Sensitive eyes   作:墓の上に座する者

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部屋から財布を持ってきて、寮のエントランスに向かう。

 

「絢、それにまほろも。今から出かけるの?」

 

千紗に呼び止められて、後ろを振り返る。大丈夫、おかしいのはテレビだけで、それ以外はいつも通りの寮だ。もちろん、千紗もいつも通りの千紗で、手には掃除機が握られている。

 

「電池がなくなっちゃったからさ」

「ちょっと買ってくる」

 

それを聞いた千紗は「あー、それは悠希のしわざね」と言った。詳しく聞けば、どうやら悠希と柚葉がラジコンヘリで遊んだ結果、電池の備蓄が底を尽きたらしい。

 

「ほんっと、しょうがないんだから」

「……ところで千紗、リビングのテレビ…何かおかしくない?」

「私は気が付かなかったけど、テレビがどうかしたの?」

「さっきから砂嵐が酷くて……。音もおかしいし」

 

さっき見たものを私は正確に伝わるように説明した。だけど千紗の反応はイマイチで、納得していないようだった。

 

「まほろは直接テレビについてるボタン押して電源を切ろうとしたんでしょ?それでダメなら電池は切れてないんじゃない?だから買いに行っても意味ないんじゃ……」

「確かにそうかもしれないけど……」

「ま、いいんじゃない?絢も怖がってるし」

「わかった。あとで私も一緒に見てあげるから、早く帰ってきなさいよ」

 

掃除しなきゃ、と千紗は言って掃除機を引きずって行く。

 

「それじゃあ千紗、いってきます」

 

と控えめに言って寮に背を向ける。まほろは門の方でもう既に待っていた。

 

「いつの間に移動したの?」

「さぁ……?」

「とりあえず行こっか」

 

近くのコンビニまでは歩いて数分程度。

そのコンビニはいつも昼間は気さくな雰囲気のパートさんがいて、夜は私と同じ歳くらいの男の子が眠そうに仕事をしている。彼は客が長居をしているとちょっと不機嫌そうにする。きっとやることが多いのだろう。よく見てるね、って思うかもしれないけど別に彼のことは気になってなんかない。たまたま目に入るってだけ。

でも、今はそんな話をしている場合じゃない。それにまだ昼間だった。

 

「……あった」

 

目的の単三の電池を手に取る。当たり前だけど在庫切れはしていなかった。

 

「そう。じゃ、さっさと帰ろっか」

「まほろ、他に要るものはない?」

「んー、特にないかな」

「私、お茶買っていくね」

「わかった」

 

手早く、と言うほど手早くもなく会計を済ませてコンビニを出た。ここが寮の外だからか、いつも通りの住宅街の静寂が広がっている。今日が平日の昼前だからか、公園には散歩の途中だと思われる老爺がベンチに腰かけているだけだった。

そんな公園の脇を通り過ぎて、寮まで帰ってきた。

玄関で靴を脱ごうとしたその時、耳に悲鳴が飛び込んでくる。

 

「今のって……」

「千紗の声かもね」

 

怯える私に対して、まほろは冷静だった。だけど、これはドッキリなんかじゃないってこの時からどこかで気がついていたのかもしれない。

 

「と、とにかく行かないと……」

 

嫌な予感がした。焦っていたのかもしれない。私は走った。短い距離ではあったけど。

声がした先にあった脱衣所の扉を勢いよく開けて中に飛び込む。

特に変わったものは見当たらなかったが、千紗がいた。私は千紗に声をかけようと近寄ったけど、どこか様子がおかしいことに気づいた。

千紗は酷く青ざめた顔をして、浴場へと続く引き戸のドアハンドルに手をかけたまま固まっていたのだ。

 

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