ダンガンロンパPRISON   作:M.T.

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お待たせ







第6章 非日常編②

「…さてと。」

研究書を読まないとね。

えっと、確か蘇りの技術とかデータがどうのこうのって言ってたよね。

「陽一クン。」

「おう、なんだ狛研ちゃん?」

「研究書って要約とかしてくれた?」

「ああ、一応な。」

「ありがとう。」

これで少しは読みやすくなるはず。

 

 

 

 

…なるほどね。

大体報告で聞いた通りだね。

でも、どっちも肝心な部分はあんまり詳しく書かれてないな。

具体的な方法とかも暗号化されてて読めないし。

せめて、才刃クンと治奈ちゃんがいてくれたら読めたんだろうけど。

もういない二人の事を考えても仕方ないか。

 

コトダマゲット!

 

【物理室の資料】

人体の冷凍保存や人格のデータ化についての資料。

 

…あれ?これ、続きがあるな。

「ねえ、化学室で研究書見つけたって言ってたよね。」

「ああ。」

「ちょっと読ませて。」

「おう。」

 

 

 

ーーー

 

ついに人間の意識を完全にコピーできる人工知能を生み出す研究が成功した。

こいつは、一度パーソナルデータを取り込んだ人間の性格や感情をほぼ100%再現する事ができる。

これがあれば平和を取り戻す事も夢ではない。

この技術は、必ず人類の『希望』となるだろう。

そこで、この人工知能を『HOPE』と名付ける事にした。

だが、HOPEの研究はまだ実験段階で、利用した場合のリスクは未知数だ。

何段階かにわたって慎重に実験を積み重ねなければ。

 

ーーー

 

 

 

…なんだ、これは。

実験…人工知能…?

…『希望』…?

「その研究書、ワケわかんねーよな。」

「…そうだね。」

「でも、これはやっぱこの学園の正体を突き止める上で重要な資料だと思うんだよな。」

「根拠は?」

「…勘。」

「…ははっ。」

「ちょっ、え!?何その目!やめてよ、そんな目しないで!フツーに傷つくから!」

ああ、そういえば陽一クンってこんな子だったね。

 

コトダマゲット!

 

【化学室の資料】

人工知能の実験について書かれていた。この学園を知る上で重要な資料かもしれない。

 

「…あの。」

「あ、ゐをりちゃん。起きてきたんだね。」

「ごめんなさい、捜査…抜けて…」

「いいよ。寝不足で裁判中に体調崩したりしたらダメでしょ。休みたい時に休んでいいから。」

「…ありがとう。私、さっき寝た分頑張る。ねえ、どこまで捜査は進んだの?」

「えっとね、資料はとりあえず全部読んだよ。」

「…そう。」

「ねえ、狛研君。君はまだ捜査続けられそう?」

「うん。」

「じゃあ今度はオイラが休んできていいかな。」

「いいよー。休んでおいで。こっちで捜査進めておくから。」

「ありがとう。それじゃあ、失礼させてもらうよ。」

…さてと。

「どうする?まだ夜時間は2時間くらい残ってるけど。」

「そうね…この学園を知るためにも、とりあえず行けるところまでは探索してみるのはどうかしら。」

「それがいいかもね。」

ボク達は、学園内を探索する事にした。

 

 

 

 

【超高校級の幸運】の研究室

 

「ここを調べるの?」

「うん。」

「でも、ここはあなたの研究室でしょ?」

「まあ、そうなんだけど…ほら、見逃してる所とかあるかもしれないし。一緒に探索してほしいんだ。」

「叶がそう言うならやるけど…」

「…あ。」

「どうしたの?」

「…わかった。学園長室のコンピューターの並び…ここにある柱と同じ並び方なんだ。」

「言われてみれば…並び方が似てるわね。」

「この柱も、人柱をイメージしてるんじゃないかって柳人クンが言ってたし…」

 

コトダマゲット!

 

【研究室】

柱の配置が学園長室のコンピューターに似ている。柳人クン曰く、この柱は人柱をイメージしているらしい。

 

「それと、やっぱりこの数字が気になるんだよね…」

「数字?」

「ほら、天井に数字が書かれてるでしょ。あれ、一体何の数字なのかな…」

「9億ちょい…この学園を建てるのに使った費用か!?」

「そんなのなんでこんな所に書くのよ。」

「うん。ボクも違うと思う。」

「えー…そうかなぁ。」

 

コトダマゲット!

 

【天井の数字】

天井に謎の数字が書かれている。何の数字なのかはわからない。

 

「…しっかし、なんなんだろうな。この部屋。柱に棺桶…ホント悪趣味だな…ッ!?どういう事だよこれ…」

「どうしたの?」

「この柱…全部人の骨でできてやがる…」

「ッ…!?嘘でしょ…!?」

「クッソ、なんなんだこれ…人の命を弄びやがって!!おい、出てこいポンコツ共!!」

 

『お呼びですか?』

 

ベルさんが研究室に入ってきた。

『いやはや、しかしポンコツとはひどい言いようですねぇ、栄様。』

「うるせェ!!おい、この部屋は一体なんなんだ!!テメェら、何のつもりだ!!」

『そちらの研究室は、狛研様をイメージした仕様になっております。フッフッフ、気に入っていただけました?』

「ふざけんな!!この柱、全部人の骨でできてんじゃねえか!!どういうつもりだ!!」

『ですから、狛研様をイメージした造りになっていると言ったはずです。まさに狛研様の才能にピッタリなお部屋でしょう?』

「え?」

『フッフッフ、いずれわかる事です。…貴女は、生きているだけで大罪人なんですよ。』

「黙れ!!ふざけた事言ってんじゃねえぞ!!狛研ちゃんが大罪人だと!?ざけんな!!さっさと視界から消えろクソ野郎!!」

『おや…呼び出しておいて失せろとは…随分と横暴ですねぇ。もう少しお話しても良いんですよ?』

「あなた達は捜査には介入しないって言ったはずよ。用が済んだなら消えてくれるとありがたいのだけれど。」

『とほほ…ずいぶんと嫌われたものですねぇ。もういいです。ええ、どうせワタクシはお邪魔なサーベルタイガーですよ。それでは、ここいらで失礼しますよ。』

ベルさんはガックリと肩を落としながら研究室から出て行った。

 

「クッソ…なんなんだアイツら。」

「叶、さっきの事は気にしちゃダメよ。」

「わかってる。」

…わかってるけど。

ボクが生きてるだけで大罪人って…

まるでベルさん達はボクの罪を知っているみたいな口ぶりだったな。

ボクの、どうしても思い出せない罪…

一体なんなんだろう。

「狛研ちゃん、あんなの気にせず次行こうぜ。」

「…うん。」

…あれ?ちょっと待って。これ…

「何してんだ?早く行くぞ。」

「あ、うん…」

 

 

 

 

【超高校級のアナウンサー】の研究室

 

「…げっ。ここは…」

「知能犯の研究室ね。」

「方神…」

奴の顔と最期を思い出して、吐き気を催した。

「…うっ!」

「叶、大丈夫?」

「…うん。ごめん。ちょっと嫌な事思い出した。」

「無理、しないでね。」

「ありがとう。でも本当に大丈夫だから。…それじゃ、行こうか。」

 

 

 

 

部屋の中は、以前とさほど変わらなかった。

でも、スタジオの照明は消えていて、持ち主がいなくなった部屋は静寂に満ちていた。

「なあ、これ…なんだ?」

陽一クンは、壁にあったスイッチを指差した。

「さあ、よくわかんないけど…あんまり迂闊に触らない方が…」

 

「ぶえっきし!!」

 

カチッ

 

「…。」

「…。」

「…ははっ、ごめん。」

ゐをりちゃんは、あきれ返ったような顔で陽一クンを見た。

「…この、馬鹿!!」

 

ガコン

 

陽一クンがボタンを押した瞬間、部屋全体が揺れ出した。

「わっ!?」

「な、なんだ!?」

そして、スタジオの壁がスライドし、奥の部屋が見えた。

「…。」

その部屋には、赤いペンキでバツ印が書かれた手配書や資料、地図、計画書などが散らばっていた。

「…なるほど。【超高校級の知能犯】の研究室ってわけか。」

「こんな隠し部屋があったとはね。馬鹿なあなたにしてはお手柄ね。」

「へへ…って…神座ちゃん、地味にオレの事くさしてない?」

「二人とも、部屋を調べてみよう。」

「…そうね。」

 

「…しっかし、きったねぇ部屋だなぁ。アイツ、ああ見えて雑な性格なのな。」

「いや、そうでもないと思うよ。」

ボクは、入り口の壁にかけてあった絵を外して、額縁の中にあったペンを取り出した。

「なっ…」

「こうやって汚部屋にしておく事で、隠しておきたい物を悟られないようにしてたんだよ。」

ペンのキャップを取ると、ペン先が鍵になっていた。

「あっ…!」

「…。」

ボクは、部屋の真ん中にあった机を入念に調べた。

「…やっぱり。」

「え?」

ボクは、鍵を使って机の引き出しを開けた。

引き出しの中には、手帳が入っていた。

「手帳…!」

「…。」

ここには、方神が絶対に隠しておきたかった秘密があるはずだ。

ボクは、手帳を開いてみた。

 

 

 

「…は!?」

「…何が書いてあったんだ?」

「おいしいカスタードプリンの作り方…牛乳300ml、卵3個、砂糖40g…」

「はぁ!!?」

なんだよこれ!!ただのレシピ本じゃんか!!

クッソ、方神め!こっちは時間がないってのに紛らわしい事しやがって!

…ん?

…え。

これって…

「…なるほど、そういう事か。だから方神の奴、この手帳を隠しておいたのか。」

「何かわかったのか?」

「これ見て。」

「いや、だからそれはただのレシピ本…」

「じゃなくて、著者と日付け!」

「!!?」

 

手帳の表紙には、『栄陽一 20XX年4月12日』と書かれていた。

「なんだよこれ…」

「これ、陽一クンの字だよね?」

「いや、まあそうだけど…」

「陽一クン、この手帳に見覚えはある?」

「ねえよ!そんなの書いた事ねえし!」

「…だよね。」

「え?」

「ボク達は多分、ここに来る前の記憶が抜けてるんだよ。」

「そ、そんなバカな話…」

「じゃあこの学園にどうやって来たのか覚えてる?」

「それは…」

「やっぱり、ボク達にはここに来る直前の記憶が無いんだ。それがたまたまなのか、それとも黒幕が意図した事なのかまではわからないけどね。」

「…なるほどな。」

 

「…あ。」

「どうしたの?」

「写真が挟まってる…」

「写真?」

手帳に挟まっていた写真には、ボクと凶夜クンとゐをりちゃんが写っていた。

「…私。」

「え、待って。ボク、3人で写真撮った事なんて無いんだけど。」

「じゃあ、さっき叶が言っていた記憶がない間の期間に、3人で写真を撮ったって事かしら。」

「そう考えるのが自然だろうね…」

「あれ?」

「どうしたの?」

「この写真…なんか不自然じゃない?」

「不自然?」

「ほら、服装とか髪型とか全然違うし…」

「確かに…」

「履歴書の写真も今のボク達と全然違うけど、一体どういう事なんだろうね。」

「わからない…ただ、私達がここに閉じ込められる前に全員知り合ってて、そこで何かがあったって事でしょうね。」

 

コトダマゲット!

 

【手帳】

陽一クンの手帳。陽一クンの字で書かれているが、陽一クンは見覚えがないらしい。

 

コトダマゲット!

 

【写真】

ボク、凶夜クン、ゐをりちゃんの3人が写っている。でも、その3人はまるで別人みたいだ。

 

「これは裁判で提出する証拠として持っておこう。」

「…そうね。」

「やあ、3人とも。お待たせ。」

「柳人クン。もう大丈夫なの?」

「うん。夜時間中寝てたからね。もうそろそろ朝時間だろ?捜査の方、手伝うよ〜♪」

「ありがとう!」

「で、今はどこまで進んだのかい?」

「えっとね…」

ボクは、柳人クンに捜査の報告をした。

「うんうん、なるほどね。よく分かったよ。」

「それじゃあ、みんな揃った事だし捜査を続けようか。」

「そうだねぇ。まずはどこに行こうか?」

「うーん…情報管理室に行ってみない?昨日行けなかったし。」

「賛成…」

 

 

 

 

【情報管理室】

 

「よし、パソコンも使えるみたいだし調べてみるか。…あーあ、こういう時才刃クンがいてくれれば助かったんだけど。」

「ンな事言ってもしょうがねえだろ。…貸してみ。」

「あれ?陽一クン、パソコン得意なの?」

「まあ、一時期趣味でネットサーフィンばっかやってた事があるからな。」

ああ、道理でゲームを覚えるのが早かったわけだ。

「…っと、もう方神の乗っ取りは解除されてるみたいだな。…んあ?」

「どうしたの?」

「見ろ、なんかファイルがあるぞ。」

「開いて。」

全員で陽一クンが開いたファイルを見た。

 

 

 

ーーー

 

僕はとんでもない事をしてしまった。

『HOPE』を生み出し、世界に平和を取り戻す事ができると思っていた。

だから奴の提案に乗り、アレの製作を手伝った。

だがそれが間違いだった。

奴が、まさか僕と共に生み出したアレをあんな恐ろしい事に使ってしまうなんて。

僕は取り返しのつかない罪を犯してしまった。

奴に殺されてデータを奪われるくらいなら、いっその事自ら命を断つつもりだ。

 

この遺書を読んでいる者へ

君がこれを読んでいる時、僕はもうこの世にいないだろう。

君に全てを受け入れ、立ち向かう覚悟があるのなら、どうか奴の計画を止めてほしい。

奴は狂っている。このままだと全員奴に殺される。

どうか、この悪夢を終わらせてくれ。

 

 

 

入田才刃

 

ーーー

 

 

 

「…。」

「…なあ、これって。」

「才刃クンの…遺書…?」

「なっ…!?そんなワケあるか!!アイツは、死ぬのが怖くて死ぬ直前まで引きこもってたんだぞ!?それに、アイツはラッセに撃たれて殺されたはずだ。アイツが遺書なんて書くわけねえだろ!」

「…それに、もし工学者が、私達の中の誰かの異常に気付いていたなら、死ぬ前に私達に何も教えてくれなかったのは変よ。」

「そうだねぇ。その遺書、やっぱり誰かのなりすましなんじゃないのかなぁ?」

 

『なりすまし?笑えない冗談だね!』

 

後ろからクマさんが現れた。

「なっ、どこから湧いて出やがったテメェ!」

『あーらら、随分とご機嫌ナナメだね陽一クン!もしかしてカルシウム不足?栄養士のくせに自分の栄養も管理できてないの?』

「うるせェ!!」

『あーあ、怒られちゃった。言っておくけどね、その遺書は入田クンが書いた物だよ。誰かのなりすましなんかじゃないから。』

「君がそんな事言ったって信用できると思うかい?」

『どいつもこいつもひどいね全く!じゃ、もう用は済んだみたいだから行くね!』

クマさんは、不機嫌そうに帰っていった。

「…クマさん、遺書…」

「ん?どうしたんだ、狛研ちゃん?」

「ああ、いや…これはボクの推測だし、根拠は無いんだけど…多分、才刃クンは黒幕の手伝いをした事があるんじゃないかなって。」

「…は!?いやいやいや!ないない!!アイツに限ってそんな事あるわけないだろ!」

「そうだよ。第一、内通者は癒川君だったじゃないか。入田君は関係ないよ。」

「でも、もしこの遺書が本当に才刃クンが書いたものだとすると、納得できる事がいくつかあるんだ。」

「納得できる事?」

「よく考えてみて。クマさん達やこの手帳って、よっぽど機械に詳しい人じゃないと作れないと思うんだよね。もし、才刃クンが作ったクマさんや手帳を、黒幕がそのまま使ってたとしたら…?」

「…可能性は無いわけじゃないかもね。」

 

コトダマゲット!

 

【才刃クンの遺書】

パソコンに才刃クンの遺書があった。才刃クンは黒幕の手伝いをしていた…?

 

「…あ。」

「ん?どうしたんだい狛研君。」

「…いや、ちょっと探しておきたい場所があってね。付き合ってくれる?」

「うん、いいよ〜♪」

 

 

 

 

【超高校級の資産家】の研究室

 

「…叶、ここって。」

「うん。天理クンの研究室。」

「そこに何があるっていうんだい?」

「…。」

ボクは、部屋中を探した。

 

「…あった。」

「何か見つけたのか?」

「うん。これ見て。」

ボクは、見つけた本をみんなに見せた。

「それは…」

「『囚われのマリアのための交響曲』…」

「天理クン、この本がゲームの元ネタになってるって言ってた…」

「じゃあ、その本を読めばこの学園がなんなのかわかるんじゃ…」

「待ってよ、そうとは限らないと思うよ。」

「どういう事?」

「その本は、元ネタになってただけだろ?このゲームの事が書いてあるわけないじゃないか。」

「うっ…」

「それに、今はせっかくの朝時間だ。探索を積極的に進めていった方がいいんじゃないか?」

「…そうだね。」

「じゃあ次はどこに行こうか?」

「そうだなぁ。とりあえず、一度外エリアに出てみないかい?」

「外?」

「もしかしたら脱出の手がかりが見つかるかもしれないし。」

「…そうね。」

 

 

 

 

【外エリア】

 

「外になんて出て何を探すんだよ。」

「出口だよ。内エリアには無かったけど、ここにならあるかもしれないと思って。」

「でも狛研君。日暮君は、外エリアに出口らしいものはなかったって言ってたよ。」

「でも、見落としてただけかもしれないでしょ。とにかく、手分けして探すよ。外エリアには、一部夜時間立ち入り禁止になっちゃう場所があるから、早く探さないと。」

「…まあ、君がそういうなら探すけどよ。」

 

 

 

 

ー数時間後ー

 

「みんな、どう?」

「狛研ちゃん、出口なんて見つからなかったぜ。」

「…え。」

「天井とか床とか、ありとあらゆる場所を隅々まで探したけど、出口なんてどこにもなかったよ。」

「…本当に?」

「ああ。外エリアの壁は起伏や継ぎ目が全く無かったよ。」

「リフトを使って天井も調べたけれど、それっぽいものは何もなかったわ。」

「壁や床にも、不自然な空洞はなかったしねぇ。」

「…そんな、そんなわけないんだ。」

「え?」

「ボク達は外から来た。だから、この学園内に外へ続く出口が無いとおかしいんだ。…これほど大きな建物となると、多分地下か壁の下の方に出入り口を作っておくものだと思うんだけど…それっぽい物が無いのか…」

「当然、外部からの侵入もできないって事ね。…モノクマが、誰も助けに来ないって言ってたのはそういう事なのかしらね。」

「ん?どういう事だ?」

「…君ねえ、今までの話聞いてた?つまり、出入り口が無いからオイラ達は自力で脱出する事ができなければ、外から誰かに助けてもらう事もできないんだよ。」

「じゃあ、大人しくここでじっとしてるしかないって事かよ!?」

「それだけじゃないよ。」

「え?」

 

「ボク達がどこからどうやってここに来たのか。それをハッキリさせる必要が出てきたんだよ。」

「オイラ達は外から来たんじゃないのかい?」

「でも、外から入ってくるための出入り口が無いんだよ?おかしいじゃないか。」

「外といえば、今外がどうなってるのかすらオレらは知らねえもんな。」

「360°全方位を壁で覆われてて、壁の上にも天井があって天気すらわからない…外部との通信手段も無い、か。…ん?」

「どうしたんだ、狛研ちゃん。」

「あれっ…だったら、なんで黒幕は外の世界の事を知ってたんだ…?」

「え?」

「だって、おかしいじゃないか。ボク達は、ここから出る事が出来なければ外部から中に入る事もできない。それは黒幕も同じはずだよ。外部との通信手段を持たないはずの黒幕が、なんで外の世界を知ってるのかな。」

「…謎は増える一方だねぇ。」

「っと、そろそろ夜時間だ。」

「じゃあ、行ける場所の探索をするのと、さっき見つけた本を読まないと。時間がないから巻きで行こう。」

「待てよ、狛研ちゃん。そろそろ休憩してこいよ。」

「いや、でも…捜査抜けたら悪いし。それに、また薬飲めばまだ動けるよ。」

「叶、薬の説明書、ちゃんと読んだ?あの薬は、睡眠を挟んでから次を飲まないとダメなのよ。捜査なら私達が進めておくから、あなたはゆっくり休んできて。」

「でも…」

「でもじゃない。とにかく、あなたはゆっくりしてて。」

「…ハイ。」

ゐをりちゃんに怒られちゃったよ。

それじゃあ、お言葉に甘えて少しだけ休んでこようかな。

おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ふにゃあっ!」

…ヤバい、どうしよう。

寝過ぎた。

捜査の足引っ張らないように寝るのは最小限にしようって決めてたのに…

急がなきゃ!

 

 

 

 

【内エリア 1F】

 

「ごめん、お待たせ!!」

「狛研ちゃん、もういいのか?」

「うん、ごめん。寝過ぎちゃって。」

「いや、まだ5時間しか経ってないけど…」

「で、捜査はどのくらい進んだ?」

「…ああ、言いづらいんだけど。」

「?」

「オレ達、あの後内エリアに出口が無いか探してみたんだよ。でも、それっぽい物はやっぱりなかったよ。」

「…あ、でも…アレは…?」

「アレ?」

「あの、実は…内エリアの探索が終わった後、一度外エリアに出てみたの。そしたら、天井にさっきまでなかったヒビみたいなものが見えて…」

「ヒビ?」

「ええ。」

「…行ってくる。」

ボクは、ゐをりちゃんが見つけてくれたヒビを探しに行った。

 

 

 

 

【外エリア】

 

「…。」

ちょうどヒビがあるあたりに、クマさんとベルさんがいた。

二匹は、ヒビを巨大なテープで押さえていた。

ヒビの向こうは、吸い込まれそうになるほど深い黒が広がっていた。

『ちょっとちょっと!これ以上近づかないでよね!今は工事中だよ!』

ヘルメットをかぶったクマさんが、ボクの行く手を阻んだ。

「工事中って…あのヒビは何?」

『ああ、あれはバ…おっと、いけないいけない。これ以上は言っちゃいけない事になってるんだった。』

「『バ』?ねえ、今なんて言いかけたの?」

『しつこいよ!そんなに気になるなら自分で調べたら!』

「自分で調べるのに限界があるからキミに聞いてるんだろ。」

『とにかく、ボクから言える事は何もありません!ほら、行った行った!』

なんだよ、クマさんのドケチ。

 

 

 

 

【内エリア】

 

「どうだった?」

「クマさん達が邪魔してきて調べられなかったよ。」

「…そう。」

「んだよあのクマ!捜査の邪魔はしないんじゃなかったのかよ!」

 

「…もしかしたら、あのヒビはこの世界の『弱点』なのかも。」

「弱点?」

「多分、あのヒビは詮索されたら困るものなんだよ。だから、クマさんは必死に調べさせまいとしてたんだ。」

「…なるほどねぇ。」

 

コトダマゲット!

 

【外エリア】

脱出方法や外との通信手段は一切ない。全方位と空は壁と天井で覆われていて、外の世界を知る事はできない。でも、天井にヒビがあったのは確認できた。

 

「でも、ヒビを調べられないんじゃ仕方ないわよね。どうする?」

「今は夜時間だし、さっきの本を読んでみるのはどう?」

「…そうね。」

 

 

 

 

【図書室】

 

「狛研君、どうだった?」

「…うん、普通のミステリー小説だった。天理クンが言ってたゲームが作品内に出てきたって事以外はね。」

「うーん、やっぱその本が元ネタっつーのは財原のこじつけなんじゃねえの?」

「どういう事?」

「アイツ、トランプのカードをオレ達に当てはめてるから死ぬ奴を予想できたっつってたけど、そんなの後で適当にこじつければ当たってるように見せかけられるんじゃないかって思ってよ。」

「君にしては随分と慎重に考えるようになったじゃないか。」

「うっせ!一言余計だっつーの!」

「確かに、ちょっとこじつけっぽいよね。これを元ネタって言うのはかなり無理があるような気が…」

 

『俺はただ、『囚われのマリアのための交響曲(シンフォニア)』を奏でたいだけだよ。』

 

…奏でる…?

…もしかして。

 

「ベルさん!!」

『はい、なんでございましょう。狛研様。』

「画像を点字にしたり点字を文字にしたりできる機械とかってある?」

『ええ、ございますよ。少々お待ち下さいな。』

ベルさんは、お尻のあたりをゴソゴソとあさり始めた。

『よいしょっと。これで満足ですか?』

「ありがとう。もう行っていいよ。」

『とほほ、トラ遣いが荒いですねぇ。』

「どうしたんだよ、狛研ちゃん。わざわざあんなクソトラを呼んだりして。」

ボクは、ベルさんにもらった機械をセットした。

「ねえ、柳人クン。」

「ん?なんだい、狛研君。」

「これ、ちょっと楽譜にしてくれる?」

「ん?どれどれ?うんうん、なるほどね。お安い御用さ。」

 

「…はい。これがどうかしたの?」

「この小説、実は暗号が隠されてたんだ。これを解読すると…」

 

 

 

くりかえされるせかいできぼうはぜつぼうにかわり

つみびとたちはえいえんのかんごくへといざなわれる

あたらしいせかいはかなえのもの

 

「『繰り返される世界で希望は絶望に変わり、罪人達は永遠の監獄へと誘われる。新しい世界は叶のもの』…!?」

「何、これ…どういう事…!?」

「ボクも詳しい事はわからないけど…多分、このメッセージはこのコロシアイの事だ。」

「…なっ、なんだって!?」

「もちろん、お父さんはこのコロシアイの展開を予期してこのメッセージを遺したわけじゃないと思う。お父さんはこのコロシアイの事なんて知らないはずだしね。このメッセージはただの小説の謎の種明かしだ。実際、小説の登場人物に『香苗』っていう人が出てくるからね。黒幕は、このメッセージに気付いて、この状況を作り出そうとしてたんじゃないかな。天理クンが言ってた元ネタっていうのは、小説本編の事じゃなくて、この暗号の事だったんだよ。」

「じゃあ、黒幕はこの小説の暗号の通りになるようにこの学園を作り出したって事かよ!?」

「そういう事。言ってみれば模倣犯ってヤツだね。」

「模倣犯か…」

…なんだろう。

うまく言えないけど、これはただの模倣犯による犯罪じゃない気がする。

もっと、その奥に何かあるような…

 

 

 

あたらしいせかいはかなえのもの

 

…新しい世界は叶のもの、か。

このコロシアイは、ボクのために用意されたものって事?

 

 

 

『僕ちゃんに配られたのは、狛研の秘密だった。そこには、コイツがこのコロシアイの元凶だと書かれてたんだ。』

 

『あの女はーーーを狂わせ、ーーーがあんな恐ろしい『実験』をしようとするきっかけを作った悪魔だ。』

 

『貴女は、生きているだけで大罪人なんですよ。』

 

 

 

…。

思い出したくない記憶が蘇ってくる。

 

 

『あーあ、なんでこんな子引き取っちゃったのかしら。』

『やめろよ…そんな事言ったって仕方ないだろ。』

 

『なんでよ…なんでこうなるのよ!アンタを引き取ってから悪い事ばっかり…!』

 

『気持ち悪い…なんでアンタはずっと笑ってんのよ!何か取り憑いてるんじゃないの!?』

 

 

 

『生きてるだけで私達を不幸にする…兄さんだって、アンタのせいで死んだのよ!アンタなんて、生まれてこなければよかったのよ!!』

 

 

 

…思い出した。

ボクは、今までずっと周りのみんなを不幸にして生きてきたんだ。

だから嫌われて、無視されたりもした。

ここに来てからみんながどんどん死んだのも、きっとボクが不幸をばらまいていたからだ。

ボクの『ラッキー』は、みんなの不運の上に成り立っていたんだ。

生きている事。

…多分、それ自体がボクの罪なんだ。

 

 

 

 

『…勝手に俺を置いて死んだりすんなよな。キミは、俺にとって大事な人なんだからさ。』

 

『ったく、しっかりしろよな。オレ達のリーダーは君しかいないんだからよ。』

 

…!

そうだ。ボクには、ボクを必要としてくれる人達がいる。

その人達のためにも、そして、今まで犠牲になった人達のためにも絶対に外に出るって決めた。

…ボクとした事が、いきなり取り戻した記憶に取り乱して大事な事を忘れかけていたみたいだ。

罪なら、外に出てからいくらでも償えばいい。

絶対にこんなクソゲーの正体を暴いて、みんなで家に帰るんだ。

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