第3章(非)日常編①
『もしここから出られたら、アンタにも見せてあげるよ。超一流のダンサーになったアタシのダンスをね。』
『ダメだよきみ達、ケンカなんかしちゃ!翠が泣いてるよ!』
『あげは、私、かなえちゃんの事、大好き。』
目の前に、2人と翠ちゃんがいた。
奥の方には、凶夜クンと隥恵ちゃんがいる。
「…みんな。」
そうだ。
本当は、誰も死んでなかったんだ。
学級裁判なんて…おしおきなんてなかった。
ボクは、踊子ちゃんの腕を掴んだ。
「…?」
踊子ちゃんの手は、ありえないくらい湿っていた。…いや、濡れていた。
ゴトッ
嫌な音がした。
掴んでいた腕が落ちて、それにつられるように首ともう片方の腕も落ち、踊子ちゃんの身体はその場で崩れた。
「…え。」
周りをよく見てみると、隥恵ちゃんと彩蝶ちゃんがいた場所には血溜まりができていた。
凶夜クンはお腹に包丁が刺さったまま立っていた。翠ちゃんは、ボコボコで気持ち悪い怪物になっていた。
「ひっ…!!?」
ボクは、走って逃げた。
振り返らずに、ひたすら走った。
後ろがどうなっているかなんて、考えたくもなかった。
「あっ。」
いきなり後ろから足を掴まれて転んだ。
「…え?」
振り返ると、踊子ちゃんの手がボクの足首を掴んでいた。
踊子ちゃんの首が転がってきて、言った。
イカナイデ
「…!!」
あたりを見回すと、そこは独房だった。
「…夢か。」
『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』
…そうだった。
あの後、すぐに解散して寝たんだった。
…朝ご飯までまだ時間あるし、散歩に行こう。
◇
【超高校級のダンサー】の研究室
研究室は、前より広くて暗い感じがした。
…もう、踊子ちゃんはいないんだもんね。
ごめんね、踊子ちゃん。
何もしてあげられなかったね。
…助けてあげられなくてごめんなさい。
でも、ボク達はキミの分まで生きてここから出てみせるから。
だから、どうか見守っていて。
ボクは、踊子ちゃんの写真の前で手を合わせた。
「…さてと、次は彩蝶ちゃんの部屋だね。」
◇
【超高校級の生物学者】日暮彩蝶の研究室
可愛い雰囲気の研究室は、なぜか無機質で冷たい感じがした。
…彩蝶ちゃんがいない。
もう、この世のどこにもいない。
ボク達は、とっても大事な人を失ってしまった。
「…あ。」
翠ちゃんの家の中には、翠ちゃんの羽根が落ちていた。
まだ翠ちゃんが生活してた痕がある。
翠ちゃんの温もりが残っている。
容器に入っているご飯も食べかけだ。
…裁判から帰ってきたら食べるつもりだったんだろうな。
「…あれ?」
おかしいな…何があっても笑顔でいようって決めたはずなのに。
拭っても拭っても、涙が次から次へと溢れて止まらない。
…やっぱり無理だよ。
友達を失って、平気でいられるわけがない。
「…彩蝶ちゃん、翠ちゃん。裁判ではひどい事言ってごめんね。ボク、絶対みんなで生き残るから。」
ボクは、回収したちょうちょの髪留めを握りしめて言った。
…そろそろ時間だ。食堂に行こう。
◇
【食堂】
「…みんなおはよう。」
食堂には、星也クン、剣クン、雪梅ちゃん、柳人クン、ラッセクン、成威斗クン、才刃クン、ゐをりちゃんがいた。
やっぱりみんな見るからに元気が無かった。
「…おはよう、狛研さん。」
「おはようございます。」
「おはようゴザイマス。」
「おはよう。」
「…フン。」
「ああ、おはよう叶。」
「オマエも珍しく遅いな。」
「………………。」
「…あれ?」
おかしいな。
治奈ちゃんがいない。
いっつも早く来るはずなんだけど…
「ピィ!ピィピィ!」
…この声は。
翠ちゃ…
振り返ると、そこには翠ちゃんそっくりのぬいぐるみがあった。
治奈ちゃんは、そのぬいぐるみを右手に持って、後ろに立っていた。
「…おはようございます。…びっくりしましたか?」
「治奈ちゃん…それ…」
「…はい、昨日夜なべして作ったんです。皆さんの心の穴を埋めるために私ができる事は、これくらいしかないと思って…」
「そっか。治奈ちゃん、翠ちゃんの事大好きだったもんね。」
「…ええ。ここにこうやって置いておけば…翠さんが戻ってきてくれたような気がしませんか?」
「そうだね。」
「………かわいい。」
ゐをりちゃんは、ぬいぐるみの翠ちゃんを撫でた。
「ありがとう、癒川さん。君のおかげで平和が戻ったよ。」
「いえ、そんな…」
「お前ら、飯出来たぞーって。え!?日暮ちゃんのインコじゃねえか!?え、生きてたの!?嘘だろぉお!?」
厨房から出てきた陽一クンがオーバーリアクションをした。
「フン、マヌケめ。ただのぬいぐるみなのだ。」
「…あ、ごめん。」
「グーテンモルゲン、アラーシーツ!!あ、みんなおはようって意味ねー?」
天理クンが、のこのこと食堂に入ってきた。
みんなは、天理クンを睨んでいた。
「え?なに?みんなどったん?あ、なんで今ドイツ語で挨拶したんだよって?気分だよ気分!はー、ねっみー。」
「テメェ、何しにここに来やがった!!」
「え、何って?メシ食うためだけど?それとも何?ここメシ食う場所じゃねえの?じゃあ何?便所?」
天理クンは、わざとらしくとぼけた。
「テメェに食わせるメシは無ェ!!とっとと出てけ!!」
「ひどーい。俺、なんでそんなに嫌われてんの?」
「とぼけるなよ。裁判中、あんな最低な事をしておいてさぁ。」
「最低?何が?あ、冷めちゃうから食べるね?いただきまーす。」
天理クンは、勝手にテーブルの上のご飯を食べ始めた。
「マジかよコイツ…引くわ…」
「…財原君。確かに、君のおかげで僕達は真犯人を特定できた。だけど、やり方が良くないよね?あれじゃあモノクマと同類だよ。」
「いや、クマと人間様を一緒にすんなし。っていうかさ、なんでキミ達アイツらの事を庇うわけ?日暮サンは殺人犯で、翠ちゃんは窃盗犯だったんだよ?俺なんかより100京倍酷くね?」
「日暮さんや翠さんの罪と、あなたが彼女達にした非道な仕打ちは関係ありません!彼女達に謝ってください!」
「やだ。死人に謝るなんてバカバカしいよ。それに俺は悪くないからねー。」
「テメェ、このクズが!!」
「はいはいドクズで結構。あ、このぬいぐるみ何?」
「…うるせぇ。これ以上口を開くんじゃねえ。」
「えぇ〜。このままにしておいたら、お腹空かしちゃってかわいそうだよぉ〜。そうだ。ほら、皿に残ったカレールウをお飲み。」
天理クンは、お皿の上のルウを翠ちゃんで拭いた。
ピシャッ
治奈ちゃんが、涙を流しながら天理クンのほっぺを叩いた。
「ってー。何すんだよ癒川サン。ってかどいつもこいつも俺の事叩きすぎじゃない?ストレス溜まってるからって、俺をサンドバッグにすんなよなー。」
「あなたは一体どれだけ死者を冒涜すれば気が済むんですか!!」
「俺は別に死者を冒涜したつもりは無いんだけど。ただ、この子がお腹空かしてかわいそうだから食い物を恵んでやっただけじゃんよー。あ、食い物じゃなくて飲み物かw」
「…もういい。早く食堂から出て行け。」
星也クンも、天理クンを見限った。
「言われなくともそうしますよっと。」
天理クンが食堂から去ろうとしたその時…
『そうは問屋が卸さないよ!!』
クマさんとベルさんが現れた。
『フッフッフ。皆様、すこぶる仲が悪くありません?初日の威勢はどうしましたか!』
「フン。貴様ら、本当に不愉快だ。目障りだから早く消えろ。」
『えー。なにそれひっどーい!せっかくオマエラのためにに新しいエリアを開放してやったってのにさぁ!!』
「じゃあそのエリアとやらを発表して早く消えてくれる?」
『おやおや!穴雲様まで!…まあいいでしょう。今回解放した4階には、プールに体育館、更衣室、ゲームエリア、それから研究室が3部屋ございます。』
『あ、あとそれと、校則もう一個追加ね!』
「…追加?」
『そっ!今から、1人のクロが殺していいのは2人までとします!』
「なんでー?」
『そうしないと、自分以外の全員を殺そうなどと考える方がいらっしゃるかもしれないからです。』
「なるほどねー。」
『用件はそれだけだよ!それじゃ、健全で陰惨なコロシアイライフを!』
そう言うと、クマさんとベルさんは去っていった。
「いちいち目障りなぬいぐるみだぜ、全くよぉ!!」
「まあまあ、舞田君。落ち着いて。…それより、今回の探索だけど…担当を決めたから見てほしいんだ。」
プール…舞田君、不動院君
体育館…詩名君、神座さん
ゲームエリア…入田君、朱さん
更衣室(男子)…僕、財原君
更衣室(女子)…狛研さん、癒川さん
研究室…国王陛下、栄君
「今回は研究室の担当じゃないんだねぇ。」
「当たり前です。狛研さん、すぐに人の研究室の物に触るじゃないですか。」
「おう、また一緒になったな!!剣!!」
「はい、お願いします。舞田殿。」
「……………詩人、私が………助け、る…。」
「それは頼もしいね、神座君。」
「うむ!オマエの相手は僕ちゃんか!」
「ハイ!ヨロシクお願いします才刃サン!」
「にゃぱぱー、まぁた穴雲クンと一緒だー。穴雲クン、もしかして俺の事好き♂なの?俺、そっちの気は無いんだけど。」
「うるさい。君は僕が見張る。怪しい行動なんてできないと思え。」
「えぇーい。」
「………フン。何故俺が愚民の研究室などを…」
「うっせぇな!こっちも野郎と探索なんざ願い下げだよ!あーあ、いいよな入田と詩名はよぉ!!」
「うん、みんな不満は無いみたいだね。それじゃあ、今回も12時集合でいいかな?」
「はーい!」
ボク達は、流れ解散となった。
みんながそれぞれの持ち場に向かった。
「じゃ、ボク達も行こっか治奈ちゃん。」
「…そうですね。」
◇
「…ねえ。」
「はい、なんでしょうか狛研さん?」
「治奈ちゃんはさぁー。ここに来る前、どんな生活してたの?」
「…と、仰いますと?」
「例えば、なんか趣味とかあったのかなー…とか、友達とか彼氏とかいたのかなー…とか。いろいろ気になったから聞いてみたんだけど。」
「…はあ。」
「で、そこんとこどうなの?」
治奈ちゃんは、少し俯いて言った。
「…別に、普通…ですよ。」
「普通?」
「はい、普通です。特にこれといって面白みのある話ができないので…これでいいですよね?」
「えー…じゃあ友達は?」
「まあ、仲のいい子が数人…」
「彼氏は?」
「…いません。」
「そっか。」
「狛研さんは?」
「んー。ボクもそんな感じ。」
「奇遇、ですね。」
「そうだねー。あ。ここじゃない?」
目の前に、トイレのマークみたいなのが描かれた扉が見えた。
「…これ、どうやって開けんのかな?」
「さぁ…」
ボクが部屋に一歩近づくと、ドアが横にスライドした。
「わ!!?」
「これ、自動ドアだったんですね…」
『うっぷぷぷ!その通ーり!』
「あ、クマさん。」
「学園長…いたんですね。」
『あれ?二人とも反応薄くない?もっとド肝抜かしていいんだよ?』
「もう慣れたし。」
『あっそう。』
「で?何しに来たんだい?」
『ああ、この更衣室の説明に来たんだよ!この更衣室は、女子生徒しか入れないのでご注意ください!』
「そりゃあそうですよ…何を今更…」
『ちなみに、男子が入ろうとしたら上に設置されたガトリングガンが火を吹くから。逆もまた然り、女子が男子更衣室に入ろうとした時も同じだよ!』
「…物騒ですね。」
『そう?この学園の誇る超厳重かつ最先端のセキュリティーって言って欲しいんだけどなぁ!』
「これのどこが最先端なんですか。」
『うっさい!文句は受け付けないよ!それじゃあね!』
「…行っちゃった。」
「狛研さん。私達は私達で探索を進めましょう。」
「…そだね。」
ボク達は、探索を始めた。
女子更衣室の中は、割と綺麗だった。
ロッカーがちょうど8個あって、壁にはポスターが貼られている。
ポスターは、カッコいい男の人…の体にクマさんの顔をコラージュした写真だった。
「…なんですかこの気色悪いコラ画像は。この胴体の方の人、国民的アイドル『五十嵐』の丹宮和矢さんですよね?」
「へー。」
「知らないんですか?」
「ボク、あんましアイドル興味ないから。」
「へぇ…」
「それにしても、この画像ホント変だよね。あ、そうだ。写真撮っちゃお。」
「え、この気持ち悪いポスター、写真に残すんですか?」
「だって、男子はここは入れないんだよ?このポスター見せてあげたいじゃん。」
「いいですよそんな事しなくて。こんな気持ち悪い写真見せられて、一体誰が得をするっていうんですか。探索も終わった事ですし、そろそろ皆さんと合流しましょう。」
「えー。そんなに言うほど気持ち悪いかなぁ?待ってよ治奈ちゃん!」
◆
「ふんふんふ〜ん♪」
あーあ。やっとあのジンギスカンキャラメル並みにマズい空気から抜け出せたよ。
「…君、随分と余裕そうじゃないか。」
「だって、俺は今の所死ぬ予定無いもんねー。」
「…予定?ねえ、今予定って言った?」
やべっ。
「あ、これ、言っちゃいけないヤツだった。今のナシで。」
「そんなのまかり通るわけないだろ!君、やっぱりこのゲームについて何か知ってるんだろ?言え!」
「…しゃあねえなぁ。じゃあ、ヒント。今回死人が出るのは、このフロア内のどこかだよ。」
「なっ…」
「おっと、これ以上は何も言わねえよん?…あ。更衣室だ。そうだよ俺達は探索に来たんだよ。道草食ってる場合じゃねーだろー?」
「…全く。後できっちり問い詰めるから、覚悟しといてね。」
「はーい。」
しっかし、ヘッタクソな絵だなー。なんだこのトイレのマークみてーなラクガキはよ。
つかこれどうやって開けんの?
…もしかして、近づいたら勝手に開いたりとかして。
なーんて…
ガーーーー…
あ、開いた。
「ねえ、勝手に開いたんだけど。」
「僕も見てたよ。このドア、自動ドアだったんだね。」
『フッフッフ。ご説明しましょう!』
「あ、ベルちゃん。」
「はあ、うるさいのが来たよ。」
『おや。うるさいとは誰の事です?穴雲様。』
「君の事だよ。それより、何しに来たんだい?」
『ワタクシは、アナタ達にこの更衣室の説明をしに参りました。この更衣室は、男子生徒しか入れないのでご注意ください!』
「…どういう事だい?」
『女子がここに入ろうとした場合、上に設置されたガトリングガンが火を吹きます。逆もまた然り、男子が女子更衣室に入ろうとした時も同じです。』
「えー。じゃあ、女子更衣室には入れないって事?至極残念なりー。」
「入ろうとすんなよ。…バカな事考えてないで、探索するよ。」
「うぃーっす。」
穴雲クンは怒ると怖いからねー。
俺達は、更衣室の中に入った。
「ほーん。」
中は、割と清潔感があった。
ロッカーがちょうど8個あって、壁にはポスターが貼られていた。
ポスターは、ベルちゃんの顔が貼られた、おっぱいのデカいねーちゃんが写っていた。
「何これ。気持ち悪っ。」
「…見てるだけで吐き気を催すね。」
「あ、でも顔隠したらイケるね。そうだ。修正ペンで水着消して代わりにマジックで乳首描いちゃえ。」
「そういうくだらない事するの、本当にやめようね?」
「ごめんなちゃーい。」
「…そろそろ行くよ。もう探索も終わったしね。」
「ほーい。」
◆
俺は、剣と一緒にプールを探索することになった。
「うっし、俺達も行くぜ剣。」
「…。」
「剣?聞いてんのか?」
「へ?…あ、申し訳ございません。少し考え事を…」
…大丈夫かコイツ?
なんか、元から赤い顔がもっと赤くなってんぞ。
「剣、お前大丈夫かよ?熱とかあんじゃねえだろうな?」
「ね、ねねね熱なんてありませんよ!ささ、皆さんを待たせてしまっては申し訳ないですし!早く探索を終わらせてしまいましょう!!」
なんかよくわかんねーけど、急に早足で歩き出したぞ。
なんなんだアイツ。
◇
【プール】
「…わぁあ。」
剣は、スッゲェ目をキラキラさせながらプールを見渡していた。
「…剣。お前、まさかとは思うけど、プール行った事無えのか?」
「はい、ございません。私は、ぷぅる?という場所に入るのはこれで初めてでございます。なんだか湯屋のようですが…中に入っているのは水ですか?」
…マジかよ、そんな事も知らねえのか。
しっかし…どデケェプールだな。
波の出るプールに、流れるプールに…スライダーまであんのかよ。
と●まえんかってんだよ。マジで。
「あの大蛇のようなものは何ですか?」
「あれは、スライダーっつって、上から滑って遊ぶんだよ。」
「そうなのですか!?上の様子を見てみたいです!」
「あ、おい!!」
はしゃぎすぎだろコイツ。
「わぁ、上はこのようになっていたのですね!!…わっ!?」
剣のヤツが、上で足を滑らせたらしい。
そのまま下に真っ逆さまに落っこちてきた。
「剣!!!」
俺は、ギリギリのところで剣をキャッチした。
「…っと、危ねえ。」
「ま、舞田殿…あ、ありがとうございます…」
「いいって事よ!気にすんな!!」
…ん?
なんだコイツ。
見た目の割に軽りィぞ。
それに、なんか丸っこくて柔けェな。
何食ったらこんな体になるんだ?
「あ、あの…そ、そろそろ降ろしていただけませんか…?」
剣は、顔を真っ赤にして、目を逸らしながら言った。
「あっ…悪い。」
俺は、剣をゆっくり降ろした。
「あ、あの…舞田殿。この度は、私の身勝手のせいで迷惑をかけてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
「気にすんなって!次から気をつけろよ!!」
「はい。…ですが、今回の事を何かお詫びしなければ…」
「いや、いいっつってんだろ。そろそろ探索も終わったし、行くぞ。」
落ちてきたところを助けたくらいで、大袈裟な野郎だな。
剣って、なんか色々変な奴だよな。
◆
……………私、詩人と………探索……
「じゃあ、行こうか神座君。何か目ぼしい物があったら報告してくれ。」
「………。」
…………………………体育館、行く……
◇
【体育館】
………体育館、ドア、絵………描いて、ある……
「ん?どうしたんだい?神座君?」
「………のっぺら、ぼう…………球、持ってる、絵、描かれて…ある………」
「のっぺらぼう…ああ、ピクトグラムか。ボール…って事はここが体育館で良さそうだね。早速入ってみようか?」
「……………。」
体育館、入った………
…………………………広い。
「うん、広いね。」
「………上、登れる…みたい。」
「ん?上に行けるのかい?」
「…………私、行く………」
「ん?そうかい?じゃあ、頼むよ。」
「………。」
……………………上、足場………狭い………。
特に、何も………落ちて、ない…
…………これ、は…機械…?
なんだろう……………
ガーーーーーーーーー…
「ん?何の音かな?」
あ…天井の金具、動いた…
…これ、止めるの…どう、やるんだろう…
…これかな?
ガコンッ
…止まった。
「……………詩人のところ、行く…」
「神座君、今の音は一体…?」
「………上にあった、機械………触ったら、天井の金具…動いた………」
「…なるほどね。ありがとう神座君。…ところで、こっちにもう一部屋あるみたいなんだけど。」
「……………入る?」
「そうだね。入ってみよっか。」
「………うん。」
…………ここ、暗い…
明かり、ないのかな……
…あ、これかな…?
カチッ
……………明かり、付いた…
…なに、ここは…
なんか、色々………置いて、ある……
……………球、網……あと、何、これ……板…?
「わっと。…うん。ここは体育館倉庫ってところかな?」
「………そう、なの?」
「うん。ボールとか、バレーのネットとか…スポーツに必要なものが色々置いてあるんだよ。」
「………蹴鞠は?」
「いや、さすがに鞠はないと思うよ。サッカーボールならあるけど…」
「……………あった。」
「あるのかい!?…今日一番の衝撃の事実だな。」
「………………詩人、これ…何?」
「…ん?どれどれ?ああ、これは得点板だよ。スポーツ競技をする時、どっちのチームが何点取ったのかっていうのをこれに記録するんだよ。」
「スポーツ…?チーム………?」
「あ、えっと…スポーツっていうのは、体を動かす遊びの事。で、チームっていうのは、ある種類のスポーツをする時に作る仲間の事。わかった?」
「………うん。」
……………詩人と、探索………楽しい………。
◆
ワタシは、才刃サンとゲームエリアに行く事になりましたヨ!
「才刃サン!ヨロシクお願いします!」
「うむ!僕ちゃんにお任せなのだ!僕ちゃんは、こう見えてもeスポーツの世界大会で準優勝したほどの実力者なんだぞ!!」
「へー!スゴイですねー!優勝は、誰だたんデスカ?」
「【超高校級のゲーマー】とかいう変な女だったよ!なんなのだアイツは!!普段はノロノロ眠そうにしてるくせに、ゲームになった途端キレッキレに動きやがって!!」
ゲームの世界てスゴイんですネー。
あ、ここデスネ。
…それにしても、いろんな種類のゲームがアリマスネ!
「ワタシ、ゲームあんまりヤタ事ないでス。」
「ふんっ!初心者がそう簡単に上手くなれるわけがなかろう。」
「そーですヨネ…あ、これ、見た事アリマス!」
「それはダンスゲームだ。この前のゲーム大会では、予選がダンスゲームだったな。まあ、僕ちゃんが完膚なきまでに相手のザコを叩き潰したが。」
「才刃サンすごいデスネ!運動音痴なのにダンスゲームは得意ナンデスネー!」
「一言余計なのだ!オマエの未熟な脳味噌に有線LANを繋いでやろうか!!」
「それはやめてクダサイ。」
「ふんっ、手本を見せてやる。見とけ。」
「ハイ、お願いシマス。」
「さあ、ショータイムといこうか!!」
才刃サンは、最小限の動きで、スピーディーかつ正確にノーツを捌いていますネ。
「…ふんっ、所詮は子供の遊びなのだ。退屈しのぎにもならんぞ。」
わー。足の動きが速スギテ何やてんのかワカンナイでス。
「ふん、まあこんなもんか。」
「さすが才刃サンです!あ、あれはなんですカ!?あれも見た事アリマス!」
「あれはパズルゲームだな。まあ見とけ。」
「ハイ!」
「ここをこうやって…これを動かすとほら。」
画面に映てたゼリーが、一気に全部消えましたヨ!
「ふんっ、その程度のレベルで僕ちゃんをゲームオーバーさせられるとでも思っているのか。僕ちゃんを負かしたきゃ、もっとハイレベルなゲームプログラムをしてみる事だな。」
「才刃サンかこいいデス!」
「ふんっ!当然だ。僕ちゃんは天才だからな。」
才刃サンにコンナ才能があったなんてビックリです!
…あ、ゲームで遊んでタラ、あっという間に時間にナチャイマシタネ。
特に報告スル事も無いデスガ、とりあえず報告行きマショウ。
◆
…判らぬ。
俺はなぜこの料理バカと一緒に他人の研究室の探索などやっているのだろうか。
「あーあ、最高の気分だぜ!ったくよぉ!!オララッセ!さっさと探索終わらせっぞ!!」
「俺に命令するな。言われなくともそのつもりだ。」
「あっそ!!…んあ。」
…なんだこの扉は。
錆びかけの汚い扉に、スプレーで装飾がされているな。
この部屋は、おそらく…
全く、愚民の研究室に入るのは乗り気がしないが…
「入るぞ。」
「…おう。」
…なるほど。
それにしても、汚い部屋だな。
落書きだらけじゃないか。
部屋にバイクが置いてあるぞ。
…全く、室内に乗り物を持ち込むなど…
それに、なんだこの部屋。
金属バットに、鉄パイプに、メリケンサックに…まるで武器庫だな。
「おい、ここ…もしかして…」
「ああ、癪だが…俺も同じ事を考えていた。…おそらく、【超高校級の喧嘩番長】の研究室だ。」
「やっぱりな。そうだろうと思ったぜ。」
「…行くぞ。探索が終わったのなら、もうここに用はない。」
「うっせ!俺はお前の召使いじゃねーっつーの!このお坊っちゃんがよぉ!!」
◇
「…次はここか。」
む。この部屋は、さっきとは打って変わって清潔感のあるドアだな。
透明度の低いガラスのドアになっているようだ。
「ここ、誰の研究室なのかな?」
「さぁな。…入るぞ。」
「…躊躇しねぇのな、お前。」
「当たり前だ。王である俺が何を躊躇する事がある。」
「そうかいそうかい。」
…ほう。
部屋には、無数のコンピュータが設置されている。
さらには、ホワイトボードや学術書も置かれているな。
…この部屋が似合う人間は、俺は1人しか知らんな。
「…【超高校級の工学者】の研究室か。」
「だな。」
「フン、用は済んだ。行くぞ。」
「…ったく、愛想が無えなあ。お前はよお。」
◇
「…最後はこの部屋か。」
なんだこの無駄に高級感のある扉は。
「この感じ…お前の研究室かもな。」
「無い。こんな趣味の悪い扉が、俺の研究室なわけないだろ。…それに、大方誰の研究室か予想がつく。」
「あっそーですか。」
「入るぞ。」
…フン。
やはりアイツの研究室か。
赤と黒のチェックの床に、少し暗めの照明…
無駄に凝った、無駄に高級感のある家具が揃っている。
壁には、株のレートが表示されたモニターが取り付けてある。
さらには、本棚には経済学に関する本や、株や競馬の新聞が置かれている。
無駄に高級感のある棚には、各国の全種類の硬貨がコレクションされているな。
…俺の国の通貨もあるぞ。
「なんだこれ。札風呂まであんじゃねえか。なんかルーレットの形になってんのが無駄に凝ってて腹立つな。…って、嘘だろ!?これ、よく見たら本物の万札じゃねえか!!」
「…この無駄に凝ってて腹の立つ部屋が似合う奴は一人しか知らんな。おそらく【超高校級の資産家】の研究室だ。」
「はー…道理で無駄にイカしてて腹立つわけだ。」
◇
「ぶえっきし!!」
「…汚いな。ちゃんと口を押さえなよ。」
「ごめんなちゃーい。なんか、誰かに無駄に凝ってて腹立つって言われてるような気がするんだー。」
「随分と具体的な噂じゃないか。普段から人に嫌われるような事してるから噂されるんだよ。」
「はーい。」
◇
「そろそろ時間だ。行くぞ。」
「お、おう…」
俺達は、食堂に向かった。