ダンガンロンパPRISON   作:M.T.

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章タイトル元ネタ『されど罪人は竜と踊る』です。

矛盾があったから編集したぜい!!

ではではどじょ。


第5章 されど罪人は敗北を知る
第5章(非)日常編①


才刃クンとラッセクンが死んだ。

ボク達は、仲間を半分以上失ってしまった。

…でも、絶望してしまったらクマさん達の思うツボだ。

ボク達は、絶対に諦めない!

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

…あーあ。

またこれだよ。

全く、毎朝毎朝飽きないよね。

おかげで目覚めが最悪だよ。

…とりあえず食堂に行こう。

 

 

◇

 

 

【食堂】

 

「…おはよう。」

「ああ、おはよ。」

「おはよう、狛研さん。」

「おはようございます。」

「…おはよう。」

「…………………………ん。」

 

「…あ。」

みんな元気がなかった。

…そりゃそっか。

昨日あんな事があったんだもん。

元気なんて出るわけないよ。

…天理クンは今日も遅刻か。

 

「誰が遅刻だって?」

え?

「おっはぁ。」

天理クンは、普通に席に座ってこっちに手を振っていた。

「て、天理クン!?」

「なっ…さ、財原テメェ!!」

「えっ、やだなぁ栄クン。そんなに興奮しないでよ。ってか、今まで俺がいるのに気付いてなかったの?ひどくね?」

あー…忘れてた。

そういえば天理クンってこういう子だった。

っていうかこの子なんかちょっとクマさんっぽくなってるような気が…

「テメェ!!目障りなんだよ、消えろ!!」

「えーなにそれひどい。なんでそんな事言われなきゃならんのさ。俺泣いちゃうよ?」

「ッ…!!とぼけんじゃねえ!!テメェが今までしてきた事、忘れたわけじゃねェからな!!」

「そうだよ。財原君、君さぁ。日暮君や翠君…それに神座君にした事、覚えてるよね?」

「え、なにそれ知らない。ってかさ、詩名クン。キミさぁ、日暮君日暮君うるさいんだよ。あ、わかった!もしかして、日暮サンの事好…」

 

ガッ

 

「あっ…!」

ゐをりちゃんが、天理クンの胸ぐらを掴んだ。

「………消えろ。外道が。」

「ひえーっ、こっわ。」

「ちょっと、やめなよゐをりちゃん!」

「そうだよ、何があったのか知らないけど…でも、クラスメイトで争うなんて間違ってる!」

 

『そうそう!オマエラってさぁ。ホントにケンカが好きだよね!』

 

「なっ…モノクマ!!」

『フッフッフ。全く、皆様朝から元気ですねぇ。…昨日あんな事があったというのに。』

「なっ…誰のせいだと思って…!!」

『ん?誰のせいって…ラッセクンでしょ?違うの?』

「テメェ…!!」

『キャー怖い!栄クンってばコロ助剥き出しじゃん!』

『殺気ですよ学園長。コロ助じゃないナリよ。』

『おっと失礼。』

何やってんだろあそこ。

 

「君達がわざわざ来たって事は、今回もエリアを開放したんだよね?そのエリアを発表したらさっさと消えてくれるかな?」

『おや、穴雲様はワタクシ達だけには辛辣ですねぇ。【超高校級の毒舌】を名乗ってみてはどうです?』

「…。」

『おっと、こんな無駄話してる場合じゃなかった。さっさと話さないと時間がもったいないよね!』

「キミ達が言い出したんじゃん。」

『じゃあ今回開放されたエリアを発表するよー。』

「無視かよ。」

『今回開放したのは、化学室、プラネタリウム、看守長室、それから研究室が3部屋だよ。それと学園長室もあるけど、行ってみるだけ無駄だと思うよ。』

「行ってみるだけ無駄…?どういう事なんだろう?」

「3部屋…って事は、これでやっと全員分開放されたんだね。」

「やった!!ボクの研究室!!」

 

みんなが刺すような視線でボクを見た。

「…あ。ごめん。」

つい浮かれちゃった。…みんな、それどころじゃないのに。

 

『…あ。忘れてた。』

え?

『今回は、先に動機の発表をしなきゃいけないんだった!』

「んなっ…!」

「動機だと!?ふざけんじゃ…」

『人の話は最後まで聞こうよ栄クン!…あ、人じゃなくてクマだったね。』

「どっちでもいいよ。そいで?今回の動機は?」

『今回は、動機っていうか…まあ、ちょっとしたルールの変更だよ。』

「…ルールの変更?」

『そうです。ワタクシ達は、昨夜徹夜して悩みに悩んだのです。』

『徹夜って言ってもちょっと寝たけど。』

「それ徹夜って言わないでしょ。」

『…それで考えた結果、ある結論に行き着いたのです。』

「ある結論?」

『はい。皆様が殺人を躊躇するのは、裁判で誰かがおしおきされるからなんじゃないかとね。』

『クロが勝ったら勝ったでそれ以外のみんなが死んじゃうもんね。自分以外の全員を殺した罪悪感に押し潰されて生きていくのもつらいでしょ?』

「だったら最初からおしおきしなきゃいいんじゃ…」

『そういうわけにはいかないんだよ詩名クン!だって、それじゃあゲームにならないじゃん!ただ、今回はちょっとおしおきのルールを変更してみようと思うんだ。まああくまで実験的なルールだけど。』

『と言っても、簡単な話です。仮にクロを外した場合におしおきする人数を減らすだけです。』

「それって…」

 

『今回は、特別ルールだよ!学級裁判で得票数が1位になった人は、クロシロ関係なくおしおきするよ!』

「じゃあ、それ以外の人は…」

『うん。おしおきはナシ。』

「なっ…なんだよそのルール!今更ルール変更するとか、どういうつもりだ!?」

『じゃあ栄クンは前のルールの方が良かったんだ?』

「うっ…」

『じゃああとで手帳確認しといてね。ボク達からの用件は以上です!』

『フッフッフ。ご機嫌よう皆様。』

二匹は意気揚々と帰っていった。

 

「くそッ…なんなんだアイツら!!」

「…でも、良かったよねー。」

「え、何が?」

「クロを外した時に処刑される人数が一気に減ったんだもん。俺らの負担も減ったじゃん。」

「…ッ。」

「あれ?どうしたの栄クン?もしかして今、ホッとした?仲間が死ぬ事には変わりないのに?最低だね、キミ。」

「なっ…うるせェなクズ!!それはテメェが言い出したから…」

「クズ、か。自分の事棚に上げてよくそんな口利けるね?」

「ちょっと、やめてください二人とも!!…どうして…クラスメイト同士なのに、なんでこんな…私達の絆って、こんなに脆いものだったんですか…!?うっ…うぅっ…」

「…治奈。」

「治奈ちゃん、大丈夫?」

 

「…ねえ、狛研さん。気づいた?」

「…うん。」

「モノクマが、何の考えもなしにあんなルールを提案するわけがない…」

「うん。…何が目的なんだろうね。」

 

「あい邪魔邪魔。ちょっとどいてね。」

天理クンは、間に割り込んでボクと星也クンを引き離した。

「はい俺からちょっとしたていあーん。」

「なっ…テメェ、いつの間に…」

「生産性のない話ばっかすんなって何回言えばわかるのさ。どうでもいいから早く探索始めようよ。」

「テメェが言い出したんだろ…」

「それでグループ分けだけど…どうするのがいいと思う、リーダー?」

「…一応、考えてはみたけど…」

「おっ。さすが!仕事が早いね!」

「…はい。」

 

化学室、研究室1…僕、癒川さん、財原君

プラネタリウム、研究室2…栄君、神座さん

学園長室、看守長室、研究室3…狛研さん、詩名君

 

「わーい、俺は化学室ー。いやー、でも悪いねぇ。夫婦水入らずを邪魔しちゃって。」

「君を監視しないわけにはいかないからね。怪しい動きだけはするなよ。」

「はーい隊長ー。」

「狛研君。また一緒になったね。」

「おう、神座ちゃん。一緒になったな。」

「………うん。」

「栄クン、どうせ神座サンにエッチな事するつもりなんでしょ。」

「なっ…テメェは黙ってろ胡散臭い原!!」

「…………………。」

「はーこっわ。ちょっとマジでその目やめてよ神座サン。」

「ちょっと、喧嘩しないの。それじゃグループ分けしたし、解散!気付いたことがあれば、どんなに小さな事でも報告してね。」

「はーい。」

 

 

◆

 

 

また穴雲クンと一緒かー。

ホント、勘弁してよ。

ってかアイツ、連続で俺を同じグループにするとか、絶対俺の事好き♂じゃん。

俺、狛研サンみたいなわがままボディのねーちゃんにしか興味ないんだけどなー。

なーんちって。

さーてと、ほなちゃっちゃと探索終わらせちゃいまほかー。

 

「ふんふ〜ん♪」

「ちょっと、財原君。話聞いてる?」

「え、ごめん。何の話だっけ?」

「…もうっ。化学室と研究室、どっちを先に探索しようかって話をしてたんだよ!」

「あ、そうだったね。んー…穴雲クンと癒川サンは、どっちを先に探索したいわけ?」

「なんで僕達の意見を聞くの?今は君の意見を聞いてるんだけど。」

「いいじゃん。教えろよ。」

「…はぁ。僕達は、化学室を先に調べたいんだ。これで満足?」

へー、2人とも化学室推しっすか。

…じゃあ。

 

「俺は研究室がいいなー。」

「…君さぁ、わざと言ってるでしょ?」

「え、何が?」

「…はあ、もういいよ。じゃあ特に希望が無いみたいだし、先に化学室調べてもいいよね?」

「ちょっとー。聞くだけ聞いて俺の意見は無視ー?」

「…君に意見を聞いた僕がバカだったよ。さてと、じゃあ入るよ。」

っはー、しっかし、扉に描かれてる絵は相変わらずきったねーな。

なんだこれ?試験管?

まあいいや。とりま入ろーっと。

 

へー。

普通の化学室の10倍は広いね。

器具は一通り揃ってるっぽいし…

薬品も、普通に使われるようなメジャーな物から、超危険な放射性物質まで色々あるね。

「治奈、ここにある薬品を調べてくれ。」

「はい…分かりました。」

「俺は何すればいいの?」

「何もしなくていいから、とにかく化学室の物には触るな。」

「へーい。」

 

って言われて大人しくするバカがどこにいるかっつーの。

へー、塩酸に硫酸、水酸化ナトリウム、青酸カリ、ヒ素、セレン、水銀、サリン、テトロドトキシン…毒だけでも数えきれないくらいあんじゃん。それにウランとかプルトニウムまで。

どれか一個盗んじゃおっと。

…ん?ちょっと待った。なんだこれ?

 

「財原君!?何やってんの!?」

「べ、別に?何にもしてないけど?」

「もし勝手に毒とか持ち出そうとしたらどうなるかわかるよね?」

「お、おぉ…うん。そ、そんな事するわけないじゃないかー!ちょっとは友達の事信用してよ!」

「…。治奈。調べた結果はどうだった?」

 

「…はい。ええっと、私の知っている化学薬品はほとんど全て網羅されてますね。中には、毒性の強い物も…」

「…そっか。」

「…ただ、どうしてもわからない薬品が4つほど…」

「そうなの?」

「はい。一応、危険な薬品かもしれないので、一応別に分けておいたんです。」

「ありがとう。」

「俺にも見せてー。」

癒川サンが見つけてきたのは、どれも瓶に入った液体の薬品だった。

ひとつはラベルにクレハミンXと書かれた薬品、ひとつはクマちゃんの顔が描かれたピンク色の瓶の薬品、あとふたつは、セットで置かれていた赤と青の瓶だ。このふたつには、どっちもドクロマークのラベルが貼られている。

ほーん、なるほどね。

「…それにしても、なんなんだろうねこれ?」

 

『うぷぷぷ!ズバリお答えしちゃうよ!』

「あ、ハg…クマちゃん。」

『ちょっと、財原クン!今ボクの事ハゲって言おうとしたでしょ!』

「はあ?そっちの聞き間違いでしょ?いいから早く薬品の説明してよ。」

『ホンット、オマエってムカつくよね!…まあいいや。まず、そっちのクレハミンXは、強力な睡眠薬だよ!』

「…睡眠薬?」

『そ!でもね、ただの睡眠薬じゃないんだな、これが。…実は、その薬にはね…飲んだ人の記憶を奪う効果があるんだよ!』

「なっ…記憶を!?」

『そうだよ。その薬を飲んだら急に眠気に襲われて、目が覚めたらあら不思議!記憶がなくなっちゃいましたーってわけ。』

「具体的にはどの程度、どれくらいの期間記憶が消えんの?」

『個人差はあるけど、大体飲んだ直前の数分間から数時間の記憶がスッポリ抜け落ちるんだよ。記憶を奪うって言っても、さすがに自分の名前忘れたりするレベルじゃないからそこは安心していいよ。』

「やべーじゃんそれ。なんとかする方法はないの?」

『うーん、一回薬を飲んじゃったら頑張って自分で思い出すしかないんだよね。なんて言ったらいいのかな。記憶が無くなるって言ってもね、完全に消えるんじゃなくて、記憶に鍵がかかる感じなんだ。だから、薬で記憶が無くなってもちょっとしたきっかけで簡単に思い出せるから安心しなよ。』

「なーんだ。」

「でも、悪用されたらマズい薬品だって事に変わりはないよね。僕達で厳重に管理しよう。」

「だねー。…で、クマちゃん。こっちの瓶は?」

 

『そっちの瓶はね…うぷぷぷ。それは、モノクマ印の超強力な媚薬だよ!!』

「!!?」

穴雲クンは、あまりの驚きで珍しく顔芸を披露してくれた。

癒川サンに至っては、目がまんまるだし顔が真っ赤だよ。

『それはもう強力でね。どんなにガードの堅い人でもあっという間にイチコロよ。1mgもあれば三日三晩休まずにハッスルできるよ!』

それって逆に怖くね?

『やったね穴雲クン!これさえあれば自分の子供でサッカーチームが作れるかもよ!』

「やめて。ホントに不愉快。」

『…あ、ただ、いくつか注意点が。これ、絶対100倍に薄めて使ってね。原液のまま使ったらキモチ良くなり過ぎて発狂死するから。あとね。それすっごい揮発性が高い薬品だから、瓶を開けただけでモザイクかけないと放送できない事になっちゃうんだよね。だから、扱う時は必ず化学室にあるマスクをつける事!』

「わざわざそんな注意しなくても、使う予定なんて無いよ。」

「そ、そうですよ…!なんでそんな物置いてあるんですか!」

『えー?つれないなぁ。オマエラのために置いてあげたのに!』

「余計なお世話です!!」

ほーん、なるほどね。

…あ。悪い事思いついた。

さっきの睡眠薬とこの媚薬を組み合わせて使えば、女子相手ににゃんにゃんし放題じゃん。

はー、俺ってつくづく天才だわw

「…財原君、今変な事考えたでしょ?」

「別に?」

「君みたいな人に悪用されても困るし、これはもう処分するよ。」

えー!!?ひどーい!!

穴雲キュンのいじわる!!

『あ、言い忘れてたけど、今から校則に『化学室の薬品の処分を禁止する』っていうルールを追加するよ!』

「なんでそんな事を…」

『だって、せっかく用意した薬を捨てられるとか普通嫌でしょ!とにかく、校則違反したらおしおきだから。』

「くっ…」

ラッキー☆

 

「…それで、この二つの薬品は?」

『ああ、それね。毒と解毒剤だよ。』

「!!?」

『赤い方は『モノトキシンα』。ボクが調合した毒薬だよ!無色透明で無味無臭の液体なんだけど、たった1mgで象をも殺す猛毒なんだ!…って言っても死に至るまでに飲んだ場合は1時間、血管の中に入った場合は5分程度かかるから処置しようと思えばできない事は無いんだけどね。』

「具体的にはどんな風に死ぬわけ?」

『うぷぷ、そんな事気にするんだ?まあいいや。まず、服用してから数秒で体温が劇的に上がって、目眩や頭痛に悩まされて…最終的には胃とか肺をやられて、血を吐いてもがき苦しみながら死ぬんだよ。』

ひえーっ、こっわ。

 

「こっちの青い方は?」

『そっちは『モノキソールω』。モノトキシンαの解毒剤だよ。こっちはモノトキシンαとは違って即効性で、飲んだ場合は3分、血管の中に入った場合は30秒ほどで効果が現れるよ。』

「ふーん。」

『…あ、でも、一個だけ注意点が。』

「何?」

『実はこのモノキソールω、特定の条件下では猛毒になるんだよ。』

「猛毒?」

『最近とある国の地層で発見された、『珀銀』っていう金属があるんだけどね。モノキソールωは珀銀を融かしてその毒性を強める性質を持ってるんだ。…まあ、珀銀は超高級な金属だから持ってる人は多分いないだろうけど…一応要注意ね。』

「了解しやしたー。」

「…なるほどね。ありがとう。用件が済んだんならさっさと消えてくれるかな?」

『うっわ、態度わっる!ふーんだ、もういいもんね!せっかく薬をタダでプレゼントしてあげたのにそんな事言っちゃって、ホンット最近の子って教育がなってないよね!そんなにボクの事が嫌なら、こっちだって出ていきますよーだ!』

なんかクマちゃんが逆ギレして出てったんだけど。

「…さてと。どうしよっか?薬も調べ終わったし、そろそろ研究室行く?」

「そうですね…」

ほーん。移動する感じっすか。

ほいじゃー研究室レッツラゴー。

 

 

◇

 

 

「…ここか。」

目の前に、白い引き戸がある。

引き戸には、赤い十字架が描かれている。

…このドアは。

「多分治奈の研究室だね。」

「…あ、はい…」

「へー、癒川サンの研究室ね。あいご開帳ー!!」

「あっ…」

俺は、引き戸を思いっきりスライドした。

 

「へぇーっ。」

部屋の中は、病室みたいになっていた。

ベッドが3台あって、どれも見た目はシンプルな白だけど、高級品だ。

棚には医療器具や薬品が並んでいる。

…これは輸血パックかな?ちゃんと全員分用意してくれてるのがありがたいね。

へーっ、栄養補給用の軽食まであるんだ。

 

「わーい、ベッドフカフカー!」

「ちょっと、やめなよ財原君!汚い手で触らないで!」

「あの…星也さん。少し言いすぎじゃ…」

「あっ…ごめん…」

「へー、すごいね穴雲クン。俺が鼻ほじった後だってよく分かったね。」

「本当に汚いのかよ!ホント、いい加減にして!」

「やーん、襲わないでー!穴雲クンのエッチー!ケダモノー!」

「誰が襲うか!!」

あーでもホンット寝心地いいわこのベッド。

これなら確かにケガとか病気とか癒せそ…ん?

あれ?なんだこれ…

 

「いい加減にしてよ!全く、君のせいで全然探索ができないじゃないか!!」

「ごめんなちゃーい。」

「もう…」

「あの、でももう一通り調べ終わりましたし…一度戻りませんか?」

「…そうだね。」

えー?もう行くのー?

つまんねーのっ!

 

 

◆

 

 

ー数時間前ー

 

【内エリア 6F】

 

…気まずいな。

神座ちゃんと二人きりとか…

いや、嬉しいよ?嬉しいんだけど…

この子全然喋んねーからな。

それに、財原がこの子の事を【超高校級の絶望】って言ってたし…

…まあ、アイツの言う事を信じたわけじゃねェけど…

「えっと…神座ちゃん。プラネタリウムと研究室、どっち先見たい?」

「…………………任せる。」

「あ、そすか…」

…気まずい。

「あ、えっとさ…じゃあ、プラネタリウムから先に見るか?」

「………そうする。」

 

 

◇

 

 

目の前には、上質な両開きのドアがある。

望遠鏡と星の絵が描いてあるし…ここでいいのかな?

「神座ちゃん、中入ろうぜ。」

「……………。」

ホントに喋んねェなこの子。

どっかのうるさい原とは大違いだ。

 

 

◇

 

 

【食堂】

 

「ぶぇっきし!!!」

「わっ、汚いなぁもう!ちゃんと口を押さえなよ!」

「ごめーん。ほら、俺って人気者じゃん?だからどっかで誰かが噂してるんだねー。」

「そうだといいですね。」

「…治奈、君さ…財原君の扱い方上手くなってきたよね。」

 

 

◇

 

 

【プラネタリウム】

 

「…へぇ。」

なるほどな。

やっぱ、フツーのプラネタリウムよりかなり広いな。

この機械で天井を動かせばいいのかな?

えーっと、これをこうして…

 

ガコンッ

 

「おわっ!?」

いきなり部屋の照明が消えて、天井に星が映し出された。

…しっかし、暗いな…星の光でようやくぼんやりと部屋の様子がわかるくらいだ。

「……………夜空。」

「え?」

「………夜空…………見える………」

ん?ああ、なるほど。

神座ちゃんて、プラネタリウム知らないのか。

「これは本物の夜空じゃなくって、天井に星の絵が描かれてるみたいなモンなんだよ。」

「……………。」

 

あれっ。

落ち込ませちゃった?

…夢壊すような事言っちゃったかな。

そうだ、ちょっと元気付けてやろっと。

「…こんだけ暗いとさぁ。やましい事し放題だよなー。オレも神座ちゃんに変な事しちゃうかもなー、なーんて…」

「……………。」

「…スイマセン。」

クッソ、思いっきり逆効果じゃねえか。

「…そろそろ研究室みよっか。」

「……………うん。」

 

 

◇

 

 

【内エリア 6F】

 

「…ここか。」

目の前に、少し古い引き戸がある。

「………。」

「ん?どうした?神座ちゃん。」

「…ここ、多分………私、の…………研究室……………」

「…そっか。じゃあ開けるぞ…」

 

「…。」

神座ちゃんは、いきなりオレにしがみついてきた。

「…………………。」

うおおおおおおおおおおおお!!!

じょ、女子が0距離に…いやいやいや!!落ち着けオレ!

平常心!!平常心を保て!!

「…あ、えっと…もしかして、一人じゃ不安?一緒に入ろうか?」

「…。」

…ったく、何やってんだオレは。

目の前で女の子が困ってるってのに、余計な事ばっか考えて…

 

「…神座ちゃん。オレから離れるなよ。何があってもオレが守ってやるから。」

「……………ありがと。」

「じゃあ、開けるぞ。」

オレは、ゆっくりと引き戸を開けた。

 

 

◇

 

 

「…。」

部屋の中は、和室になっていた。

ところどころに洋風の家具とか置物も取り入れられていて、レトロな雰囲気の部屋だ。

…でも、一番に気がついたのは。

 

「う゛ッ!?」

床や壁に散った錆びた鉄みたいな色のシミを見て、オレは思わず吐き気を催した。

9人のクラスメイトの死を目の当たりにしたオレにはわかる。

…これは、血のシミだ。

「な、なんだよこれ…!」

「………やっぱり。」

「え、何が…?」

「……………ここ、私…が、いた………部屋………」

「えっ?」

「…でも、私の………家、こんな…所に………ない………多分、似せて…作った………部屋……」

「…そっか。」

マジかよ…

この研究室は、神座ちゃんの部屋そっくりに造られてたのか。

…じゃあ、このシミは一体…

 

「……………。」

神座ちゃんは、その場で膝をついて震えだした。

「え?神座ちゃん?どうしたんだ!?大丈夫か!?しっかりしろ!」

「…。」

この部屋に来て、嫌な事でも思い出しちまったのか?

クッソ、オレのバカ!なんで部屋に入っていいか事前に確認しなかったんだ!

神座ちゃんに無理させてるのに気がつかなかったなんて、最低じゃねえか!

「…神座ちゃん。無理させちまって悪かった。ここから出て一回落ち着こ?」

「…。」

 

オレ達は、少し早めに探索を切り上げて食堂に戻る事にした。

…しっかし、神座ちゃんのさっきの反応はなんだったんだ?

まるで、何かに怯えるような…

そういえば、オレはこの子の事何も知らないんだよな。

…神座ちゃん、一体何者なんだ…?

 

 

◆

 

 

ー数時間前ー

 

【内エリア 6F】

 

今回も柳人クンと一緒に探索かー。

気分盛り上げて行こっと!

「じゃあまず学園長室行こっか柳人クン!!」

「狛研君。逆方向だよ。」

「…あ、ゴメン。」

「君は方向音痴なのかい?」

「うーん、そうかも!ところで柳人クンって、目が見えないのに方向とかわかるのすごいね!」

「目が見えなくても、それ以外の情報はいくらでもあるからねぇ。オイラは、それを感じる能力が人一倍強いのさ。」

「ふーん。…あ。ここじゃない?」

「え?」

「ホラ、クマさんの顔が描いてある。」

「…へえ。入ってみるかい?」

「うん、入っちゃお!」

学園長室ってどんな感じなのかな?

早速オープン!

 

…あれ?

「ん?どうかしたかい?」

「あ、えーっとね。んしょっ、鍵がっ、かかっててっ、は、い、れ、な、い!!んもうっ!」

 

ガンッ

 

ボクは、ドアを思いっきり蹴った。

「…ダメかー。」

「力技でどうにかなるもんじゃないよぉ〜。とりあえず、中を見られちゃ困るから開けてないって事なのかな?諦めて次行こっかぁ。」

「…だね。じゃあ看守長室行こっか。」

 

 

◇

 

 

【看守長室】

 

「へー。」

中は、事務室みたいな場所だった。

「なんか思ってたのと違う。」

「…どんな部屋だと思ってたんだい?」

「なんか、刑務所とかに置いてありそうな器具とかが並んでるイメージ。」

「…拷問器具の事かい?君って、案外恐ろしい考えするんだねぇ。」

「えー、そうかなぁ?」

 

あ、資料とかあるね。

「なんだこれ?」

ボクが目を通したのは、みんなの履歴書だった。

あれ?ボクのだけ無い…

もう、どうなってんのさ!

仲間外れとか勘弁してよ!

さてと、まずは一番上に重ねてあるラッセクンの履歴書でも…

ん?

 

「ッーーーーー。」

「ん?どうかした?」

ボクは、思わず目を見開いた。

だって、そこにはあり得ない事が書いてあったから。

 

 

 

ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

学年:第三学年(20XX年度入学)

才能:超高校級の国王

罪状:自身の政策で同盟関係にあった国の国民約5千人を殺害

判決:死刑(20XX年5月26日執行済)

 

 

 

…なにこれ。

どういう事?

ラッセクンは、確かにおしおきで死んだけど、この罪状って一体…

それに、どう計算しても執行日とおしおきされた日が一致しない…

じゃあ、この資料は一体…?

 

「狛研君?大丈夫かい?」

「ん?ああ、ごめん。」

「何か気になる事でもあった?」

「まあね。詳しい事は報告会で話すよ。」

「…そう。そろそろ研究室に行こうか?」

「あー、だね。」

 

 

◇

 

 

「…ここか。」

おっ。

この部屋、ちょっと豪華な開き戸だね。

なんか、パーティー会場のドアみたい!

ここが研究室なのかぁ。

「…狛研君?どうしたんだい?」

「ここ、誰の研究室かな!?」

「…ドアの特徴は?」

「えーっとね、ちょっと豪華な両開き!」

「…なるほどね。狛研君、驚くなよ。そこ、多分君の研究室だよ。」

「えぇーーー!!?ウソ、ボクの!?やった!」

「まあ、消去法だから確証は無いけど…とにかく中に入ろうよ。」

「うん!わーい、やーっとボクの研究室ー!!それじゃ、ご開帳ー!!」

 

 

◇

 

 

 

 

 

「…え?」

 

そこは、真っ白な部屋だった。

筒状の真っ白な壁に真っ白なカーテンがぐるっとかかっている。

部屋の真ん中が少し高くなっていて、円形のステージの周りを囲むように15本の柱が立っている。

「ーーーーーー。」

柱には、ボク以外のみんなの遺影が飾られている。

「狛研君?どうかした?」

「…は、柱に…遺影が…」

「柱…遺影…なるほどね、人柱ってヤツか。」

「人柱?」

「工事完成を願って生きた人間を埋めたりして生贄に捧げる風習の事だよ。多分、この部屋は生贄の儀式をモチーフにしてるんだ。」

「…へぇ。」

なんかちょっと嫌だな…

「それから、ちょっと気になってたけど…これは何かな?」

「え?」

柳人クンが触っているのは、ステージの真ん中に置かれたベッドだった。

…いや、違う。

 

「…これ、棺だ。」

大きくて最初はわからなかったけど、花とか供えてあるし…

…枕の上に布がかけてあるな。

下に何かあるっぽい。

…一体何が…

 

「ッ!!?」

布の下にあったのは、ボクの遺影だった。

「なにこれ…!?」

「どうかした?」

「棺の中に…ボクの遺影が…!」

「…どこまでも悪趣味だねぇ。」

全くだよ!

あーあ、研究室…ずっと楽しみにしてたのに!

なんだよこれ!

もうこんな部屋とはおさらばしよーっと。

 

…ん?あれ?

「今度は何だい?」

「…天井に数字が…」

「数字?」

「うん…980037546?」

「9億か…何の数字だろうね?」

「んー…わかんない!こりゃあ要報告ですな!」

「…オイラは君のそのメンタルが羨ましいよ。」

「えへへ、褒められた。」

…それにしても、なんなんだろう…この数字…

これはちょっと頭の片隅に置いておかなきゃかもね。

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