ダンガンロンパPRISON   作:M.T.

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第4章 真相編

【ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン編】

 

俺は、物心ついた時から人の上に立つ存在だった。

父を失ってからは、俺が民を導いてきた。

この俺が間違うわけがない。

敗北などあり得ない。

俺こそが、シルヴェンノイネン王国の、高貴で正統で純然たる国王なのだ。

…そう思っていた。

 

モノクマに、第2の動機を発表された時だった。

俺は嫌な予感がして、すぐに映像を確認した。

映像には、炎の海に沈む俺の国、そしてそこで悶え苦しむ民が映っていた。

俺は、混乱と恐怖で頭が真っ白になった。

俺がこんな場所で道草を食っている間に、俺の民や家臣、そして俺の家族は凄惨な目に遭っていたというのだ。

俺は、すぐにそこにいた13人のうち誰か1人を殺す事を考えた。

俺は、なんとしてでも生きてここを出なければならないのだ。

俺を待っている民や城の者達のために。

そのためなら何を犠牲にしても構わない、そのつもりでいた。

俺は今まで国を守るために何万人も殺してきた。

それに比べれば、13人の犠牲なんて大した事はない。

…今更何を迷う事がある。

このまま何もせずに大事な物を失うくらいなら、殺ってやる。

 

…決めた。

俺は盲目を殺す。

アイツは体格的に不利だし、おまけに障害持ちだ。

アイツなら確実に殺せる。

…やるしかない。

 

「…おい、盲目。」

「ん?なんだい国王様?」

「あとで3階の便所に来い。」

「ん〜、なんでまた急に?」

「…この学園に関する重要な情報を見つけた。言いにくい事だから、この事は誰にも口外するな。」

「そういう事なら、喜んで行くけどさ。」

フン、どいつもこいつも馬鹿ばかりだ。

何も疑わずに俺の話を鵜呑みにしやがった。

やはり、コイツらに生き残る価値は無い。

俺一人が生きてここから出てやる。

俺は何も悪くない。

これは国を守るために必要な犠牲なんだ。

…それに、俺が殺す前にダークパープルが…

 

…いや、もう言い訳はよそう。

俺は、トイレにあった花瓶を持った。

「それで、国王様。話っていうのは…?」

「…悪い、盲目。」

「…え?」

俺は、盲目の頭目掛けて花瓶を振り下ろした。

…俺の守りたい物のために…死んでくれ!

 

『仲間の誰かを殺したクロは『退学』となるが、自分がクロだと他の生徒に知られてはならない』

 

「…ッ!!」

 

ガシャンッ

 

俺は、横の壁に花瓶を叩きつけた。

花瓶は粉々に割れて破片が飛び散った。

「…国王様?どうしたんだい?」

「悪い、肘がぶつかって花瓶を落とした。」

「…そっか。それだけならいいんだけど。…処理するの手伝おうか?」

「いや、いい。目が見えないお前が手伝っても足手まといなだけだ。」

「そう。それで、大事な話っていうのは?」

「…ああ、それは俺の勘違いだ。悪かった。…忘れてくれ。」

「…変な王様だねぇ。」

…できない。

迂闊に手を出せば、俺が疑われて処刑される。

そうなれば、俺の帰りを待つ者達が路頭に迷う事になる。

それだけは絶対にあってはならん。

 

「じゃあ、オイラはこれにて失礼するよ。」

「…ああ。」

…俺も冷静ではなかったな。

国を救わなければという思いに駆られ、判断を誤るところだった。

人を殺した事が誰かにバレれば、ソイツが死んで国も救えず、俺は犬死に…

最悪な結果を招いてしまう。

…一度頭を冷やそう。

 

 

 

 

結局、俺はその晩誰も殺さず床に就いた。

その晩、ミカン頭を殺したのは鳥娘だった。

アイツは、自分なりに罪を隠そうと努力していた。

…だが、アイツは鳥を質に取られてあっさり口を割った。

アイツは、最期まで甘かった。

結局、奴は罪を背負って生きていく覚悟が足りなかったのだ。

その結果、悲惨な末路を遂げた。

…俺はああはなりたくない。

絶対に最後まで生き残ってやる。

 

 

 

 

そして、第3の動機…秘密が配られた日だった。

俺の部屋に設置されていた電話が鳴った。

…まあ、内線電話だから脱出の手がかりになったりはしないんだがな。

しつこく鳴らされて迷惑なので、とりあえず出る事にした。

「…なんだ。」

 

『はじめまして、国王陛下。…ああ、正確にははじめましてではありませんね。』

なんだコイツ…変声してる!?

「!!?誰だ!?」

『おっと、大きな声出さないでくださいよ。いくら防音とはいえ、会話を聞かれたらと思うとヒヤヒヤするんです。』

「…それで、誰なんだお前は。」

『…それ、そんなに重要ですか?全く、アナタは本当におかしな方だ。』

…コイツ、すっとぼけやがって…

「…もういい。何の用だ。」

『実は、アナタに折り入ってお願いしたい事があるのです。』

 

『…アナタには、皆のリーダーになっていただきたいのです。』

「…?」

『ここだけの話ワタシは、訳あってこのゲームの黒幕と通じているのですが、このゲームの視聴率を上げる工夫をしろと言われているのです。全く、人遣い荒いですよね、あのクマ公共。』

…コイツ、まさかとは思うが俺に愚痴るためだけに内線電話をかけたわけじゃないだろうな。

 

「それで、なぜ俺がアイツらのリーダーに?」

『…ワタシ、思うんです。穴雲様はリーダーとして優秀ですが、あくまで彼の才能はアナウンサーです。人を指揮する才能に関しては、決して【超高校級】ではありません。本当は【超高校級】であるアナタの方がリーダーに向いてるんです。』

「だから、なぜ俺がアイツらのリーダーにならなければならんのだ?」

『その方が面白い物が見れそうだからですよ。』

「…性格悪いな、貴様。」

『ありがとうございます。』

褒めてない。

「…で、具体的には何をすれば良い?」

『おや、すんなり引き受けてくださるんですね。』

「どうせ断れば碌な目に遭わんのだろう?」

『おや、そこまで想定済みですか。それなら話は早い。アナタには、皆のリーダーになっていただきたいのです。ああ、遠慮する事はありませんよ。アナタはリーダーなのですから。皆には好き勝手していただいて構いませんよ。むしろ、少しくらい過激な方が…』

「…映像の視聴率のためならなんでも利用するのか、貴様は。」

『まあ、受けた命令には逆らえませんし。こっちにもこっちの事情があるんですよ。それでは、ワタシはこの辺で。』

「待て。」

『…なんですか、国王陛下?』

「とぼけるな。続きがあるだろ。話せ。」

 

『おや、そこまでお見通しでしたか。さすがは国王陛下。』

「フン、貴様のような奴がわざわざ俺に電話をかける用件なんて、これしかないだろう。…誰を殺せばいいんだ俺は?」

『物わかりが良くて助かります。…別に誰でも構いませんよ。アナタにとって不要だと思う人なら誰でもね。あ、安心してください。ちゃんとバレないトリック考えて来ましたから。』

「待て。俺が裁判で勝てば、貴様はどうなるんだ?」

『おや、心配してくださるんですか?優しいですね。』

「違う。貴様が俺に取り引きを持ちかけるメリットがわからないと言っているんだ。貴様が裏切らない保証は?」

『ああ、そういう事ですか。安心してください。ワタシは内通者ですよ?殺されるわけないじゃないですか。…ワタシにいい考えがあります。アナタは黙ってそれを実行すればいいんです。そうすれば、アナタは国を救えて、ワタシはゲームを盛り上げられる。お互いにwin−winでしょう?』

「…フン。」

『ご協力いただけて幸いです。…あ、もしこの事を口外したら殺しますよ?』

「…勝手にしろ。」

 

正直、コイツの事は一切信用出来ん。

だが、それ以外に確実に国を救える方法があるわけでもない。

だったら、コイツに協力するしかない。

俺は、何も間違ってない。

…そうだよな?

 

 

 

 

結局、その次の日カマキリの卵と中華娘を殺したのは侍だった。

…アイツが女だったのは正直意外だったが、今までの行動を振り返れば全て辻褄が合う。

しかし、奴の死に方も悲惨だったな。

アイツも、途中までは頑張ってはいたがやはり詰めが甘すぎた。

俺は、絶対にああはならん。

国のため、民のため…俺は絶対に計画を遂行してみせる。

 

 

 

 

俺は、アイツに言われた通り、リーダーとして奴等を導いた。

コイツらを利用する事に心が痛まなかったわけじゃない。

だが、これは仕方のない事なのだ。

そして、動機が発表された直後、例のヤツから懸賞金の法則を教えられた。

…何故なのかはわからんが、誕生月と誕生日を掛け算しているらしい。

俺が殺すのは、メカと和服だ。

アイツらさえ殺せれば、俺はその金で国を救える。

…まあ、あのクマ共が本当に金をくれれば、の話だが。

だがこれ以上マシな方法があるわけでもないし、国を救える可能性が転がっているのならそれに賭けるしかない。

 

 

 

 

ヤツの言う通り、俺は美術室に罠を仕掛けた。

ヤツ曰く、無人トリックなら犯人の絞りようがないという事だった。

これがうまくいけば、俺は国を救えるんだ。

…大丈夫、俺は無罪だ。

俺は、今までの自分勝手な罪人共とは違う。

俺は、国を救うために多少の犠牲を払うだけだ。

国を守るための犠牲ならば仕方ない。

ましてや、数千人数万人の命ならまだしも、犠牲にするのはたったの8人だ。

俺は、アイツらを踏み台にしてでも国を救う。

これは正しい行いなんだ。

誰かを犠牲にしなければ、何一つ救う事など出来んのだから。

俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪…

 

 

 

 

俺は何も間違っていなかったはずだ。

…それなのに、なぜ俺はこんな目に遭っている?

後ろからクマ共に追われ、廊下には罠が張り巡らされている。

捕まればきっと殺される。

嫌だ、俺はまだ死ねないんだ!!

 

ガッ

 

「ッーーーーーーーー!!!」

 

足に激痛が走った。

足が動かない。

何かに挟まれているのか?

ふと足元を見ると、俺の足はトラバサミで噛み砕かれていた。

 

「ぎっ…ぐぅうううう…!!」

 

もう左足は使い物にならない。

だが、逃げなければクマ共に殺される。

俺は一体どうすれば…

 

「これ、使って。」

 

聞き覚えのある声。

振り返ると、そこには剣を持った女が立っていた。

その姿は、俺の妹のアイナそのものだった。

「アイナ…」

「…こっちよ。」

アイナは俺に剣を渡すと、そのまま廊下の奥へと走っていった。

「待っ…!」

 

ガシッ

 

俺の足はトラバサミに挟まれて動かない。

…だったら、今取れる行動はひとつだ。

 

「ッ、あぁあああああああああああッ!!!」

 

俺は、足を切り落とし、その剣を杖代わりに前に進んだ。

どんなに醜くてもいい。望まれないというのなら、もう王の座すら要らん。

こんな所で死ぬわけにはいかない。

俺は何がなんでも生きてここを出るんだ。

そして、俺の愛する故郷へ帰る。

それが、今俺が望む、最後の希望だ。

 

 

 

 

あれからどれくらい進んだだろうか。

目がかすんで、右足と剣を掴む手もおぼつかない。

もう、足の痛みすら感じない。

俺は、やはりここで死ぬのか…

その時、目の前にアイナが見えた。

 

「ア……ィ……ナ………………………」

「もう少しよ。頑張って。」

「…!」

 

そうだ。

俺は何を諦めていたんだろうか。

まだ希望はある。

俺は、絶対に生き延びて故郷に帰るんだ。

…光が見えた。

もうすぐ出…

 

 

 

「…。」

は?

なんだこれは。

どうなっている。

目の前が火の海だ。

 

「ーーーーーーー。」

…嘘だ。

そんなバカな話があるか。

目の前で燃えているのは、紛う事なく俺の故郷だった。

国、民、そして城の者達…

俺の全てが目の前で燃えている。

「…!」

 

「…………あ、あ゛ぁあ…あづい、いだい゛ぃい…誰か、助げで…」

「あ゛ぁああ…国、王…ざま゛…お願い、助げ…」

全身が燃えた民達が、俺のいる廊下まで登ってきている。

 

「ヒッ…!く、来るな…!俺は関係ない…!」

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

これは夢だ!!

覚めろ、こんな悪夢早く覚めろ!!

 

「待っで…お兄様……置い゛てかないで……………」

 

俺の足を掴んだのは、アイナだった。

でも、さっきまでの美しい姿ではなく、全身が灼け爛れた醜い姿だった。

「や、やめろ!!俺は、死にたく…」

 

ズルッ

 

足を掴まれてバランスを崩した俺は、そのまま崖から落ちた。

だが、間一髪崖を掴んだ。

 

「あっ…た、助かった…」

 

『うぷぷ、そのままじゃ苦しいでしょ?助けてあげよっか?』

「あっ…た、頼む!!助けてくれ!!金ならいくらでもやるし、なんでもする!!だから…お願いします、俺を助けてください!!」

『あ、そう?じゃあ助けてあげるよ!』

 

ザンッ

 

…え?

 

あ、あぁああああああああああぁああああああああああああああああああああああ!!!

 

Miksi(なんで)…!?

 

miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi…

 

miksi‼︎?

 

『うぷぷ、助けてほしいって言ったじゃん。今すぐ楽になるから安心しな。』

 

いやだ、死にたくない!!

 

Ei(いやだ)…ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei…

 

Ei‼︎

 

頼む、誰か…助け…

 

 

 

 

 

「あーあ、殺っちゃったよ!全く、なーにが国を守りたい、だ!結局自分の命が惜しかっただけなんじゃん!だったらそうだって最初から言えば良かったのに!そうやって自分の事を棚に上げて人を見下してるからそんな目に遭うんだよ!自分の罪から逃げてんじゃないよ、クズが。…かわいそうに、オマエなんか王の器じゃなかったんだよ。」

 

 

 

 

 


 

 

 

【入田才刃編】

 

僕は弱い。

だから、ずっと苦しい思いをしてきた。

それはこれから先もずっと変わらないんだと思っていた。

…あの日までは。

 

 

 


 

【数年前】

 

「おい、チビ!」

「は、はい…?」

「『は、はい…?』じゃねえよこのダボがァ!!」

「ひっ…す、すみません…!」

「ギャハハ!ちょっと脅かしてやっただけなのによ!コイツマジで弱えな!」

「おい入田!お前、頭良いらしいな。ちょっと俺のレポート代筆してよ。あと、テストもカンニングさせろよ。」

「あ、あとゲームも得意らしいじゃん?授業サボってゲーセン付き合え。」

「そ、そんな…そんなの、できない…です…」

「あぁ!?」

「ヒッ…!」

「テメェ、まさかとは思うが俺達に逆らおうってんじゃねェだろうなぁ?この、ゴミクズがァ!!」

 

ガッ

 

「ひっ…ご、ごめんなさい…!や、やります…やりますから…!許してください!」

「最初っからそう言ってれば良かったんだよ、ゴルァ!!」

「ギャハハ!あーあ、かわいそうに。次からは発言に気を付けろよな!」

 

 

 

 

「…あーあ、今日もいじめられた。」

「にーちゃん大丈夫?」

「才牙…」

「にーちゃんは俺と違って頭いいんだから、あんな奴らの言う事なんて聞く事ないよ。」

「…無理だよ。僕、弱いし…」

「そうだ、俺、いい事思いついた。」

「…え?」

「にーちゃんがいじめられなくなる方法!大丈夫、俺に任せて!」

「…?」

 

 

 

 

次の日、僕宛に東京のある著名な学者からメールが来た。

それは、僕が思いついた理論を是非とも一緒に研究したいという内容だった。

 

「才牙、これは一体…」

「俺がその先生に直接にーちゃんの自由研究を送ったんだよ。その人、助手を募集しててさ。ウチのにーちゃんはすっごい頭いいから助手にどうですかーって。」

「…そんな、僕なんかが東京の偉い先生の助手なんて…才牙、お前なんて失礼な事を…!」

「何言ってんだよ!その人のとこで研究させてもらえって!にーちゃんは、スッゲー頭いいって、俺知ってっから!…それにさ、にーちゃん、俺にはよくわかんねーような難しい本を読んでる時はなんか生き生きしてるから、俺はにーちゃんに好きな事続けて欲しいんだよ!」

「…才牙。」

「ほーら、わかったらちゃっちゃと準備済ませてこいよ!次帰ってくる時は、メッチャ偉い学者になってこいよ!」

 

 

 

 

それから、僕は弟の才牙に紹介してもらった先生のもとで研究をさせてもらえる事になった。

その人は、僕にとても良くしてくれた。

僕も、その人のおかげで新たに数々の理論や発明品を生み出し、今までにない達成感を覚えた。

そして何より、僕の研究でみんなを喜ばせる事ができるのが、何よりも嬉しかった。

僕の事は瞬く間に世界中で有名になって、中には一緒に研究をして賞を取らないかと言ってくれる人もいた。

そして、僕はついに史上最年少でノーベル賞を受賞した。

僕は『神童』として崇められ、町の人達はみんな掌を返して僕に媚びを売るようになった。

最初は純粋な探究心だった。

でも、僕の周りのみんなの反応を見て、僕の中で何かが歪んでいった。

 

「入田クン!あん時はゴメンな!俺もちょっとカリカリしててよ。なあ、今までの事は謝るから、俺と友達になってよ!」

「俺も俺も!入田クン、お近づきの印といっちゃあなんだけど、何か欲しい物とかあれば買ってくるよ。何か食べたい物とかある?」

僕にすり寄ってきたのは、1年生の時散々僕をいじめてきた奴らだった。

僕にはわかる。コイツラは、『天才工学者の友達』という称号が欲しくて僕に媚びを売っているだけだ。

ムカつく。本当は友達だなんて微塵も思ってないくせに。

…復讐だ。僕の苦しみを思い知らせてやる。

「…僕ちゃんとオマエラが友達?ふんっ、調子に乗るなサル共!この圧倒的で天才的な僕ちゃんが、オマエラみたいなバカとつるむわけないだろ!身の程を知れ、雑魚が!!」

「ッ…!」

…そうだ。

僕は特別なんだ。

そこら辺の有象無象の雑魚共とは次元が違う。

この僕がこんなゴミ共にいいように利用されていいわけがない。

だって僕の方が、コイツラをうまく利用できる。

僕こそが、人の上に立つのにふさわしい。

僕は、弱くなんてない。

僕は、誰よりも賢くて強いんだ!!

…そう思っていた。

 


 

 

 

…死にたくない。

死ぬのが怖い。

景見も、白鳥も、羽澄も、日暮も、みんな死んだ…

そして、あんなに強かった舞田と朱と不動院もあっけなく殺された。

もし次に僕が狙われたら…

…いやだ、いやだいやだいやだ!!死にたくない!!

わけもわからないまま誰かに殺されるくらいなら、もう外になんか出たくない!!

もう誰も信用しない!!

自分の身が可愛くて何が悪い!!

僕は、死にたくないんだ!!

 

『才刃クン。』

 

…狛研?

どういうつもりだ、コイツ…

まさか、僕を殺…

 

『調子はどう?ご飯、ちゃんと食べた?』

 

…は?

何言ってるんだコイツ…

 

『ねえ、才刃クン。今回は、美術室と音楽室と物理室と…それから、情報管理室が開放されたんだ。気が向いたら行ってみるといいと思うよ。情報管理室には、才刃クンの好きなパソコンもたくさんあったしさ。』

 

うるさい、黙れ黙れ黙れ…!

本当は僕を殺したいって思ってるくせに…

そんな言葉で、僕を騙せると思うな!

 

『…ねえ、才刃クン。ボクね、才刃クンとゲームがしたくてちょっと練習したんだよ。今度、一緒に遊ぼうよ。』

 

黙れって言ってるだろ!

いい加減にしろ!!

なんで…なんでオマエはそんなに裏切り者の僕に優しくするんだよ!!

そんな事言われたら、僕がみじめになるだけじゃないか!!

気色悪いんだよ、早くどっか行けよ!!

…これ以上、僕を弱くしないでくれよ…!

 

 

 

 

それから、狛研は毎日毎日しつこく僕の部屋のインターホンを鳴らしては、面白くもない話ばかりしてきた。

最初は、僕をいじめてたヤツらみたいに僕に媚びを売りたくてやってるのか、それか僕を油断させて殺すためにわざわざこんな事をやっているんだと思ってた。

でも違ってた。

アイツは、今までのヤツらとは違う…僕に媚びを売るわけでも、見下すわけでもなかった。

アイツは、僕の事を本当に友達だと思っていた。

今まで、誰も僕と対等に接してくれるヤツなんていなかった。

…いや、違うな。

あえてそういうヤツを寄せ付けないようにしてたんだ。

だけど、本当は…

 

 

 

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

 

 

 

…何の音だ?

部屋の中からの音じゃないな。

…さては、狛研がインターホンを押しっぱにしたまま外で騒いでるな?

ふんっ、アイツめ。

弱気になっている時に限ってくだらんドッキリを仕掛けてきおって。

仕方ない、たまには乗ってやるか。

 

ガチャ

 

「おい!うるさいぞ!ちょっとは静かにし…」

 

ドッ

 

 

 

「ーえ?」

 

…なんだ、今のは…

まるで、身体を何かで突かれたような…

「!」

口から生温かい何かが溢れて頬をつたう。

それを手に取って確かめると、指が真っ赤に染まっていた。

「…血?」

ふと腹を見ると、穴が開いてそこからジワジワと血のシミが広がっていた。

 

「ッ、がはっ…ゲホッ…!」

 

なんで…?

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!?

 

いやだ、嘘だろ…?

こんな、わけもわからないまま死ぬのか?

いやだ!!

死にたくない!!

クソッ、癒川を呼ばないと…

チクショウ、なんで血が止まらないんだよ!!

止まれ、止まれ!!

いやだいやだいやだ!!

僕の発明は、世界を救う…僕がこんなところで死ぬわけにはいかないんだ!!

僕は、誰よりも強い!!

この僕がこんなところで倒れるわけが…

 

『調子に乗ってんじゃねえよ、チビ!お前はこれからもずーっと弱いままなんだよ!』

 

 

 

…あ。

 

思い出した。

 

…そうだった。僕はずっと弱い奴だったんだ。

それは、今も変わらない。

 

僕は、今まで自分を強いんだと言い聞かせて、周りを見下して生きてきた。

そうでもしないと自分の弱さが浮き彫りになるから。

でも、本当はわかってた。

僕は、あの頃と全く変わらない…弱くて惨めな人間なんだ。

…これは罰だ。

自分の弱さから逃げて人を見下し続けた僕への罰…

…あーあ、最悪。

なんでこんな事、死に際に思い出しちゃうかな。

これじゃ、狛研達に合わせる顔が無いや…

 

…狛研。狛研か。

アイツは、こんな救いようのない僕に友達だと言ってくれた。

僕が本当に欲しかったのは、アイツみたいな強さだったんだ。

僕も、アイツみたいに強くなりたかった。

その望みはもう叶わないけど、せめてアイツらに僕の想いを届けたい。

…どうか、届いてくれ。

 

「ッ、あー…これはもう無理、だな…ガハッ、僕ちゃんはもうこれまでみたいだ…じゃあな、グズ共…後、頼んだ…」

 

 

 

ドサッ

 

意識が遠のいていく。

何も見えない。

もう身体が少しも動かない。

…これが、死ぬって事なのか…

最期にもう一回だけ、めいっぱいゲームしたかったなぁ…

…あーあ、こんな事になるなら、アイツのゲームの誘い受けとくんだった。

 

 

 

「…………………。」

 

 

 

 

 

「あーあ、死んじゃったよ。周囲から孤立して現実から逃げようとするからそんな目に遭うんだよ!最期までオマエは弱いままだったね。そのくせ、すぐに調子に乗ったり人を見下したりして自分で自分を貶めるようなマネばっかりしてさぁ。…結局、オマエは一体何がしたかったの?」

 

「コイツらって、ホント惨めだよね。自分の弱い部分を払拭するために色々頑張ってたつもりなんだろうけど…結局はそれが自分の首を絞めてた事に気がつかないなんて、皮肉な話だよ!こういうヤツらに限って、自分は特別だと勘違いしてイキっててホントムカつくよね。…まあ、とっくに死んでるから今からムカついても仕方ないんだけどね!うぷぷぷぷ!」

 

 

 

 

 


 

【???編】

 

まずは一人…

ラッセなら、確実に誰かを殺して外に出ようとするはずだ。

…そりゃあ、国民の命には代えられないもんね。

だけど、アイツには勝たれちゃ困るんだよね。

だってこっちとしては、ああいう独裁者が場を執り仕切って、ソイツが目の前で処刑された事でリーダーを失って混乱に陥るっつー展開を想定してるんだからさぁ。

 

…別に、ラッセの野郎には恨みがあったわけじゃないしこっちだってやりたくてやってるわけじゃない。

アイツを利用する事に心が痛まなかったわけじゃない。

でも、これは必要な事なんだ。

…願いを叶えるために。

大丈夫、これで良かったんだ。

何も間違った事はしていない。

だって、全ては『あの人』のためにやってる事なんだから。

 

 

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