現金ドロップ型ダンジョン、"守銭奴の森"へようこそ! 作:非対称ジメチルヒドラジン
ヒュッ!
突如、地面に矢が突き刺さる!3本飛んできた!
ヤベッ!
おいおいそれは洒落になりませんぜ。
危険を察知した俺は、女神像の影に避難した。
ヒュッ!
女神像に矢が当たり、台座の一部が欠けた。
勘弁してくれよぉ..
それでも止まない矢の嵐。どこから撃たれているかすらわからない。一度リタイアしようか。そんな事が頭によぎった。
折れた矢が何本も降ってくる。鏃も痛そうなのが付いてる。これは喰らいたくない。
「リタイアしまあーす!」
声高々に叫んだ。恥もクソも無い。
[kill数はゴブリン26体、ゴブリン亜種6体、槍ゴブリン2体!払い出しは18,600円なり!またの挑戦をお待ちしております!]
ATMみたいな所から出てきた紙幣を残さず掴み取り、硬貨も全部ポケットに突っ込んだら、直ぐに風呂場に戻された。
ビビリ散らして帰ってきたこの無念さ。悔しい。
あの野郎やりやがったな。こうなったら戦争だ。
本物の殺戮兵器を持ち込んでやる。
テメーが死ぬのを見届けるまで俺は辞めねーからな。
悪意に満ち溢れた顔で、俺はその"兵器"を製造する。
通称"混ぜるな危険"。
塩素系漂白剤と酸素系漂白剤、禁断の融合。
発生するのは大量の塩素ガス。洒落にならない毒ガス兵器。吸い込まずとも皮膚に付着するだけで、皮膚が酷く爛れる。
ガスを吸い込んだら、肺が...恐ろしい。身が震える。
牛乳瓶に塩素系漂白剤をたっぷりとと注ぎ込み、蓋をする。更に別の牛乳瓶には、酸素系漂白剤をたっぷりと注ぐ。こちらにも勿論蓋をする。
最後にガムテープを何重にも巻き付けて、それら2つをしっかりと固定する。
完成。毒ガス爆弾。今ならガラスの破片付き。
地面に落ちると瓶が割れて中の液体が飛散、2つのタイプの漂白剤が混ざり合い、有毒ガスを発生させる。
これを敵に投げ込む。風向きが変わると地獄を見ることになるので、そうなった時はさっさと退散する。ミスると普通に人が死ぬ。
これを量産。持てる牛乳瓶全てに、ありったけの漂白剤を注ぎ込み、ガス爆弾を量産する。最終的に7セット完成させた。
出刃包丁も砥ぎ直し。刃がかなり欠けている。しかしこれには金属ヤスリをかけて、ある程度まで切れ味を回復させた。
更に防御兵器。丁度良い大きさのベニヤ板に取手を付けてネジ止めし、即席の盾にする。覗き窓をつけようと思ったが辞めた。面倒くさい。
これで再戦。舐めた野郎に地獄を味わわせる。
森だ。女神像だ。例の場所だ。
戻ってきたのだ。
「お願いしまーす」
殺戮。始めぇ。
「でゃりゃあああっ!!」
茂みが動いたのを、見逃さない。
毒ガス爆弾を全力投球。助走を付けて一気に投げる。
パリィンッ!
ガラスの割れる音。茂みのすぐ手前に落下した。
あーあ、死んだわアイツ。
冥土の土産にもう一発。収束牛乳瓶を投擲する。
今度は茂みに直撃。直後、中から黒い人影が飛び出して来た。黒いゴブリン。黒ゴブリンと言ったところか。
ガラスの破片をもろに浴びたのか、地面に転がり、バタバタとのたうち回る。フヘヘ、ざまあみろ。
近くの茂みにも牛乳瓶を投擲。
矢が飛び出した茂みに、漏れなくプレゼント。
女神像にベニヤ板シールドを立て掛け、即席の防御陣地を構成。安全圏からの無慈悲な爆撃。それは毒ガス爆弾が無くなるまで続けられる。
瓶が割れて、2種類の液体が混ざった事で、塩素ガスが発生。着弾地点に黄ばんだ煙が薄く、薄ーく立ち込める。
炙りだされ、バタバタと倒れる黒ゴブリン達。
自立出来る個体はわずかだ。トドメを刺しに行きたくても、ガスの影響で下手に動けない。
だが、あっという間に、黒いのは死んでゆく。
ガスの魔の手から逃れた個体も、ほぼほぼ自立不可能。直に死ぬ。
毒ガス爆弾は、当初想定した以上の数を殺傷した。
その数何と11体。全て黒い奴。つまり上位種だ。一匹当たりの単価はまだ分からないが、まあ安くは無いはず。一匹当たり10000円は出してもらわないと困る。
12体目の、恐らく最後の黒ゴブリンがぶっ倒れた所で精算タイム。これまでにない完全勝利だ。にしても毒ガス戦は楽だし大量に殺せる。これは正攻法を見つけちゃったかも。
ニヤニヤしながら精算を。女神像に申告。
「精算お願いしまーす」
[kill数は弓ゴブリン16体!払い出しは480,000円なり!またの挑戦をお待ちしております!]
おっと、更に4体潰してたみたいだ。
俺は紙幣受け取り口を覗き込んで、そして思わず笑った。
福沢諭吉大先生が48人。こりゃ大儲けだ。
笑いが止まらない。
俺はその札を掬い上げ、大事に大事に財布に仕舞った。
「オホホホホホ♪」
止まらない笑い。夢が膨らむ。
まるでアメリカンドリームだ。