ダンガンロンパPRISON   作:M.T.

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第4章(非)日常編②

みんな探索は終わったのかな?

一応、報告の結果は聞いておかないとねぇ。

「二人とも。そっちはどうだった?」

「あ、星也クンに天理クン。二人も今探索終わったとこ?」

「まあね。それで、探索の報告は?」

「えっとですね…音楽室は、コンサートホールのような造りになっていました。それから、美術室は巨大なアトリエになってましたね。」

「うんうん、なるほどね。」

「星也クン達の方はどうだった?」

「えっとね…まず、物理室の方からね。物理室には、実験で使ういろんな道具があったよ。…それから、」

「脳内の記憶のデータ化についての論文があったんだー。あと、冷凍保存がどうのこうのっていうのもね。」

…データに冷凍保存か。

「そうそう。蘇りについての記載がある論文も見つけたよ。」

「蘇り!?」

わっ、いきなり食いついてきたね、治奈ちゃん。

「あの、その話、詳しくお聞かせ願えませんか!?」

「うーん。俺は、論文の内容をサラッと覚えてきただけだからね。多分現物を見た方が確実だと思うよ。え、何?癒川サン、蘇りとか興味あんの?」

「そりゃあもう、当然です!!死者の蘇りは、医療に携わる者からすれば長年の悲願ですから!!失った命を取り戻す方法があるのなら、今まで亡くなった皆さんや私の弟も…」

「うーん、俺っちとしてはあんまり期待しすぎんのもどうかと思うっち。」

「と、いうと?」

「見ろよこれ。」

「キナ臭えんだよ。論文のクセに実験の内容が一切書かれてねぇし、書かれた日付もデタラメだ。この内容自体ウソって可能性の方が高いんじゃねーの?」

「…そうですか。」

治奈ちゃん、見るからに落ち込んでるね。

だいぶ期待してたのかな?

 

「あと、情報管理室だけどねー、パソコンはパスワードがあって使えなかったんだぁー。入田クンがいれば使えたんだけどね。全く、何やってんだよあのドチビはよー。引きこもってないで出てこいよー。」

「えっと…入田さんは、後で様子を見にいきましょう。心配ですし。…入田さん、昨日の夕食も今朝の朝食も召し上がっていらっしゃらないので、体調を崩していなければいいのですが…」

「だね。あと、研究室なんだけど…今回開放されてたのは、国王陛下、詩名君、あとは僕の研究室だよ。」

「ちぇっ、今回もボクの研究室はないのかぁ。」

「残るは、狛研さんと神座さんと私の研究室だけですね。」

「あーあ、早くボクの研究室見たいなー。」

「だったら、試しに誰かを唆してコロシアイを引き起こしてみれば?そしたら上の階が開放されるぜ?」

しれっと縁起でもない事言うなよ天理クン!!

「…おっと、そろそろ帝国側のみんなが戻ってくる時間だね。」

 

「おい、貴様ら。そこで何をしている。」

「えー、何って…ちょっとお話してただけだよね。」

「うん。」

「ここは今から俺達が報告会と食事のために使うのだ。邪魔者は出て行ってもらおうか。」

「俺的には邪魔なのはむしろキミ達の方なんだけど。」

「何?」

「今まで散々穴雲クンのお世話になっといて、今更反発して変な国まで作っちゃうとか、恩知らずすぎてさすがの俺でも引くわー。御恩と奉公の関係って知ってる?消防でも知ってる常識だよね?」

「メガネが俺達に何をしようと知ったこっちゃない。俺は、アイツに助けられたと思った事など一度もない。それに、いくら口ではいい事を言おうと結果がこのザマだったら、こんな奴に命を預けたくないと思うのが普通だろ。」

「はいはい屁理屈乙。」

「やめなよ二人とも。言い争ったところで、何も解決しないだろ。」

「貴様ごときが俺に命令するな無能が。そんな腑抜けた事を言っているから、クラスメイト一人守れないんじゃないのか。」

「ラッセクン、言い過ぎだよ。天理クンの言う通り、星也クンはみんなのために頑張ってくれてるじゃない。」

「…チッ、貴様にだけは説教されたくないな。黒幕の最有力候補の癖に。…余計な事に時間を使った。報告会を始めるぞ。」

「お、おう…」

 

「まず料理バカと盲目。貴様らから報告しろ。」

「ああ…えっと、美術室はデッケェアトリエになってたな。そこでちと気になるモンも見つけたぜ。」

「…ほう。」

「かの江ノ島盾子の彫刻と、俺達全員の肖像画だよ。」

「…江ノ島盾子だと?聞いた事あるな、確か20年以上前に世界を滅ぼそうとした女がいたとか…だが、奴は20年前に死んでからは、絶望的事件の再来を防ぐため、『絶望』に関する書物などの作品の検閲が厳しくなっているんじゃなかったか?ソイツの彫刻がなぜ美術室に…」

「さあな。オレも詳しい事はわかんねェよ。」

「………私、た…ちの…肖像………画…?」

「ああ、どうやら栄君によると、全員分の肖像画が美術室に飾られていたそうだよ。中でも、狛研クンの絵が一番大きくて、額縁に飾られていたそうだ。」

「…フン。やはり、奴が黒幕か…ますます怪しくなってきたな。」

「………そ、れ…だけ……で、疑う…の………よく…な…い……」

「貴様はどちらの味方なのだ。…まあいい。音楽室は?」

「音楽室は、コンサートホールみたいになってるようだよ〜♪カラオケボックスや調律用の部屋まであったみたいだし、色々楽器もあるみたいだし…音楽を愛するオイラとしては、嬉しい限りだね〜♫」

「…ほう、楽器か。…報告はそれで以上か?」

「ああ。物理室の報告してもいいか?」

「構わん。報告しろ。」

「えっと…色々実験で使う器具が揃ってたな。あと、変な機械が色々あったけど、何に使うのかとか全然わかんねェし、まあ実際行ってみた方が早いと思うぜ。」

「なんだその雑な報告は。…まあいい、俺達からも報告をしておこうか。今回開放されたのは、俺、盲目、そしてメガネの研究室だった。」

「やっとオイラの番か。嬉しいねぇ〜♬」

「それから、情報管理室だが…いい報告と悪い報告がひとつずつある。」

「え、なんだよそれ…怖いんだけど。」

「まず、いい報告から。情報管理室にあるコンピュータは、全て正常に作動するようだ。うまく使えば、学園のネットワークにも侵入できるだろう。」

「マジかよ!?」

「…で、悪い知らせは?」

「…そのコンピュータ全てにロックがかかっている。パスワードを解析しなければ、ネットワークに侵入するどころか検索エンジンすら使えん。無論、超高校級である子供の力を借りればコンピュータ全てをハッキングするのは容易いだろう。しかし、本人があのザマじゃあてにはならんな。」

「入田か…ちょっと心配だな。あとで飯作って持ってってやるか。」

「待て待て。貴様がそこまでする必要は無かろうが。アイツは、自分の意思でこのゲームを抜ける事を選んだのだ。ゲームを抜けた奴を心配する暇があるなら、どうやってこの先生き延びてここから出るのか、具体的な方針を練る事に頭を使え。でなければいずれ自分が死ぬぞ。」

「だけどよ、アイツは…」

「貴様は自分の意思で俺を選んだのだろう?だったら俺に従え。これは命令だ。」

「…わぁったよ。」

 

 

 

 

「お腹すいたー。」

「そういえば、もう1時過ぎですね。お昼にしましょうか。何か作りますよ。」

「なら、僕も手伝うよ。」

「穴雲さんはゆっくりしていてください。私がやりますから。」

「そう?じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな?」

ホント、この二人仲良いよね。

羨ましいなー。

「ついでに俺もお言葉に甘えて休憩ーっと。」

「天理クンは休んでいいって言われてないじゃない。…まあいいけど。」

 

 

 

 

うーん、おいしかった!

さすがに陽一クンまでとは言わないけど、やっぱり治奈ちゃんの作るご飯もおいしいね!

…さてと、体育館と女子更衣室に行こうかな。

まだ、成威斗クン達にちゃんと弔いをしてないもんね。

今まで一緒に過ごしてきた仲間だ、ちゃんとお別れを言わないと。

 

 

 

 

【体育館】

 

成威斗クンの遺体が吊るされていた体育館は、昨日起こった事がまるで嘘だったかのように、綺麗さっぱり片付いていた。

…ここで、成威斗クンが殺されたんだね。

成威斗クン、ごめんね。

キミはボクを何度も助けてくれたのに、ボクはキミを助けられなかった。

本当にごめんなさい。

せめて、安らかに眠ってね。

伝えたい事は伝えられたと思う。

…そろそろ女子更衣室に行こう。

 

 

 

 

【女子更衣室】

 

女子更衣室も、体育館と同様、綺麗に片付けられていた。

雪梅ちゃん、ごめんね。

弱みを教えてくれたのに、力になってあげられなくて。

きっと最期まで、ここで怖い思いをしてたんだよね。

助けてあげられなくてごめんなさい。

…剣ちゃんも、止めてあげられなくてごめんね。

もっとキミと話していれば、キミが二人を殺すのを事前に止められたかもしれないのに。

ボクは、キミの事を全然わかってあげられなかったね。

それから、裁判では秘密をバラして追い詰めちゃってごめんなさい。

キミが女の子だって事も、キミなりの思いがあって隠してきた事だったのに…あんな形でみんなの前で暴露しちゃったね。

本当にごめん。

 

キミ達が死んじゃったのは、ボク達の力不足のせいだ。

でも、これで終わりじゃない。

ボク達は、キミ達の分まで生きるから。

だから、どうかボク達の事を見守ってて。

 

 

 

 

…ちょっと暗くなっちゃったな。

無理ないよ、今までずっと一緒にいた仲間が3人も死んじゃったんだもん。

でも、いつまでもくよくよしてられないよね!

ボクがこんな調子じゃ、この先生き残れないよ。

これからどうしなきゃいけないのか、考えなきゃ!

まずは、晩ご飯までの間何をしようかな?

そうだ、才刃クンの様子を見に行こう。

あの子、ずっと引きこもったままだもんね。

体調崩したりとかしてなきゃいいけど…

 

 

 

 

【入田才刃の独房】

 

ピンポーン

 

「才刃クン、調子はどう?ご飯、ちゃんと食べた?」

返事がない。

…本当に大丈夫なのかな。

「ねえ、才刃クン。今回は、美術室と音楽室と物理室と…それから、情報管理室が開放されたんだ。気が向いたら行ってみるといいと思うよ。情報管理室には、才刃クンの好きなパソコンもたくさんあったしさ。」

やっぱり返事はない。

「…ねえ、才刃クン。ボクね、才刃クンとゲームがしたくてちょっと練習したんだよ。今度、一緒に遊ぼうよ。」

 

ポコンッ

 

ボクの手帳に、才刃クンからチャットが送られてきた。

 

《うるさい。失せろ。》

 

才刃クン…

やっぱり、出てきてくれないのか…

せっかく友達になれたのに。

いやいや、暗くなるなボク!

今が機嫌悪いだけかもしれないし、また今度出直そっと。

さてと、暇になっちゃったけど…どっか行こうかな?

そうだ、ちょっと気分転換に娯楽室にでも行ってみよーっと!

 

 

 

 

【娯楽室】

 

まだメダル結構余ってるなぁ…

せっかくだし、ガチャでも引いてみよっかな?

今回は何が出るかなーっと。

…なんだこれ?

笛…と、万年筆と、あとは…なんだこれ。首飾り?

よくわかんない模様が入ってるけど…

全部いらない物ばっかりだなぁ。また誰かにあげよっかな?

さて、と…ガチャも引いたし、これから何しよっかな?

そうだ、とりあえず新しく開放された音楽室に行ってみよっと。

 

 

 

 

【音楽室】

 

やっぱ広いなー、ここは!

…ん?

なんか聞こえるな…

この音は…ハープ?

練習用の部屋の方からかな?

ちょっと行ってみよーっと。

 

 

 

 

「…誰かいるのかな?お邪魔しまーす。」

…おや。

部屋では、柳人クンがハープを弾いていた。

なんか、聞いた事ない曲だねぇ。

すごいステキな曲だけど。

ボクは、思わず拍手を贈った。

「…ん。誰かいるのかい?」

「すごいや柳人クン!めっちゃいい演奏だったよ!!」

「その声は、狛研君か。いやあ、そう褒められると嬉しいねぇ。ありがとう。」

「ねえ、今のはなんて曲なの?」

「ああ、オイラが初めて作詞作曲した、『草の王』っていう曲さ。気に入ってくれたみたいで嬉しいよ♬」

「ねえ、もっと聞かせて!」

「もちろん。オイラの自信作は、まだまだあるからね。」

 

 

 

 

「やー、いい演奏だった!」

「別に大した事はないよ。これくらい、練習すれば誰でも弾けるよ。」

「そんな事ないよー。メッチャすごいと思うよ!」

「狛研君は、楽器とかはやった事あるのかい?」

「ほとんど無いねー。そもそもあんまり才能ないっぽいし。中学の音楽の授業でなんて言われたと思う?『お前の場合、天才じゃなくて天災だ』って。そこまで言うかって感じじゃない!?」

「…それは悪い意味ですごい気が…いや、言うのはやめておこうか。」

「なに?なんか言った?」

「…いいや、何にも?」

「ふーん。…ねえ、柳人クン。」

「なんだい?」

「この後、ちょっと話さない?ついでに研究室もちょっと見たいなー。」

「…。」

 

 

 

 

【超高校級の詩人】の研究室

 

「うっわー、すごーい!ハンモックまであるんだー!さすがは柳人クンの研究室だねー!」

「それはどうも。」

「…ねえ、柳人クン。」

「なんだい?」

「キミ、なんでボクの誘いをオッケーしてくれたの?キミって帝国側、だよね?」

「別にプライベートまでは制限されてないからね〜♪それに、芸術と政策は分けて考えるべきだよ。オイラは、オイラの作品を素直に褒めてくれる人には悪人はいないって信じてるのさ♫」

「そっかぁ。ありがとね、演奏を聞かせて貰った上に研究室まで見せてもらっちゃって!あ、そうだ。」

「ん?どうかしたのかい?」

「えーっとね。お礼といっちゃなんだけど…柳人クンにちょっとプレゼントしたい物があるんだ。」

「プレゼント?何かくれるのかい?」

 

「ジャーン!笛です!柳人クンなら気にいるかなーって。どう?」

「ん!!?ちょっと待って!?これって…」

「どうしたの?」

「この感触…間違いない…狛研君!!この笛、どこで手に入れたんだい!?」

「えっと…ガチャでゲットしたんだけど…何?そんなにすごいの?その笛。」

「これは、『ハーメルンの笛吹き男』が使ったといわれている笛で、音楽に携わる者なら誰もが一度はお目にかかりたいと思っている笛さ。」

「そうなんだー。」

「噂によると、この笛を一度でも吹いた者は、未だかつてないほどに音楽の才能に恵まれ、巨万の富を築くといわれているんだ。著名な音楽家の中にも、この笛を吹いた者がいるとかいないとか…」

「へー、すごいねその笛!最強じゃん!」

「でも、それほどまでに強力な『呪い』がかかった笛だ。起こるのは、いい事ばかりじゃないんだよ。」

「と、いうと?」

「別の言い伝えもあるんだ。この笛を一度でも吹いた者は、笛の魔力に取り憑かれて気が狂い、最期には不可解な死を遂げるとね。」

「え、なにそれ怖っ。ねえ、柳人クン…」

「安心しなよ。正直、この噂に関して言えば半信半疑だけど、万が一の事もあるから吹かないよ。鑑賞用に部屋に飾っておこうかな♪」

「そっかぁ。」

「狛研君、このプレゼント、とっても気に入ったよ。ありがとう。お礼に何かしたいんだけど…何か欲しい物とかあるかい?」

「いいよいいよ。さっき、いい演奏聞かせてもらったしね。…そうだなぁ。じゃあ、柳人クンの話を聞かせて?」

「お安いご用さ。聞きたい事があればなんでも聞いてくれよ〜♪」

 

「えっと…じゃあ、柳人クンは、なんで【超高校級の詩人】に?」

「うーん、理由かぁ。強いて言うなら、小さい頃から旅と歌が好きだったからかな?それで、旅をしながら詩や歌を作るようになったのさ。オイラの夢は、オイラの詩や歌を世界中の子供達に届ける事さ。」

「柳人クン、ちっちゃい子好きなの?」

「うん。彼らは、歌を純粋に楽しんでくれるからねぇ。作品の作りがいがあるんだ。ここだけの話、実はこの格好も子供受けを狙ってるんだよねぇ。」

「え、そうだったの?」

「そうさ〜♪どうだい?詩人っぽいだろ?」

「確かに…なんかム●ミンに出てきそう。」

「ス●フキンか。彼は、オイラのイメージ作りの時に影響を受けたキャラクターなんだよね。」

「やっぱりねー。…ねえ、ところで、ちょっと変な事聞くようで悪いんだけど…柳人クンって、生まれつき目が見えないの?」

「ああ。生まれつきだよ。」

「不便じゃない?

「逆に生まれつき目が見えてないと、それに慣れてるからね。特に不便に思った事はないかなぁ。今更だけど、オイラには普通に接してくれて構わないよ〜♪」

「わかった!」

 

「ねえ、その楽器はどうしたの?」

「ああ、これかい?旅の途中で、仲良くなった地元の長老に貰ったのさ。村の手作りの楽器で、いい音色が出るから気に入ったなら持っていきなさいって。今となっては、コイツはオイラの大切な相棒さ〜♪コイツがなかったらやっていけないよ。」

「そっかぁ。その楽器、大切な物だったんだね。」

「ああ。今でも、ちゃんと毎日手入れしてるのさ〜♪」

「道理で綺麗な音色なわけだ!」

「そう言ってくれて嬉しいよ♬」

 

「ねえ、柳人クンは、外に出たらやりたい事とかあるの?あとは、大切な人とかいる?」

「やりたい事、ねぇ。まあ、いつも通り旅をしながら詩や歌を作る事かな。風のように彷徨うのがオイラの運命(さだめ)さ〜♫」

「ふーん。」

「大切な人…ねぇ。大切な人はやっぱり、オイラの作品を純粋に楽しんでくれるファン達かな。オイラの作品を必要としてくれている人達のためにも、まずはここから出ないとね〜♪」

「うんうん、外に出るための理由があるっていうのはいい事だ!ボクもキミの歌が好きだから、キミの事応援するよ!」

「ありがとう。…国王様はあんな風に言ってたけど、君はやっぱり悪い人じゃないなぁ。」

「えっ?」

「君は、迷いがなくて一途な人だからね。君みたいな人が黒幕なわけないよ。」

「そっかぁ、ありがと!」

「ここまで腹を割って話したのは久しぶりだよ。オイラは引き続き国王様に従うけど、君には個人的に協力したいかな。」

「ボクの方こそ、キミの話が聞けてよかったよ!一緒に頑張って脱出しようね!」

「そうだねぇ♫」

「それじゃあ、ボクはそろそろ行こっかな。また演奏聴かせてね。」

「もちろんさ〜♩」

 

《詩名柳人の好感度が1上がった》

 

 

 

 

柳人クンとたくさん話せて楽しかった!

またあの演奏聞きたいなー。

 

グギュルルルル…

 

…お腹すいたなぁ。

そういえばそろそろご飯の時間だっけ。

食堂に行こーっと。

 

 

 

 

【食堂】

 

「あれ?」

時間よりも早く、天理クンが来ていた。

天理クンは、テーブルに突っ伏しながら手帳に何かを書いていた。

何書いてんのかな?

…スケジュール帳?

「天理クン。」

「ほにゃっ…その声は、狛研サンではあーりませぬかぁ。どうしたんだい一体〜?」

「ねえ、何書いてるの?」

「ひみちゅー。」

「ケチ!」

「ケチでいいもんねー。」

もう、天理クンってなんかたまに腹立つよね!

天理クンかぁ…そういえばこの子、ちょっと気になる事言ってたっけな。

 

「ねぇ、天理クン。」

「なぁに?」

「…あのさ、『囚われのマリアのための交響曲』って、なんなの?」

「ふわぁあ…だから、まだ教えないつってんじゃん。時期が来たら話しますわよ。…そうだなぁ。次に誰か死んだら話してあげよっかな?」

「なにそれ!いじわる!!」

「やーん褒められたー。」

褒めてないし。

天理クンって、なんで変な事ばっかり言うの?ホント頭にくるよね!

いつか絶対、隠してる事全部言わせちゃお!

 

星也クンと治奈ちゃんが、厨房からご飯を作って持ってきてくれた。

「二人とも、ご飯できたよ。」

「はぁーい。」

 

 

 

 

「うーん、おいしい!」

やっぱり星也クンと治奈ちゃんのご飯はおいしいね!

「ありがとうございます。作った甲斐がありました。」

「良かったね、治奈。」

「…はい、星也さん。」

「え?何?キミ達、進展したみたいじゃーん!お熱いですなぁ、ヒューヒュー!」

天理クンが二人を冷やかした。

「や、やめてください!恥ずかしいですから…!」

「君、いい加減にしないと怒るよ?」

わっ…星也クン、割と本気で怒ってるっぽい…

この子、怒ると怖いんだよね。

「ねえねえ、実際どこまでいったのー?え、ヤった?ヤったの?」

「君、本当にそろそろ静かにしよっか。」

「わー、濁した!やっぱりそういう事してたんだオマエらー!!他のみんなにも言いふらしちゃおー!!」

「…財原君?」

星也クンは、笑顔のまま天理クンを威圧した。

「くだらない事言ってないで、ご飯食べちゃおっか。冷めちゃうよ。」

「…はい。」

天理クンが黙った…

やっぱ、星也クンは怖いね。

「食事中に下品な事を言うのはやめようね。第一、部屋の中にも監視カメラがあるんだからそんな事するわけないだろ。」

そっか。

そういえば、監視カメラで撮った映像を全国で放送してるんだっけ。

今のこのくだりも、バッチリ放送されてんのかな?

まあ、そんな事どうでもいいんだけど、やっぱりこのご飯おいしいね。

つい食べすぎちゃうよ。

 

 

 

 

あー、おいしかった。

ごちそうさま!

「おい、貴様ら。ここは今から俺達が使う。うるさくするなら出て行け。」

ラッセクン達が食堂に入ってきた。

「キミ達、ホント自分勝手だよねー。呆れて物も言えないんだけど。」

「貴様にだけは言われたくない。邪魔をするなら出て行ってもらおうか。」

「チッ、はいはい出ていきゃーいいんでしょー?」

天理クンは、不満そうに食堂から出て行った。

「貴様はどうするのだ。触角帽子。」

「ボクはここに残るよ。ボクは、キミの召使いじゃないからね。キミのお願いを聞く必要なんてないよね?」

「…チッ、これだから貴様は…フン、だがまあ間違ってはいないな。勝手にしろ。」

「………いいの?」

「このテのバカは放っておくのが得策だ。…では諸君。報告会を始めようか。」

報告会?

それは今朝やったよね?

一体何を話し合うのかな?

 

「まず和服。貴様は今日、何か発見をしたか?」

「……………特に、ない…かな。」

「そうか。では次、料理バカ。貴様はどうなのだ?」

「っと…特にねぇかな。」

「盲目、貴様は?」

「うーん、特に異常はなかったよ。」

「…そうか。ポイントの変動は無し、か。」

「じゃあ、今日は…」

「ああ。今日最もポイントを多く獲得したのは、盲目だ。特別に、貴様にはボーナスをやろう。」

「ありがとうございます〜♬」

ボーナス?

そういえば、星也クンが説明してくれてたっけ。

…ボーナスか。

みんなは何を貰ってるのかな?

 

「メダルだよ。」

後ろには、帰ったはずの天理クンがいた。

「帰ったんじゃなかったの?」

「アイツらが報告会とか笑える事してんのに、帰るわけねーだろー?」

「ああ、そう…で、ボーナスってなんなの?みんなは、どうやってラッセクンに従ってるんだい?」

「あーあー、ここで話す事じゃねーな。アイツらの話がひと段落ついたら、ちょっと一回表出て話そっか。」

「あ、うん…」

ボクは、天理クンに連れられて外に出た。

 

 

 

 

「天理クン、ラッセクンが言ってたボーナスって、一体なんなの?」

「ああ、俺も詳しい事はわかんないんだけど…アイツら、メダルを貰ってるみたいよ?」

「メダル?」

「そっ。ラッセの野郎、どうやったのかは知らないけど、今メッチャメダル持ってるらしいんだ。1000枚とか、それ以上かな。それをね、みんなにボーナスとして配ってるんだよ。逆に、ペナルティーとしてメダルや私物を没収する事もあるみたい。なんか、本格的に自分ルールでみんなを縛ろうとし始めてる感じがするんだよねー。」

「…そうだね。でも、ラッセクンはちょっとおかしい事してるのに、なんであの3人はラッセクンのいう事を聞いてるのかな?」

「そりゃあ、ボーナスが欲しいからっていうのもあるんだろうけど…一番の要因は、ラッセクンの持つ王たる者のカリスマ性ってヤツじゃないかな?」

「カリスマ性?」

「大半のヤツらは、そういう人間的な魅力を持ってるヤツに惹かれるもんなんだよ。たとえソイツが、多少頭おかしい事言っててもね。昔から、頭おかしい奴が選挙で選ばれて政界を引っ掻き回すのはよくある事だろ?多分、ラッセクンにもそういう魅力があるからこそ、あんなバカげた事やってるのにみんなついてっちゃうんだろうねぇ。」

ボーナスに、ラッセクン自身の魅力か…

確かに、ラッセクンってよくわかんないけど人を惹きつける才能があるよね。

もしボクが陽一クン達の立場だったら、ラッセクンの言う事を聞いちゃってたかもな。

「まあ、あれでも一応一国の王だからね。内面はどうであれ、何千万人もを従えて導いてきたんだもん、あの3人を手玉に取るくらいは訳ないだろうね。」

「うーん、一応ラッセクンには気をつけた方がいいのかな?」

「そうだねー。ああいう奴と関わると後々面倒だからねー。じゃ、俺はこの辺で。ふわー、ねむ。」

天理クンは、自分の独房に戻っていった。

 

 

 

 

【独房】

 

今日は、色々大変だったなぁ。

ラッセクン達が星也クンに反発して国を作っちゃったり、才刃クンが引きこもって出てこなくなっちゃったり…

みんな、最初は仲良しだったのに、なんでこんな事になっちゃったんだろう。

やっぱりみんな、ここに何日も閉じ込められて、仲間が何人も命を落として、もう限界がきちゃってるのかな。

みんながバラバラで好き勝手やってるままじゃ、全員で一緒にここを出るなんて無理だよ。

…ねえお父さん。

ボク、一体どうしたらいいのかな。


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