遊戯王IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:LAST ALLIANCE

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 皆さんこんにちは。LAST ALLIANCEです。新しい小説をスタートさせました。
 この小説は『DS 〈デジタライズ・ストラトス〉』から人物と設定を一部流用していますが、読んだ事のない人でも楽しめるようになっています。
 また、この小説のデュエルのノリはカジュアル7:ガチ3を目指していますので、なるべく最近の『遊戯王』が分からない人でも楽しめるよう、努力していきます。それではお楽しみ下さい!



第1章  THE DUELIST ADVENT(プロローグ)
TURN01 デュエルスタンバイ!


「出来た~!」

 

 IS学園1年1組所属、“世界で2番目の男性搭乗者”の黒田純一。眼鏡をかけた優等生風な外見をした少年は自宅の部屋で一作業を終え、大声を上げながら両拳を掲げた。

 彼の目の前には三重ものスリーブに入れられたカードの束がある。俗に言うデッキ。『遊戯王OCG』のデッキ。純一はとある理由でIS学園で『遊戯王OCG』をやる事になった。それでデッキを構築していた。

 事前にレシピを考えていて、そのレシピに基づいてカードを集めていた。今までカードの一枚一枚をスリーブに入れると言う作業をしていて、それがようやく終わったのだ。

 

「お疲れさん。完成した純【Kozmo】デッキ、戦えそうか?」

 

「あぁ。安く組めたし、回すのも簡単。それでいて強いから学園の特殊制限ルールでも十二分に戦えそうだ。それにソリティアみたいな展開がないから、対戦相手に優しいのも良いね。強さも強過ぎず、弱すぎずでフリー対戦にちょうど良い」

 

 純一の目の前にある【Kozmo】デッキ。それを一緒に見ているのは五反田弾。赤い長髪にバンダナを巻いたイケメン。純一の親友の一人で、実家は五反田食堂という食堂を営んでいる。純一も休日になると、必ず足を運んでいる。

 休日に純一は弾を自宅に招き、中学生時代からの親友と遊んだりしている。この日は【Kozmo】デッキを完成させていた。弾は純一が作った『遊戯王OCG』の分厚いカードファイルを見ていた。

 

「俺や一夏みたいな復帰勢や学園の女子達のような初心者にもお薦めって事か」

 

「そういう事。ただバトルフェイズ中に出来る事が多いから、慣れるまでに時間がかかるのが難点かな? けどチェーンブロックの組み方を学べるからそういう意味では良いのかも」

 

「レシピ後で見せてくれるか? 参考にしたいから」

 

「良いよ?」

 

 純一が【Kozmo】デッキを構築した理由は篠ノ之束から薦めされたから。安く組める上に強い。それでいて動かし方も比較的シンプル。高校受験の為に一時期『遊戯王』を引退していた純一が復帰するには丁度良いテーマと言える。

 束も“『遊戯王』初心者や復帰勢の人達向けのデッキの1つ”と太鼓判を押していて、実際カードショップの店員も同じ事を言っていた。

 

「成る程な……まぁ大会にも出ている純一が言うからには事実なんだろうな。にしても災難だな……魂のデッキ、【青眼(ブルーアイズ)】が使えないなんて」

 

「使えなくはないけどさ、学園の特殊制限ルールで僕が大好きな亜白龍(オルタナティブ)が使用禁止になって……今の構築じゃ駄目なんだよ。使うなら違う構築にしないと……儀式軸にしても《カオス・MAX》が禁止になったからどうしようって思って……」

 

「平均価格が1000円以上のカードは使用禁止か……特殊制限にしてはかなりイレギュラーだよな……でも純一はそういう大会にも出ていただろう?」

 

「まぁね。僕が出た特殊制限大会は環境入りしてたデッキのキーカードが軒並み禁止カードだったけど……それでも学園の特殊制限はやりすぎってレベルだと思えるよ」

 

「でも学園側の判断も間違いじゃないんだよなぁ……手札誘発とか今の時代のデッキ構築に必要なカードって、それなりに良い値段する物ばかりだから」

 

 純一の頭を悩ませているのはIS学園の特殊制限ルール。公式が定めたリミットレギュレーションの他に、平均価格が1000円以上するカードは使用禁止となった。

 例えば《増殖するG》や《灰流うらら》のような手札誘発効果を持つモンスターや、《強欲で金満な壺》や《無限泡影》のような強力で汎用性の高い魔法・罠カードが挙げられる。

 つまりは環境への採用率も高く、市場価格も高額で取引されているカードの大半が使用禁止になると言う、大会に出ているガチデュエリスト達が涙目になるようなリミットレギュレーションとなった。

 

「まぁどうやったって、1人のプレーヤーが運営側が決めたルールを引っ繰り返す事は出来ない。だったら決めたルールの中で最強のデッキを作ってデュエルするしかない。 IS学園で最強になって満足するしかない」

 

「そうだな……ところで一夏はどうなんだ? あいつ『遊戯王』やるの小学生の時以来だろう? 中学生の時に誘ってもバイトで出来なかったし……」

 

「一夏は鈴や箒達に捕まってデュエルやっているみたいだよ? あいつらは一夏と一緒にいたいんだよ……仕方ないね。弾、悪いけど【Kozmo】デッキの調整に付き合ってくれないか?」

 

「良いぜ? 久し振りのデュエルだ。腕が鳴るぜ!」

 

「それは俺もだ……と言っても、僕は一夏とデュエルしたけどね……まぁ僕の魂を満足させてくれよ!」

 

 こうして始まった純一と弾のデュエル。その中で純一はつい最近の出来事を思い出す。自分がとある企業が開発したデュエルディスク機能を搭載したISのモニターになった事を。そしてIS学園で『遊戯王OCG』をするようになった事を。

 それは“世界で2番目の男性IS操縦者”として、一人のデュエリストとして純一を一回りも二回りも成長させる経験の始まりだった。

 

ーーーーー

 

 黒田純一。何処にでもいるような男子高校生。眼鏡をかけた優等生風な見た目をしている。そんな彼は大企業かつ総合商社の『黒田商事』の社長を務めている。つまりは跡取り息子と言う事になる。

 純一は社長である父親の黒田洋介を尊敬していて、いずれは親父の会社を継いで社長になると言う夢を抱いている。

 そんな彼だが、“世界初の男性IS操縦者”の織斑一夏の存在が明らかになった事で、運命を大きく変えられてしまった。と言うのも、後で行われた適性検査でISを動かしてしまい、見事合格してIS学園に強制入学させられる事となったからだ。

 おかげで高校受験で合格したトップクラスの進学校の入学が取り消しになってしまい、折角第一志望で合格した喜びが水の泡になって消え去った。当時の純一は悔し涙を流し、自分がISを動かしてしまった事を心底呪ったらしい。

 そういう訳で今はIS学園に通いながらIS関連の勉強をしたり、ISの操縦技術を学んだりしている。それとは平行して、大学のセンター試験に向けての勉強も行っている。親友の織斑一夏曰く、“最高の努力家”。それが黒田純一の人物像。

 ISとは何か。正式名称は『インフィニット・ストラトス』。俺がIS学園に転入した10年前に開発されたマルチフォーム・スーツ。宇宙空間での活動を想定し、篠ノ之束博士によって開発されたけど、残念な事に本来の運用の研究はされていない。

 篠ノ之束と織斑千冬による自作自演疑惑が高い『白騎士事件』によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡り、各国は軍事力兼抑止力の要として運用している。

 一応IS運用協定ことアラスカ条約によって軍事利用は禁止されているが、純一はアラスカ条約は形骸化していると考えている。今はスポーツの競技種目として運用されていて、テレビでは頻繁に試合中継が行われている。

 ただこのISには致命的な欠点がある。それは女性にしか動かせない事。おかげで女尊男卑の世の中になり、男性には息苦しい世の中となった。本来女性にしか動かせない筈が、どういう訳かISを動かしてしまい、“世界で2番目の男性IS操縦者”としてIS学園にいる純一も、世の中の風潮には辟易している時もある。

 IS学園はIS操縦者育成の為に設立された教育機関。IS操縦者だけでなく、設計者や整備士の育成も行っている。2年生になったら操縦士科や整備士科等のコースを選択できるらしい。純一はIS関連の道に進むつもりはないから興味ないが。

 純一と一夏は1組所属。担任の先生は一夏の姉の織斑千冬。彼女は純一の両親とも面識があり、純一を2人目の弟と言わんばかりに面倒を見てくれている。

 IS学園に来て、純一は色んな人々に出会いながら様々な出来事を経験した。その中で自分の良い所を教えられ、悪い所も付き付けられたりした。最初はクラスに馴染めるかどうか不安だったけど、今はクラス副代表としてクラスの皆と仲良くやれている。

 学科の方も毎日予習と復習を行っているおかげで、テストは常に15番以内をキープしている。ISの操縦の方では、専属コーチの更識楯無による毎日のマンツーマンの指導のおかげで、代表候補生と何とか渡り合えるレベルの実力に至った。とは言うものの、純一の努力をあまり認められていない。

 

「やっぱり織斑くんはすごいよね~」

 

「凄いよ織斑君!」

 

「流石一夏君!」

 

「一夏君のおかげよ!」

 

 その理由は一夏と言う存在にある。純一は一夏の事を最高の親友だと思っている反面、越えるべき宿敵と思っている。

 女性しか動かせないISを世界で初めて動かした男性。IS操縦者として世界最強の称号を持つ織斑千冬の弟。ISの開発者の天災科学者の篠ノ之束の数少ないお気に入り。それが織斑一夏の今。まるで映画・アニメの主人公みたいだ。

 コネもあってか専用機を所有し、どんなトラブルも解決して賞賛を受け、関わった女性には例外なく惚れられる。ゲームのようなよく出来たストーリーだが、純一はそんな事がまかり通る世の中に中指を立てている。

 

―――見ていろよ。必ず俺が一夏を越えてみせる。世の中な、最後に勝つのは最後まで正しい努力を続けた奴なんだよ。

 

 “正しい努力を続ければ、必ず良い結果が出る”。純一は父親からそれを教わり、その事実をこれまでの人生で証明し続けた。

 だからIS学園でも証明させる。顔は良くない。才能もない。天才じゃない。センスもない。そんな自分でも良い結果を残せる。そう言い聞かせながら、彼はとにかく毎日コツコツと正しい努力を積み重ねていく。

 

ーーーーー

 

 2学期のある日。純一達は屋上で昼食を食べていた。純一と一夏。篠ノ之箒。セシリア・オルコット。凰鈴音。シャルロット・デュノア。ラウラ・ボーデヴィッヒ。更識簪。皆で屋上に集まって昼食を食べるのも日常茶飯事だ。

 

「純一、ここ最近よく本を読んでいるなぁ……いや止めはしないから続けて良いよ?」

 

「あ、ごめん。実は親父の頼みでさ、とある企業が新しく事業をスタートする事になって、それに協力して欲しいと頼まれて……その勉強をしているんだ」

 

 皆より先に昼食を食べ終えた純一がブックカバーを付けた本を読んでいると、一夏は苦笑いを浮かべながら俺に話し掛ける。

 一夏は純一の事を“努力型の天才”と言っていて、“俺よりももっと評価されるべき”と常日頃から言っている。純一自身も一夏の事を賞賛する事はかなりあるから、お互いがお互いを高め合っている関係性にある。

 おかげで一部の女子生徒からはどっちが受けで、どっちが攻めかと言う議論がされているらしい。一説に寄れば、本人達の許可なしで同人誌が作られているとかいないとか。

 

「純一さんのお父さんの会社は何をしているのですか?」

 

「親父の会社は総合商社って言って、一言で言うと物を仕入れて販売している会社だよ。会社ってさ、実際物を作って販売しようにも販売ルートが無かったり、お客さんがいるのに仕入れる物が無い場合があるんだ。今だったらインターネットでクリック一つで出来るけど、それはあくまで個人のお客様相手。企業や法人相手になると、大量に仕入れて大量に販売する掛け取引が中心になるんだ。商社は企業とお客さんの仲介をして、取引を成立させている。ラーメンから航空機まで何でも揃える総合商社は日本ぐらいしかないかな?」

 

「でもどんな事業を始めるの? 今更IS関連の事業をやると言うの?」

 

「まぁやるのは親父の会社じゃないんだけど……悪いが詳しい事は俺の口からは話せない。今のご時世は個人情報や機密情報にはうるさくなっていて、滅多な事は話すなときつく言われているから。と言うより、俺も何を頼まれるか分からないんだ」

 

 セシリアの質問に純一はなるべく分かりやすく答えたつもりだったけど、同じ大企業のお嬢様のシャルロットや頭が良い簪以外にはあまりピンと来なかったようだ。

 この時の純一はまだ知らなかった。まさか父親に手伝って欲しいと頼まれた事業。それが今までIS学園で脇役だった自分の立場を、大きく書き換える事になる事を。

 

ーーーーー

 

 それから数日後。放課後。純一は父親の車に乗り、父親と共にとある企業に向かっていった。その企業の名前は『呉島エンタテインメイトスタジオ』。

 『呉島エンタテインメイトスタジオ』の本社に入ると、受付の人に会議室に案内された。これから社長に会って面談するとの事。

 社長の名前は呉島高虎。年齢は20代後半。人当たりの良いイケメン。敏腕で時には冷徹な判断を下す事もあるが、現場や社員の事を第一に考え、定時上がりをしつこく言ったり、仕事とプライベートの両立をモットーにしている。そんな福利厚生を手厚くする等、理想の上司と言えるような人物とこれから面談をする。

 

「初めまして。『呉島エンタテインメイトスタジオ』代表取締役社長、呉島高虎と言います」

 

「『呉島エンタテインメイトスタジオ』開発事業部部長、仙谷竜馬です」

 

「黒田純一と申します。初めまして」

 

 高虎社長の隣にいるのは胡散臭そうな外見をした男性。名前は仙谷竜馬。『呉島エンタテインメイトスタジオ』の開発事業部部長を務めており、今回の事業を企画・開発した人物である。見かけは胡散臭いが、中身はまともとの事。

 父親は既にこの2人に会っているが、純一はこの2人とは初対面だ。お互いに自己紹介を行うと、高虎社長が今回の会社提携について話し始めた。

 

「事情はお父さんから聞いていますか?」

 

「はい。何となくですが……」

 

「分かりました。確認の意味も込めて最初から事情を話します。これは私もですが、君にもとても大事な話になります。真剣に聞いて下さい。そもそもこの会社、『呉島エンタテインメイトスタジオ』は私が社長になってから社名変更をしました。元々は『呉島ゲームズ』と言って、先代の社長で私の父の呉島幸喜氏の下、3D映像を用いたゲーム作品を開発していました。ところが大手のゲームメーカーの台頭もあって次第に売れ行きが悪くなり、3D映像を具現化・実体化するゲームの開発に取り掛かりました。その中で完成したのが……」

 

「『ソリッドビジョンシステム』ですね?」

 

「正解。それが大当たりしました」

 

 『呉島エンタテインメイトスタジオ』は元々『呉島ゲームズ』と言う社名で、先代の社長の呉島幸喜が設立したゲーム会社。3D映像を用いたゲーム作品の開発が特徴で強みとしており、一時期はそれで多くの利益を取っていた。

 しかし、大手ゲームメーカーの台頭によってシェアを奪われ、ゲーム事業から撤退しようかと考えたが、自社の強みである3D映像を活かし、3D映像を具現化・実体化する『ソリッドビジョンシステム』の開発に成功した。

 この『ソリッドビジョンシステム』が大当たりし、再び『呉島ゲームズ』は多くの利益を取るようになった。

 

「ところがこの『ソリッドビジョンシステム』以外にヒット商品が出なくて、イベント事業も次第に赤字になっていきました。そんな時にISが登場して、『ソリッドビジョンシステム』をシミュレーション具現化ソフトとして使おうと言う話になって、ISの操縦訓練用の仮想シュミレーターを開発しましたけど……これがあまり出来が良くなかったんです」

 

「う~む……そのシュミレーターの開発にかなりのお金を使ったのに、売り上げが良くなくて次第に辛くなっていったんですか?」

 

「そうですね……強みである3D技術が足枷になってしまった感じがします。2年前、前社長が“これからは若者の時代だ。老兵はもう出番はない。私は好きにしてきた。これからはお前が好きにしろ”と言って、まだまだ若手の私に社長の座を譲りました」

 

「高虎社長が私を開発事業部部長に抜擢してくれましたが、自社の強みである『ソリッドビジョンシステム』を使い、どのように売り上げを回復させるかを考えました。先ずは『ソリッドビジョンシステム』を伸ばそうと思い、これまでの3D立体映像から、質量を持った3D立体映像にバージョンアップさせた『リアルソリッドビジョンシステム』を開発しました。そしてこれを用いてゲーム作品を世に出しました。」

 

「ただ問題だったのはこれをどのようにして他の分野で活用するかでした。どの事業に用いようか考えていた時、『KONNAMI』に企業提携を申し出る事にしました」

 

 『KONNAMI』こと『KONNAMI株式会社』。ゲーム事業やアミューズメント事業、スポーツ事業等、幅広い事業に携わる企業。一番のヒット商品と言えば『遊戯王OCG』。世界中で人気なカードゲームで、世界大会は超大盛り上がりだ。

 純一自身も高校受験までは『遊戯王』プレーヤーで、大会やイベントに何度も出た経験がある。実力はそこまで高くなかった。優勝した事もあったけど、それはあくまで自分のデッキが強いだけだった。

 

「純一君もご存じだと思いますが、『KONNAMI』は『遊戯王OCG』の販売会社。企業提携してデュエルディスクを開発し、より多くの人々に『遊戯王』を楽しんでもらおうと考えました。ところがこれは一歩間違うと軍事利用される上に、カードゲームで相手を傷付けてしまう危険性を持っていました」

 

 虚構が現実の物となってしまう。今までアニメの世界でしか有り得なかった、デュエルディスクを用いたデュエルで行える。それを知ったらデュエリストの皆は歓喜するだろう。それはかつてデュエリストだった俺もそうだ。

 しかし、竜馬氏の言い分も分かる。只の紙切れからモンスターが出現し、その攻撃で物を破壊出来る。発動したモンスター効果・魔法・罠も同様だ。悪用されればISに勝るとも劣らないどころか、それ以上の兵器になり得る可能性もある。

 今はISの登場によって、女尊男卑の世の中になった。ISのせいで家族離散となったり、仕事を失って引きこもりになったり、世の中に絶望して自殺する男性だっている。それを色んな所で見聞きしているから、純一はそんなニュースを見る度に心が痛んでいった。

 もし只のカードゲームがISと対抗出来る兵器になれるとしたらどうするか。間違いなく世の中に絶望している男性達は手に取り、血で血を洗う大戦が勃発するだろう。それだけは絶対に避けなければならない。

 カードゲームはコミニュケーションツールであり、楽しむ為にある。それを人を傷付ける為に使ってはいけない。

 

「そこで我々はISに目を付けました。聞く所によると、操縦者を守る為に、ISの周囲に張り巡らされている“シールドバリアー”があるとか。そして全てのISに備わっている操縦者の死亡を防ぐ“絶対防御”も。これがあれば、対戦において人が死ぬ事も防げると」

 

「つまりISその物にデュエルディスクが搭載されていると言う訳ですね? しかしISは女性にしか動かせないので、仮に実用化に成功しても需要があるかどうか……カードゲームは男性がやるイメージが強いですし……」

 

「その通りです。ここからが本題なのですが今回、わざわざ来て頂いたのは“世界で二人目のIS男性操縦者”の純一君にデュエルディスクのモニターをやって頂ければと」

 

―――やはりか。僕がここに呼ばれたのはそういう事だったのか。

 

 純一は自分がここに呼ばれた理由をようやく理解した。彼は訓練機の『打鉄』を特別に専用機として受領している。自分が使いやすいようにカスタムしているが、やはり訓練機止まり。一夏達が使う専用機には性能では勝てない。それを技術や戦略で補っているのが現状。

 ここでデュエルディスクを搭載しているとは言えど、念願の専用機を受領出来るのは嬉しい話だ。でもどうして自分を選んだのか。それが気になって仕方ない。

 

「お気持ちはとても嬉しいですが、何故織斑君に頼まなかったのですか? 彼は織斑千冬先生の弟ですし、知名度やイメージは私なんかよりも格段に良いと思うのですが……」

 

「織斑君には事前に試作型のデュエルディスクを送りました。ISに装着するタイプのデュエルディスクです。他の代表候補生の方々や、専用機持ちの方々にも同様にデュエルディスクを送りました。ですが彼らはあくまで国の方から試供されるだけなので、我々の方から直接渡すのは純一君だけです」

 

「それに『黒田商事』の事はこちらでも調査済みで、純一君の人となりは把握しているつもりです。世界女王の弟と、大企業の息子。ビジネスを生業にしている我々から見ても、純一君の方が信頼出来ると判断出来ました」

 

「……分かりました。喜んでお受けしたいです」

 

「ありがとうございます! この一連の話は学園側に事前に話を通しています。後は純一君の了承を頂くだけになっていました。来週の月曜日の6時間目に全校集会で今回開発したデュエルディスクとIS学園で行う『遊戯王』のルールについて我々の方から話をします。純一君は完成型のデュエルディスクを用いたエキシビジョンマッチに出場してもらいます。後程日程の方をお伝えします。どうぞよろしくお願いします!」

 

「了解しました。こちらこそよろしくお願いします。」

 

 こうして純一は『KONNAMI株式会社』と『呉島エンタテインメイトスタジオ』の企業提携により、開発されたデュエルディスク機能を搭載したISのモニターとなった。

 この後は書類にサインし、確認事項と注意事項の確認をしてから『呉島エンタテインメイトスタジオ』を後にした。

 IS学園に戻る途中、自宅に立ち寄り、『遊戯王』カードが入った分厚いファイルや箱、デッキケースやプレイマット、スリーブ等を全部かばんの中に入れた。それらはこれから必要になる物だからだ。

 

ーーーーー

 

「一夏はまだ戻ってこないか……」

 

 アリーナでISの訓練をしている一夏よりも先に、純一は学生寮の自分の部屋に戻った。純一のルームメイトは一夏。男同士であり、お互いにやりやすい。

 この日は楯無との訓練を休み、『呉島エンタテインメイトスタジオ』に行って面談の話をしてきた。これからやる事と言えば授業の予習・復習か、これから関わる『遊戯王OCG』のルール確認をしながらデッキをいじる事ぐらいか。

 

(確か今年からまたルール変わったんだよな……融合・シンクロ・エクシーズモンスターは自分のメインモンスターゾーンにも特殊召喚できるようになった……俺の【青眼】も全盛期とまでは行かないが、それなりに上手くやれるだろう。俺の魂のデッキだ。学園で使えるようになると良いな……)

 

「やぁやぁジュン君、久し振り! 臨海学校の時以来かな?」

 

「束さん!?」

 

 純一が考え事をしていると、突然目の前に一人の女性が現れた。彼女の名前は篠ノ之束。箒のお姉さんで、1人でISの基礎理論を考案・実証し、全てのISのコアを造った“ISの生みの親”。

 ウサミミが装着されたカチューシャをつけ、胸元が開いたデザインのエプロンドレスを着ている美女だが、自分の興味のないことには冷酷なまでに無関心になり、身内と認識している者以外の人間には本当に興味がない、とても人間社会では生きて行けそうにない。

 

「お久し振りです、束さん。相変わらず元気そうですね」

 

「うんうん。ジュン君も元気そうで何よりだよ!」

 

「俺の方は前に比べてISの技術も身に付いてきましたし、学科も相変わらず11位のままです。いい加減トップ10に入りたいですが、まぁ順調にやれてます」

 

「そっか~それは良かった! ジュン君内向的な所があるから心配してたけど、今の所は大丈夫そうだね!」

 

 そんな束は純一を身内として認識しているだけでなく、まるで彼を弟のように可愛がってくれる。束の両親と純一の両親が元々付き合いがあって、小さい頃から束さんにお世話になった。

 

「ところで今日は何をしに来たんですか? まさか世間話をしに来ただけじゃないですよね?」

 

「あ、そうだった。ごめんごめん。ジュン君と沢山お話がしたかったからつい……えっとね、さっきちーちゃんからジュン君がデュエルディスク機能搭載のISのモニターになったと聞いて、伝言がてらアドバイスしに来たんだ」

 

「耳が早いですね……伝言がてらにアドバイス? まさか束さんがIS型のデュエルディスクの存在を許したなんて……明日は嵐が来るんですかね?」

 

「さらっと酷い事言うね……まぁ良いや。デュエルディスクは面白い物だよ? 賞賛に値するよ……虚構が現実になるなんて。一体誰が想像したんだろう? 私でさえそれは無理だと思った。でも呉島社長と仙谷開発部部長はそれをやってのけた。あの2人は凄いね……2人が作った物は私には出来なかったから」

 

「確かにデュエルディスクが実用されるのは俺としても嬉しい話です。ところで伝言がてらにアドバイスとは一体?」

 

「残念な話なんだけど……ジュン君の大切な【青眼】デッキは、IS学園でのデュエルでは使っちゃ駄目だって」

 

「!? どうしてですか!? 今の【青眼】は環境入りしてないです! そりゃたまに大会で結果を残していますが、今はそこまで強い訳じゃないです!」

 

 純一は納得出来なかった。彼の魂である【青眼】デッキ。それを使わせてもらえない事に強い反発を覚えたからだ。

 かつては環境を席捲していたが、今は中堅デッキに落ち着いている。弱くもなく、強すぎもない。フリー対戦にちょうど良いデッキ。もちろん大会にも挑める。

 そんなデッキを使わせてもらえない事に純一は怒った。その怒りを受けて束は彼を宥め諭すように話し始める。

 

「ジュン君の言う通り。でもね、大事なのはそこじゃないんだ。お金の問題。【青眼】ってデッキ作るのにけっこうなお値段するでしょ?」

 

「確かに。今は再録されたりして前よりは安くなりましたが、それでも他のデッキに比べるとブルジョワなデッキになります」

 

「まぁそれだけ【青眼】が人気って証拠だからね……私の方で調べたけど、大体2万5千円はかかるね~メインデッキだけでも。これでエクストラを含めると4万円はすると考えた方が良いかな。高校生の間だけ『遊戯王』をするとして、1つのデッキを作るのに約5万円払わないといけないとしたらどう思う? 多分大半の人が付いていけないと答えるよ? ブルジョワなデッキを使う事が出来るのはジュン君のようなお金持ちじゃないと無理だよ? IS学園って皆が皆富裕層じゃないんだ。中には一般家庭の女子生徒もいるから……」

 

「そうですね……強い上にデッキ構築に必須になって来るカードが高額だと、どうしても初心者のプレーヤーには敬遠されてしまいがちですよね。それなら納得が出来ます。と言う事は手札誘発系も同じですか?」

 

「鋭いねジュン君は。その通り。手札誘発と言うと、《灰流うらら》や《増殖するG》だね。後は《無限泡影》とかかな?……環境への採用率も高くて、市場価格も高額で取引されているカードは全て禁止になる。IS学園は特殊制限レギュレーションで『遊戯王』をやっていく。これは私が決めた事じゃない。ちーちゃんや理事長、そしてカードショップの最大手、『カードターミナル』が集まって話し合った結果、平均価格が1000円を超えているカードは使用禁止になるって。私はそれを事前にジュン君に伝えに来たの。ジュン君ってガチ勢だから先に伝えないと、後でとんでもない事になりそうだから……」

 

「成る程。あまりお金がない生徒の為に、なるべくデッキパワーを平等にしてあげようってつもりですね」

 

 『遊戯王』のようなカードゲームには、強い上にデッキに必須なカードが高額で取引・販売される事が多い。と言うより日常茶飯事。

 ガチ勢に限りなく近いエンジョイ勢だった純一は元々お小遣いが高額な上に、自分でお金を儲ける方法を勉強し、株取引といった手段で小遣い稼ぎをしていた。だから多少高額なデッキを作る事が出来た。下手をしたらサラリーマンの月収クラスは稼いでいる。

 しかし、中には家庭の事情だったり、経済事情の問題でそれが出来ない人もいる。そういう人達との力の差を無くす為に、学園側は特殊制限を定め、環境に顔を出している上に高額で強いカードを禁止にする事にした。これは仕方ない。たかがカード1枚に高いお金を出すより、もっとやるべき事だってある。その人にはその人の人生があるのだから。

 

「それでもプレイングやデッキ構築で差が出来ちゃうけど、そこは経験とオリジナリティーの問題だから私が口出し出来る問題じゃないね」

 

「そうなると困りましたね……俺が持っているデッキは意外に多くないです。後は【命削り真竜】や【音響ガジェット】、【HERO】ぐらいしかないです」

 

「それでも十分だと思うんだけど……ねぇジュン君。ジュン君も今回復帰する訳だし、新しくデッキ作ってみない?」

 

「デッキを? でも話を聞く限り、それなりに安くて強いデッキを作った方が無難だと思うのですが……」

 

「そう。そこでねジュン君。私はジュン君に【Kozmo】デッキをお薦めするよ!」

 

 【Kozmo】デッキ。かつて純一が公認大会や特殊制限大会に出てた時、何度も対戦した事があるデッキの1つ。勝ったり負けたりを繰り返していた。正直強い。手を焼いたデッキの1つと言える。

 【Kozmo】は『EXTRA PACK 2016』で登場したテーマの1つで、『オズの魔法使い』と『スター・ウォーズ』をモチーフにしているとか。

 

「【Kozmo】を? どうしてですか?」

 

「先ず安く組めるようになったから。大体3000円~5000円あれば純構築デッキは組める。それに《ダークシミター》や《ドロッセル》等のキーカードが1000円以下になっている。そしてメインデッキで戦える事。エクストラ要らないから余計なコンボや展開を覚える必要ないよ? 初心者や復帰勢にもお薦めだよ!」

 

「確かにそれは魅力的ですね……僕も対戦経験があるので何となく回し方も分かりますし……早速組んで回してみます」

 

「それとね、ジュン君。これは個人的なお願い。皆にデュエルの楽しさだったり、面白さを伝えてあげて欲しいんだ。この学園には『遊戯王』を知らない人だったり、昔遊んでいたけど今のルール分からない人とか色々いると思うの。そういう人達の力になってあげて」

 

「了解です。俺もデュエリストとして皆と一緒にデュエルを楽しみ、『遊戯王』を通じて仲良くしていきたいです」

 

「うんうん♪ その意気だよ! 特殊制限リストは近い内に発表するから、平均価格調べながらデッキ構築してね! じゃあ私はデュエルディスク機能を搭載したISを完成させるから!」

 

 こうして純一はIS学園の特殊制限レギュレーションルールを受け入れ、その上で【Kozmo】デッキを作る事にした。

 純一は特殊制限大会にも出場して優勝した事があるが、公認大会とは違う面白さがある事も知っている。実は公認大会より出ている回数が多いのだが。

 環境デッキの核パーツや汎用カードの殆どが禁止カードになっている為、プレーヤーのデッキ構築力、プレイング、各々のアイデンティティが存分に発揮される。色々なデッキと戦う事が出来るのが良い。

 一夏が部屋に戻ってくるまでの間、純一はスマホでカードの平均価格を調べながら、【Kozmo】デッキを作る事にした。

 

「う~ん……ノーマルカードはそれなりにあるけど、《ダークシミター》や《ドロッセル》等の主要カードが足りないな……ネットで注文するか、休日にカードショップ行って買うしかないかな? と言うかゴーキン禁止か……エクストラそんなに使わないから入れようか考えていたけど……」

 

 ちなみに純一は【壊獣】欲しさに『EXTRA PACK 2016』を購入したけど、【Kozmo】パーツのノーマルはある程度揃えていた。しかし、《ダークシミター》のようなキーカードの枚数が足りなかった。前途多難な始まりだったのは言うまでもない。

 




ここまで読んでくださり、大変ありがとうございます。
今回も後書きとして裏話・裏設定を書いていこうと思います。

・【Kozmo】デッキ

 私もつい最近になって再び『遊戯王』に復帰しましたが、それに合わせて主人公に使わせるなら何デッキが良いかな?と思って色々なサイトや動画を観ていたら、【Kozmo】デッキが目に入ってこのデッキにしました。
 私がかつて『遊戯王』に復帰して大会に出ていたり、フリー対戦をしていた時期が【ABC】の全盛期~《ハリファイバー》が初登場した頃になります。
 【Kozmo】デッキとは大会で対戦した事がありますが、《ダークシミター》がひたすら強かった印象があります。何とか2-1で勝てましたが……
 今は安く組める上に強いのが【Kozmo】デッキ。もう少ししたら出て来ます。

・企業や人物の元ネタ

 呉島高虎や仙谷竜馬は『仮面ライダー鎧武』に登場した人物が元ネタです。『KONNAMI株式会社』は『KONAMI』さんです。

・IS学園の特殊ルール

 殆どが初心者な女子生徒だったり、資金ゲーと呼ばれるTCGの格差を解消する為に、平均価格が1000円を超えているカードは使用禁止にしました。
 なので【青眼】は《亜白龍》を入れられなくなりました。《強欲で金満な壺》等ももちろん使用禁止に……ちなみに平均価格はトレカネット様を参考にします。

・各キャラの使うデッキ

 ぶっちゃけあんまり決まっていません。後でじっくり考えますが、アイディアがある人は遠慮なくお願いします。一人のキャラが複数テーマ使うのはOKです。
 リアリティも追及するので、ストラクチャーデッキ3箱だったり、初心者が使いやすいテーマや、安価で組めるデッキが中心になるかと思います。ただ【魔導書】とか昔環境を取っていたテーマも出そうか考えています。

以上になります。
次回は呉島社長によるプレゼンがメインになるかと。
次回をお楽しみに! LAST ALLIANCEでした!

p.s.皆さん。よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
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