本章からもたまに視点替えを取り入れていきたいと思います。
説明を忘れていましたが、◇が場面切り替え、◆が語り手切り替えのサインです。
◇◇◇は、日付をまたぐ時のサインです。
第2章(非)日常編①
『僕も、叶さんの話が聞けてよかったよ。』
『私の美しさの前にひれ伏しなさい。』
「…。」
目が覚めた。
その直後、ベルさんの声が鳴り響く。
『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』
…そうだった。
昨日、学級裁判で疲れてそのまま寝たんだった。
たっぷり寝たらお腹すいちゃったから、朝ごはん食べないとね!
そうだ、今日は凶夜クンと一緒に行こう!
…あ。
…そうだった。
凶夜クンはもう、いないんだった。
お父さんには、前向きでいろって言われたけど、大事な友達を亡くした後じゃ、前向きになんてなれないよ。
ボクは、暗い気分のまま食堂に向かった。
◇
食堂には、星也クン、剣クン、治奈ちゃんがいた。
三人とも、昨日あんな事があったからか暗い顔をしていた。
このままじゃいけない、そう思ったボクは元気に挨拶をした。
「おはよ!」
「…うん、おはよう。狛研さん。」
「おはようございます、狛研殿。」
「おはようございます。」
三人とも、表情は暗いままだったけど、挨拶を返してくれた。
「陽一クンは?」
「栄さんは、今厨房で朝ご飯を作っています。」
「そっかぁ。…それにしても、みんな来るの早いね!」
「私は、普段5時に起きて修行をしますからね。」
「僕は、朝早くにめざますテレビのスタジオに行かなきゃいけなかったからねぇ。3時起き4時起きは当たり前だったよ。」
「へぇ〜…ボク、その時間は寝てるかなー。治奈ちゃんは?」
「えっと…いつもは6時起きですかね。」
「ふーん。やっぱみんな朝早いね!」
そんな話をしていると、雪梅ちゃん、柳人クン、ゐをりちゃんが来た。
「オハヨーございます、皆サン。」
「おはよぉ、みんな。」
「………………。」
三人とも、元気がなかった。
「おはよっ!」
「あれ?狛研君がいるのかい?珍しいね。いつもオイラより遅いのに。」
「うん。今日は、早く目が覚めちゃって!」
「そっかぁ。」
「叶サン、元気ですネ。」
「そうかな?」
「…………。」
時間ぴったりに、成威斗クン、ラッセクン、才刃クン、踊子ちゃんが来た。
「…おはよう、お前ら。」
「…おはよ。」
「フン。」
「…。」
成威斗クン、踊子ちゃんは元気がないながらも挨拶をしてくれた。
ラッセクンと才刃クンは黙ったままだった。
そして、集合時刻に遅れて天理クンと彩蝶ちゃんが来た。
「ふわぁ〜…ねみー。ほはよぉ、みんなぁ。」
「…おはよう。」
天理クンは、あくびをしていた。
彩蝶ちゃんは、元気が無さそうだった。
陽一クンが、厨房から出てきた。
「おはよう、二人とも!うん、これで全員揃ったね!!あ、陽一クン!おはよー!」
「お、おう…おはよう、狛研ちゃん。」
陽一クンは、戸惑いながらも挨拶を返してくれた。
「ねえ、今日の朝ごはん何?」
すると、踊子ちゃんが不機嫌そうな顔で言った。
「…ねえ、カナエ。アンタさぁ、やけに元気だね。昨日あんな事があったのに。」
「うん、わかってるよ。でももう終わった事じゃん。ボク達は、二人の死を乗り越えて生きていかなきゃ。」
「なっ…!何よそれ…!アンタ、二人が死んだ事、何とも思ってないわけ!?ちったぁ空気読めよ!!」
「そうですヨ!叶サン、元気すぎまス!おかしいでス!」
「かなえちゃん、なんでそんなに平気でいられるの…?」
踊子ちゃん、雪梅ちゃん、彩蝶ちゃんに責められた。
「かなえちゃんは、きょうやくんとれいみちゃんが殺されちゃって、何も思わなかったの!?ひどいよ!この人でなし…」
「やめろ!!!」
声を上げたのは、成威斗クンだった。
「俺、バカだから難しい事はよくわかんねェけどよ…でも、これだけは俺にもわかるぞ。叶は、俺達のために無理して元気なフリしてんだよ!!」
「アタシ達の…ため…?」
「…狛研さんは、お二人が亡くなって傷ついた私達に生きる気力を与えるために、自分は元気に振る舞っているんです。」
「叶が二人の事をなんとも思ってないわけないだろ!!叶の事を悪く言うヤツは、俺が許さねェ!!」
「…ありがとう成威斗クン。」
「いいって事よ!お前が仲間の事を考えてるヤツだって事は、俺がちゃんとわかってっからよ!」
「うんうん、ありがとう狛研君。君のおかげで、オイラも少し元気が出たよ。」
「リュウト…アンタ、気付いてたの?」
「まあね。狛研君の心の音は、爆発しそうなものを押さえ込んでるような音だったからね〜。」
「そっか…カナエ、ごめんね。アンタはアタシらの事まで考えてくれてたのに、アタシは自分の事ばっかで…」
「ゴメンナサイ、叶サン。」
「かなえちゃん、さっきはあんな事言っちゃってごめんね。ひどいのはわたしの方だったね。」
「いや、そんな…」
「ふわぁ…なーんか、眠くなっちゃいそうな茶番劇だねェ。どうでもいいから早く食べようよ。冷めちゃうよ。」
「なっ…!財原、テメェ!!」
「オマエ、ホントにサイコパスだな!財原!!」
「コイツの味方をするわけではないが、貴様ら、くだらない事に時間を割くな。1日にどれだけ人が死んでいると思ってるんだ。今更1人や2人死んだからってガタガタ騒ぐな。」
「王様!オマエもサイコパスだったのか!!」
「俺をこんな成金と一緒にするな。俺はただ事実を言ったまでだ。」
「テメェ…!!」
「みんな、一旦落ち着いて。ケンカしたって、何の解決にもならない。そうだろ?」
「…チッ。」
星也クンの一言で、みんなケンカをやめてご飯を食べ始めた。
…やっぱ、星也クンはすごいや。ボクも見習わなきゃ。
◇
「どうぞ。」
「ありがとう。」
…ふぅ。
やっぱり、治奈ちゃんが淹れてくれたお茶はおいしいね。
『うっぷぷ!オマエラ、朝ごはんはおいしかった?』
「この耳障りな声は…」
『やっほー!!』
『フッフッフ!!ご機嫌麗しゅう囚人の皆様!!』
クマさんとベルさんがいきなり飛び出してきた。
「…失せろ。不愉快だ。」
『わっ!ラッセクンったら、辛辣ゥ!!』
『フッフッフ。最近の若者はこれだから…おや?ところで、アナタ達、いつもより元気が無いんじゃありません?』
「…テメェらのした事は絶対許さねェかんな。」
『えー。そんな事、ボク達に言われてもねェ。ボク達はただ、この学園のルールに従って殺人犯を罰しただけなんだけどなー?てかさ、オマエラ、景見クンを殺したのは白鳥サンだって事忘れてない?』
「だから何?全部アンタ達の差し金だろうが!!」
『おやおや。いけませんよ羽澄様。女子がそんな下品な口調で話しては。』
「うるせェ黙ってろ!!」
『おお、こわいこわい。』
「…で?君は、僕らに何か用があるから来たんだろ?さっさと用件を済ませて、視界から消えてくれないかな?」
『穴雲クンまで!みんなひどいや!せっかく、オマエラにいいものをプレゼントしてあげようと思ってたのに!』
「どうせロクでもねーモンなんだろ?」
『いやいや!オマエラも、きっと気にいると思うよ!』
『フッフッフ。皆様、校舎用エレベーターの前にいらしてください。』
校舎用エレベーター…一体、何があるっていうんだ?
◇
【エレベーター前】
『うぷぷ、オマエラ、何か前と変わったところがあるのに気がつかない?』
「…もしかして。」
「うん、多分そうだろうね。」
ボクと星也クンは、エレベーターに乗った。
「…やっぱり。3階に行けるようになってる。」
『フッフッフ。ささやかながら、ワタクシ達からのプレゼントです。裁判を頑張った皆様のために、新たなエリアを開放しました。』
「へー。もしかして、また誰か死んだらまた上の階開放してくれんの?」
『うぷぷ…気になるなら、そこら辺にいる誰かを殺してみたら?』
「いや、俺はいいよ。おしおきなんてごめんだからねー。あーあ。誰か、俺以外の奴を殺してくれねーかなー。」
「テメェ、このクサレ外道が!!」
「さーてと。一応マップも確認しないとねー。」
「無視すんな!!」
天理クンに言われて、マップを確認してみた。
…今回解放されたのは、図書室と映画館と生物室か。
それから、研究室が4つ解放されてるな。
今度こそ、ボクの研究室があるといいな…
「ねえ、用件はそれだけかい?だったら、早く消えてくれるとありがたいんだけど。」
『わーん!どいつもこいつもクマあたりとトラあたりがキツいよー!!』
『フン!失礼ですね、アナタ達!用件はそれだけですが、それが何か!?』
「なんか逆ギレしてますネ…」
『ふーんだ!!もういいよーだ!!みんなのバカ!もう知らない!』
『フッフッフ。ご機嫌よう皆様。』
クマさんとベルさんは、不機嫌そうに帰っていった。
「あーあ、朝から嫌な物見ちゃったねぇ。」
「みんな、それより探索の話をしよう。」
「そだねー。」
「…フン。」
「今回も、ボクが今担当を考えたから、見てほしいんだけど。」
図書室…財原君、国王陛下、僕
映画館…入田君、舞田君、不動院君
生物室…栄君、朱さん、羽澄さん、日暮さん
研究室…神座さん、狛研さん、詩名君、癒川さん
「うっひょー!!ウハウハハーレムじゃねえか!!」
「…陽一、ヘンタイな事したら半殺しにシマス。」
「くっ…オレが朱ちゃんと同じグループにされるのは、もはや定めなのか…」
「何カ問題でモ?」
「い、いえ…」
「ようこちゃんと一緒だ。よろしくね、ようこちゃん。」
「ピィ!」
「ああ、よろしく、アゲハ。」
「栄クンはまだいいじゃない。俺のグループ、野郎しかいねーんだけど。至極残念なりー。」
「財原君。君の事は僕が見張る。変な動きをしたら、どうなるかわかるよね?」
「…おお、怖い怖い。」
「フン。」
「柳人クン、また同じグループになったね!」
「うん。またまたよろしくね、狛研君。」
「よろしくお願いします、皆さん。」
「………………………………幸運、詩人、看護師。」
「フン!オマエラ、僕ちゃんと同じグループになれてラッキーだったな!!」
「よろしくお願いします、舞田殿。」
「おう!よろしくな、剣!」
「聞けよ!!」
「それじゃ、担当は決まった事だし、探索を始めよう。12時に食堂に集合でいいかな?」
「いいよー!じゃ、解散ー!」
ボク達は、それぞれの持ち場を調べた。
◇
【内エリア 3F】
「わぁ、3階も広いねぇ。」
「あの、皆さん。この研究室、誰の研究室でしょうか…?」
治奈ちゃんが指を差したのは、ガラス張りで、ネオンサインで装飾が施されたドアだった。
「ボクの研究室かな!?」
「……………絶対ちがう。」
「えぇ〜?そうかなぁー。」
「とりあえず、中に入ってみないかい?」
「…そうですね。」
ボク達は、研究室の中に入ってみた。
「…わぁ。」
部屋は少し薄暗くて、てっぺんにミラーボールがあった。
真ん中の台が少し高くなってて、端っこによくわかんない機械とかが置いてある。
「なんだろうね、これ…」
「ミラーボールにダンスステージにDJ機材…多分、【超高校級のダンサー】の研究室ですね。」
「踊子ちゃんの?へえ、道理でカッコいいわけだ!…あ!」
クローゼットの中には、キラキラした衣装とかボロボロの服とか、いろんな服が入っていた。
「わっ!オンボロ!」
「それ、ダメージジーンズですよ。わざと傷をつけるのがおしゃれなんだそうです。」
「ふーん。変なの。」
「うんうん、音の反射で大体どんな部屋なのかは把握したよ。まるでディスコみたいな部屋だねェ。」
「ディスコ?え、何それ?チョコレート?」
「P●rfumeじゃないですかそれは。ディスコというのは、一種のダンスホールの事です。」
「へー。そうなんだ。治奈ちゃん、そういうの詳しいね。興味あるの?」
「…いえ。たまたま知っていただけです。」
治奈ちゃんが、少し視線を右下にずらしたような気がした。
「…。」
「どうかなさいましたか?」
「ううん?なんでもない。」
気のせい、だよね。
「うん、探索も終わった事だし、そろそろ行こっか。」
ボク達は、踊子ちゃんの研究室を後にした。
◇
研究室はあと3つか…
次は、誰の研究室かな?
そろそろボクの研究室だったりしないかな!?
「……………?」
ゐをりちゃんが立ち止まったのは、中華風の装飾が施されたドアだった。
赤い扉に、金色の花や龍がデザインされている。
「…ああ、はい。」
ちょっと、治奈ちゃん!?
なに一人で納得してんの!?
誰の研究室か気になるんだけど!!
ボク達は、研究室の中に入った。
「…わぁ。」
部屋には、大きな舞台があった。
後ろには幕があって、映像が映し出せるようになってるらしい。
サーカス用の小道具とか、豪華な衣装とかが置いてある。
「…この雰囲気は、間違いなく【超高校級の曲芸師】の研究室ですね。」
「雪梅ちゃんの?ボクの研究室じゃないのかー。」
「………幸運、私も………研究室、ない………」
「あ、そっか。ごめん。」
そういえば、ここにいるみんなはまだ自分の研究室を見てないんだったね。
おっ!
「探索も終わった事ですし、そろそろ次の研究室に行きましょう。」
「そうだねぇ。」
「………ん。」
「ねえ見て!皿回し!」
「なっ…!狛研さん!!何やってるんですか!!」
「いつもより多く回してるよ〜!」
「落として割ったらどうするんですか!それは朱さんの研究室の物ですよ!?」
「大丈夫だって!…あっ!」
やべっ!
手が滑っちゃった…!
「きゃっ!!」
「なんの!」
ボクは、ギリギリお皿をキャッチした。
「ね?大丈夫だったでしょ?」
「結果論じゃないですか!!もう出禁にしますよ!?」
「出禁はやだー!治奈ちゃんのいじわる!!」
「い、いじわ…!?」
「うーん、これ以上は収拾つかなくなりそうだから、そろそろ次の研究室行こうよ。」
「そうですね。ほら、行きますよ狛研さん。」
「ぶー。」
ボク達は、雪梅ちゃんの研究室を後にした。
◇
「次は、この研究室ですかね…」
治奈ちゃんが指を差したのは、木製のドアだった。
小鳥やうさぎの絵が描かれていて、ドアがブドウのツルで装飾されている。
「この可愛らしい研究室は…」
「ボクの研究室かな!?」
「狛研君。違うと何度言ったらわかるんだい?」
「だってー。」
「………………入る。」
「あ、はい。そうですね…」
ボク達は、研究室に入った。
「わぁ…」
部屋の中には、いろんな種類の植物があった。
動物のエサとかおもちゃとかもあって、動物用の薬とかも置いてある。
部屋に置かれた本棚の中身は、全部生き物に関する本だ。
「すごいですね、生き物の生態を見るためのプロジェクションマッピングまであるんですか。…これは、【超高校級の生物学者】の研究室で間違いなさそうですね。」
「ちぇっ、またボクの研究室じゃないのかー。」
「……………しつこい。」
「うっ。…あ、このキャットフード、今人気のやつらしいよ!前に友達が言ってた!」
「ええ、栄養バランスも優れていて、今一番買うのが難しいキャットフードらしいですね。噂によると、人間にとっても美味しいからふりかけにしてしまう人までいらっしゃるそうで…」
「へー。(ペロペロチュー」
「狛研さん!勝手に触るなって言いましたよね!?日暮さんに怒られちゃいますよ!あと、美味しいからって食べないでください!そもそも人間用の食べ物じゃないんですから!」
「はーい。」
「そう言いながらちゃっかりネコババしようとしてるじゃないですか!いい加減にしてくださいよ!」
「ごめんなさーい。」
「うん、予想はしてたよ。狛研君ったら、また何かやらかしたんだね?」
「日暮さんの研究室に置いてあったキャットフードを食べちゃったんです!」
「…うん、想像以上に頭おかしかったよ。もう不思議ちゃんってレベルじゃないねェ。」
「いやいや!頭おかしくないから!そこにおいしそうな物があったから試しに食べた!それだけ!」
「それを世間一般では頭おかしいって言うんですよ、狛研さん。」
「でもほら!毒が入ってるかもしれないじゃん?毒見だよ毒見!」
「狛研さんがやっても意味ありません。さ、これ以上部屋を荒らす前に、次に行きましょう。」
「ほーい。」
ボク達は、彩蝶ちゃんの研究室を後にした。
◇
次が最後か…
「今度は和室かぁ…」
ボクの目の前にあるのは、木製の引き戸だ。
「………。」
「ゐをりちゃんの研究室かもね!」
「狛研さん。次研究室の物で遊んだら、私本気で怒りますよ。」
「うっ…」
「とりあえず、中に入ろうよ♪」
「そうですね…」
ボク達は、研究室の中に入った。
「へぇ…」
中は、和室になっていて、掛け軸とか水仙の花とかがあった。
奥の方には庭があって、えっと…なんだっけあれ。カポーンって鳴るやつ!も、置いてあった!
「ししおどしね。」
「あ、ししおどしって言うんだ。ありがと柳人クン。」
「…………私の、研究室…?」
「ええと、すみません神座さん。多分違うと思います。剣の稽古用のスペースや刀の研ぎ石があるので、おそらく【超高校級の侍】の研究室かと。」
「………。」
「す、すみません…!気分を害してしまいましたよね、すみません、すみません…!」
「…治奈ちゃん。」
「あっ…」
治奈ちゃん、また謝り癖が出ちゃったんだね。
お!
「さて、探索は一通り終わりましたし、そろそろ報告に…」
「ねえ見て!お茶淹れる道具があるんだけど!」
「狛研さん!!いい加減にしてください!!」
「いいじゃん。ちょっとだけ!ね、いいでしょ?」
「ダメです!あなたの研究室じゃないんですよ!?」
「………あの、幸運。」
「いいじゃーん!剣クンはここにいないんだしさ!」
「うーん、狛研君。その不動院君なんだけど…今、君の後ろにいるよ。」
「へ?」
振り返ると、剣クンがボクの後ろに立っていた。
「…嫌な予感がしたから急いで来てみれば… 狛研殿、貴女という方は…!」
「剣クン!そんなに怒らないでよ!今、捜査中なの!あ、そうだ。剣クンもお茶飲む?」
「狛研さん、それ、逆効果です。」
「… 狛研殿、私、初日に言いましたよね?人の研究室の物に触るなと…」
「えっと…」
「どうやら貴女にはきついお仕置きが必要なようですね。」
「うん、オイラ達は今のうちに逃げよう。」
「そ、そうですね…」
「……………。」
「え、ちょっと待って。剣クン、お仕置きって…ボク一体何されるの?」
「反省しなさい!!」
◇
その後、30分くらい正座のまますっごく苦いお茶を飲まされた。
おかげで、足が痺れてまともに立てない。
「ひーん…」
「次同じ事をしたら、今度は1時間正座させますからね。」
「そんなぁ…」
「…さて、無駄話はこの辺にして、そろそろ報告に参りましょうか。」
「そ、そだね…」
「既に入田殿と舞田殿は食堂にいます。私達も急ぎましょう。」
ボク達は、食堂に向かった。
◆
ー数時間前ー
みんな、ちゃんと探索進めてるかなぁ。
ちょっと嫌な予感がするんだけど…特に狛研さんあたりが。
「ねえ、穴雲クン。何やってんの?早く入ろうぜ?」
「そうだね。ごめん。」
ここが図書室か…
ガラスの引き戸に本の絵が書かれていて、いかにもって感じだな。
とりあえず、中に入ってみよう。
「…!」
予想の1ランク、いや2ランクは上だった。
「うっほぉー!!広っれぇー!!」
「…俺の国で一番広い図書館より広いな。」
「うわ!マジか!漫画コーナーまであんのかよ!!」
「…財原君。図書館内では静かにね。」
「しいましぇーん。」
『うぷぷ、全くだよ。図書館内では静かにって小学校で習わなかったの?人としての常識だよね?』
「…モノクマ!」
「あ、クマちゃん。」
いきなりモノクマが本棚の影から飛び出してきた。
「…貴様、一体何の用だ。」
『わっ!ラッセクンってば、なにその目!怖いんですけどー!』
「無駄口を叩く暇があるならさっさと要件を話せと言っている。早くしろ、時間の無駄だ。」
『ちぇっ、そんなにツンケンしなくていいじゃん!ボクは、この図書室の説明に来たの!』
「…説明?」
『そ!この図書室、ボクが言うのもなんだけど、かなり広いでしょ?だから、読みたい本をすぐに探せなくてストレスだったりする事もあるかなぁって!そこで!キミ達に朗報です!』
「朗報?」
『ほいっ!』
モノクマがパチン、と指を鳴らした。
ヴーーーーーーーーーーーーッ
手帳が鳴ったので確認すると、新しいアプリが増えていた。
「何これ?」
『『ライブラリ機能』です!その機能を使って検索をかければ、読みたい本がすぐにその受け取りボックスから出てくるよ!ここには、古今東西ありとあらゆる本が置かれてるから、読みたい本があればほぼ100%出てくるよ!』
「へー。例えばこんなのとか?あポチッとな。」
財原君が手帳をいじると、ボックスから変な音が聞こえた。
そして、ゴトっと何かが落ちる音が聞こえた。
「何したの?」
「試しに本を一冊注文してみたんだよ。ジャーン!やっぱり出てきた!」
財原君は、ボックスからエロ本を取り出した。
「何やってんだよ君は!!真面目に探索しようよ!!」
「え、だってあったんだもん。」
「あったんだもん、じゃないだろ!っていうか、こんなもの置いてる方も置いてる方だよ!!モノクマ、これは一体どういうつもり…」
「アイツ、説明終わったからってそそくさと帰っていったぞ。」
「なっ…!都合悪いところは説明しないつもり!?ホントに、あのクマは…!」
全く…どいつもこいつも、油断も隙も無いよ!
◆
ー数時間前ー
私達は映画館の探索ですか…
…ここが映画館ですね。
「うむ!まるでシネマみたいな造りなのだ!!」
「死ね…?いけませんよ入田殿。そんな乱暴な言葉を使っては。」
「む!?オマエ、何か勘違いしてるな!?シネマも知らないのか!映画館の事だよ!」
「あ、そうなんですね。失礼しました。」
ゴチンッ
「んあっ!?痛ってェ!!」
「おや、舞田殿、どうかしましたか?」
「ん?ああ、この廊下、奥が鏡になってるのに気づかなくてよ。鏡にぶつかっちまったんだよ。」
「フン、おそらく、部屋数が多いように見せるために突き当たりの壁が鏡になってるんだろう。全く、セコい発想だ。」
16部屋あるように見えたのですが…実際には、8部屋しかないみたいですね。
…なんか、内装が“はいから”な感じがしますね!
「…不動院。オマエ、心なしかワクワクしてないか?」
「へ?」
「フン、まあいいのだ。とにかく、部屋を調べるぞ。」
「おう!!」
私達は、映画館の中を調べてみました。
「フンッ、どこの部屋も似たような感じだな。だがどの部屋も、14席しかないな。」
「そうだな。見たとこ、それ以外は普通の映画館だよな?」
「わぁあ!見てくださいお二人とも!大きな画面です!椅子もフカフカで…これが“映画館”なのですか!?」
「お、おう…剣、お前、映画館行った事ねェのか?」
「はい!あの、入田殿!これは一体何ですか!?」
「…ポップコーンを入れるためのカップホルダーだ。」
「なるほど、玉蜀黍の炒り菓子ですか!俗世間にこんなに素晴らしい物があったとは…!」
「不動院!!」
「あっ…」
「…今は探索中だ。真面目にやれ。」
「…ゴホン、失礼しました。」
私とした事が、つい燥いでしまいました。
「ところで、一つ気になった事があるのですが。」
「気になった事?なんだ、剣?」
「映画を見るには一体どうしたらいいのでしょうか?」
「えぇ?お前、んな事も知らねえのか?チケットを買えば、俺らは何もしなくても、勝手に上映されんだよ!」
「…いや、何もしなくても上映されるというわけではなさそうだ。チケット売り場や上映時間のリストが無いからな。そこの所、ちゃんと説明してもらおうか!?モノクマ!」
『やっほー!呼ばれて出てきてなんとやら!え?なになに?映画の見方がわかんないって?』
「曲者!!」
『わわわっ!?ちょっと、やめてよ不動院クン!ボクは、この学園の学園長なんだぞ!別に不審者ならぬ不審クマじゃないクマ!』
「フンッ!で?映画を見るにはどうしたらいい?」
『うぷぷ!まあまあ、そう急かさないでよ!』
白黒熊が指を鳴らすと、私達の手帳が鳴りました。
「むっ!?なんだこの新しいアプリは!」
『それは、『シアター機能』です!見たい映画と時間を選択すれば、自動的に空いてる部屋で上映が行われるよ!ただし、一度に上映できるのは8部屋までだから、みんなで仲良く使ってね!』
「フンッ、なるほどな。…なんと。ポルノ映画まであるのか。どうなってるんだ。おい、ちゃんと説明しろ…」
「才刃。あのクマ、もう説明終わったからって帰ってったぞ。」
「フンッ、あくまで都合悪い事は説明しない気か。」
お二人は何の話をなさっているのでしょうか?
…ん?何か嫌な予感が…
「あの、お二人とも。探索は終わった事ですし、先に食堂に向かっていていただけませんか?」
「んお?なんでだ?なんかやり残した事でもあんのか?」
「…少し、気になる事が。すぐに終わりますので、ご安心を。」
「フン、余計な詮索は野暮だろうな。いくぞ舞田。」
「お、おう…」
…この気配は、向こうの部屋からですね。
最悪な事になる前に、急いで向かわねば!
◆
ー数時間前ー
【生物室】
…あーあ、せっかくウハウハハーレムだと思ったのに…
朱ちゃんに睨まれて、何もできねェよ…
「むっ!?(ギロッ」
何もしてないのに睨まれたんだけど…
「プレパラートに、顕微鏡…うん、設備は充実してるね。」
「人体模型モありますヨ!」
オレの中学校の生物室の10倍は広いな。
「ねえ、見てこれ。デッカい水槽があんだけど!水族館かよ!」
「ホントだ。デケェな。」
生物室の壁一面が水槽になってんな。
横幅はざっと20m、高さ10m、幅10mか。
いろんな種類の魚がいて、海藻とかも生えてんな。
「熱帯魚もいるね!かわいい〜!」
「美味そうだな…」
「よういちくん!?」
「…冗談だよ。」
『フッフッフ。どうです?この学園の自慢の生物室は。』
「あっ…!テメェは…!」
後ろからいきなりクソトラが出てきやがった。
『おお、こわいこわい!ワタクシはただ、この生物室の説明に参っただけですのに!』
「せつめいー?」
『はい!実はですね。この水槽は、水温や水量、水の鮮度などを全てAIが管理しているのです!』
「そうなの?」
『はい。ちなみにですが、上の小部屋には、水槽を管理するための管理室がございます。水槽上部のフタを開ければ、中の魚や海藻を獲る事も可能です。』
「マジか!食えんのか!」
「よういちくん!」
「ピィ!ピィピィ!!」
「だから、冗談だって。そんな怒んなよ。」
「アンタ、目がマジだったよ。」
『フッフッフ。気に入って頂けたなら何よりです。おっと、言い忘れるところでした。皆様に、ひとつ注意事項をお教えしておきましょう。』
「あぁ?」
『実はこの管理室、夜時間中は鍵がかかります。』
「じゃあ入れないね。」
『そうではございません。こちらをご覧ください。」
モノベルは、管理室の隣にあった、窓の部分に鉄格子がはめられたドアを開けた。
『こちらは、生物室を厳重に管理するための鍵が揃った保管室でございます。夜時間中に管理室に入りたい場合は、ワタクシ共にお声がけください。そうすれば、保管室の鍵を開けて直接鍵を渡して差し上げます。』
「なんで最初から保管室を開けといてくれないの?」
『フッフッフ。アナタ達の事です。そんな事をしたら、鍵を失くしたりネコババしたりするでしょう?ワタクシ達には、鍵を管理する義務がございますゆえ。』
「へぇー。」
『それでは、説明は大方終わった事ですし、ワタクシはこれにて失礼します。』
「おう!どっか行っちまえ!」
『おやおや。つれないですねえ。』
モノベルは、ぶつくさと文句を言いながら去っていった。
「ねえ、とりあえず、探索は終わったし報告行かね?」
「お、そうだな!」
うっし!とりあえず、探索結果はまとめといたし、報告に行くか!
不思議系主人公って、難しいんですよね。
感性が人とはかけ離れてるためあんまり心象描写ができないので、結局はセリフの量が多くなってしまうんですよ。でも、乗り掛かった船だ!完走すっぞ!
作者の中で少しずつ株が上がりつつあるキャラ1人目癒川ちゃん。
謝り癖があったり、想定外の事態に弱かったりと、脆そうなイメージですが、生活力が高かったりツッコミ不在の時は積極的にツッコミに回ったりなど、案外しっかりした子です。
2人目ロングパスタ…もといラッセ様。
冷たい人物に思われがちですが、あくまで極度な合理主義者というだけです。そのため、他人の意見をバッサリ切り捨てるというわけではなく、理にかなっていればそれなりに聞く耳は持ってくれます。