ダンガンロンパPRISON   作:M.T.

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第5章(非)日常編④

「うーん…」

ボクは、独房で目が覚めた。

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

…あーあ。

またこれだよ。

ベルさん達って暇なのかなぁ。

さてと、朝の支度して食堂に行かないとね。

 

 

 

 

【食堂】

 

「おはようみんな。」

「おはようございます。」

「おう、おはよ!」

「おはよ〜♪」

「あれ?星也クンは?」

「ああ、穴雲君なら、朝ご飯の前にゲームを終わらせたいから遅れるってさ。ホント、誰かさんと違って仕事が早いよね。」

「…はは。」

 

「誰かさんって誰の事?」

天理クンが後ろから声をかけてきた。

「おはよぉ〜。」

「おう。何の用だクソ虫。」

「そこまで言わなくてもいいじゃねーですか。あれ?穴雲クンは?もー、遅刻はダメでしょー!?」

「…君がいうか。」

「穴雲は、ゲームやってるから遅れるってよ。」

「ふーん。」

 

「ごめん、お待たせみんな。」

「あっ、おはよう星也クン!」

「ゲームはさっきクリアしたよ。ほら。」

「さすが穴雲!」

「…さてと。これで今日はゆっくりできるね。…治奈。明日のゲームは君だけど、大丈夫?」

「はい…私、頑張ります。」

「はいはいイチャイチャしてないでメシ食うぞ。」

「お前なぁ…」

 

 

 

 

うーん、おいしかった。

ごちそうさま。

「あ、いたいた。狛研サーン!」

「あ、天理クン。」

「もう、探したよー!…ねえ、ちょっとゲームしない?」

「ゲーム?」

「ちょっと面白いゲーム思いついてさ。最近付き合ってくれる相手がいなくて暇なんだよ。付き合ってよ。」

「えー。どうしよっかなー?」

「もし俺に勝ったら、一個だけなんでも言う事聞いてあげる!…どう?」

一体何が目的なんだろう…

…でももし勝ったら、色々聞き出せるかな。

「うん、それならやるやるー!」

「OK。じゃあ娯楽室に行こうか。」

 

 

 

 

【娯楽室】

 

「さてと、じゃあゲーム始めよっか!」

天理クンは、手際良くトランプを切った。

「トランプ?」

「うん。ここには、ジョーカーを除く52枚のカードがあります。俺はカードを切るから、その間に狛研サンは赤か黒かどっちか言って。そしたらそのタイミングで手を止めて、束の一番上のカードを引きます。そのカードの色が当たってたら狛研サンの勝ち!…簡単でしょ?」

普通に考えれば確率は半々だよね。

でもなー。この子の相手したら絶対負けるじゃん。

「ちなみに聞いてなかったけど、ボクが負けたらどうなるの?」

「うーん…その時は何もナシでいいかな。明らかに俺に有利な条件だしね。文句ある?」

「…いや?」

「じゃあ始めよっか。ふんふ〜ん♪」

天理クンはカードを切り始めた。

…迷ってても仕方ない、こういうのは思い切りが大事!

「黒!!」

天理クンの眉がピクリと動いた。

そして、ニヤリと笑うとカードの束をテーブルの上に置いて、左手でカードをめくった。

 

「…スペードのA。キミの勝ちだね。おめでとう。」

「あれっ?」

あれれ?勝っちゃった。

天理クン相手だから絶対負けると思ってたのに…

「あれ?どうしたの狛研サン。勝ったのになんか腑に落ちない事でもある?」

「…あ、いや…別に…」

「さてと、じゃあなんでも言う事聞いてあげる。…どうする?」

「うーん…じゃあ、キミの話を詳しく聞かせてよ。」

「いいよー。じゃあ、3つまで答えてあげる。」

「なんでも言う事聞くって言ったじゃん…」

「だっていくつも質問されたらキリないし。どうする?」

 

「えぇー…じゃあ、なんでいっつもゲームに勝てるわけ?」

「うーん。強いて言うなら未来予知?…っていうのは冗談で、実際にはゲームの『本質』を見抜いてるからかな。ゲームの勝利条件、勝率、ゲームに使われる道具…そういう要素全部をひっくるめた結果導き出される最適解を見つけ出す…多分、俺はその力が常人より優れてるんだよね。」

「多分?」

「今のは、俺なりの自己分析。本当は俺自身、自分の才能をよくわかってないの。だって、俺の場合、ゲームの本質を見抜くっていう作業が無意識にできちゃってるみたいだし。」

「じゃあ、勘のめっちゃスゴいバージョンって事?」

「すごいまとめ方が雑だけど…まあそうなるね。」

「ふーん。」

「さて、2つ目の質問をどうぞ?」

 

「天理クンって、大切な人はいるの?」

「大切な人?」

「みんなには、そういう人いるのかとか聞いてるからさ。ほら、そういう人がいるって思うと生きる活力になるでしょ?」

天理クンは、頭を少し下げて首筋を掻いた。

…考える時の癖なのかなコレ。

「…大切な人、か。…そういえば、俺の娘は今頃どうしてるかなぁ。」

「…え?」

娘?待って、どゆこと?

「俺さぁ。知っての通り、メッチャ女の子にモテるじゃん?」

「う、うん?」

「それでさー。ついつい遊びすぎちゃって。遊び相手の女の子を、そのー…ですね。妊娠させてしまいましてw」

「はぁああああ!!?」

ちょいちょいちょいちょい!!

え、待って!?嘘でしょ!?高校生だよね!?

高校生でお父さんって事!?あり得なくない!?

「で、その子には縁を切られちゃってさ。それから一度も連絡取ってないんだよね。…でも、ふとした時に心配になっちゃってさ。ほら、俺もこんなだけど一応アイツの父親だしさ。」

 

う゛ーん。

色々と疑問に思う事はあるけど、天理クンが大事に思う人なら、それでいいのかなぁ。

「…会えるといいね。その子。そのためにも、ここから生きて脱出して…」

 

「プッ、ハハハハ!!!」

「え、なんかおかしな事言った?」

「やー、ごめんごめん。…でもひとつ言わせて。今の話、全部ウ・ソ♡」

は!?

「いやいやいや!!嘘って、どういう事!?真面目に聞いて損したよ!」

「いやー、狛研サンかわいいからちょっとからかいたくなっちゃって。てかさ、冷静に考えてみなよ。別れてから一度も連絡取ってないのに、息子か娘かわかるわけなくない?この矛盾は俺からのヒントだったんだけどなー。」

「あっ…なんだよもう!!質問に答えるって言ったじゃん!!」

「ごめんごめん。今のは冗談。ちゃんと答えるから許してよ。」

「もうっ。」

「…大切な人か。とりあえず、今はキミって事にしておこうかな。」

全く…こっちは真面目に質問してるのに、嘘つくとかサイテー!

「さてと、最後の質問は?」

 

「えっと…」

…そういえばこの会話、聞かれてるんだっけ。

ボクは、紙に書きながら言った。

「天理クンさぁ、好きな食べ物何?」

『ここからは真面目な質問。乗っ取り犯や内通者について何か気付いた事は?』

それを見た天理クンは、紙に書きながら言った。

「ガ●ガリ君。あとTKGとかかなー。」

『…内通者については大体目星はついた。既に網も張ってある』

「へー。」

『意外と用意周到だね。今の所どの程度絞れてるの?』

「…じゃあ嫌いな食べ物は?」

『一人、怪しいと思ってる奴がいる』

『誰?』

「おっと、もう3つ目の質問には答えただろ?わがままだなぁ。それともそんなに俺の事が好きなの?」

 

『神座威織』

 

「ッ!!違う!!」

『ゐをりちゃんは、そんな子じゃない』

「違わないでしょ。俺の事が好きなの見え見えだよ。」

『とことん疑って言ってんの。それがたとえ、今一緒に話してる俺や、仲のいい友達…最悪の場合、自分さえもね』

「…違うって言ってるでしょ。」

『網っていうのは?』

「またまたー。」

『美術室に盗聴器を仕掛けておいた。神座サンを美術室に呼んで話をしてくれ。本人には絶対に悟られないようにしろよ。あと、本人に会ったら出来るだけ長く会話しろ。』

「ホンット天理クンってサイテー!」

『わかった。とりあえず、キミの証言は頭の片隅に置いておくよ。』

「怒るなって。じゃあ質問には答えたし、俺はこの辺で失礼するよ。それじゃあ、そろそろ昼飯の時間だし行こうか。」

「んもー…」

ゐをりちゃんが内通者…?

そんな、そんなの信じられるわけないよ…

 

 

 

 

【食堂】

 

…まだ昼ご飯までちょっと時間があるな。

それにしても、天理クンが早く来るなんて珍しいね。

まあ、ボクと一緒だからなんだけど。

「来たよ。」

「ほにゃあー。」

「おう、狛研ちゃん!…と、クソ野郎。」

「ちょっとー、栄クン。いい加減にしてクレメンスー。」

「黙れゴミクズ。テメェのした事は絶対忘れねェかんな。」

「ひどいなー。あ、そうだ狛研サン。せっかくだし、昼飯の後お茶淹れてあげよっか。」

「いいの?」

「うん。俺もたまには役に立ちたいのさー。」

「変なモン出しやがったら承知しねぇぞ。」

「へーい。」

そんなこんなで全員揃った。

「…君が早く来るなんて珍しいね。きっと、今外では雪と雷が同時に降ってるよ。」

「えー。俺がパンクチュアルに行動すんのは天変地異レベルなのー?」

「じゃあ、みんな揃ったし席についてご飯食べようか。」

「あい賛成ー。」

 

 

 

 

うーんおいしかった。

「やあ女子達。食後にアフタヌーンティーでもどうかい?これ飲んだら一日の疲れが一気に取れるよ。」

天理クンがボク達にお茶を淹れてくれた。

「あ、ありがとうございます…」

「………。」

「なんで女子だけなんだい?オイラ達の分は?」

「うるっせーな。野郎は泥水でも飲んでろよ。それが嫌なら自分で淹れな。」

「えぇ…随分とまた横暴だなぁ。」

「さ、冷めないうちにどうぞ。…って、これアイスティーじゃんw」

…絶対何か入ってますよね。

「ん?なんか言った?」

「いえ、何も。」

「わーい、いただきまーす。」

 

え!?何これ!?

「うえ゛ぇーーーーー。まっずーーーーーーい。」

「え、狛研さん?どうしたの?」

「ちょっと、天理クン!淹れ方間違えたんじゃないの!?このお茶変な味する!」

「えー?そぉ?」

「…あ、あの…私、もうお腹いっぱいなので遠慮しておきますね。」

「…………………………私も。」

「えー、気に入ってもらえると思ったんだけどなぁ。あは、あははははははは…」

天理クンは、完全に目が泳いでいる。

「飲まないなら片付けるよ。いやー、ごめんね?」

「…待ちなよ。」

「へ?」

 

ガッ

 

星也クンは、いきなり天理クンに関節技をキメた。

「いだだだだだだだ!!!ちょっ、穴雲クン!?痛い痛い!!」

「わー、綺麗な腕ひしぎ十字固め。」

「栄君、身体検査。」

「お、おう。」

「え、ちょっと、やめてー。あっ、そこはダメッ…!栄クンのエッチー!」

「…あったぞ。」

「でかした栄君。」

陽一クンの手には、ピンク色の瓶とスポイトが握られていた。

「…えっ!?」

治奈ちゃんは、両手で口を押さえながら顔を真っ赤にしていた。

「え、ちょっと待って。何この瓶。天理クン、さっきのアイスティーに何入れたの?」

「…媚薬だよ。それも、モノクマが調合した超強力な、ね。」

「媚薬って?」

「いかがわしい気分にさせるような薬の事。」

「え゛っ。そうなの?もうっ、天理クンのエッチ!!」

「…全く、こんな物をみんなの飲むお茶の中に入れるなんて、油断も隙もないね君は。狛研さんが気づかなかったら今頃大変な事になってたよ。」

「てへっ☆…それにしても、よく気付いたね狛研サン。薬入れたのがわからないように、あえて香りが強いヤツ選んだのに。」

「なんか、明らかにお茶とは違う風味が混じってたから。」

「はははっ、森育ちだからそういうの敏感なのかなー。さーてと、俺はまだまだやる事が山積みだから離してクレメンス。」

 

「…このまま逃がすと思ってるの?」

「へ?」

「…どうやら君にはキツーいおしおきが必要なようだね?」

星也クンは、ドス黒いオーラを放ちながら笑顔で天理クンの胸ぐらを掴んだ。

「ははっ…ちょっ、冗談でしょ?ちょっと悪ふざけが過ぎただけじゃねえかよぉ…な?そうだ、お金あげるから見逃してよ。いくら欲しい?10億?100億?」

「…財原ァ。歯ぁ…喰いしばれぇえっ!!!」

 

「ぎゃあぁああぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

「…ふぅ。」

目の前には、天理クン()()()物体が転がっていた。

「…。」

「…なぁ。財原が原型とどめてねェけど、大丈夫なのか?」

「いいんだよみんな。むしろ、これくらいやらないと彼は反省しないと思うんだ。」

「そうかもしれませんが、少しやりすぎでは…?」

「あー、チクショウ…何もここまでやらなくても…」

「ほら、案外回復が早いじゃないか。」

「いや…もうボロボロじゃないですか。財原さん、今手当てするので安静にしていてくださいね。」

治奈ちゃんは、タオルで天理クンの血を拭いた。

 

「…白。」

「え?」

「にししっ、なあ癒川サン。パンツ見えてるよ。」

「なっ…!?」

治奈ちゃんは顔をトマトみたいに真っ赤にしながら、スカートを引っ張って隠した。

「み、見ないでください…治療に集中できませんから…!」

「いやー、眼福眼福…ぐほぁっ!!」

「君、本当にいい加減にしろよ。…大丈夫か、治奈。」

「あ、はい…」

「さてと、みんな。こんなバカは放っとこ?」

「あ、穴雲…おっかねぇ…」

「………うん。」

 

 

 

 

さてと。

昼ご飯食べ終わったし、ゐをりちゃんに話を聞こうかな?

「ゐをりちゃん!」

「…何。」

…正直、信じたくない。

この子が内通者だなんて。

きっと何かの間違いだ。

それを明らかにする意味でも、聞ける事は聞き出さなきゃ。

「あのさ、ちょっと話さない?一緒に絵でも描きながら!」

「…うん、私………絵、描くの…好き………」

 

 

 

 

【美術室】

 

「………。」

「あのさ、ゐをりちゃんって、絵上手だね。」

「………別に。好きで、描いてる…だけ…」

「でも、好きな事と得意な事が同じって、すごくラッキーな事じゃない?好きで得意な事を極められるなんて、最強じゃん。」

「…そんな事………ねえ…幸運、何…描いて…る、の…?」

「うさぎ。」

「…え。」

「うさぎ描いてるの。」

「…ごめん。………てっきり、ヤスデ…描いてる、の…かと………」

「えぇええ!?ヤスデ!?これ、ヤスデに見える!?」

自分で絵が下手な自覚はあったけど、まさかヤスデって言われると思わなかったな…

 

「…あの、幸運。」

「何?」

「………幸運、には………教える。…………私、の…ひみつ………」

「え?」

「………さっき、全部…思い…出し、た………」

「そっか。でもなんでボクに?」

「……………信頼、してる……」

「ホント!?ありがとゐをりちゃん!」

「…あの。」

「何?」

「…………私、の…ひみつ、知って………私、の…事………嫌い、に…なったり、しない………?」

「そんな事するわけないじゃん。どんな秘密があっても、ゐをりちゃんはゐをりちゃんだよ。」

「………ありがとう。…あの、話は…私の、研究室…で………」

「え、ここじゃダメ?」

「………ダメ。………誰か、に…聞かれ…たら、困る………」

どうしよう。

天理クンには、ここで話を聞き出せって言われたけど…

でも、ゐをりちゃんの意思を尊重すべきだよね。

「…わかった。じゃあ、ゐをりちゃんの研究室に連れてって。」

 

 

 

 

【超高校級の???】の研究室

 

「…へー。」

和風と洋風が入り混じったレトロな部屋だな。

なんか、大正ロマンって感じ?

でも、なんか血のシミが飛び散ってるな…

「…散らかっててごめん。椅子あるから適当に座って。」

「あれ?ゐをりちゃん…普通に喋れるの!?」

「…別に、喋れないって言った事は一度もない。喋るのが嫌いだから極力喋らないようにしてただけ。…人なんて誰も信用できないし。」

ゐをりちゃんは、ほっぺを膨らませながら言った。

メッチャかわいいんだけど!え、待って。写真撮っちゃダメかな!?

 

…ん?なんだろう。あの写真立ては。

白黒の写真には、ゐをりちゃんとよく似た女の子が写っている。

でも、写真立ての写真の方がどこか大人びてる気がする。

…じゃあ、あの写真は一体…?

「…気になる?」

「え?」

「あれ、私の写真。」

「え、そうなの?でも、ちょっと違うような気が…」

「…当たり前。だってそれ、厳密には()()()の写真じゃないから…」

「…え?」

どういう事?

「…教えてあげる。私が一体何者で、なんでここにいるのか。」

ゐをりちゃんは、髪留めを外すと、話し始めた。

 

「…その前に、確認だけど…あなたは、『神座出流』って言ってわかる?」

「ああ、うん。えっと…確か、希望ヶ峰学園の創設者でしょ?」

「…それがわかってるなら、話は早い。…実は、私は神座出流の娘なの。」

「…え!?ちょっと待って?希望ヶ峰学園が創設されたのって、もう100年も昔の話でしょ!?じゃあ、ゐをりちゃん今いくつ!?」

「あの、落ち着いて…順を追って話すから…」

「あ、ごめん。」

「私のお父様は、将来有望な若者を育成するために、学園を創設したの。当時ちょうどあなた達くらいの歳だった私も、希望ヶ峰学園の1期生として入学したわけ。」

「…うん、それで?」

「…一個、問題があったの。」

「問題?」

 

「自分で自分の事を言うのはなんだけど…当時の私は、あらゆる分野において空前絶後の大記録を残すような才能を持ってて…私は、神童として崇められてた。」

自慢っぽく聞こえるけど、それが事実ならすごい事だよね。

「あらゆる分野の【超高校級】をもってしても、誰もが私の持つ才能の前に挫折して、絶望した。…だから私は【超高校級の絶望】って呼ばれるようになったの。」

ああ、なるほど…

だから【超高校級の絶望】…

じゃあ、20年前に世界中を大混乱に陥らせた【超高校級の絶望】とは全然違うんだね。

 

「それで、最初は崇められてた私も、だんだんと嫉妬や憎悪の対象になっていって…最終的に、私に絶望に堕とされた人達に、この部屋で殺されたわ。」

「なにそれ!完全に逆恨みじゃん!ゐをりちゃんは悪くないのに…ひどすぎるよ!」

「その事を悔やんだお父様達は、これ以上『絶望』が蔓延しないように学園のやり方を一から組み直したの。将来有望な生徒を育成するだけじゃなくて、その生徒達が将来『希望』となるような教育を…そういう方針に変えていったの。」

「…そうなんだ。」

「そして、もし絶望がまた現れた時絶望を撲滅するために、私の才能を再現して生徒に植え付ける研究もされたみたい。…確か、38年前の話だっけ。」

 

「…あの、本題を急かすようで悪いんだけど。じゃあ、キミは一体誰なの?」

「え…?」

「だって、キミは100年前に死んでるんでしょ。…まさか、幽霊だなんて言わないよね?」

「それも今話す。…私が死んだ後、実はその力を利用しようとする人がいたの。」

「利用?」

「うん。彼は、私の才能を、38年前の研究とは別の方法で再現しようとしたのよ。…それも、非合法的な方法でね。」

「まさか…」

 

「そうよ。…私は、【超高校級の絶望】神座威織の複製体。私は、彼女を再現するために作り出された人形なの。」

複製体って…クローンだよね。

じゃあ、今ここにいるゐをりちゃんは、神座威織のクローンって事?

「私は、神座威織から才能と記憶の一部を受け継いで、それを再現するために生み出されたの。本物は100年前に死んでるから、それより後の事は私の記憶にない。…私が今話してる内容も、私自身が後で調べた事よ。」

だからゐをりちゃん、機械とかに詳しくなかったんだね。

「…でも、実験には失敗がつきもの。そう簡単に『神座威織』を再現できるわけがなかったの。」

「と、いうと?」

「遺伝子を複製するたびに、受け継がれる性質っていうのは劣化していくものなのよ。才能も例外じゃない。実験のために私は何度も生み出されて、その度に才能が劣化していって…今の私は、本物が持っていた才能をほとんど失ってしまったの。」

「でも、さっき見せてくれた絵は上手かったじゃん。それに、裁判の時はすごいスピードで天理クンの事を捕まえてたし…あれはなんでなの?」

「私もよくわかっていないのだけれど…素体の思い入れが強い分野に関しては、あんまり劣化しない事があるみたい。」

…思い入れ、か。

 

「ねえ、ゐをりちゃん。…もしかして今のゐをりちゃんは、本物の威織ちゃんが『なりたかった自分』なんじゃないのかな?」

「…え?」

「ちょっと不器用なところもあるけど自分の好きな事に一生懸命で、自分の知らない事に興味津々で、対等に話し合える友達に恵まれてて…多分、それって威織ちゃんが欲しかったものなんだよ。」

「私の、なりたかった自分…?」

「きっとそうだよ。だってゐをりちゃん、さっき思いが強ければ劣化しないって言ってたでしょ?だから多分、今のゐをりちゃんは、威織ちゃんの欲しかったものを映す鏡なんだと思うよ。」

「…。」

 

 

 

『笑われるから誰にも言った事なかったけれど、私…欲しい物があるの。』

 

『…友達。才能とか関係なく、当たり前のように一緒にいてくれる友達が欲しかったの。』

 

 

 

「…私。」

「だからさ、ゐをりちゃん。ボク達の事、名前で呼んでくれないかな?」

「…え?」

「だってボク達、友達でしょ?」

「…うん、か…叶…」

「えへへ、やっと名前で呼んでくれたね。」

「それは、あなたが言うから…」

「…ぷっ、あはは!」

「え、何…どうしたの?」

「…いや、ゐをりちゃんがそんなに嬉しそうな顔してるの、初めて見たから。」

「…そう。」

 

「あ!いけね。忘れるとこだった。」

「?」

「はい、コレ!プレゼント!」

「…!」

「花の髪飾り。どう?気に入ってくれると嬉しいんだけど。」

「…あの、叶…これ、どこで…」

「ガチャでゲットしたんだけど…どうしたの?」

「…これは、最期の誕生日にお父様に貰ったものだった。…本物の私が死んで、捨てられたと思ってたけど…やっと見つけた。ありがとう、叶。」

「いえいえー。こっちこそ、ゐをりちゃんに気に入ってもらえて良かったよ。」

「…うん。」

「あ、そろそろご飯の時間だし、行こっか。」

「…そうね。」

 

《神座ゐをりの好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「お待たせー!」

「…お待たせ。」

「お、今日は狛研ちゃんと神座ちゃんが一緒か!なんか珍しい組み合わせだな!」

「さっきまで一緒に話してたから一緒に入ってきただけよ。」

「あれ?神座君…君、そんなに喋る人だっけ?」

「…別に、喋れないって言った事なんて一度も無いんだけど。あなた達と会話をするのが嫌いだったから話さなかっただけよ。」

「急に饒舌になったねぇ。」

 

「…でも叶が、私の事を理解してくれて…友達だって言ってくれたから…少しだけ、会話をするのも嫌いじゃないって思えたの。」

ゐをりちゃんは、顔を少し赤くしながら、ボクの服の袖を引っ張った。

「…うへへ、百合百合しいなぁ。女子同士がイチャついてんのってなんか萌えるな。」

「うんうん、わかるよ栄君。」

あそこ二人は何を言ってるんだろう?

ゐをりちゃんは友達だよ?

「おーっす、ごめーん。お待たせみんなー。」

「…君はまた遅刻か。」

「…コイツ、不愉快…叶、下がってて。叶は私が守る。」

「え、あー、うん?」

「え、何?どうしたの神座サン。狛研サンの事好きなの?初恋おめでとー♪はい拍手ー。」

「…と、友達だから…!」

ゐをりちゃんは、顔を真っ赤にしながら天理クンを睨んだ。

ゐをりちゃんってばホンットかわいいよね!

「さてと、じゃあ全員揃ったし、ご飯食べちゃおうか。」

「賛成ー。俺、もう腹減りすぎて死にそうー。」

 

 

 

 

はー、食べた食べたー。

今日はゐをりちゃんと仲良くなれてよかったな。

 

『とことん疑って言ってんの。それがたとえ、今一緒に話してる俺や、仲のいい友達…最悪の場合、自分さえもね』

 

…天理クン。やっぱりボクは、仲間を疑えない。

ゐをりちゃんだって、天理クンは疑ってるみたいだけど…あの子は内通なんてするような子じゃないよ。

決めた。

天理クンを説得しに行こう。

甘いって言われるかもしれないけど、別にそれでもいい。

ボクは、今度こそみんなを信じたいんだ。

 

…あれ?

「開いてる…」

天理クン、研究室のドア閉め忘れたのかな?

まあでもちょうどいいや。

ボクも天理クンに用があったところだし。

早速説得しに行こう。

 

 

 

 

【超高校級の資産家】の研究室

 

「天理クン?」

…いないな。

…ん?

引き出しが少し開いてる…

開けっぱなしでどっか行っちゃうなんて、あの子意外とおっちょこちょいなんだな。

ん?

 

 

 

ーーーーーーーえ。

 

 

 

 

 

引き出しの中には、タブレットが入っていた。

そこには、一件のメールが届いていた。

 

 

 

財原クン!内通の件だけど、うまくいってる?

ただでさえやる事多くてベリーハードなのに、乗っ取り犯の対応までさせちゃってごめんクマねー。

それじゃ、何か生徒に異変があったら逐一報告してね!

 

 

 

 

…は?

何このメール。

クマさん達から…?

って事は、天理クンが内通者…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人の部屋で何やってんの?」

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーッ!!?」

気がつくと、背後数センチのところに天理クンが立っていた。

よく見てみると、左手には果物ナイフを握っている。

「あっ…!」

「…そのタブレットが気になる?安心しなよ。それは、わざと置いたヤツだから。そこにそうやって置いておけば、俺の事を嗅ぎ回るヤツを見つけられるんじゃないかと思ってね。」

「キ、キミは一体…」

 

 

 

「…娯楽室。」

「…えっ?」

「キミの動きが怪しいから、娯楽室に盗聴器を仕掛けさせてもらった。…でも不思議な事に、さっき探したらその盗聴器がなくなってたんだ。」

「な、何を言って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…キミが内通者だったんだね、狛研叶サン。」

 

 

 

 

 

 




今回財原クンが穴雲クンに殺されかけましたが、ギャグ補正で死んでません。
よって、おしおきの対象にもなりません。
ギャグ補正・主人公補正・味方補正は魔法の言葉。
それさえあればどんな理不尽も許される。

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