現金ドロップ型ダンジョン、"守銭奴の森"へようこそ! 作:非対称ジメチルヒドラジン
緑の足音。草木に擬態して見えなかったが、今は違う。奴らの発する足音は束になり、一つの巨大な地響きとなって、俺に襲いかかってきた!その数軽く100は越える!
「塩素ガスを喰らええっ!」
バリィンッ!
大群の中に瓶を投げ込んだ。迷う事なく次々と、無慈悲な塩素ガスの霧を発生させる!
次々と倒れゆくゴブリン達。緑のばっかりだから報酬にも期待できない。それに数が多過ぎる。
今までで一番嫌な勝負だ。
5発目の瓶を投擲した所で、いよいよゴブリンが俺に近づいてきた、目と鼻の先まで迫って来ている。
確実に数は減らしているのに、それなのにこのザマだ。200体は確実に越えているだろう。
くうッ、おのれぃ。こうなったら自爆攻撃だ。
毒ガス爆弾を満載した台車をひっくり返し、全て斧で叩き割る。バリィッ!という鈍い音と共に中の液体が大量に溢れ出し、地面に漏れ出した!
液は混ざり、黄色く濁る。かすかに泡が出てきた。
斧で何度も何度も瓶の山を叩いて割る。
大量のガラスが割れる感触と共に、斧にもその液体が付着した。
「ウギャギャギャギャ!」
迫りくるゴブリンの群れ。やむなく応戦。
防護服に傷を付けさせてはならない!
俺が死んじゃう!
鋭利な斧で以て、緑の海を薙ぎ払う。
何体かは殺ったが、これではキリがない。
あー塩素ガスよ、早く効いておくれ。
ゴブリンの棍棒が防護服を掠った。
だが生地が強くてなんとか耐えた!
にゃろうぶっ殺してやる!
犯人を斧でぶった斬る。
あースッキリ。
突然。
ただでさえ狭い視界が、さらに黄色く曇った。
塩素ガスだ。割れた大量の瓶の分が来たのだ。
かなりの濃度だ。これはヤバい。
視界が効かなくなるレベルだ。
だが俺は勝利を確信した。防護服は幸いノーダメージ。ゴブリンをここであと少し、あと少しだけ喰い止めればあいつらは勝手に死んでゆく。
「デスクラッシャー!」
斧を振り回して歓喜の舞を。
勝利じゃあ!おめーら全員ガスで死ぬんだヨ!
三半規管を生贄に、強大な力を我に授けよ。
斧の感触が無くなるまで、体力尽きるまで、
俺は斧を振り回し続ける。
ガスマスクのせいで呼吸が苦しい。
体力が持たない。
思わず地面に倒れ込む。
目が回る。ふらつく。立ち上がれない。
まるで霧の中に吸い込まれるような気分だ。
視界が歪む。気分が悪い。吐きそうだ。
だんだん開かなくなる瞼に逆らうも叶わず、
目は勝手に閉じてゆく。
悔しい。悔しい。悔しい。
調子に乗って回り過ぎた。
これはしばらく立てないやつだ。
後悔先に立たず。俺は意識を手放した。
手放さざるを得なかった。