、平等院財閥の面々は純一を招き、デュエルディスクのモニター同士の対戦を実現させようと考え、純一に声を掛けた。

 つまりこのエキシビジョンデュエルはデュエルディスクのモニター同士の対戦以上に、IS学園と『私立鳳凰学院』の代理戦争の意味合いがある。とは言っても純一はIS学園の代表ではなく、あくまで同好会の代表としての参加なのだが。

 

「生徒会長として言わせてもらうけど、これ企画したのは俺だからな? それにそもそも俺はIS学園と鳳凰学院、どっちが強いかを競うつもりはない。あくまでこれはIS学園と『私立鳳凰学院』で友好関係を築く第一歩として企画した。出来ればこれを足掛かりに、こっちの同好会と交流試合でも出来れば良いな……」

 

「そちらも同好会があるんですね」

 

「あぁ。まぁそれは後々に。先ずは明日のエキシビジョンデュエルが少しでも良い物になる事を願おう」

 

 IS学園と『私立鳳凰学院』で友好関係を築く意味も込めて語り明かした一行。後にこの2つの高校は不可侵協定を結び、友好関係を築く事になるのだが、それはまた別の話だ。

 

 

 

 翌日。俊介と比奈に後を任せてナターシャの車で『私立鳳凰学院』に向かった一行。純一は『鳳凰学院』の生徒会の面々と共に音響を調節したり、デュエルディスクに不備が無いかどうかをチェックしている。

 

「定位置はどうしますか?」

 

「ステージ側から見て友希那の前に純一君にしようかなと思う。友希那に純一君が勝負を挑むと言う演出にしたいから。それとソリッドビジョンの問題で少し場所は広めに確保してくれるかな?」

 

「了解です!」

 

「友希那さん、音量はこれくらいが良いですか?」

 

「ごめんなさい、もう少し下げてもらえるかしら? ここは音が反響しやすいから音は少し小さめの方がちょうど良いの」

 

 エキシビジョンデュエルの会場は多目的ホール。全校集会や舞台演目、発表会等が行われる時に使用されている。もちろん使用許可を貰っており、準備を進めていた。

 大人数を収容する事が出来るだけでなく、2階や側面にも観客席が設置されている、大きなコンサート会場と言える建物である。

 準備が終わってから30分後の正午。エキシビジョンデュエルの入場が始まった。事前に宣伝していた事もあって、エキシビジョンデュエルに興味関心がある生徒達や『遊戯王』が大好きなデュエリスト達が次々と詰め掛けた。

 瞬く間に座席は満杯になり、立ち見をするお客さんもチラホラ現れる事となった。ちなみにエキシビジョンデュエルに純一が来る事は生徒会の面々しか知らない為、一般生徒から見ればサプライズゲストと言う事となる。

 多目的ホールの一室。そこでは真剣な表情を浮かべながら、スーツ姿の純一がデッキを調整していた。その表情とオーラは誰も寄せ付けず、一人静かにカードを1枚1枚見ている。

 今回使うのは【ドライトロン】デッキ。この前虚に後攻1ターンキルを決められて敗北してから、ずっとデッキ調整と対戦を重ねて使い方や構築を見直し続けた。全てはこの日の為に。全ては友希那に勝つ為に。

 

「会場の様子を見て来たけど、満員御礼で凄い熱気だ……」

 

「これは気を引き締めないといけないわね……」

 

「義姉さん、そろそろ時間だ。純一君はスタンバイしている」

 

「分かったわ。今行く」

 

 公輝が会場の様子見から戻って来ると、友希那は表情を引き締めた。流石に緊張を隠せないでいる。何しろ初めて大勢の人の前でデュエルする事になるのだ。誰だって最初は緊張するのも仕方ない。

 零児の指示を受けた友希那。黒いドレスを着た女王は舞台へと上がり、打ち合わせの通りに位置に付いた。観客席と舞台の間は三重ものカーテンによって遮られているが、観客席の喧騒はしっかり聞こえている。

 話し声等の騒めき。期待と衝動を内包した嵐の前を思わせる静寂。深呼吸をした友希那の心で闘志が燃え上がり、興奮が高鳴る。これから挑む相手は自分の恩人にして客人。久し振りのデュエルに胸の昂りを抑える事が出来ない。

 

「準備が出来ました。いつでも出来ます」

 

『皆様、大変長らくお待たせしました。これよりエキシビジョンデュエルを開始致します』

 

 友希那がイヤホンマイクを通して準備完了を告げると、ブザー音が鳴り響いた。その音が鳴り止んだ事を確認し、観客席側のアナウンスを担当している放送部の生徒がマイクを通してエキシビジョンデュエルの開始を宣言した。

 幕が上がり、左腕にデュエルディスクを付けた黒いドレス姿の友希那が姿を現した。彼女の目の前に広がるのは満員御礼の観客席と自分を見る観客達。

 

『この場所に集いし皆様、これより始まるのはデュエルディスクを使った熱きデュエル! 台本ややらせも無い真剣勝負。白熱した攻防を見逃さないように! 対戦するのは平等院友希那!』

 

『そしてもう1人は……スペシャルゲスト! 今回の為にはるばるIS学園から来たこの男! 黒田純一!』

 

 名前が告げられて手を挙げて応える友希那に、観客達は声援と拍手を送る。最初は緊張でぎこちなかった表情も自然と柔らかくなっていく。

 続けて告げられた対戦相手の名前に観客達は大きくどよめき、歓声と拍手を送る中、純一はお辞儀をしてから登場した。

 

『2人共準備はOKですか?』

 

「えぇ。何時でも大丈夫よ?」

 

「こっちも大丈夫です。さぁ満足させてくれよ!」

 

『行きます! せ~の!』

 

『デュエル!』

 

 『私立鳳凰学院』の多目的ホール。この場所で純一と友希那の約2年ぶりとなるデュエルが幕を開けた。お互いに大会優勝経験者同士。ハイレベルなデュエルが期待出来る。

 




ここまで呼んで下さり、大変ありがとうございます。
今回も後書きとして裏話・裏設定を書いていこうと思います。


・女尊男卑の社会風潮

 今回はその原因を自己解釈してみました。束博士が自作自演で行った白騎士事件を政権与党だった民進党が利用した事にしてみました。
 『仮面ライダー鎧武』の戦極凌馬がミッチに言った名言を参考して考えてみました。悪い大人に利用されたと言う感じで。


・新生IS委員会の仕事

 これはいつか書いていこうかなと思います。例えばIS学園にいる女尊男卑思想主義者の追放とか。


・椿園の元ネタ

 今回登場した料亭の元ネタは『船場吉兆』です。十年以上前だったかな? 色々とやらかした事で有名な。


・迷走気味なナタリアさん

 次章で何かしらの答えを出しますが、今はまだ悩みます。

次回をお楽しみに! LAST ALLIANCEでした!

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